交尾
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概要
[編集]殆どの場合オスが自分の配偶子である精子(厳密には精子を含んだ精液)をメスの体内に送り込み、メスの体内で卵子と受精させる有性生殖を目的に行われるが、動物の種によってはタツノオトシゴのように逆の例(メスが卵をオスの体内に送り込む)もある。つなぎ合わせる部分は一般に、交尾器、交接器と呼ばれる特殊に分化した生殖器官で、配偶子を確実に送り込めるように、一方の交尾器が突起状、もう一方の交尾器がそれを受けるような窪みや筒状、穴状になっていることが多い。交尾器は体の後ろのほうにあることが多いので、交尾のときには体の後ろの部分を互いにくっつけ合っているように見えることから、「交尾」の名がある。哺乳類の大半は、後ろ足で立ち上がったオスがメスの尻に掴まる姿勢、もしくはうつ伏せのメスの体にオスが覆いかぶさる姿勢で、ペニスをメスの膣で動かす反復運動から射精に至って交尾の終了となる。なお、交尾開始からオスの射精までの時間は、生き物によってバラつきがある(→詳細は後述の”交尾にかかる時間”を参照)。
ヒトの場合には交尾という言葉を用いず、性交と呼ばれ、また性的興奮を伴うものはセックスと表現されることがほとんどである。多くの哺乳類と同様に、女性生殖器へ挿入した勃起状態の男性生殖器をピストン運動することで、膣内の圧迫と膣壁との摩擦で亀頭冠が刺激を受け、男性のオーガズムにより尿道外口から勢いよく膣内に精液が放出される。ヒトの性交には、体内受精の目的以外にも愛情の表現、性的快感を得る行為などの意味があるが、これは他の動物でも同様である。動物がオーガズムを感じているかは明らかではないが、いくつかの哺乳類ではオーガズムと見られる振る舞いが観察される[1]。ネコ科の動物では交尾が刺激となって排卵する。マウスのように交尾の刺激によって妊娠が維持されたり、ボノボや一部のネズミのように交尾行動がつがいの絆を深めるように作用する例もある。このようにヒトでも他の動物でも交尾には複数の機能と直接的な動機があり、繁殖はその結果として起こる。多くの生物が子孫を遺す種の生存本能から交尾するのに対し、ヒト同士は繁殖目的以外でも性交を行なうため、男性が女性器から陰茎を抜いて射精する膣外射精といった、他の哺乳動物に見られない受精の回避行動も取る。また、最初から妊娠を目的とせず、女性器以外の開口部である肛門奥に陰茎を挿入し、オーガズムに達した男性が女性の直腸内で射精を迎える疑似性交もヒト特有の性行為である。
全ての動物の祖でもある水棲動物は、交尾を行わないことが多い。すなわち精子を体外に放出するのみで、あとは精子が自力で水中を泳ぎ、あるいは水流の助けで卵側までたどり着き受精する(体外受精)。しかし精子や卵子などの配偶子は、一般に乾燥には非常に弱く、また小型で(花粉や種子のように)空気中を移動する手段をもたない。そこで、配偶子を一方の体内に直接送り込む体内受精が発達したと考えられている。
交尾・交接行動と各生物群
[編集]生物群は大分して交尾行動を行うものと交接行動を行うものに分類できる。
交尾行動を行う主な生物群
[編集]交尾行動を行う主な生物群は下記の通り。
交接行動を行う生物群
[編集]交接行動を行う主な生物群は下記の通り。
特殊な例
[編集]- ビワアンコウやミツクリエナガチョウチンアンコウは雄が雌の個体を発見するとその体に噛み付いて酵素によって雌の体と血管レベルで一体化し、雌からの血液によって生きながらえる。その後ほとんどの臓器は退化して雌に吸収されたような状態になるが精囊は残り、生殖行為は一体化した状態で行われる。
交尾・交接にかかる時間や回数
[編集]一回の交尾・交接にかける時間は生物の種類によって異なる。
- チンパンジーやマーモセットの一部は一回にかかる平均時間が10秒にも満たないとされる。
- ガラガラヘビは一回に平均して22-23時間かけるとされる。
- オオカミは一回の挿入している時間が約20-30分またはそれ以上になり、1日あたり1~数回の交尾を行う。
- ライオンは一回の挿入している時間が約10-20秒で、1日あたり約20-40回の交尾を行うことが知られている。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 上村佳孝、三本博之「キイロショウジョウバエ種群における交尾器形態の進化--その機能研究に関するレビュー (生物進化研究のモデル生物群としてのショウジョウバエ)」『低温科学』第69巻、北海道大学低温科学研究所、2011年、39-50頁、NAID 40018938267。