アバンギャルド
アバンギャルド、または、アヴァンギャルド(仏: avant-garde)[1]、漢語表現で「前衛」と呼ばれているものについて解説する。
概要
[編集]フランス語でもともと「前衛部隊[† 1]」を指す語であり「最先端に立つ人」、芸術の文脈においては、《革新的な試み》や《実験的な試み》を指すようになった。
美術・音楽・映画・演劇・舞踏・文学・書道・生け花など、各分野で「アバンギャルド」と呼ばれる表現が存在する。漢字で表現する場合は「前衛」とし「前衛芸術」「前衛美術」「前衛音楽」「前衛文学」等の用語・概念がある。
「アバンギャルド」がもともと軍事用語を引用したことからも「何かへの攻撃の先頭に立つ」というような、政治的ニュアンス、挑戦的な姿勢を示す言葉である(例えば、旧世代に属する芸術、保守的な権威、資本主義体制など、様々なものへの挑戦する姿勢、戦いを挑む気概などを含んでいるものを指す用語・概念である)。
政治的ニュアンスを含んだ言葉としての最初の使用例はアンリ・ド・サン=シモン[2]の『新キリスト教』(1825年)とされている。ロシア革命前後に起こったロシア・アヴァンギャルド[3]は、革命を象徴する芸術活動として活発な活動を行った。
1960年代がアバンギャルドの全盛期であった。保守化が目立った1980年代には、「"前衛"は(もう)古い」と見なすような風潮が見られたが、21世紀に入ってから再評価され、復活してきている。
- 類義語
- 「avant-garde」の類語に「experimental...(実験...)」がある。
- 「avant-garde」と「contemporary~」との相違点
- 「contemporary~ コンテンポラリー~(現代~)」が類語として用いられることもあるが、「contemporary」は単に「現代(同時代)」でしかなく、基本的に「時」や「時代」で線引きしているにすぎず、場合によっては、既存の価値観やシステムにすっかり屈服してしまった、なんら革新性の無いものですら含みうる。 よって、「avant-garde」(既存のものに挑戦する姿勢を指す概念)と「contemporary」とは、根本の概念が異なっている。
- たとえばある時代の映画の現場全体が「前衛」の気質に満ちていると、その時代の「現代映画」は「前衛美術」でありうるが、その時代の映画の現場が反骨精神を欠いていたら(たとえば、その時代の映画が既存の権益に迎合して、たとえば営利主義に満ちていたりしたら)その時代の「現代映画」は「前衛映画」とは異なっている、という関係になる。1960年代は「現代~」という表現を「前衛~」と同義語として用いることができたが、それは1960年代が「たまたま」前衛芸術の全盛期だったからである。類義語と見なせたのは、過去の話である。その後、世の風潮が、既存の価値観に迎合的になってしまった近年では「現代~」と「前衛~」は、しばしば、指す活動内容や、指す芸術家のリストが異なっている。
詳細
[編集]アバンギャルドという言葉のもつ「(既存のものへの)挑戦的な姿勢」という概念は、芸術制作の一部ジャンルとして存在する。用語として「アバンギャルド」「前衛芸術」というとき、それは20世紀に起きた一連の芸術運動のことを指す。イタリアのライター、レナート・ポッチェリは1962年の著書で、ヴァンガード文化がボヘミア文化の多様性や、サブジャンルである可能性を指摘した。
例
[編集]- モダンアート - 近代美術のこと、その当時に「モダン modern」とされた物。
- 現代アート - 20世紀末に新しいとされた芸術。
- ビバップ - 戦後の1940年代後半に確立されたチャーリー・パーカーから、ディジー・ガレスピーらにより創造されたジャズ。芸術音楽ではあるが、前衛音楽には含まれない場合が多い。
- フリー・ジャズ - オーネット・コールマンらが創造した前衛ジャズ
- 現代音楽 - 20世紀前半に生まれた新しい音楽ジャンル。クラシック音楽とは異なる新しい音楽。
前衛美術
[編集]前衛音楽
[編集]カールハインツ・シュトックハウゼン、ヤニス・クセナキス、ピエール・ブーレーズ、マウリシオ・カーゲル、アルフレート・シュニトケ、ルイジ・ノーノ、リゲティ・ジェルジュ、ジョン・ケージ、オーネット・コールマン、アルバート・アイラー、デレク・ベイリー、ムーンドッグなどの作曲家による楽曲が知られる。
「実験音楽」参照
前衛演劇
[編集]アンチテアトル、オフ・ブロードウェイ、オフ・オフ・ブロードウェイ(en:The Living Theatreなど)、アングラ演劇など。
アングラ演劇の代表は、1960年代の激動の時代を反映した寺山修司の天井桟敷、劇団黒テントなど。現在でも月触歌劇団や演劇実験室◎万有引力、J・A・シーザーらが、寺山のスピリットを引き継いだ演劇を発表している。
前衛文学
[編集]前衛映画
[編集]実験映画 も参照
ギャスパー・ノエ、ケネス・アンガー、スタン・ブラッケージ、ジョナス・メカス、アレッハンドロ・ホドロフスキー、デンマークのドグマ95など。
前衛舞踏
[編集]大野一雄、土方巽、伊藤ミカらが活躍した。暗黒舞踏も、この分野に含まれる。
前衛書道
[編集]前衛書道を参照。
前衛生け花
[編集]中川幸夫による前衛生け花が知られている。
前衛芸術の例(世界)
[編集]前衛芸術の例(日本)
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]関連項目
[編集]- コンセプチュアル・アート
- ハプニング
- ブルームズベリー・グループ
- メルツバウ
- インスタレーション
- エログロナンセンス
- シュプレマティスム
- メタモダニズム
- ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア
- 危ない1号
- 作者の死
- 幻視芸術
- 47年グループ
- 63年グループ
- スペクトル楽派
- ニューヨーク・スクール
- ピエール・モリニエ
- マジックリアリズム
- 新即物主義
- スペキュレイティブ・フィクション
- 幻想文学
- メフィスト賞
- ヌーヴォー・レアリスム
- ヌーヴォー・ロマン
- テル・ケル
- ウリポ
- 荒地 (詩誌)
- ポストモダン文学
- ミニマリズム
- アヴァン・ポップ
- シカゴ・イマジスト
- ローブロー
- YBAs
- スリップストリーム
- フラッシュフォワード
- ビートニク
- カットアップ
- レトリスム
- 芸術世界
- ロシア・フォルマリズム
- ロシア・アヴァンギャルド
- ターボ・リアリズム
- シュルレアリスム
- フュマージュ
- オートマティスム
- スーパーフラット
- ドゥニ・ディドロ
- メタフォリカルレアリズム
- 新表現主義
- トランスアバンギャルド
- マルティン・キッペンベルガー
- 未来派
- ヴォーティシズム
- 加速主義
- 資本主義リアリズム
- ダダイスム
- ネオ・ダダ
- ヴァンガード
- コブラ (芸術運動)
- 反芸術
- アンダーグラウンド・コミックス
- オルタナティヴ・コミック
- アブストラクト・コミックス
- 六師外道
- ミシェル・オンフレ
- 秘密集会タントラ