DART (探査機)
DART | |
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ディディモスと衛星ディモルフォスへ接近するDARTの想像図 | |
所属 | NASA / JHUAPL |
公式ページ | https://dart.jhuapl.edu |
状態 | 小惑星に衝突成功 (実験結果評価中) |
目的 | 小惑星の軌道変更実験 |
打上げ場所 | ヴァンデンバーグ空軍基地 |
打上げ機 | ファルコン9 |
打上げ日時 | 2021年11月24日 |
最接近日 | 2022年9月26日 |
衝突日 | 2022年9月26日 |
物理的特長 | |
本体寸法 | 1.2 m × 1.2 m × 1.3 m |
最大寸法 | 12.5 m(ソーラーパネル展開幅) |
質量 | 600 kg |
主な推進器 | キセノンイオンエンジン NEXT-C |
観測機器 | |
DRACO | 口径208 mm望遠カメラ |
DART(Double Asteroid Redirection Test:ダート)はNASA(アメリカ航空宇宙局)によって実施された、小惑星が地球に衝突する将来的なリスクに備え、宇宙機を衝突させて小惑星の軌道変更を実験するミッションである。2021年11月24日[1]に打上げられ、2022年9月26日23時16分 (UTC)、ターゲットである二重小惑星の衛星ディモルフォスへの衝突に成功した[2]。
概要
[編集]地球に衝突し重大な災害を生じる可能性がある地球近傍天体は、その大きさが140 m以上のものに限っても2万5000個が存在すると推定されており[3]、NASAは2016年にPDCO(Planetary Defense Coordination Office、地球防衛調整局)を新設し、小惑星の検出と脅威評価およびその対策の検討に当たっている。現在そのプログラムの1つとして進められているDARTは、宇宙機を小惑星に衝突させてその軌道変更が可能であることを実証する史上初のミッションである。NASAの支援を受けたJHUAPL(ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所)によって設計と製造が行われており、2018年8月にNASAの承認を得て最終設計と組立段階に移行した[4]。本ミッション総費用は3億3000万ドルである。
2021年11月24日にSpaceXのファルコン9によって打上げられたDARTは[5]、キセノンガスを推進剤とするソーラー電気推進により約10か月で二重小惑星ディディモスへ到達する。ギリシャ語で「双子」を意味するディディモスは直径780メートルの主星ディディモスと1.18 kmの距離を置いてそれを周回する直径170 mの衛星ディモルフォス(ディモーフォスとも、初期には非公式にディディムーン、Dydymoonとも呼ばれた)からなり、DARTはディモルフォスを標的とした自律誘導を行い、相対速度 6 km/s で衝突した。DARTはASI(イタリア宇宙機関)の提供による小型の宇宙機LICIACubeを搭載しており、DART本体の小惑星衝突前にこれを分離してディモルフォスに衝突クレーターが生成される瞬間の撮影に使用する。
衝突実験を行うディモルフォスは、当初はディディモスBと呼ばれていたが、DART計画に関わるアリストテレス大学の研究者が提案した「2つの形態」を意味するディモルフォスに変更された。衝突実験により軌道が変化し、2つの形態を見せることとなるという意味が込められている[6]。
衝突実験
[編集]衝突の2か月前に距離3200万キロメートルから主星ディディモスを搭載カメラに捉えたDARTは軌道修正を行い[7]、衝突の15日前に2台の小型カメラを搭載したLICIACubeを分離[8]、さらに衝突の数時間前には自律誘導に切り替えた。2022年9月26日23時16分(UTC)、DARTは目標であるディモルフォスへの衝突に成功[9]。衝突時点で地球とのディディモスの距離は1100万キロメートルで、衝突実験の結果は今後地球上の望遠鏡から観測と分析が進められる。DARTの質量600キログラムの衝突によってディモルフォスの公転周期は11時間50分から約10分短縮されると見積もられており、NASAでは73秒以上の短縮を成功要件としている。また衝突によってディモルフォスには直径20メートルのクレーターが生成されたと推定されている[10]。 10月11日実験結果を発表した。地球上の望遠鏡での観測により、衝突前の公転周期11時間55分であったが衝突後軌道が変わり11時間23分となり32分短くなった。実験前1分13秒以上短くなれば成功と判断していたが、その値を25倍以上公転周期を短縮し実験は成功とされた [11]。
AIDA計画
[編集]国際協力の枠組みとしては、DARTは2011年に開始されたNASAとESA(ヨーロッパ宇宙機関)の共同計画AIDA(Asteroid Impact and Deflection Assessment)を構成する2基の宇宙機の1基である。NASAのDARTが2022年にディモルフォスへの衝突実験を行った後、2023年に打ち上げるESAの探査機Heraが2026年にディディモスへ到着し、DARTの衝突クレーターを詳細に観測する計画となっている[12]。当初はESAが担当する大型の探査機AIMが先行して打ち上げられ、NASAの担当する衝突実験を小惑星周回軌道から観測する構想であったが、その後AIMはキャンセルされ、衝突実験の観測は地上の望遠鏡を使用して行われることとなった。
ギャラリー
[編集]映像外部リンク | |
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ATLASから観測されたDARTとディモルフォスの衝突時の映像 - ATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム) |
- 衝突する直前に撮影されたディモルフォスの表面
- DARTの衝突までの最後の5.5分間のタイムラプス動画
脚注
[編集]- ^ “Double Asteroid Redirection Test (DART) Mission”. NASA (2021年6月5日). 2021年6月30日閲覧。
- ^ “NASAの無人探査機、小惑星ディモルフォスに体当たり…軌道変えたか確認へ”. 読売新聞. (2022年9月27日) 2022年9月27日閲覧。
- ^ “Near-Earth Object Observations Program”. PDCO Homepage. (2019年3月28日) 2019年4月30日閲覧。
- ^ “APL-Led Asteroid-Deflection Mission Passes Key Development Milestone”. JHUAPL Homepage. (2018年8月30日) 2019年4月30日閲覧。
- ^ “NASA、小惑星に衝突させて軌道を変える探査機「DART」の打ち上げに成功 ミッションは来年9月頃”. Reuters. (2021年11月26日) 2022年9月27日閲覧。
- ^ “小惑星に衝突させる宇宙船11月に打ち上げ、軌道変更実験実施へ NASA”. CNN. (2021年10月6日) 2021年10月6日閲覧。
- ^ “NASA’s DART Spacecraft Gets First Look at Binary Asteroid Didymos”. Sci.News. (2022年9月7日) 2022年9月27日閲覧。
- ^ “DART’s Small Satellite Companion Takes Flight Ahead of Impact”. NASA. (2022年9月15日) 2022年9月27日閲覧。
- ^ “NASA's DART spacecraft hits target asteroid in first planetary defense test”. Reuters. (2022年9月27日) 2022年9月27日閲覧。
- ^ “NASA crashes DART spacecraft into asteroid in world's 1st planetary defense test”. Space.com. (2022年9月27日) 2022年9月27日閲覧。
- ^ 2022年10月12日読売新聞夕刊4版11面小惑星に探査機ぶつけ、軌道変更に成功…「天体の衝突から地球を守る」実験で歴史的成果
- ^ “ESA plans mission to smallest asteroid ever visited”. ESA Homepage. (2019年2月4日) 2019年4月30日閲覧。