不思議の国のアリスの映像作品
児童小説『不思議の国のアリス』(1865年)は、著者ルイス・キャロルの死後5年経った1903年に初めて映像化された。内容はモノクロ・無声の8分の短編である[1]。以後技術や媒体の発達にともない、長編化(1915年)、有声化(1931年)、カラー化(1949年)、長編アニメーション(1951年)、実写ミュージカル(1972年)、そして近年のCGを駆使した作品として、さまざまな映画/テレビ映画/テレビシリーズが制作されている。
以下の一覧では原作の物語に沿った翻案ばかりでなく、既存のアニメキャラクターによるパロディ作品も記載しているが、作中で引用・言及されているというだけのものや題名のみのパロディ、また「アリス的」な雰囲気があるのみにとどまっている作品は除外している。また『不思議の国のアリス』はしばしばその続編『鏡の国のアリス』(1871年)と組み合わされて映像化が行われており『鏡の国のアリス』単独の映像化作品は少ないため、併せて扱っている。
劇場映画
[編集]- 不思議の国のアリス(1910年、アメリカ合衆国)原題:Alice's Adventures in Wonderland
- 監督:エドウィン・S・ポーター
- 出演:グラディス・ヒューレット
- アメリカで撮られた1リールのモノクロ・サイレント作品。上映時間は10分で、登場人物は少ない。
- 不思議の国のアリス (1915年、アメリカ合衆国) 原題:Alice's Adventures in Wonderland
- 不思議の国のアリス (1931年、アメリカ合衆国) 原題:Alice in Wonderland
- 不思議の国のアリス (1933年、アメリカ合衆国) 原題:Alice in Wonderland
- 監督:ノーマン・Z・マクロード
- 出演:シャーロット・ヘンリー(アリス)、ゲイリー・クーパー(白の騎士)、ケーリー・グラント(海亀フー)など
- パラマウント社製作によるオールスター映画。内容は『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の内容を一本にまとめており、のちのアリス映画の雛形となる[1]。テニエルの挿絵に従い、原作のエピソードを忠実に再現している[2]。
- 不思議の国のアリス(1949年、フランス)原題:Alice au pays des merveilles
- 監督:ダラス・バウアー
- 出演:キャロル・マーシュ(アリス)、ステファン・マーレイ(ルイス・キャロル)
- ルー・ブーニンプロダクション製作のカラー作品。主にフランスで制作された。不思議の国の登場人物はすべて人形アニメーションで、アリスのみ役者の実写である[5]。エピソードは原作に準拠している。プロローグとエピローグは俳優による実写で、クライスト・チャーチ、ルイス・キャロル、アリス・リデルの父や姉妹、ヴィクトリア女王などが登場する。英語版とフランス語版の二版あり、シーン有無や順序が異なる。
- ふしぎの国のアリス(アニメーション、1951年、アメリカ合衆国) 原題:Alice in Wonderland
- 監督:クライド・ジェロニミ、ハミルトン・ラスク、ウィルフレッド・ジャクソン
- 声優:キャサリン・ボーモント(アリス)、ビル・トンプソン(白ウサギ)、エド・ウィン(マッドハッター)
- ウォルト・ディズニー製作の長編アニメーション映画。詳しくは「ふしぎの国のアリス」を参照。
- 不思議の国のアリス(1972年、イギリス) 原題:Alice's Adventures in Wonderland
- 監督:ウィリアム・スターリング
- 出演:フィオナ・フラートン(アリス)、ピーター・セラーズ(三月ウサギ)
- アカデミー賞受賞作曲者であるジョン・バリーが音楽を担当したミュージカル仕立ての作品。主演のフラートンは当時15歳で、青いドレスにディズニーの影響がうかがえる[6]。ストーリーは原作を忠実になぞっているが、『鏡の国のアリス』のトゥイードルダムとトゥイードルディーのエピソードも加えられているほか、冒頭の献呈詩「黄金の昼下がり」を再現した、ルイス・キャロルとリデル姉妹たちの舟遊びのシーンも加えられている[2]。1972年度英国アカデミー賞 撮影賞受賞作(ジェフリー・アンスワース)。NHK総合でもたびたび放送された[7]。
- ドリームチャイルド(1985年、イギリス)原題:Dreamchild
- 監督:ギャビン・ミラー
- 出演:コーラル・ブラウン(アリス・ハーグリーヴス)、イアン・ホルム(チャールズ・ドジソン)、アメリア・シャンクリー(少女時代のアリス・リデル)
- 1932年にコロンビア大学より名誉文学博士号を贈られることになった80歳の老アリス・リデル(アリス・ハーグリーヴス)が渡米した実話を原案としている。老アリスによる少女期のキャロルとの交流の思い出と再認が主題。原作小説からイモムシの助言、狂ったお茶会、代用ウミガメの話のシーンがジム・ヘンソンの製作のマペットとアリス・リデルの演技で描かれている[1]。
- アリス (1988年、チェコスロヴァキア) 原題:Něco z Alenky
- 監督:ヤン・シュヴァンクマイエル
- 出演:クリスティーナ・コホトヴァー(アリス)
- 人形アニメ作家シュヴァンクマイエルの初の長編映画。アリス以外はすべて人形で、人形アニメーションはCG技術をいっさい使わずコマ撮りで撮っている。台詞を最小限に抑え、シュールでグロテスクな画面で原作の不条理性を再現した。幼いコホトヴァーはピンクのワンピースの衣装で寡黙なアリスを演じている[2][6][8]。
- アリス・イン・ワンダーランド (2010年、アメリカ合衆国) 原題:Alice in Wonderland
- アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 (2016年、アメリカ合衆国) 原題:Alice Through the Looking Glass
- 監督:ジェームズ・ボビン
- 2010年公開の「アリス・イン・ワンダーランド」の続編であり、前作から登場する主要キャストには変更はない。
- Alice in Dreamland アリス・イン・ドリームランド(2015年、日本)
- 人形作家:清水真理の人形アニメ
- 監督:蜂須賀健太郎
- Come Away(2020年、アメリカ合衆国)
- 監督:ブレンダ・チャップマン
- 出演:アンジェリーナ・ジョリー
- アリスとピーターパンが兄弟という設定。
テレビ映画・単発テレビ放映
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
- Alice in Wonderland(1966年、イギリス)
- 監督:ジョナサン・ミラー(アリス)
- 出演:アン=マリー・マリック
- BBC製作のテレビ映画。あえてモノクロで撮られており、静謐な画面のなかで淡々と物語を進行させていく。アリスは無表情で、作中の動物もすべて生身の人間がそのまま演じるなど、独特の世界観によって作られている[6]。
- 不思議の国のアリス(1985年、アメリカ合衆国)原題:Alice in Wonderland
- 監督:ハリー・ハリス (映画監督)
- 出演:ナタリー・グレゴリー(アリス)、レッド・バトンズ(白ウサギ)ほか
- アーウィン・アレン製作による、オールスターのテレビ映画。前後編のミュージカル仕立てで、前編が『不思議の国のアリス』、後編が『鏡の国のアリス』になっている。幼いナタリー・グレゴリーがオレンジ色の衣装を着てアリスを演じた[2]。
- アリス・イン・ミラーランド (1998年、イギリス)原題:Alice Through the Looking-Glass
- 監督:ジョン・ヘンダーソン
- 出演:ケイト・ベッキンセイル(アリス)、イアン・ホルム(白の騎士)ほか
- 『鏡の国のアリス』をもとにしたテレビ映画。子供に本を読み聞かせていた母親が、その本の物語に入り込んでしまう、という異色の設定で、25歳のベッキンセイルがアリスを演じている。また原作では出版前にカットされた部分である「かつらを被った雀蜂」の場面がはじめて映像化された[2]。なお『アナザーワールド 鏡の国のアリス』の訳題もある。
- 不思議の国のアリス (1999年、アメリカ合衆国)原題:Alice in Wonderland
- 監督:ニック・ウィリング
- 出演:ティナ・マジョリーノ(アリス)、ウーピー・ゴールドバーグ(チェシャ猫)、マーティン・ショート(帽子屋)、クリストファー・ロイド(白の騎士)
- NBC製作のテレビ映画。人前で歌うことが苦手なアリスの成長物語という明快な筋立てで、一部『鏡の国のアリス』のエピソードを含める。アリス役は黄色のフレアワンピースとボーダーソックスで、作品全体として鮮やかなカラー設定になっている。ウーピー・ゴールドバーグは人面のチェシャ猫を演じた[2][7]。
テレビシリーズ
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
- 不思議の国のアリス(1981年、ソビエト連邦)原題:Алиса в стране чудес
- 監督:エフレム・プルジャンスキー
- ソビエト連邦で公開された作品。
- ふしぎの国のアリス (アニメーション、1983年-1984年、日本・西ドイツ)
- 不思議の国のアリス (1986年、イギリス)原題:Alice in Wonderland
- Adventures in Wonderland(1991年-1995年、アメリカ合衆国)
- 出演:エリザベス・ハーノイス(アリス)
- 1951年のディズニー映画を基にしたディズニー製の実写シリーズ。100話構成。学校に通っているアリスは、1話ごとに鏡を通って自由に不思議の世界を出入りし、そこでの冒険を通じて現実の問題を解決する。
- アリス(2009年、アメリカ合衆国)原題:Alice
- 監督:ニック・ウィリング
- 出演:カテリーナ・スコーソン
- Syfyで放映された2話構成のミニシリーズ。
- Once Upon a Time in Wonderland(2013年10月放送開始、アメリカ合衆国)
- 邦題未定。
- 出演:ソフィー・ロウ
- 『ワンス・アポン・ア・タイム』のスピンオフ。ABC系列で放送中。
OVA
[編集]- 不思議の国のアリス(1981年、ソ連(現:ロシア))
- 鏡の国のアリス(1982年、ソ連(現:ロシア))
- 鏡の国のアリス(1987年、オーストラリア)Burbank Films製作、Andrea Brescianiほか監督
- 不思議の国のアリス(1988年、オーストラリア)Burbank Films製作、Rich Trueblood監督
- 不思議の国のアリス(1995年、日本・アメリカ合衆国)ジェットラグプロダクション製作
パロディ
[編集]この節に雑多な内容が羅列されています。 |
- Betty in Blunderland(1934年、アメリカ合衆国)ベティ・ブープを使った短編アニメ映画。
- ミッキーの夢物語(1936年、アメリカ合衆国)ミッキーマウスを使った『鏡の国のアリス』の翻案。短編映画。
- エッチの国のアリス(1976年、アメリカ合衆国)バット・タウンゼント監督、クリスティーネ・デ・ベル主演のポルノ映画。
- The Care Bears Adventure in Wonderland(1987年、アメリカ合衆国)ケアベアのアニメ映画。
- ハローキティの不思議の国のアリス(1993年、日本、OVA)キティちゃんを使った短編アニメ。
- 不思議の国の美幸ちゃん(1995年、日本、OVA)CLAMP原作。
- 「アリスSOS」NHK天才てれびくんの特番アニメ(1998年~1999年、日本)中原涼原作。
- ふしぎの国のネネちゃん(1999年、日本)『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』と同時上映された短編アニメーション映画である『クレしんパラダイス! メイド・イン・埼玉』の1作。ネネが主人公である、スピンオフ的な作品。原作のおとぎ話とはかけ離れた内容である。
- コードギアス 反逆のルルーシュ ナナリーinワンダーランド(2012年、日本、OVA) コードギアスの外伝アニメ
- 12秒(2015年、日本)アイドルグループHKT48のPV。
- 戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED(2018年、ブシモ)「戦姫絶唱シンフォギア」のアプリゲーム。アプリ内でのイベント『ワンダーランドギアイベント』でアニメ内の登場人物が全員アリスたちのキャラの格好をする。
出典
[編集]- ^ a b c d Mikado Koyanagi 「映画の国のアリス」『Milk』 No.7、エクスナレッジ、2008年10月、156-157頁。
- ^ a b c d e f g h i 「Alice in Movie Land」『Dollybird』 vol.14、ホビージャパン、2010年7月、58-63頁。
- ^ Histry of the Film Industry in Fort Lee, Fort Lee Film Commission. 2013年2月閲覧。
- ^ Jim Beckerman (2009年10月14日). “Curiouser and curiouser”. NorthJersey.com. 2012年9月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月閲覧。
- ^ Hal Erickson. “Alice in Wonderland:Overview”. 2013年2月閲覧。
- ^ a b c 夏目康子「表現者をひきつけるアリス」『Switch』 No.5、Switch Publishing、2008年5月、 68-69頁。
- ^ a b 「アリス映画・DVDコレクション」『spoon.』 No.71、プレビジョン、2010年2月、28-29頁。
- ^ 長澤國雄 「映像の国のアリス」 『翻訳の世界』 1996年6月号、日本翻訳協会、28-29頁。
外部リンク
[編集]- Alicediction(アリス映画多数紹介)
- 『ふしぎの国のアリス』(1903)(日本語字幕つきパブリックドメイン動画)(The Baker Street Bakery)