宇敷赳夫
宇敷 赳夫(うしき たけお、1891年(明治24年)7月24日[1] - 没年不明)は兵庫県出身の土木技術者。台湾総督府の技師として、日本統治時代の台湾で様々な公共建築物を手がけた。
経歴
[編集]明治24年に姫路市で出生[1]、本籍地は同県神戸市上筒井通[1]。兵庫県立第一神戸中学校(現在の兵庫県立神戸高等学校)を経て[1]、その後の経歴は以下のとおり。
- 1916年(大正5年)
- 1917年(大正6年)7月31日 台湾総督府民政部土木局技手[2][3]。
- 1923年(大正12年)
- 1925年(大正14年)4月13日 高等官六等[2]
- 1926年(大正15年)8月28日 台南州内務部土木技師[2][3]。
- 1927年(昭和2年)12月27日 高等官五等[2]
- 1929年(昭和4年)12月14日 総督府交通局技師、鉄道部改良課工事係[2][3]。
- 1930年(昭和5年)12月24日 高等官四等[2]
- 1931年(昭和6年)7月30日 改良課松山建築派出所主任兼務[2]
- 1932年(昭和7年)1月13日 鉄道部工務課兼務[2][3]。
- 1933年(昭和8年)7月13日 鉄道部自動車課庶務係兼務[2][3]。
- 1934年(昭和9年)3月31日 高等官三等[2]
- 1936年(昭和11年)6月16日 工務課建築係長兼改良課工事係兼自動車課庶務係[2]
- 1937年(昭和12年)4月1日 庶務課保険係兼務[2]
- 1939年(昭和14年)3月9日 建築改良課工事係長、台北改良事務所長、自動車課庶務係、庶務課福利係兼務[2]
- 1941年(昭和16年)5月24日 工業研究所技師、高等官二等、同日付で依願免官[2][4]。
総督府の技師として以外にも当時の民間組織『台湾建築會』で井手薫などとともに常議員を務めていた[5](p69)。
受章
[編集]位階
- 従七位 1923年(大正12年)8月10日[6]
- 正七位 1925年(大正14年)5月10日[2]
- 従六位 1928年(昭和3年)2月2日[7]
- 正六位 1931年(昭和6年)2月16日[8]
- 従五位 1934年(昭和9年)5月15日[9]
- 正五位 1939年(昭和14年)6月1日[10]
- 従四位 1941年(昭和16年)6月9日[11]
勲等・その他
主な作品
[編集]関東大震災(1923年)や新竹台中地震(1935年)を経た耐震強化など、当時の設計思想の変化を盛り込んだ簡素な設計を多く採用している。多くの建築物が木造建築から鉄筋コンクリートで再建される課程で宇敷が担当した物件は以下の通り。下記の年代は建築物の竣工年。
- 1921年ごろ - 嘉義郡役所右翼部(現存せず)[16]
- 1925年 - 新竹州図書館(市定古蹟。戦後は新竹市立図書館を経て1984年まで新竹県立図書館。2018年より修復事業着手[17][18])
- 1928年 - 北港公会堂[5](p69)[19](現存せず。戦後は中山堂を経て跡地は中華郵政北港郵局[20])
- 1933年
- 1934年 - 2代目新営駅(現存せず)[5](p69)
- 1935年 - 松山鉄道工場(2代目台北鉄道工場、戦後の台北機廠、国定古蹟)[5](p69)
- 1936年 - 2代目台南駅(国定古蹟)[21]
- 1941年 - 3代目台北駅(現存せず)[5](p69)[22]
- 1943年 - 専売局嘉義支局北社尾葉菸草再乾燥工場(市定歴史建築。戦後の嘉義菸葉廠)[23]
震災復旧に関わったとされている建築物
[編集]鉄道部工務課の小山三郎の指揮の元で建築係長として[24](p52)、以下の駅舎再建に携わったとされている[24](p69)。
ギャラリー
[編集]嘉義郡役所 | 新竹州図書館 | 台鉄二水駅 |
竣工間際の台北鉄道工場 | 台鉄嘉義駅前站 | 台鉄台南駅前站 |
台鉄泰安旧駅 | 3代目台鉄台北駅 |
脚注
[編集]- ^ a b c d e 台灣人士鑑. 台湾新民報社. (1937年). p. 21 國家圖書館 臺灣記憶
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 「宇敷赳夫(任工業研究所技師;二等;依願免本官;賞與)」『昭和十六年進退原議公文類纂』國史館台湾文献館
- ^ a b c d e f 唐澤信夫 (1937-06-23). 臺灣紳士名鑑. 新高新報社. p. 171 國家圖書館 臺灣記憶
- ^ “鉄道局技師滝淵実烈外四名任免並官等陞叙ノ件○台湾総督府交通局技師宇敷赳夫任免、陸軍教授秋田玄務官等陞叙並免官、判事海老原一外一名官等陞叙”. 国立公文書館 (1941年5月24日). 2020年2月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g “國定古蹟臺南火車站之建築歷史研究”. 臺鐵資料季刊 TAIWAN RAILWAY. JOURNAL. 台灣鐵路管理局. pp. 61-78. ISSN 1011-6850 卓銀永、柏雅馨、卓盈劭.
- ^ 『官報』第3310号「叙任及辞令」大正12年8月11日
- ^ 『台湾総督府報』第301号「叙任及辞令」昭和3年2月4日
- ^ 『官報』第1246号「叙任及辞令」昭和6年2月26日
- ^ 『台湾総督府報』第2101号「叙任及辞令」昭和9年5月17日
- ^ 『官報』第4325号「叙任及辞令」昭和14年8月7日
- ^ 『台湾総督府報』第4211号「叙任及辞令」昭和16年6月11日
- ^ 『台湾総督府報』第1675号「叙任及辞令」昭和7年11月22日
- ^ 『台湾総督府報』第2824号「叙任及辞令」昭和11年11月22日
- ^ 『台湾総督官報』第5152号附録「支那事変文官等行賞」昭和19年3月18日
- ^ 『官報』第4945号附録「辞令二」昭和18年7月8日
- ^ 嘉義人的有驚無京之歎──重繪嘉義郡役所”. 天下雑誌獨立評論. 2020年2月1日閲覧。 魚夫. “
- ^ “閒置近34年 市定古蹟新竹州圖書館私產將活化”. 自由時報. (2018年6月21日)
- ^ “日治時期公共圖書館建築設計變遷”. 臺灣學通訊 (国立台湾図書館) (第110期/公共建築(三之一)─官署建築): 17. ISSN 1999-1851 . 陳柏良 (2019年3月).
- ^ 林裕昌, 松村秀一, 井上朝雄「日本と台湾におけるRC構法の土着化過程に関する比較研究」『日本建築学会計画系論文集』、日本建築学会、2002年11月、159-165(p.163)、doi:10.3130/aija.67.159_5、ISSN 1340-4210。
- ^ 北港地名起源”. 台灣社區通. 中華民国文化部. 2020年2月22日閲覧。 雲林縣 北港鎮 笨港媽祖文教基金會. “
- ^ a b 魚夫 (2017年4月18日). “台灣人的火車小史——七大經典火車站賞析 (上)”. 民報 Taiwan People News
- ^ 片倉佳史 (2011年5月). “台北駅周辺の歴史”. 交流 (公益財団法人日本台湾交流協会) (vol.842): 頁35. ISSN 0289-9191 .
- ^ 舊嘉義菸葉廠歷史沿革調查研究計畫 (PDF) (Report). [[中国科技大学 (台湾)|]]. p. 16. 2020年2月1日閲覧。 閻亞寧 (April 2016).
- ^ a b 臺中縣縣定古蹟縱貫鐵路舊山線泰安車站調查研究暨修復計畫. 臺中縣文化局. pp. 69-70. ISBN 9789860108538 劉可強 (2003年12月).