中山美穂のトキメキハイスクール
ジャンル | コマンド選択式アドベンチャー |
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対応機種 | ディスクシステム |
開発元 | スクウェアBチーム[1] 任天堂開発第一部 |
発売元 | 任天堂 |
プロデューサー | 横井軍平 |
ディレクター | 坂本賀勇[2] |
デザイナー | 坂口博信[3] 坂本賀勇[3] |
シナリオ | 坂本賀勇[2] |
プログラマー | 中村博史[4] 山本広人[4] |
音楽 | 植松伸夫[3] 今井利秋[4] |
美術 | 時田貴司[4] |
人数 | 1人 |
メディア | 青色ディスクカード(両面) |
発売日 | 1987年12月1日 [5] |
売上本数 | 販売:40万本[6] 書き換え:12万回[6] |
その他 | 型式:FSC-THSE |
『中山美穂のトキメキハイスクール』(なかやまみほのトキメキハイスクール)は、任天堂が1987年12月1日に発売したファミリーコンピュータ ディスクシステム用コマンド選択式恋愛アドベンチャーゲームである[5]。正式名称は『アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール』。
ディスクシステム用のネットワーク「ディスクファクス」対応作第3弾である本作は、アイドル歌手中山美穂とタイアップを行ったタレントゲームであると同時にアイドルを題材にした初のアドベンチャーゲーム。
ゲーム内容
[編集]システム
[編集]「はなす」「とる」などの一般的なコマンド選択のみならず、重要な会話シーンでは表情と台詞を同時に選択して会話を進める。表情は真面目・笑い・悲しみ・怒りの4種類から、台詞は場面ごとに画面に表示される候補の中から選択し、両方が一致していなければゲームオーバーとなる。また、場面によっては喜びの感情を込めた台詞を真顔で言わなければならなかったり、正解であってもゲームオーバーであるかのような展開となったりする。
本作のエンディングは途中の選択肢によってグッドエンドとベストエンドの2通りに分岐し、どちらに辿り着いたかによってディスクファクスで応募できるコースが異なった。グッドエンドではテレホンカード、ベストエンドではビデオテープをもらうことができた。
コマンド一覧
[編集]No. | コマンド名 | 解説 |
---|---|---|
1 | ばしょいどう | 別の場所に移動する。 |
2 | はなす | 登場人物と会話する。 |
3 | もちものみる | 所有物を確認する。 |
4 | わたす | 所有物を他の人に渡す。 |
5 | とる | 目的にカーソルを合わせ、取得する。 |
6 | みせる | 所有物を他の人に見せる。 |
7 | みる・しらべる | 周辺の物や人を確認する。 |
ディスクファクス対応作品として
[編集]本作はディスクシステム用のネットワーク「ディスクファクス」対応作第3弾で、専用の青ディスクを使用する。他の対応作はスコアやタイムを登録するランキングのための通信だったが、本作のみはゲームを終了させたことを登録することで景品が送られてくるものだった。また、ゲーム中に出てくる電話番号に電話をかけると先に進むためのヒントや中山美穂からのメッセージテープを聞けるテレホンサービスを実施した[7]。このテレホンサービスはゲームの発売直後に終了され、メッセージとヒントはゲームの後続でテキスト形式で表示されることになっている。
ディスクファクスイベントは、1987年12月19日から1988年2月29日まで開催され、抽選により8000人の青リボンマーク応募者はサイン入りテレホンカード(通常のエンディングでゲームをクリアした人向け)が当たり、他の8000人の赤リボンマーク応募者はサイン入りビデオテープ(真エンディングでゲームをクリアした人向け)が当たった。[8][9][10]。
物語
[編集]トキメキ学園の転入生である主人公は転校初日に学校の廊下で眼鏡をかけた女の子とぶつかり、主人公が大ファンであるスーパーアイドル中山美穂と似ていることに気づく。やがて、主人公はその女の子が本物の中山美穂だと知る。
登場人物
[編集]- 中山美穂
- 歌にドラマに大活躍中のスーパーアイドル。
- 高山みずほ
- 私立トキメキ学園の生徒で本作のヒロイン。メガネをかけており、おとなしくあまり目立たない生徒。
- 山村貞吉
- 主人公の隣の席の男子生徒。京都から転校してきたため、関西弁で話す。中山美穂の大ファンである。
- 清水エリカ
- トキメキ学園のマドンナ的存在で、「エリカ親衛隊」という取り巻きがいる。清水コンツェルンの一人娘で、父はトキメキ学園の理事長をしている。
- 辻正臣
- トキメキ学園一のプレイボーイ。
- 主人公のアニキ
- 主人公の兄として登場。かけだしのフリーカメラマン。
- 校長先生
- トキメキ学園の校長。
- 教頭先生
- トキメキ学園の教頭。
開発
[編集]任天堂ではトップ主導により『ファミコン少年探偵団』という後の『ファミコン探偵倶楽部』の元となる企画が進行しており、本作のディレクターを担当した坂本賀勇がその企画のゲームデザイン、ストーリーを書いていたところ、スクウェア(現スクウェア・エニックス)の社長である宮本雅史から「テレホンアドベンチャー」という電話を用いたアドベンチャーゲームの企画が持ち込まれ、それが元となって製作される事となった[2][11]。スクウェアのみでは資金面に無理があったため、任天堂に企画が持ち込まれたが、坂本が「どうせなら無名の声優さんより、名の通ったアイドルにしませんか」と提案したところ、社長の山内溥の命令で宮本から話を聞いていた岡田智が面白いと感じて採用した[2][12]。 スクウェアの坂口博信は当時アドベンチャーゲームに強い関心はあったもののアイドルには詳しくなかったが、アイデアとして実在のアイドルを登場させることでイベントの様に派手にした方が注目も集められるだろうという目論見もあったと語っている。
その後、当時すでに人気の高かった小泉今日子や南野陽子などはスケジュールが全く空いておらず、後発で人気が出ていた中山美穂のみ可能性がある状態であり、坂本は「僕としては中山さんクラスじゃないと絶対ダメ。妥協するとショボくなるから、と思い切りプッシュしました」と語っている[2]。また、代理店が「彼女は今お買得ですよ」と薦めてきた事もあり、中山に決定した[2]。
このゲームはわずか2週間で開発された[13]。また、開発の終盤には当時の主力スタッフだった坂口博信、植松伸夫、時田貴司が、『ファイナルファンタジー』の完成直後からそのまま参加していた[1]。
ゲーム内の表情を読み取って選択する部分に関しては、コマンド選択だけでなくあともう一歩の要素として追加されたものである[2]。 また、企画の段階から、NTTの協力を取り付けており、プレイヤーが電話番号を間違えても大丈夫な仕組みが用意されていたものの、発売後に任天堂の予想を超える件数の間違い電話が起こることとなった[注釈 1][14]。
しかし、本作の開発は難航し、坂本は「ディスクファクスで応募しようとかイベントも絡んでくるし、タレントさんにも気を使うし。万事うまく仕込めたとは言いづらいですね。本当はこんなこと言っちゃダメですけど。その欲求不満を爆発させる形で作ったのが『ファミコン探偵倶楽部』なんです」と語っている[2]。
また本作の開発へのサジェッションに糸井重里が招かれており、糸井がこの機に以前から用意していた企画書を宮本茂に見せたことで『MOTHER』の開発がスタートすることとなる[15]。
スタッフ
[編集]- 任天堂
- スクウェア
関連商品
[編集]- 中山美穂のトキメキハイスクール必勝ファンブック
- 1988年2月に宝島社から発売された攻略本。
- トキメキハイスクール 恋の学園祭大作戦
- 双葉社から発売されたゲームブック。中山美穂を登場させることができないため、ヒロインが架空の人物に置き換えられている。
反響
[編集]本作ではゲーム内で表示される番号に電話すると中山美穂からのメッセージを聞けるというサービスがあったが、間違い電話が頻発して任天堂への抗議が多数寄せられることとなった[注釈 2][注釈 1][17]。 このことについて、岡田智は2022年の講演の中で、売れすぎて失敗したと表現している[14]。
評価
[編集]評価 | ||||||||||
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- ゲーム誌『ファミコン通信』の「クロスレビュー」では、6・8・8・7の合計29点(満40点)になっている[21][18]。レビュアーの意見としては、「段階が進むごとに中山美穂のメッセージが電話で聞けるというのが新しい」、「ゲーム自体はまったくもって平凡」などと評されている[21]。
- ゲーム誌『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は以下の通りとなっており、17.40点(満25点)となっている[19]。
項目 | キャラクタ | 音楽 | 操作性 | 熱中度 | お買得度 | オリジナリティ | 総合 |
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得点 | 3.80 | 3.40 | 3.30 | 3.40 | - | 3.50 | 17.40 |
- ゲーム誌『ユーゲー』では、「当時、中山美穂は人気アイドル。ミポリンがゲームになっただけでもすごいのに、しかも電話で声が聞ける。その衝撃は大きかった」、「学園もので恋愛という切り口は、のちの革命的ソフト『ときメモ』につながるルーツとも言えるし、また、電話を使った大掛かりな仕掛けは斬新そのもの。会話をする際に、自分の表情を選ぶというシステムも新しかった」と評している[20]。
関連項目
[編集]リサの妖精伝説 『トキメキハイスクール』に続き、ゲーム中のメイン登場人物としてアイドルを実名で登場させたディスクシステムゲームソフトの第2弾。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 任天堂 (2010年8月26日). “社長が訊く 坂口博信×坂本賀勇 1.23年前の縁”. 2010年8月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 多根清史「『メトロイド』を創った男」『CONTINUE』Vol.10、太田出版、2003年6月18日、124 - 144頁、ISBN 9784872337709。
- ^ a b c Ashcraft, Brian (August 26, 2010). “The Idol Game Metroid's Co-Creator Made With Final Fantasy's Creator”. Kotaku. Gawker Media. May 9, 2013閲覧。
- ^ a b c d “Game Credits”. March 2, 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。May 9, 2013閲覧。
- ^ a b “任天堂「ファミリーコンピュータ」 ここまで増えたゲームソフト ファミコンソフト455種”. ゲームマシン (336): pp. 10-11. (1988年7月15日) 2022年8月10日閲覧。
- ^ a b 「ディスクライター 書き換えゲーム全カタログ」『ファミリーコンピュータMagazine』第5巻第12号、徳間書店、1989年7月7日、46頁。
- ^ “最近はめっきり見なくなった、タレントが関わってるファミコンソフト特集!ちょっぴりカオスでクセも強いけど、愛すべき名作たち”. インサイド (2020年10月4日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ “[www.videogameden.com/fds/extra/nak_f.pdf 中山美穂のトキメキハイスクールのチラシ]” (pdf). 2022年1月18日閲覧。
- ^ “ファミコンED倶楽部第一支部”. 2022年1月18日閲覧。
- ^ “番外編アイドルホットライン中山美穂のトキメキハイスクール 「特製ビデオテープ」”. 2022年1月23日閲覧。
- ^ “今だから振り返りたい、アイドルゲームの先駆け『中山美穂のトキメキハイスクール』の意義”. Real Sound|リアルサウンド テック. 2022年8月23日閲覧。
- ^ “元任天堂・岡田 智氏の独立独歩 後編 ひたすらに意志を貫いたゲームボーイ&ゲームボーイアドバンス開発 「ビデオゲームの語り部たち」:第28部”. 4Gamer.net. Aetas (2022年3月29日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ 『ニンテンドードリームVol.119』アンビット、2004年9月21日。
- ^ a b c “ゲームボーイの生みの親・岡田 智氏が任天堂での開発者時代を語った「黒川塾 八十八(88)」聴講レポート”. 4Gamer.net. Aetas (2022年7月20日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ “若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春『MOTHER』編”. 電ファミニコゲーマー (2017年10月26日). 2018年8月8日閲覧。
- ^ 【やじうまWatch】「中山美穂のトキメキハイスクール」にいまさら電話した結果をまとめたエントリーが話題に、INTERNET Watch(Impress Watch)、2015年3月20日 6:00。
- ^ “中山美穂のトキメキハイスクールのテレフォンメッセージ一覧”. web.archive.org. 2022年1月22日閲覧。
- ^ a b “アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール まとめ [ファミコン]/ ファミ通.com” (日本語). KADOKAWA CORPORATION. 2015年4月12日閲覧。
- ^ a b 「5月24日号特別付録 ファミコンディスクカード ゲームボーイ スーパーファミコン オールカタログ」『ファミリーコンピュータMagazine』第7巻第10号、徳間書店、1991年5月24日、47頁。
- ^ a b 「ユーゲーが贈るファミコン名作ソフト 100選」『ユーゲー 2003 Vol.07』第7巻第10号、キルタイムコミュニケーション、2003年6月1日、47頁、雑誌17630-2。
- ^ a b 『ファミコン通信』第26号、アスキー、1987年12月25日。