西鶴諸国ばなし
西鶴諸国ばなし(さいかくしょこくばなし)は、江戸時代の浮世草子作品。井原西鶴作・画。貞享2年(1685年)正月、大坂の池田屋三郎右衛門刊。大本5巻5冊、各巻7話の全35話から成る。目録題「近年諸国咄/大下馬」[1]。
概要
[編集]目録題に「大下馬」とあるのは、宇治大納言隆国が旅人の足をとどめて聞き書きして『宇治拾遺物語』を編んだという言い伝えにならって、日本中の人たちを下馬させて聞き書きした物語の意味とされる。本作品は、全国の珍談奇談を扱った諸国話形式の説話文学と位置づけられ[2]、人間・動植物・異類・怪異・民間伝承・当世事件など、様々な素材を題材としている。
暉峻康隆は「西鶴のユニークな人間観によって、かれこれと超自然の怪奇談を扱いながらも、その底に人間性のおかしさや怪しさを秘めたフレッシュな、「近年諸国咄」たりえたのである」と評している[3]。一方で、「説話文学なるがゆえに底の浅い作品が多く、文学的には、低調であることは否定できない」とする評価もある[2]。
内容
[編集]巻1
[編集]- 公事は破らずに勝つ 奈良の寺中にありし事 知恵
- 見せぬ所は女大工 京の一条にありし事 不思議
- 大晦日は合わぬ算用 江戸の品川にありし事 義理
- 傘の御託宣 紀州の掛作にありし事 慈悲
- 不思議の足音 伏見の問屋町にありし事 音曲
- 雲中の腕押し 箱根山熊谷にありし事 長生
- 狐の四天王 播州姫路にありし事 恨み
巻2
[編集]- 姿の飛び乗物 津の国の池田にありし事 因果
- 十二人のにわか坊主 紀伊の国淡島にありし事 遊興
- 水筋のぬけ道 若狭の小浜にありし事 報い
- 残る物とて金の鍋 大和の国生駒にありし事 仙人
- 夢路の風車 飛騨の国の奥山にありし事 隠里
- 楽しみの男地蔵 都北野の片町にありし事 現遊
- 神鳴の病中 信濃の国浅間にありし事 欲心
巻3
[編集]- 蚤の籠抜け 駿河の国府中にありし事 武勇
- 面影の焼け残り 京上長者町にありし事 無常
- お霜月の作り髭 大坂玉造にありし事 馬鹿
- 紫女 筑前の国博多にありし事 夢人
- 行末の宝船 諏訪の湖にありし事 無分別
- 八畳敷の蓮の葉 吉野の奥山にありし事 名僧
- 因果のぬけ穴 但馬の国片里にありし事 敵討
巻4
[編集]- 形は昼の真似 大坂の芝居にありし事 執心
- 忍び扇の長歌 江戸土器町にありし事 恋
- 命に替わる鼻の先 高野山大門にありし事 天狗
- 驚くは三十七度 常陸の国鹿島にありし事 殺生
- 夢に京より戻る 泉州の堺にありし事 名草
- 力なしの大仏 山城の国鳥羽にありし事 大力
- 鯉の散らし紋 河内の国内助が淵にありし事 漁師
巻5
[編集]- 提灯に朝顔 大和の国春日の里にありし事 茶の湯
- 恋の出店 江戸の麹町にありし事 美人
- 楽しみの麻姑の手 鎌倉の金沢にありし事 生類
- 闇の手形 木曽の街道にありし事 横道
- 執心の息筋 奥州南部にありし事 幽霊
- 身を捨てる油壺 河内の国枚岡にありし事 後家
- 銀が落としてある 江戸に此仕合せありし事 正直