タービダイト
タービダイト(英: turbidite[1])は、海底堆積物の一種で、混濁流(乱泥流、英: turbidity current[1])の堆積物[2]を指す。級化層理やラミナが発達しており、繰り返し発生して堆積すると砂岩・泥岩互層となる。
概要
[編集]タービダイトは、級化層理やラミナが発達した堆積層である。タービダイトには、バウマ・シーケンスと呼ばれる特徴的な級化とラミナからなる堆積構造が見られることがある。また、底部では、侵食や底痕が見られることがある。
タービダイトの堆積過程は、例えば、混濁流が大陸棚斜面において発生し、その後大陸棚斜面にある海底谷を流れ下り、海底に到達し、最終的にその混濁流が堆積することが考えられる。そのようにして、タービダイトが深海底に繰り返し堆積すると、海底地形として海底扇状地が形成される。このような地形は、間欠的な混濁流の発生によるものであり、その間欠的な混濁流の堆積、すなわち砂泥互層によって海底扇状地が形成されていると言える。
混濁流の発生原因は、洪水(すなわち台風や豪雨など)、地震に伴う海底地すべり、津波、海底火山噴火などが考えられている。
タービダイトの堆積によって形成された海底扇状地において、砂層や砂岩層は炭化水素を多量に含む流体が存在することが知られる[3]。南海トラフ周辺では、タービダイト砂層中に炭化水素の流体が低温、高圧条件下でメタンハイドレートとして蓄積されている。すなわち、タービダイト砂層はメタンハイドレートの貯留層として注目されている。また、そのような流体はブラジル沖や北海、メキシコ湾などの海底下に大量に存在し、世界的に有名な海底油田や海底ガス田を形成している。
利用した研究
[編集]タービダイトは、湖底[4]や深海底に堆積し、それらは繰り返して生じる地震や災害イベントの発生履歴や発生サイクルを記録していると考えられ、盛んに研究されている[5]。その場合、放射性炭素年代測定法などの年代測定法による発生履歴の検証が行われる。放射性炭素年代測定法を用いる場合、海洋リザーバー効果を考慮する必要がある[5]。また、研究の歴史が浅く十分な知見が蓄積されていないため、堆積年代(例えば地震発生年代)の決定精度には多くの課題がある[6]。
例えば、琵琶湖周辺で発生した歴史地震の推定震度とタービダイトとの関連性の研究例では[4]、史料に記述される1449年山城・大和地震の不正確さが指摘されている。
出典
[編集]- 砂岩泥岩互層 (タービダイト) 産総研 地質調査総合センター
脚注
[編集]- ^ a b 文部省編『学術用語集 地学編』日本学術振興会、1984年、382頁。ISBN 4-8181-8401-2。
- ^ 室戸ジオパーク推進協議会事務局. “どーんと付加体(M.室戸岬)”. 室戸ジオパーク公式サイト. 2012年6月15日閲覧。
- ^ 高野修、「炭化水素貯留岩としての海底扇状地タービダイト :堆積モデル・石油システムの多様性と解析手法の現状」『石油技術協会誌』 2016年 81巻 1号 p.7-21, doi:10.3720/japt.81.7, 石油技術協会
- ^ a b 井内美郎, 衣笠善博, 公文富士夫 ほか、「古地震の震度指示者としての琵琶湖タービダイト」 日本地質学会 『地質学論集』 1993年5月 39巻 p.61-70, hdl:2433/87323
- ^ a b 池原研、「深海底タービダイトの発生周期とその古地震学的意義 熊野トラフのピストンコアの解析例」『堆積学研究』 1999年 49巻 49号 p.13-21, doi:10.4096/jssj1995.49.13, 日本堆積学会
- ^ 池原研、「地震性タービダイトによる地震発生履歴研究の現状と課題」『日本地質学会学術大会講演要旨』 2016年 2016巻 第123年学術大会(2016東京・桜上水), セッションID:R7-O-8, p.176-, doi:10.14863/geosocabst.2016.0_176, 日本地質学会
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 石原与四郎、 宮田雄一郎、 徳橋秀一、「房総半島安房層群上部のタービダイトシークエンスの時系列解析」 『地質學雜誌』 1997年 103巻 6号 p.579-589、 NAID 110003013923、 doi:10.5575/geosoc.103.579、 日本地質学会
- 徳橋秀一、「新潟県東山南部に分布する砂岩の堆積学的・鉱物学的研究:海底扇状地タービダイト砂岩と陸棚タービダイト砂岩の堆積学的関係」『地質学雑誌』 1992年 98巻 4号 p.355-372、 doi:10.5575/geosoc.98.355、 日本地質学会