ジュベル・アリ

広大なコンテナターミナルが広がるジュベル・アリ港
ジュベル・アリ港。左よりの白い船はムハンマド・ビン=ラーシド・アール=マクトゥーム首長が所有する世界最大級の大型ヨット「ドバイ」、右寄りの黒い船はアメリカ海軍の空母ジョン・C・ステニス

ジュベル・アリジャバル・アリーアラビア語: جبل علي‎, 英語: Jebel Ali)は、アラブ首長国連邦ドバイ首長国にある地区の一つ、また、同地区に所在するペルシャ湾に面した大型港湾ドバイ市街中心部からは南西へ35キロメートルの位置にあり、アブダビ首長国との境界線にも近い。

「ジャバル」(Jabal)は山を意味し、ジャバル・アリーは「アリー(人名)の山」を意味する。ローマ字では一般的に「Jebel Ali」と綴られている。

ジュベル・アリ港

[編集]

1960年代末から1972年にかけてドバイ中心部近くに建設した人工港・ラーシド港(英語: Port Rashid, アラビア語: ميناء راشد; mina'a rāšid‎)が成功を収めたドバイは、1970年代末からジュベル・アリ地区の海岸に新たな掘り込み式の人工港を建設し始めた。ジュベル・アリの町は1977年に建設され、当初は港湾の建設作業員である南アジアなどからの移民が主に住む寒村であった。

2009年現在のジュベル・アリは、バース数67、面積134.68平方キロメートルを誇る世界最大の人工港で、かつ中東最大のハブ港湾・コンテナターミナルとなった。埠頭には世界各国の大型コンテナ船が寄港し、中東やインド洋沿岸各地へのフィーダー船にコンテナを積み替えたり、港湾に隣接する自由貿易地帯や工業地帯へコンテナを輸送したりしている。

ジュベル・アリ港や、それに先立ち開港したラーシド港の運営で豊富な経験を積んだメガターミナルオペレーターであるドバイ港湾局は、その運営ノウハウを国外で生かすためにドバイ・ポーツ・インターナショナル社を設立した。後にこれがドバイ港湾局と合併して、世界各地でコンテナターミナルや港湾を運営するドバイ・ポーツ・ワールド社となっている。

ジュベル・アリ港はアメリカ海軍の艦船がアメリカ国外で最も頻繁に訪れる港湾でもある。イラクイランを睨む戦略的位置、港湾の水深の深さ、整った施設などから、世界最大の軍艦であるニミッツ級航空母艦およびこれを中心とする空母打撃群の艦船が一度に停泊可能となっている。

ジュベル・アリ地区

[編集]

ジュベル・アリ、ジュベル・アリ・ビレッジ、ジュベル・アリ・フリーゾーン、ジュベル・アリ・インダストリアルの4地区からなるジュベル・アリはドバイ市を構成する地域共同体で、世界中から集まった大企業の物流施設や工場が集まっており、人口は2000年現在で31,634人であった[1]

このうち、1985年に開設されたジュベル・アリ・フリーゾーン(Jebel Ali Free Zone, JAFZ)は港を取り囲むように設置された工業地帯で、立地した企業に対し様々な特恵を与えている。15年間の法人税減免、個人所得税なし、関税なし、取引通貨の制限なし、雇用契約の規制緩和などがその主なものである。ジュベル・アリ港およびジュベル・アリ・フリーゾーンは、ドバイを中東の物流および人的交流の中心地へと浮上させた原動力の一つでもある。アール・マクトゥーム国際空港(建設中の名称はジュベル・アリ国際空港、ドバイ・ワールド・セントラル国際空港など)もこの地区に建設されている。

ジュベル・アリ港の両側の海岸には、埋め立てや運河建設によりリゾート地が作られている。東側にはパーム・アイランドのひとつパーム・ジュメイラが完成しており、西側にはパーム・ジュベル・アリドバイウォーターフロントが建設されている。また、パーム・ジェベル・アリ西側一帯の海域と海岸にはサンゴ礁マングローブラグーン海草藻場カキの生息地、砂浜海岸などがあり、タイマイモトルドイーグルレイ英語版アオウミガメジュゴンウスイロイルカなどの生息地として2018年にラムサール条約登録地となった[2]

脚注

[編集]
  1. ^ Existing Population and Future Holding Capacities in Dubai Urban Area. Dubai Healthcare City. 2000
  2. ^ Jabal Ali Wetland Sanctuary | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2018年10月25日). 2023年4月17日閲覧。

外部リンク

[編集]

座標: 北緯25度00分41秒 東経55度03分40秒 / 北緯25.01126度 東経55.06116度 / 25.01126; 55.06116