ホワイト・ラビット (曲)
「ホワイト・ラビット」 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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ジェファーソン・エアプレイン の シングル | ||||||||||||||||||||||||||||||||
初出アルバム『シュールリアリスティック・ピロー』 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
B面 | 「プラスティック・ファンタスティック・ラヴァー」 | |||||||||||||||||||||||||||||||
リリース | ||||||||||||||||||||||||||||||||
録音 | 1966年11月3日![]() | |||||||||||||||||||||||||||||||
ジャンル | サイケデリック・ロック[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||
時間 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
レーベル | RCAヴィクター | |||||||||||||||||||||||||||||||
作詞・作曲 | グレイス・スリック | |||||||||||||||||||||||||||||||
プロデュース | リック・ジャラード | |||||||||||||||||||||||||||||||
ジェファーソン・エアプレイン シングル 年表 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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「ホワイト・ラビット」("White Rabbit")は、グレイス・スリックが制作し、アメリカ合衆国のロックバンドのジェファーソン・エアプレインが1967年のアルバム『シュールリアリスティック・ピロー』向けに収録した楽曲である。この曲はシングルとして発売され、Billboard Hot 100でバンド史上2度目のトップテン入り、最高8位に到達した[2]。この曲は『ローリング・ストーン』誌のオールタイム・グレイテスト・ソング500で455位[3]、Rate Your Musicのオールタイム・トップ・シングルで116位[4]、ロックの殿堂でロックン・ロールを形成した500曲に選出された。
歴史
[編集]「ホワイト・ラビット」はグレイス・スリックがグレート・ソサエティ在籍時に制作、演奏した曲である。スリックは出産を機に脱退した女性シンガーのシグニー・トリー・アンダーソンの後任としてジェファーソン・エアプレインにサンクした。 スリックがジェファーソン・エアプレインで最初に録音したアルバムが『シュールリアリスティック・ピロー』であるが、スリックは前グループから「ホワイト・ラビット」と義弟のダービー・スリックが制作した「あなただけを」("Somebody to Love"、グレート・ソサエティで録音された際の題は "Someone to Love")を提供した[5]。グレート・ソサエティの「ホワイト・ラビット」はジェファーソン・エアプレインのそれよりも長尺であった。両曲ともジェファーソン・エアプレインではトップ10に入るヒット作となり[6]、これ以降同バンドとの結びつきが続いている[7]。
作詞・作曲
[編集]「ホワイト・ラビット」はグレイス・スリックの初期の曲の1つであり、1965年12月から1966年1月にかけて書かれたものである[8]。この曲はルイス・キャロルの1865年のファンタジー『不思議の国のアリス』と1871年のその続編『鏡の国のアリス』で見られる薬を飲んだり、未知の液体を飲んだりするとサイズが変わるというイメージが用いられている。
スリックはまず歌詞を書き、次に50ドルで買った8から10個の鍵盤が欠けた赤いアップライトピアノで「欠けた音は頭の中で聞こえるから大丈夫」と言って作曲した[9]。彼女によるとこの曲はマイルス・デイヴィスの『スケッチ・オブ・スペイン』、特にデイヴィスが「アランフエス協奏曲」を演奏したことに大きな影響を受けたという。彼女は後に「ダークなスペインのマーチをバックにアリスについての奇妙な曲を書くことは当時のサンフランシスコの状況にマッチしていた。私たちは皆、予想されていることからできるだけ離れようとしていた」と語った[8]。
スリックは子供にこのような小説を読ませておいて、なぜ子供が麻薬に手を出したのかと悩む親たちへの非難の意味を込めたという[10]。彼女はまた女の子に読ませるおとぎ話には必ずと言っていいほど王子様が現れて助けてくれるが、アリスはそうではなく、彼女はとても奇妙な場所に1人でいて、「あ、白ウサギだ」と好奇心に従って進み続けたのであり、多くの女性がこの物語からいかに自分の主張を押し通すことができるかというメッセージを受け取っただろうと語った。「feed your head」のくだりは読書とサイケデリックスの両方を指している[9]。
スリックはアリス、白ウサギ、水煙草を吹かす芋虫、白の騎士、赤の女王、眠りネズミが参照されている[11]。スリックはアシッド・トリップの後にこの曲を書いたと言われている[12]。
スリックは「ホワイト・ラビット」は「自分の好奇心に従うこと。白ウサギはあなたの好奇心」であるとしている[13]。彼女をはじめとする1960年代の人々にとってドラッグは意識の拡大や社会実験の一部であった。謎めいた歌詞をもつ「ホワイト・ラビット」はラジオでの規制を目をかいくぐって薬物を語った最初期の曲のひとつとなった。ジェファーソン・エアプレインでスリックと競っていたマーティ・バーリンもこの曲を「傑作」と評価している。スリックはインタビューで『不思議の国のアリス』は子供の頃によく読んでもらい、大人になっても鮮明な記憶として残っていると語っている[3]。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙上のインタビューでスリックは『不思議の国のアリス』のほかにモーリス・ラヴェルの『ボレロ』にもインスピレーションを受けたと述べている。『ボレロ』と同様に「ホワイト・ラビット」は本質的に1つの長いクレッシェンドである。この曲と歌詞の組み合わせは幻覚剤で経験する感覚の歪みを強く示唆しており、後にそのような状態を暗示したり伴ったりするためにポップカルチャーで使用された[14]。
この曲はグレート・ソサエティが1966年初頭にサンフランシスコのバーで初めて演奏し、その後はグレイトフル・デッドのような大物バンドの前座を務めた際にも披露された。彼らはオータム・レコーズ向けにデモテープを制作し、その際にスライ・ストーンの協力を得た。スリックは「私たちはあまりにも酷かったので、スライは最終的にデモ音源が問題ないようにすべての楽器を演奏した」と語った。1966年にジェファーソン・エアプレインに参加したスリックはこの曲を提供し、アルバム『シュールリアリスティック・ピロー』に収録された[8]。この曲はイ長調のキーで書かれている[15]。
チャート史
[編集] 週間チャート[編集]
| 年間チャート[編集]
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『キャッシュボックス』[23] (11週): 59位、45位、23位、14位、12位、11位、8位、6位、7位、22位、41位
パーソネル
[編集]- グレイス・スリック – ボーカル
- ヨーマ・コーコネン - リードギター
- ポール・カントナー - リズムギター
- ジャック・キャサディ - バス
- スペンサー・ドライデン - ドラム
カバー
[編集]この曲は多数のアーティストによりカバーされた。以下はその一例である:
- ギタリストのジョージ・ベンソンが1971年にジャズ・バージョンを発表しており、ハービー・ハンコックがエレクトリックピアノのソロで参加した。
- パンク/ゴシック・ロック・バンドのダムドにより1980年にシングルが発売された。
- 1985年に南カリフォルニアのパンク・バンドのジ・アレイ・キャッツ(当時の名称はザーコンズ)によりカバーされた[24]。
- 1987年にアメリカのメタル・バンドのサンクチュアリがカバーし、デビューアルバム『新たなる聖地へ』に収録された。
- 1993年にインダストリアル・ロック・グループのデス・メソッドがカバーし、多数のアーティストによるコンピレーション・アルバム『Shut Up Kitty』に収録された。
- 1996年にアイスランドのシンガーソングライターのエミリアナ・トリーニがカバーした。このバージョンは2011年の映画『エンジェル ウォーズ』のサウンドトラックとしても使われた。
- 1997年にボーン・フォー・ブリスがアルバム『Flowing with the Flue』でカバーした。
- 2002年に発売されたアルバム『Don't Know When I'll Be Back Again: A Compilation Benefiting American Veterans of the Vietnam War』にはイーノンによるカバーが収録された。
- ブルーマン・グループはこの曲をステージで使用し、2003年のアルバム『ザ・コンプレックス』に収録された。
- シェイクスピアズ・シスターがカバーし、2004年のアルバム『The Best of Shakespear's Sister』に収録された。
- パティ・スミスが2007年にカバーし、アルバム『トゥウェルヴに収録された。
- コライドあg2007年の映画『バイオハザードIII』のサウンドトラックにDnBリミックス版を提供した。
- 2010年にグレイス・ポッター・アンド・ザ・ノクターナルズがコンセプト・アルバム『オールモスト・アリス』でカバーした[25]。
- 2012年にレディホークがトリプルJのラジオ番組「Like a Version」でカバーを披露した[26]。
- ポール・カークブレナーは2015年のリミックス曲「Feed Your Head」でこの曲の歌詞を使用した。
- タリー・ホールのメンバーであるジョー・ホーリーが2016年のソロ・アルバム『Joe Hawley Joe Hawley』でカバーした。
- ポップ・ロック歌手のピンクが2016年の映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』向けにこの曲をカバーしたが、サウンドトラックには含まれなかった。このバージョンは代わりに2017年のアルバム『ビューティフル・トラウマ』の日本盤にボーナストラックとして収録された。
- ヘイリー・ラインハートが2017年のアルバム『ホワッツ・ザット・サウンド?』でカバーした。
- スウェーデンのアーティストであるロリーンがライブでこの曲を演奏した。
ポップカルチャーでの使用
[編集]- 1986年のオリバー・ストーン監督・脚本の映画『プラトーン』のマリファナを吸う場面ででジェファーソン・エアプレインの原曲が使用された。
- 1997年のデヴィッド・フィンチャー監督映画『ゲーム』でマイケル・ダグラス演じるニコラス・ヴァン・オートンが荒らされた部屋に帰宅する場面で使用された。
- 1998年の映画『ラスベガスをやっつけろ』ではLSDでハイになったドクター・ゴンゾーがバスタブの中で「ホワイト・ラビット」を聴いている。ゴンゾーはラウル・デュークに曲が「ピーク」を迎えた時にテーププレイヤーをバスタブに投げ込むように頼むが拒否され、代わりにグレープフルーツが投げ込まれる。
- 1998年にテレビアニメ『ザ・シンプソンズ』の第10シーズン第6話「ホーマーのヒッピーはつらいよ」のペヨーテ・ドラッグ・トリップの場面で使用された。
- 1999年にテレビドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の第1シーズン第7話「宿命」のエンドクレジットでトニーがプロザックを飲んだ後に子供時代を思い出す場面で使用された。
- 1999年にテレビアニメ『フューチュラマ』の第2シーズン第3話「選挙に首を突っ込む」でリチャード・ニクソンが「ホワイト・ラビット」の別バージョンを歌う場面がある。
- 2004年のゲーム『バトルフィールド ベトナム』ではリミックスバージョンがメインメニューテーマとして使用された。
- 2007年にテレビドラマ『スーパーナチュラル』の第2シーズン第10話「悪魔の計画」の冒頭で使用された[27]。
- 2007年のゲーム『ロストオデッセイ』の全長版コマーシャルで使用された。
- 2009年にテレビアニメ『アメリカン・ダッド』の第6シーズン第1話でスティーヴがベトナム戦争の再現で父親のスタンを救出する途中で使用された。
- 2009年にテレビドラマ『ウェアハウス13 〜秘密の倉庫 事件ファイル〜』の第1シーズン第8話「鏡の国のマイカ」で使用された。
- 2011年のザック・スナイダー監督の映画『エンジェル ウォーズ』ではエミリアナ・トリーニによるリミックス版が複数のアクション場面で使用された。
- 2015年の映画『完全なるチェックメイト』で使用された。
- 2016年のゲーム『マフィア III』ではゲーム内の3つのラジオ局のうちの1つで聴くことが出来る。
- 2016年にNetflixのテレビドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の第1話で使用された。
- 2017年の映画『キングコング:髑髏島の巨神』ではランダとホーキンスがサイゴンのバーに入り、コンラッドがビリヤードをプレイする際に使用された。
- 2017年にテレビドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の第1シーズン第8話「イゼベルの店」で使用された。
- 2017年に『ビッグ・リトル・ライズ』の第1シーズン第4話「いざとなったら」で停学になったジギーが母親と共にモントレー水族館で1日を過ごす場面で使用された。
- 2019年にテレビドラマ『トワイライト・ゾーン』の第1シーズン第9話「ブルー・スコーピオン」で使用された。
- 2020年にセレブリティ・クルーズのテレビコマーシャルで使用された。
- 2020年のNetflixの映画『ザ・ベビーシッター キラークイーン』で使用された。
- 2021年のHBOのドキュメンタリーシリーズ『Qアノンの正体』の第6話でアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件を説明する場面で使用された。
- 2021年公開予定の映画『マトリックス レザレクションズ』の最初の予告編でリミックス版が使用された[28]。
参考文献
[編集]- ^ Myers, Marc (31 May 2016). "How Jefferson Airplane's Grace Slick Wrote 'White Rabbit'". International Times. 2016年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年7月21日閲覧。
- ^ “Top 100 Music Hits, Top 100 Music Charts, Top 100 Songs & The Hot 100”. Billboard.com. July 13, 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。July 8, 2011閲覧。
- ^ a b “The RS 500 Greatest Songs of All Time” (December 9, 2004). June 22, 2008時点のオリジナルよりアーカイブ。August 7, 2011閲覧。
- ^ “Top Singles of All-time”. Rate Your Music. October 30, 2012閲覧。
- ^ “Darby Slick Puts Original Lyrics Up For Sale”. Jambands.com (26 March 2014). 2015年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月3日閲覧。
- ^ “Billboard – Jefferson Airplane”. Billboard.com. 2015年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月31日閲覧。
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- ^ a b c Myers, Marc (2016). Anatomy of a Song. Grove Press. pp. 92–99. ISBN 978-1-61185-525-8
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- ^ “Biography – Grace Slick”. Jeffersonairplane.com. 2017年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月31日閲覧。
- ^ “White Rabbit Lyrics”. Metrolyrics.com. 2015年2月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月31日閲覧。
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- ^ Myers, Marc. “She Went Chasing Rabbits”. The Wall Street Journal. オリジナルのJanuary 8, 2015時点におけるアーカイブ。 August 2, 2016閲覧。
- ^ Robert Dimery (1 October 2015). 1001 Songs You Must Hear Before You Die (First ed.). Cassell. ISBN 978-1844038800
- ^ Grace, Slick (2010年9月28日). “White Rabbit”. Musicnotes.com. 2021年6月9日閲覧。
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