リチャード・B・スペンサー
リチャード・B・スペンサー | |
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2016年 | |
生誕 | リチャード・バートランド・スペンサー 1978年5月11日(46歳) アメリカ合衆国·マサチューセッツ州ボストン |
住居 | モンタナ州ホワイトフィッシュ |
国籍 | アメリカ合衆国 |
市民権 | アメリカ合衆国 |
教育 | テキサス聖マルコ校 |
出身校 | バージニア大学、シカゴ大学 |
職業 | 執筆者 |
配偶者 | ニナ・クープリアノワ(別居) |
親 | ウィリアム・B・スペンサー(父) シェリー・スペンサー(母) |
リチャード・バートランド・スペンサー(Richard Bertrand Spencer、1978年5月11日 - )は、アメリカ合衆国の白人至上主義者、ネオナチ指導者である[1][2][3][4]。白人ナショナリズムのシンクタンク国家政策研究所の所長で、出版会社ワシントン・サミット出版社の社長。スペンサーは白人優位主義者という言葉を拒否しており、自分自身をアイデンティティ主義者と規定している[5][6]。彼は「追い出された白色人種」の為の白人国家を提唱し、ヨーロッパ文化の「脱構築」を止める為に「平和的な民族浄化」を要求している[7]。
スペンサーらは、彼が「オルタナ右翼」という言葉を生み出したと語っている[8]。彼はそれを白人のアイデンティティについての運動とみなしている[9][10][11]。ブライトバート・ニュースは、スペンサーのウェブサイト AlternativeRight.comを「オルタナ右翼思想の核心」と説明している[12]
オルタナ右翼
[編集]彼は、ナチスのプロパガンダを繰り返し引用して、ユダヤ人を批判し、いくつかの機会でアドルフ・ヒトラーを非難することを拒否した[11][13]。しかし、彼は自身がネオナチであることは否定している。スペンサーと彼の組織は2016年アメリカ合衆国大統領選挙の間、著名なメディアの注目を集めた[14]。彼はドナルド・トランプの当選が決まると「トランプ万歳、人民万歳、勝利万歳!(Hail Trump, hail our people, hail victory!)」と叫び、彼の支持者はそれにナチス式敬礼で応えた。スペンサーはナチス式敬礼が「皮肉と盛り上がり」の精神で行われたとして、彼らの行動を擁護していた[15][16]。トランプは当選後、これらに対し、「彼らを非難する。否定し、非難する」と語った[17]。
2017年1月20日、トランプ大統領就任式の日ら反トランプデモ参加者に襲撃され暴行を受けた動画が波紋を起こした[18]。8月11日と12日、ヴァージニア州シャーロッツビルで大規模な白人至上主義者の集会ユナイト・ザ・ライト・ラリーに関与。抗議者のなかに車両が突っ込み、1名の死者と10数人が負傷した。10月20日、フロリダ大学で演説会を開催したが、数百人規模の猛烈な抗議によって降壇を余儀なくされた[19]。
2017年夏に録画されたとみられる映像の中でスペンサー氏は、抗議デモの参加者1名が死亡したシャーロビルの極右連合集会Unite the Rightに言及しながら、人種や民族を侮辱する言葉を叫んでいた。
2019年11月4日、極めて人種差別的な音声が、マイロ・ヤノプルスのYouTubeにおいて公開された[20]。「オルト・ライトは2020年大統領選挙でトランプ氏と決別すべきだ」と主張し、反トランプに転じた現在は公に民主党のジョー・バイデンを支持している。2020大統領選に向けては "I plan to vote for Biden and a straight democratic ticket," Spencer tweeted on Sunday. "It's not based on 'accelerationism' or anything like that; the liberals are clearly more competent people."「私はバイデンに票を入れるし、民主党に投票する。」「これは加速主義に基づくものでない。民主党はより有能な人々だからだ。」とツイートもし、公にバイデンと民主党の支持を表明している[21][22]。
私生活
[編集]2010年、スペンサーはモンタナ州ホワイトフィッシュに移った。彼はホワイトフィッシュとバージニア州アーリントンで時間を過ごしたが[23][24]、ホワイトフィッシュに10年以上住んでいたため、そこを故郷とみなしている[25]。
彼はロシア系アメリカ人の妻ニナ・クープリアノワ(近代・現代ロシア、文化、アメリカの外交政策に関する政治分析家)と別居している[26]。2人は2016年10月に別居した[27]。
スペンサーは無神論者である[28] 。彼はまた自分自身を「文化的なキリスト教徒」と表現している[29]。
日本のアニメに対する好意的な発言で知られており、2016年1月20日に「日本のアニメ、またアニメポルノでさえ、ヨーロッパの文明を発展させるために共和党よりも多くのことを行ってきた」と述べている[30]。
『ニューヨーク・タイムズ』の「オルタナ右翼のアジア系フェティッシュ」という記事によると、黒人男性ジョージ・フロイド死亡事件の加害者であるデレク・ショーヴィンの妻がモン (Hmong) 系アメリカ人だったように、「白人男性のナショナリストは、アジア系女性を(性的に)好む傾向がある」という[31]。国家政策研究所所長のスペンサー、『デイリー・ストーマー』創設者のアンドリュー・アングリン、オルタナ右翼のソーシャルメディアパーソナリティであるマイク・セルノヴィッチなどはアジア系女性と交際していたか、もしくは結婚している[31]。特に、スペンサーは「アジア系には何かがある。可愛いし、頭もいいしね」と述べており、白人がそれ以外の人種より優れているという白人至上主義・反多文化主義を掲げ、非白人の排斥を叫ぶオルタナ右翼が「アジア系女性を好む」のは奇妙であるが、『ニューヨーク・タイムズ』によると「そこに矛盾はない」という[31]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ Peoples, Steve (July 24, 2016). “Energized white supremacists cheer Trump convention message”. The Associated Press (Cleveland, OH)
- ^ Wines, Michael; Saul, Stephanie (July 5, 2015). “White Supremacists Extend Their Reach Through Websites”. The New York Times
- ^ Gelin, Martin (November 13, 2014). “White Flight: America’s white supremacists are ignored at home. So they are looking to start over with a little help from Europe’s far right”. Slate (Budapest, Hungary)
- ^ “Twitter上でネオナチのプロパガンダツイートの隣に大企業の広告が表示されているとの指摘”. GIGAZINE (2023年6月19日). 2023年6月20日閲覧。
- ^ Ehrenfreund, Max (November 21, 2016). “What the alt-right really wants, according to a professor writing a book about them”. Washington Post November 24, 2016閲覧。
- ^ Posner, Sarah (October 18, 2016). “Meet the Alt-Right 'Spokesman' Who's Thrilled With Trump's Rise”. Rolling Stone
- ^ Lombroso, Daniel; Appelbaum, Yoni (November 21, 2016). “'Hail Trump!': White Nationalists Salute the President-Elect” (Includes excerpted video). The Atlantic January 23, 2017閲覧。
- ^ Spencer, Richard (August 6, 2008). “The Conservative Write”. Taki's Magazine
- ^ “Alternative Right”. Southern Poverty Law Center November 22, 2016閲覧。
- ^ Wallace-Wells, Benjamin (May 5, 2016). “Is the Alt-Right for Real?”. The New Yorker
- ^ a b Goldstein, Joseph (November 20, 2016). “Alt-Right Exults in Donald Trump's Election With a Salute: 'Heil Victory'”. The New York Times
- ^ David Corn (2016年11月14日). “Here's Why It's Fair—and Necessary—to Call Trump's Chief Strategist a White Nationalist Champion”. Mother Jones. 2017年3月14日閲覧。
- ^ Stahl, Jeremy (2016年11月21日). “Meet the Neo-Nazi Steve Bannon’s site described as a leading “Intellectual.””. Slate.com. 2016年11月26日閲覧。
- ^ “【米大統領選2016】白人至上主義者に聞く トランプ氏を応援する理由”. BBCニュース (2016年10月12日). 2020年11月22日閲覧。
- ^ “米「オルタナ右翼」 ナチス式敬礼で「トランプを称えよ!」”. BBCニュース (2016年11月23日). 2020年11月22日閲覧。
- ^ Barajas, Joshua. “Nazi salutes 'done in a spirit of irony and exuberance', alt-right leader says”. PBS NewsHour November 25, 2016閲覧。
- ^ “【米政権交代】トランプ氏、「オルタナ右翼」を非難 「否定する」”. BBCニュース (2016年11月23日). 2020年11月22日閲覧。
- ^ “「オルタナ右翼」指導者、二度殴られる 差別主義者への暴力は許されるのか議論に(動画)”. ハフポスト (2017年1月26日). 2020年11月22日閲覧。
- ^ “米フロリダ大で白人至上主義者が演説会、猛抗議で中止”. www.afpbb.com. 2020年11月22日閲覧。
- ^ “「ユダ公」「混血」と罵る白人至上主義者のアカウントが今も消えない理由 | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)”. Rolling Stone Japan (2019年11月12日). 2020年11月22日閲覧。
- ^ “Richard Spencer endorses Joe Biden; campaign swiftly disavows white nationalist” (英語). syracuse (2020年8月25日). 2020年10月26日閲覧。
- ^ Sheth, Sonam. “'Absolutely repugnant': Biden's campaign forcefully disavows an endorsement from neo-Nazi Richard Spencer”. Business Insider. 2020年11月22日閲覧。
- ^ Scott, Tristan (November 26, 2014). “Who is Richard Spencer?”. Flathead Beacon
- ^ Spencer, Richard B. (December 2, 2014). “Defending free expression”. Whitefish Pilot
- ^ Spencer, Richard B. (November 26, 2014). “Skiing With The Enemy”. Radix Journal
- ^ Nina Kouprianova. “About”. May 14, 2017閲覧。
- ^ Harkinson, Josh (October 27, 2016). “Meet The Dapper White Nationalist Who Wins Even If Trump Loses”. Mother Jones
- ^ “The Alt Right and Secular Humanism”. AltRight.com. 28 January 2017閲覧。 “McAfee: Are you religious? Do you support the Separation of Church and State? Spencer: I’m an atheist.”
- ^ “'We're Not Going Anywhere:' Watch Roland Martin Challenge White Nationalist Richard Spencer”. YouTube.com. 5 May 2017閲覧。 “Martin: Are you a Christian? Spencer: I’m an cultural Christian.”
- ^ RichardBSpencerの2016-01-20のツイート、2020年10月11日閲覧。
- ^ a b c “アジア系アメリカ人と交際するオルタナ右翼たち なぜアジア系女性は、白人至上主義者に好かれてしまうのか?”. クーリエ・ジャポン (講談社). (2020年6月19日). オリジナルの2020年6月21日時点におけるアーカイブ。