ハーヴグーヴァ
ハフグファ[1]またはハーヴグーヴァ(古ノルド語: hafgufa.haf '海' + gufa '蒸気';[3][4] 意訳:「海の湯煙」[注 1])は、北洋の海域にいたという伝説上の巨鯨種、巨魚、あるいはシーモンスター。
近年の研究で、一部のクジラによって行われる特殊な採餌方法を目撃し、これを怪物の一種として解釈したものである可能性が示唆されている( § 研究の項を参照)[7][8]。
概説
[編集]浮上した部分は島と見まごうと言われ、アイスランド付近(グリーンランド海)で見られたと記述されている。さらには伝説的サガの後期本では北アメリカの海域で見られたと、物語が膨らませられている。
古くは13世紀中葉ノルウェーの『王の鏡』に言及があり、『矢のオッドのサガ』[注 2]の後期稿本(14世紀後半)では、ハーヴグーヴァとリングバック が、いずれも島か岩礁に見える巨大な海の怪物として登場する[10]。しかし、17世紀の文献ではこの二つは、同じ巨獣の別称とされている。
自分の吐瀉物を撒き餌につかっておびきよせた大量の魚類をいっぺんに一飲みにするのだと伝える。似たような描写がラテン版動物寓意譚のアスピドケローネという巨獣について記されており、そのアイスランド語訳(「アスペド」と記述)も現存するので、これがモデルとみなされている。また、島に似た性質と、捕食習性の挿絵が別々に描かれていたことで、2種類いると勘違いされたとの考察がある。
サガの物語の設定では鯨・船・人間も餌とすると噂される怪物だが、グリーンランド海から西南のヘッルランド にむかって航行中に岩礁と間違えハーヴグーヴァの口吻のあいだを船ですり抜けたにすぎなかった。ただしリングバックに上陸した乗組員は落命している。
17世紀の博識者は、聖ブレンダヌス(アイスランドで修道したアイルランド僧)の航海譚に登場する巨魚ヤスコニウスと同一視している。
語釈
[編集]ハーヴグーヴァ(古ノルド語:hafgufa)が正しい表記であり[注 3]、サガでははっきりそのように綴られている[13]。
また『スノッリのエッダ』(散文エッダ)でもクジラ目類の名を連ねたスールルのなかに含まれており[14][15]、異本《ヴォルム写本》[注 4]では hafgúa と綴る[16]。18世紀の文献では人魚を意味する単語(margúa)の同義がhafgúaだと記載する[17]。
ハーヴグーヴァを「人魚」の類と但し書きしている『王の鏡』の近年の英訳がみられるが[18][注 5]、過去の英訳ではクラーケンを同義語として充てていた[19]。
英語でシー=リーク("sea-reek"、「海の蒸気」)[注 6]という意訳名もサガ英訳で使われており[5][21]、シー=スチーマー("sea-steamer")という英名が散文エッダ英訳にみられる[22]。
王の鏡
[編集]『王の鏡』(Konungs skuggsjá)は、ノルウェーで13世紀中期に書かれた、名目上は道徳書だが[23]、じっさいにはいろいろな雑学情報がつまっている百科全書的な書物である。父王に息子が助言を仰ぐという問答形式をとっている[23][24][25][26] 。
王を語り手として、アイスランド近海(グリーンランド海)のクジラの色々な種類について細かい説明がある[19]。そして、これらよりもまだまだ巨大な、とても信じがたいような種類がいるのだと、という。そのハーヴグーヴァとは、巨大な「魚」だが、みかけは島の様であった。目撃することは稀だが、必ず二つの場所のいずれかに現れる。王の推察では、2頭の個体しかおらず、それ以上繁殖していないということだった[18]。
王はまた、摂食習性について語っている。ハーヴグーヴァは、吐瀉物で餌となる魚をおびき寄せ、集まると口を閉じて大量捕獲してしまう[18][注 8]。
『王の鏡』に言及があることは、17世紀中葉にオーレ・ヴォームと[注 9][27][28]、トマス・バルトリンが相次いで指摘するが[注 10][2] これらデンマーク学者は、ハーヴグーヴァを第22種のケトゥース(≈鯨)に分類している[28][2]。
伝説的サガ
[編集]『矢のオッドのサガ』[注 11]の諸本のなかでも14世紀後期に遅く成立した写本[29]に、ハーヴグーヴァの言及がみられる[30]。
サガの物語中では、オッドの息子ヴィグニルがハーヴグーヴァについての伝承を会得していた。曰く、それは最大の海の怪物で[注 12]、鯨も船も人間も餌とし[5][31]、口吻部("口と鼻孔")を水上に浮上させたまま、潮目が変わるまでじっとしていると説明する。そして彼らの船が間を通りすぎた二つの岩礁は、じつはその怪物の鼻孔部分(嗅覚器)[32]と下顎のあいだだったのだ、と主張している[13][33][5][13][注 13]。
オッドらの一行は、 グリーンランド海から陸地に沿って南と西の方角へと、(通説ではカナダの)ヘッルランド[注 14]のスクッギというフィヨルドを目指していた。その目的地は、「房毛の」オグモンド[注 15]、別名「エイショールヴ殺しの」オグモンド[注 16]と呼ばれる仇敵の居場所であった[注 17]。
その航行中、遭遇したのが2種の海の怪物で、ハーヴグーヴァ(「海蒸気」)は、その上下の顎のあいだを(船員は岩礁の合間と見間違いながら)難なく通り過ぎただけに終わった[5]。もうひとつは リングバックすなわち「ヘザー[注 18]の[生えた]背」と呼ばれる怪物で、これも海に浮かぶ島に見えた[5]。しかしこちらの島にはオッドの命令で[注 19]5名が上陸しており、結果、リングバックが潜水したために命を落としている[37]。リングバックは、刊行されている英訳では「ヘザーバック」と意訳するが、「リング」/「ヘザー」すなわちギョリュウモドキやエリカ類の植物が背中に密生していることを指している[38][注 20]。
類種
[編集]アスピドケローネという海の巨獣が『フュシオロゴス』(中世の動物寓意譚)に記載されるが、これがハーヴグーヴァの由来ではないか、との考察がある[41]。
元のアスピドケローネは、より温暖な海域にいる、島のような大ウミガメのことであったが、これを北欧人はアスペド(aspedo)という鯨(hvalr)と理解して、『アイスランド語版フィシオログス』(断片B、第8)に転載したのだという推察だ[41][42][注 21]。
アイスランド語版でも、アスペド鯨は島と見間違えられる性質と[37][45]、開けた口からはなった芳香性の物質で餌の魚をおびき寄せる習性が描かれているが[46]、ハッルドール・ヘルマンソンは二つの習性が二枚の絵になっていることに着目し、ハーヴグーヴァとリングバックという二つの近似種がいるという錯覚に陥り、それがサガに伝えられた、と提唱している[30][31]。
しかし逆にデンマークの博学トマス・バルトリンは、『希少生物解剖誌』(Historiarum anatomicarum、第IV部。 1657年)は、これを、ハーヴグーヴァ('海の蒸気')とリングバック('エリカのごとき背')という別称をもった[注 22]、ひとつの生き物だとしている[2][9]。また、聖ブレンダヌスら一行が島と間違えて上陸しミサを読み上げたのもこの鯨の上であろうと断じている[2][47]。同時代にアイスランド人ヨウン・グズムンドソン(1658年没)も、『アイスランド博物誌』で[注 23]、同様の事を述べている[48]。島のごとき巨魚の話は、たしかに『聖ブレンダヌスの航海』にみられ、その怪物の名はヤスコニウスであると記される[49][50][51][注 24]。
ハーヴグーヴァはをクラーケンと同一視したのはハンス・エーイェゼの1729年の著書が先だが[54]、のちモラヴィア出身の聖職者ダーヴィット・クランツの『グリーンランド史』(Historie von Grönland、1765年)でも、ハーヴグーヴァは、当時のノルウェー人の語るクラーケンと同一のものだ、と記述している[55][56]。それがのちに通説のようになってしまったことについて、フィンヌル・ヨウンスソンは懐疑を示しており、クラーケンはおそらくイカの類であり、ハーヴグーヴァに遡及できまいとしている[57]。
研究
[編集]2023年に発表された研究論文で、ハーヴグーヴァやアスピドケローネの特徴として語られる『自分の吐瀉物を撒き餌につかい、おびきよせた大量の魚類を一度に丸飲みする』という描写が、実際のクジラによって行われる"トラップフィーディング"と呼ばれる特殊な採餌方法を目撃し、これに着想を得た(あるいは、その様子を怪物によるものと解釈した)ものではないかと指摘された。クジラによるトラップフィーディングが動物学の世界で正式に報告されたのは2011年で、この報告に着目したオーストラリアフリンダース大学の研究者らにより、ハーヴグーヴァの伝承と、実際のクジラによって行われる採餌方法との顕著な類似点が指摘された[8][58][59]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ サガの英訳では'sea-reek'[5]。通常会話では reek は '臭気'ほどの意味だが、スキートの英語源辞典には'蒸気、煙'とみえ、ドイツ語の rauch 「煙」と同源である[6]。
- ^ 『弓矢のオッドルのサガ』等とも。
- ^ 『王の鏡』原文では hafgufu と綴られるが、解説者は"hafgufa"を通常形(主格)としている[11][12]。
- ^ 版本の注に"Wchart"と略記されており、厳密には羊皮紙写本(W)の欠損部を、紙製(革でない植物繊維の紙 chartaceus)の補完した箇所。
- ^ hafgúa(異綴り)は、margúa'人魚'の同義として某18世紀の書物(Ann=『至1578年のアイスランド年代記』 Islandske Annaler indtil 1578 )に記載されている[17]。
- ^ "reek", 'vapor, smoke'[6]。
- ^ 古ノルド語:öln, alin、複数形・不定形・属格alna。
- ^ 原文と和訳:
Einn fiskr er enn útaldr, er mér vex heldr í augu frá at segja fyrir vaxtar hans sakir, þviat þat mun flestum mǫnnum útrúligt þykkja; þar kunnu ok fæstir frá hánum nǫkkut at segja gǫrla. þviat hann er flestum sjaldsénn, þviat hann er sjaldan við land eða í ván við veiðarmenn, ok ætla ek ekki þesskyns fisk margan i hǫfum; vér kǫllum hann optast á vára tungu hafgufu. Eigi kann ek skilvísliga fráa lengð hans at secja með álna tali, þviat þeim sinnum er hann hefir birzk fyrir mǫnnum, þá hefir hann landi sýnzk likari en fiski; hvárk spyr ek, at hann hafi veiddr verit né dauðr fundinn; ok þat þykki mér likt, at þeir sé eigi fleiri en tveir í hǫfum, ok ǫngvan ætla ek þá auka geta sín ámilli, þiat ek ætla þá hina sǫmu jafnan vera, of eigo mundi ǫðrum fiskum hlýða, at þeir væri svá margir sem aðrir hvalir fyrir mikilleika sakir þeirra, ok svá mikillar atvinnu er þeir þurfu. En sú er náttúra sǫgð þeirra fiska, at þegar er hann skal eta, þá gefr hann ropa mikinn upp or hálsi sér, ok fylgir þeim ropa mikil áta, svá at allskyns fiskar, þeir er í nánd verða staddir, þá samnask til, bæði smáir ok stórir, ok hyggjask sér skulu þar matar afla ok góðrar atvinnu; en þessi hinn mikli fiskr lætr standa munn sinn opinn meðan, ok er þat hlið eigi minna en sund mikit eða fjǫrðr, ok kunni fiskar eigi at varask þat at renna þar í með fjǫlda sinum. En þegar er kviðr hans er fullr ok munnr, þá lýkr hann saman munn sinn, ok hefir þá all veidda ok inni byrgða, er áðr girntusk þangat at leita sér til matfanga
王:まだ語らずじまいの"魚(勇魚)"がいるが、何しろその巨大さゆえ大概の者には信じ難かかろう、語るのもはばかれる。稀にしか見られるゆえ、定かな事を語れる者も少ない。陸にも近づかないし、漁師に見られるような場所にも現れない。海にも子の種の頭数は少ないと思われる。ふつうこれを我らの母国でハーヴグーヴァと呼んでいる。また全長もエルン(腕尺)[注 7]で数えて何尺あるかもいえない、というのも、これまで目撃されたときも魚というより島にしか見えなかったからだ。捕えられた、もしくは死骸が見つかったというのも寡聞にして知らない。どうやらおそらく、2頭しか存在しておらず、繁殖もせず、目撃はいつも同じやつらのようだ。もし巨大で大食いな("食い扶持の大きい")やつらが、他の鯨並みに数がおったら、他の魚にとってさぞゆゆしきことになるであろうぞ。この勇魚に自然にそなわる性として、なにか食べたくなると、喉から大きなげっぷを発し、そのげっぷにともない大量の餌がばらまかれ、すると大なり小なりあらゆる魚類が食餌、もとい良き糧を得ようと集まる;巨魚は口を広げたままでしばしおり、そのあけひろげられた間隔は大湾やフィヨルドにもおとらぬ広さで、魚どもは大挙してそこになだれ落ちずにはおけぬ。そして腹と口内を満たすと勇魚は口を閉じ、餌をもとめてやってきた魚どもを一網打尽にしてしまう。
—Boer, Richard Constant ed., Ǫrvar-Odds saga[13] —英訳[18][19]より重訳。 - ^ 『
ウォームの珍品博物館 ()』(1654年)。綴りはハーヴグーヴェ hafgufe とある。 - ^ 『希少生物の解剖学誌』(1657年)。
- ^ エルヴァル=オッドの物語。邦文文献では『矢のオッドのサガ』のほかに『オルヴァル・オッドのサガ』、『弓矢のオッドルのサガ』、『弓の名手オッドルのサガ』などと表記される。
- ^ 原文ではハーヴグーヴァとリングバック :lyngbakr という 2頭の海の怪物 sjóskrímsli がいるとする[13]。
- ^ 原文と和訳:
Vignir sagði: «..[N]ú mun ek segja þér, at þetta eru sjáskrímsl tvau, heitir annat hafgufa, en annat lyngbakr; er hann mestr allra hvala í heiminum, en hafgufa er mest skrímsl skapat í sjánum; er þat hennar náttúra, at hon gleypir bæði menn ok skip ok hvali ok allt þat hon náir; hon er í kafi, svá at dægrum skiptir, ok þá hon skýtr upp hǫfði sínu ok nǫsum, þá er þat aldri skemmr en sjávarfall, at hon er uppi. Nú var þat leiðarsundit, er vér fórum á millum kjapta hennar, en nasir hennar ok inn neðri kjaptrinn váru klettar þeir, er yðr sýndiz í hafinu, en lyngbakr var ey sjá, er niðr sǫkk. En Ǫgmundr flóki hefir sent þessi kvikvendi í móti þér með fjǫlkynngi sinni til þess at bana þér ok ǫllum mǫnnum þínum; hugði hann, at svá skyldi hafa farit fleiri sem þeir, at nú druknuðu, en hann ætlaði, at hafgufan skyldi hafa gleypt oss alla. Nú siglda ek því í gin hennar, at ek vissa, at hún var nýkomin upp.
ヴィグニルは言った、「..では説明しよう、海の怪物が二つ、ひとつはハーヴグーヴァ(「海蒸気」)、もうひとつはリングバック(「ヘザーの[生えた]背」)だ。ハーヴグーヴァは、海でも最大の怪物。自然にそなわる性として、人間も船も、鯨すらさえも、そばに近寄ったものはなんでも飲み込んでしまう。何日も海中に潜んだのち、水面から頭と鼻孔(嗅覚部)をもたげさせ、何日もそのまま、潮目がかわるまでいる。で、われわれが今しがた船で突き抜けた海峡はそいつの顎と顎のあいだだったのさ、じつはその嗅覚部と下顎が、ちょうどあの海で見えた二つの岩だったってわけだ。で、リングバックが、見てただろ、あの沈んだ島さ。「房毛の」オグモンドがな、魔術でもって、こうした生き物をあんた[父、オッド]のところに遣わして、あんたと配下の者を皆殺しにしようとしたんだ。まんまと溺死したやつら[*少し前のくだりで島に上陸した五人。島が沈んで死んだ。]とおんなじ憂き目に、もっと大勢の乗組員もあわせてやろうってな魂胆だったんだぜ。ハーヴグーヴァに俺たち全員吞み込ませるつもりでいやがたんだ。でも、俺には[息継ぎに]あがってきたばかりとわかっていたんで、そのすきに、口にはさまれる間をすりぬけて帆走してやったまでさ。
—Boer, Richard Constant ed., Ǫrvar-Odds saga[13] —英訳[5]より重訳。 - ^ エドワーズとポールソンの英訳ではわざわざ「スラブランド(岩盤の地)」という意訳名を使っているが、他の訳者による『ヴィンランド・サガ』等では「ヘッルランド」島の地名をそのまま使っている。
- ^ 古ノルド語: Ögmundr flóki.[34]
- ^ 古ノルド語: Ögmundr Eyþjófsbani
- ^ エドワーズとポールソンの英訳では「オグモンド・トゥソック」 Ogmund Tussock となっており、たしかに tussock には'房、毛虫の突起'などの意もあるが、現在では'草、芝'の意味合いに捉えるがちなので、普通に tuft '房毛'と訳した方がよかった、と批評されている[35]。だが擁護論もあり、原文でも通常の前髷(topprinn)のようではないものが「房毛」が垂れ下がっている、と書かれており、普通の房毛ではなく、芝のような(蓬髪のような)形状だと解釈する[36]
- ^ 植物名。下に詳述。
- ^ ヴィグニルの阻止指示を無視して
- ^ 古ノルド語の「リング」(lyng)は英語の「ヘザー」だが、じつは英語やスコットランド方言にも「リング」(ling)という語があり「ヘザー」の意味である。厳密には「コモン・ヘザー」(現在の分類学上はカルーナ属の唯一の種 C. vulgaris)の事だが、各用例ではその植物学的な狭義の意義で使われているか不明であると辞書にも書かれる[39]。つまり狭義ではカルーナ属(和名ギョリュウモドキ)だが、広義ではエリカ属も含む:植物学上は1802年に区別されたが、英語では両方とも「ヘザー」なり「リング」と呼び続けられてきたのである[38]。ちなみに区別がされる前では、17世紀のデンマークの学者トマス・バルトリン(後述)も、リングバックを「エリカのような背」と語釈している[2]。
- ^ アイスランド訳の祖本であるラテン語版『フィシオログス』でもアスピドケローネを鯨(「ケトス cetus」)と指定してるようにもみえる。しかし古代・中世のケトスは鯨に限らない(ギリシア語κῆτος は、「海の怪物」一般をさす[43])。『フィシオログス』英訳ではケトスを"Ceteacean"とするが、むろん現代分類学上のクジラ目の意味でなく、英訳者も「鯨、イルカ、鮫も含まれる」と注記している[44]。
- ^ 上注でも「コモン・ヘザー」という植物の分類について触れたが、これはそもそもリンネがエリカ属を発表した時の基準種だった(バルトリンの執筆時もヘザーはエリカ属)が、1802年に「コモン・ヘザー」はカルーナ属とされた[38]。
- ^ 正式な題名はEn stutt undirrétting um Íslands aðskiljanlegar náttúrur(英訳: "A brief description of Iceland's various natures"、<アイスランドの雑多なる自然の記述>ほどの意)。
- ^ アイスランド語訳である『ブランダヌス・サガ』にも Jaskonius と見える[52][53]。
出典
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- ^ トマス・バルトリン『希少生物の解剖学誌』にて"Hafgufa, vapor marinusとラテン語意訳されている[2]。
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- ^ ハーヴグーヴァとリングバックのカナ表記は廣󠄁田の論文で確認[9]
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- ^ Jónas Kristjánsson (1970). Icelandic Sagas and Manuscripts. Boucher, Alan (tr.). Saga Publishing Company. p. 143 . "There is in the sea a whale called Aspedo ... When he is hungry he opens his mouth and emits as it were a sort of perfume . And the little fishes smell the perfume.."
- ^ Hunter, John (F.R.S.) (1882), Schneider, Johann Gottlob (tr., comm.), ed., Beyträge zur Naturgeschichte der Wallfischarten, Leipzig: Schäfer, p. 117
- ^ Jón Guðmundsson. Halldór Hermannsson (1924) ed., p. 8, line 31 and p. 36, endnote: "So er lesit j sögu hins H. Brandanij biskups, at j ysta vthafi, þá skylldi hann messu sungit hafa á eylandi nockru lijnguöxnu, sem sijdan sockit hafdi, og menn nú nefna lijngbak edur hafgufu, sem endist med heiminum en fiölgar alldri"
- ^ W[ilson] (1818), p. 649.
- ^ Halldór Hermannsson (1938), p. 11: Speculum regiae of the 13th century describes a monstrous whale which it calls hafgufa... The whale as an island was, of course, known from the Saga of St. Brandan, but there it was called Jaskonius".
- ^ 廣󠄁田 (2020), p. 174.
- ^ Unger, Carl Richard (tr.), ed (1877). Brandanus saga (fragment). Christiania: Trykt hos B.M. Bentzen. pp. 272–275. オリジナルの2008-06-01時点におけるアーカイブ。 2021年1月12日閲覧。
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参考文献
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