キダム
キダム(Quidam)はシルク・ドゥ・ソレイユの9番目の作品で移動公演の演目のひとつ。1996年4月23日に初演され、これまで世界で何100万人もの集客がある人気公演である[1]。モントリオールでのプレミア公演からしばらくは大テント公演であったが、2010年からの北米での公演からアリーナツアーが行われた[2]。
両親から疎外され無視されるゾエという名の少女の想像の世界。彼女は退屈な生活から逃避するためにキダムという名の風変わりな世界を夢見る[1]。
このタイトルは傘と山高帽を持った頭のない男性キャラクターを表している。これはみんなであり、また同時に誰でもないことを具象化している。
シルク・ドゥ・ソレイユのパンフレットによると「キダム 、それは 街角をさまよう名もない孤独な通りすがりの人。 どこにでもいるありきたりの人 。 どこにでもあるような街の中を 行き来し、生活をしている人。群集の 中の 一人、静かな大衆の 中の 一人。 私たちと一緒に 叫び、歌い、夢を見る人。 」となっている(そもそもキダムの語源はラテン語で「名もなき通りすがりの者(人)」と言う意味である)[1][3]。
日本では下記の大テント(ビッグトップ)・ツアーで2003年から2004年に全516回公演され132万人が動員された[4]。
舞台装置および技術
[編集]人々が常に往来する空港や駅などの無機質な場所を表現したシンプルな舞台はMichel Crête によりデザインされた。120フィート (37 m)ある5本のアルミ製の大きなアーチは索道となり、これらは出演者の舞台裏から表への往来を可能にしている。どのレールも2つのトロリーがついており、1つは出演者や小道具を上下させ、もう1つは舞台に向かい前後に移動するものである。舞台の床は穴のあいたアルミ素材のデッキでゴムのようなマットで覆われている。20万箇所以上目打ちされ、舞台床下からの光が通るようになっており、様々な視覚効果を作り出す[1]。
登場人物
[編集]キダムは50名以上のアクロバット、ミュージシャン、歌手、キャラクターなどが出演する。主なものを以下に示す[1][5][6]。
- ゾエ (Zoé): キダムの主人公。普通の女の子だが、日常に変化を求めている。
- パパ (Father): 無意識ながらも完全に自分のことしか考えていない。彼の白い靴だけが隠された個性を垣間見ることができる。
- ママ (Mother): 空気感のなさ、疎外を表す。内に恐れ、落胆、そして熱望を秘めている。
- キダム (Quidam): 作品名となるキャラクターで、匿名で、みんなであり誰でもない。現実から抜け出した、あるいはゾエの想像から生み出されたキャラクター。名前の語源はラテン語で「名もなき通りすがりの者(又は「名前がなく、ただ単に通る人」)」と言う意味である。
- ジョン (John): ゲーム・ショーの司会者であり、キダムの世界の代弁者。ゾエの父親代わりであるため、父親の白い靴を履く。
- ターゲット (Target): みんなから狙撃されるダーツの的の格好をした人間だが、いつも笑顔である。
- Chiennes Blanches : 名前も顔もない静かな一団で、人間味がなく機械的で、先導したり後続したりする。導入部とエンディングに主要登場人物たちと共に出てくる。
- ブンブン (Boum-Boum): 観客に向かって叫んだり偉そうに歩いたりするが、観客から叫び返されると逃げる。
- 'Rabbit: 他のキャラクターを追いかけたり、逆に追いかけられたりする。
- エイビエーター (Aviator): 骨の羽を持っているが、まだ飛び立つことはできない。
- Les Égarés : 道に集まる個性をなくした人々でキダムの場所を明け渡す。バンキンのシーンに出演。
演目
[編集]キダムはアクロバットな演技と伝統的なサーカスの演技の融合である。一覧を以下に示す[1][7][8]。
- ジャーマン・ホイール: ジャーマン・ホイールを用いたアクロバットな演技
- ディアボロ: 紐で繋がれた2本の棒を操作し、木の糸巻きのバランスを保つディアボロ(別名: 中国ゴマ)の演技
- スキッピング・ロープ: ダンス、アクロバット、芸術の要素を含み、20名のアクロバットのパフォーマーがソロ、デュオ、グループでの縄跳びの演技を行なう。日本人で唯一、田口師永が出演
- エアリアル・フープ: 天井から吊るされたフープにより2人のパフォーマーが演技する
- ハンドバランシング: 細い柱の上でバランスを保った逆立ちを含む様々なポーズに姿を変える演技
- スパニッシュ・ウェブ: 頭上のアーチに取り付けられた縄の演技。胴または足首に縄を巻いただけで、順々に、または同時に突然落ちたり止まったりする
- スタチュー: 2人のアクロバットのパフォーマーが手に手を取りバランスを保った演技をする
- バンキン: 体操とバレエを融合した中世からのイタリアの伝統的演技。最大15名のパフォーマーにより、完璧な動作での人間ピラミッドなど、人体の敏捷性を表現する
ローテーションの演目
[編集]終了した演目
[編集]- マニピュレーション
- エアリアル・ストラップ: 地上または空中で、天井のアーチからぶら下がるコードを握り2人のパフォーマーによる演技
- フーピング: 体全体を使い、最大20本のフープを回す演技
- クラウド・スウィング: 空中ブランコとスパニッシュ・ウエブの融合
衣装
[編集]キダムの衣装デザイナーのDominique Lemieux はルネ・マグリットやポール・デルヴォーなどのシュルレアリスムから着想を得ている。衣装はキャラクターの疎外感や布の染めによる都会的風景を表現している。キダムで最も多く使用される色は灰色であるが、深い、濃い、暖かい色が加えられ、金属で装飾されることもある。キダムはシルク・ドゥ・ソレイユにおいて、日常に着るような洋服を衣装に取り入れた最初の作品となった。素材には伸縮自在のリネンが第一であるが、皮革、ジュート、リネン・クレープ、ウール、ベルベット、42種類の綿素材なども使用される[9]。
キダムでは250着の衣装、500種類の装飾品、200から300足の靴が使用される。出演者1人につき2から7着の衣装があり、それに少なくとも2着のスペアがあるため数は膨大になる。毎日洗濯されるが、6ヶ月から2年しかもたない[1]。
音楽
[編集]キダムの音楽はブノワ・ジュトラにより作曲され、追加曲を加え、カバー・デザインが変わり、作品ごとに品質が高くなった3枚のアルバムが発表された。1997年1月14日、1枚目のアルバム(ASIN B000003G5M)が発表。このアルバムはAudrey Brisson-Jutras とMathieu Lavoie の歌を特長としており、1999年にアムステルダムでライヴ録音され、Brisson-Jutras とRichard Price による2曲の追加を加えたアルバムが2001年に発表された[10]。
1997年に発表されたオリジナル・アルバムの曲およびその曲が使用された演目の一覧を以下に示す。2001年に発表されたアルバムへの追加曲は一覧最後のMìsere とEnfant d'Acier である[10]。
- Atmadja (オープニング)
- Incantation (ジャーマン・ホイール)
- Marelle (幕間)
- Rivage
- マニピュレーション (1996年 – 1998年)
- ジャグリング (1999年 – 2004年、2006年 - )
- Zydeko (スキッピング・ロープ)
- Let Me Fall (エアリアル・シルク)
- Innocence (スキッピング・ロープ)
- Carrousel
- クラウン・アクト
- ディアボロ
- エアリアル・フープ
- Steel Dream
- ハンドバランシング (1996年 – 1998年)
- エアリアル・ストラップ (2004年 – 2005年)
- Seisouso
- エアリアル・フープ
- クラウド・スウィング
- Réveil (スタチュー)
- Quidam (フィナーレ)
- Misère (バンキン)
- Enfants d'Acier (ディアボロ)
ツアー公演
[編集]2010年にアリーナ・ツアー公演になるまで、大テント・ツアー公演を行なっていた[2]。南アメリカでの大テント公演の前の2009年の短期間、イギリスおよびアイルランドでアリーナ公演を一時的に行なったこともある。
2011年秋の北アメリカの北東でのツアーの際、広告としてキダムの絵柄の入ったツアー・バスの使用を開始した。各都市に到着すると、地元の商店などに現れ、出演者の一部に会うこともできた[11]。
色により地域を示す:
EU ヨーロッパ NA 北アメリカ SA 南アメリカおよび中央アメリカ AP アジア太平洋 OC オセアニア
アリーナ・ツアー[編集]2009年[編集]
2010年[編集]2011年[編集]
2012年[編集]
2013年[編集]
2014年[編集]
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大テント・ツアー[編集]1996年[編集]
1997年[編集]
1998年[編集]
1999年[編集]
2000年[編集]
2001年[編集]
2002年[編集]
2003年[編集]
2004年[編集]
2005年[編集]
2006年[編集]
2007年[編集]
2008年[編集]
2009年[編集]
2010年[編集]
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受賞歴
[編集]- バンキン - 1999年、 インターナショナル・モンテ・カルロ・サーカス・フェスティバルでゴールデン・クラウンを受賞[7]
- ディアボロ - 1995年、フェスティバル・ドゥ・シルク・ドゥ・ ディメインで金賞を受賞[7]
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g “Quidam Press Kit”. Cirque du Soleil (Press Kit). 2011年3月3日閲覧。
- ^ a b “Quidam performers adapt to the arena”. Montréal Gazette (2010年12月11日). 2011年3月3日閲覧。
- ^ http://www.cirquedusoleil.com/ja/press/kits/shows/quidam/characters.aspx
- ^ DAIHATSU DRALiON CIRQUE DU SOLEIL Japan Tour Official Program
- ^ “Quidam Characters”. Cirque du Soleil (Press Material). 2011年3月3日閲覧。
- ^ “About Debra Brown”. debralynnbrown.com. 2011年3月5日閲覧。
- ^ a b c “Quidam Acts”. Cirque du Soleil (Press Material). 2011年3月3日閲覧。
- ^ “Quidam Acts”. Cirque Tribune. 2011年3月3日閲覧。
- ^ Clément, Ronald (2009) (CN, EN, FR, JP). Cirque du Soleil 25 Years of Costumes. Canada: Dépôt légal, Bibliothèque et Archives Canada. pp. 40–45. ISBN 978-2-9803493-4-8
- ^ a b “Music – Quidam”. Cirque Tribune. 2011年3月24日閲覧。
- ^ “Quidam Road Trip”. Cirque du Soleil. 2011-DEC-19閲覧。
- ^ a b カーコンビニ倶楽部 QUiDAM キダム CIRQUE DU SOLEIL Japan Tour Official Program