騎馬像
騎馬像(きばぞう、英:equestrian statue)は、馬に騎乗した人物を表した肖像のこと。多くは青銅製であるが、木・石・陶器などを素材とした作品もある。
なお、西洋における「騎馬像」はモニュメンタルな彫像を指すのが通例であるが、日本語の「騎馬像」には小品の彫刻や絵画作品なども含まれる。それらについては下の「絵画における騎馬像など」の項で説明する。
概要
[編集]人類は木・石・銅・青銅・陶器などを使ってさまざまな像を作ってきた。そのうち、馬に乗った像のことを「騎馬像」といっている。多くは青銅でできている。
騎馬像の古いものとしては、古代ローマ時代に作られた、現在ローマのカンピドリオ広場にあるマルクス・アウレリウスのものがある。中世には騎馬像はあまり作られなかったが、ローマ時代から千年を経たルネサンス期にイタリアで初めて作られた騎馬像、ガッタメラータ将軍騎馬像(1450年、ドナテッロ作)などに多大な影響を与えたといわれている。
騎馬像は近代国家が始まった西欧で、王・政治家・軍人のもの多く作られた。特に絶対君主制のもとで多く作られて、フランスのパリにルイ14世のもの、ロシアのサンクトペテルブルクにピョートル大帝のもの(別名青銅の騎士)などが、おそらく世界でもっとも有名な騎馬像であろう。
日本では明治時代も後半、19世紀の末になって政治家や軍人、武将の騎馬像が作られるようになり、高村光雲、新海竹太郎、北村西望などの著名な彫刻家も製作している。
20世紀前半、新京(現在の長春)に設置した児玉源太郎の騎馬像(北村西望作、1938年)など、併合後の朝鮮、租借地・大連、満州帝国などに設置された騎馬像は終戦時にすべて取り壊され、また東京・三宅坂に設置した寺内正毅元帥の騎馬像(北村西望作、1923年)[1]などは、1943年の銅像供出で鋳つぶされた。
20世紀後半は、騎馬の美を強調して、平和的な、また国際的な芸術作品が多く作られている。
中国では、唐三彩に騎馬像がしばしばモチーフとして用いられ、その後は芸術的な彫像として騎馬像および騎馬像群が作られた例が多いが、一般的に屋外に展示されていま我々が一般に「騎馬像」と呼ぶものは少なく、ただし20世紀後半になりいくつか作られている。
なお、ほとんどが男性の像であるが、女性の像は日本の巴御前、中国の王昭君、フランスのジャンヌ・ダルク、イギリスのエリザベス2世などのものがある。馬上の人物の死に方(戦死、病死など)によって馬の足の上げ方が異なるという説があるが、都市伝説の類に過ぎない。
世界の主な騎馬像
[編集]地域別、国別、都市別の五十音順。
アジア
[編集]日本
[編集]北海道・東北地方
[編集]- 伊達政宗(仙台市)
- 最上義光(山形市)
関東地方
[編集]中部地方
[編集]- 新潟県上越市
- 石川県金沢市
- 福井県福井市
- 長野県長野市
- 長野県上田市
- 長野県諏訪郡下諏訪町
- 金刺盛澄(霞ヶ城跡)
- 長野県木曽郡木曽町
- 幼少の巴御前(日照山・徳音寺)
- 静岡県浜松市
- 岐阜県岐阜市
- 岐阜県大垣市
- 岐阜県郡上市
- 愛知県名古屋市
- 前田利家(荒子駅前)
- フランチェスコ・スフォルツァ将軍 (1989年、スフォルツァ騎馬像)
関西地方
[編集]中国地方
[編集]- 山県有朋(萩市)
- 毛利敬親(山口市)
- 高杉晋作(下関市)
四国地方
[編集]九州・沖縄地方
[編集]付:永久にまたは一時的に破壊された騎馬像
[編集]- 児玉源太郎の騎馬像(北村西望作、1938年、満州帝国・新京)は、終戦時に取り壊された。
- 寺内正毅元帥(北村西望作、1923年、東京・三宅坂)は、1943年の銅像供出で鋳つぶされた。
- 聖徳太子(兵庫県神戸市・湊川公園)は、阪神・淡路大震災で聖徳太子部分が失われた。
中国
[編集]- 黒龍江省阿城市
台湾
[編集]- チンギス・カンの銅像(フフホト)
朝鮮・北(朝鮮民主主義人民共和国)
[編集]モンゴル
[編集]- ウランバートル
- エレデネ村
- チンギス・カンの銅像(エレデネ村)
インド
[編集]- プラタープ・シング
アフリカ
[編集]中南米
[編集]- メキシコ
- メキシコシティ
- スペイン王カルロス4世
- ホセ・デ・サン・マルティン
- メキシコシティ
北米
[編集]- ユリシーズ・グラント(ワシントンD.C.)
オセアニア
[編集]ヨーロッパ
[編集]- ウクライナ
- ドイツ
- フランス
- ロシア
- サンクトペテルブルク
- モスクワ
- ユーリー・ドルゴルーキー (トヴェルスカヤ広場)
- 聖ゲオルギー (マネージュナヤ広場)
- バグラチオン将軍(クトゥーゾフ通り)
- クトゥーゾフ将軍(クトゥーゾフ通り)
- ジューコフ元帥 (マネージュ広場 (モスクワ))
絵画における騎馬像など
[編集]- 英国
- スキタイ(現在のウクライナ南部)
- スキタイ騎馬像
- 中国
- 『儀礼用甲冑を着けた乾隆帝』(ジュゼッペ・カスティリオーネ画)
- 兵馬俑など各地で出土する騎馬像、古代から現在まで続く民間芸術としてのおもに陶器の騎馬像など
- 日本
- フランス
- 『ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト』(ダヴィッド画、1801年、ウィーン・美術史美術館所蔵)
- ロシア
- 『馬上のクトゥーゾフ将軍』(エルミタージュ博物館所蔵)
- スキタイ騎馬像(紀元前300年頃、パジリク古墳)
- 『儀礼用甲冑を着けた乾隆帝』
- 『ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト』
脚注
[編集]- ^ “三宅坂の今昔 渡辺崋山、寺内正毅”. 福祉新聞. 2019年10月28日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 全国銅像閲覧所 - archive.today(2013年4月27日アーカイブ分)
- 日本の銅像リスト(騎馬像を含む)
- 竹中銅器 など