日本製鋼所室蘭製作所

日本製鋼所室蘭製作所
操業開始 1907年11月1日 (1907-11-01)
場所 日本の旗 日本 北海道室蘭市
座標 北緯42度19分10秒 東経140度59分13秒 / 北緯42.31944度 東経140.98694度 / 42.31944; 140.98694座標: 北緯42度19分10秒 東経140度59分13秒 / 北緯42.31944度 東経140.98694度 / 42.31944; 140.98694
業種 鉄鋼業
生産品 鍛鋼品、鋳鋼品圧力容器類クラッド鋼板・鋼管風力原動機
従業員数 約800名
敷地面積 111ヘクタール (1.11 km2)[1]
住所 北海道室蘭市茶津町4
所有者 日本製鋼所
日本製鋼所M&E

日本製鋼所室蘭製作所(にほんせいこうしょむろらんせいさくしょ)は、北海道室蘭市にある日本製鋼所及び日本製鋼所M&E工場

概要

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日本製鋼所の創業地であり、1907年明治42年)に操業開始した。世界で唯一となる670 tの鋼塊を鍛錬することができる工場であり[2][3]、14,000 tのプレス機を2機保有している。大型の発電所で使用するローター軸・タービン軸[2][3]天然ガスを輸送するクラッド鋼管石油精製に使用する圧力容器などを製造することができるため、世界屈指の生産設備と技術力によりエネルギー産業を支えている[2][3]

1911年(明治44年)に皇太子(後の大正天皇)の視察に備えて茶津山の麓に新築した和洋折衷迎賓館は、皇太子により「瑞泉閣」と命名された[4]。この瑞泉閣には、1936年(昭和11年)、陸軍特別大演習のために来道した昭和天皇も行幸している[5]。1918年(大正7年)からは、近代化により衰退していた日本刀の製作技術向上と保存のために「瑞泉鍛刀所」を開設している[4][6]。「瑞泉閣」と「旧発電所」が経済産業省の「近代化産業遺産」や文化庁の「日本遺産」に認定されているほか[7][8]、室蘭市の有形文化財や文化庁の「日本遺産」に国産第1号となる複葉機エンジン室0号[8]、室蘭市の民俗文化財に「瑞泉鍛刀所の鞴(ふいご)」が指定されている[9]

設備

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  • 120トンハイパワー電気炉[10]
  • 150トンエレクトロスラグ溶解炉[10]
  • 14,000トン水圧プレス[10]
  • 14,000トン油圧プレス[10]
  • 熱処理炉[10]
  • 四重式広巾厚板圧延機[10]
  • 12,000トン造管プレス[10]
  • 大型NC立旋盤[10]
  • 大型400トン旋盤[10]
  • 圧力容器溶接組立ライン[10]
  • 室蘭研究所[11]

歴史

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1906年明治39年)、「鉄道国有法」によって北海道炭礦鉄道から業種転換した北海道炭礦汽船は、夕張炭の納入をきっかけとする呉海軍工廠との結びつきから[12]室蘭港に面する入江を埋め立てて製鉄所建設を計画した[13]。ところが、兵器の製造を急務としていた政府は製鋼所建設を求めたため、翌年に日本国内初の民間兵器工場となる「日本製鋼所」を設立し、室蘭の海軍用地の貸与を受けて工場を建設した[14]。取締役会長には井上角五郎が就任した[注 1][13]。そのため、日本製鋼所は軍事機密に深く関わっており「世界の4大民間兵器工場の1つ」とも称されるなど軍需面で重要な位置を占めていた[15]。その中でも室蘭製作所は戦艦「長門」の主砲、戦艦「陸奥」の砲身、戦艦「大和」の装甲板を製造するなど戦争遂行に欠かせない工場になっていた[15][16]。1942年(昭和17年)に内閣総理大臣東条英機が北海道視察の一環として室蘭製作所を訪れて従業員達を激励したが[15]、15年前に大日本帝国陸軍の歩兵中佐として工場を視察しようとした際には入構を拒否されたという[15]。これは、日本製鋼所が主に大日本帝国海軍の兵器を造っていたので、陸軍には見せられないと判断したためである[15]。陸軍・海軍からの発注が増え続けると工場は慢性的な人手不足に陥ったため、国によって市民を徴用し、子供も動員した[15]

関連施設

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関連会社

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アクセス

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脚注

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注釈

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  1. ^ なお、井上角五郎は製鉄所建設への思いが捨て切れず、日本製鋼所創立と同年に「北海道炭礦汽船輪西製鐵場」(現在の新日鐵住金室蘭製鐵所)の建設を始め、1909年(明治41年)に操業開始した[13]
  2. ^ 1945年(昭和20年)に会社から切り離し、翌年に運営を「奉賛会」に委譲[18]。1950年(昭和25年)に宗教法人となった[18]
  3. ^ その後、1949年(昭和24年)に「日本製鋼所生活協同組合」となり、1972年(昭和47年)に室蘭中央生活協同組合と合併して「室蘭生活協同組合」(室蘭生協)と改称した[19]。2000年(平成12年)に「生活協同組合コープクレア」と改称したが、2003年(平成15年)に自己破産している[20]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m パンフレット, p. 2.
  2. ^ a b c 日本製鋼所室蘭製作所”. 室蘭ものづくり. 2017年3月4日閲覧。
  3. ^ a b c 室蘭市の主な企業” (PDF). ふるさと室蘭ガイドブック. 室蘭市. p. 1. 2017年3月4日閲覧。
  4. ^ a b その他” (PDF). ふるさと室蘭ガイドブック. 室蘭市. p. 2. 2017年3月4日閲覧。
  5. ^ 原武史『昭和天皇御召列車全記録』新潮社、2016年9月30日、78頁。ISBN 978-4-10-320523-4 
  6. ^ 日本刀の鍛刀技術を継承する日本製鋼所”. 三井百科. 三井広報委員会. 2017年3月4日閲覧。
  7. ^ a b 近代化産業遺産群33 〜近代化産業遺産が紡ぎ出す先人達の物語〜”. 経済産業省. p. 28 (2007年). 2017年3月3日閲覧。 “我が国の近代化を支えた北海道産炭地域の歩みを物語る近代化産業遺産群”
  8. ^ a b c 炭鉄港 WEBサイト”. 2019年7月15日閲覧。
  9. ^ 室蘭市の文化財”. 室蘭市. 2017年3月4日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i j パンフレット, pp. 4–5.
  11. ^ パンフレット, p. 6.
  12. ^ 長谷部宏一 1987, p. 2.
  13. ^ a b c 岩間英夫 1997, pp. 5–6.
  14. ^ 長谷部宏一 1987, p. 4.
  15. ^ a b c d e f “<1>東条英機を門前払い 兵器製造、まるで軍隊”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年11月11日). http://dd.hokkaido-np.co.jp/cont/topostwar70year_3_6/ 2017年3月4日閲覧. "戦後70年へ、北海道と戦争 <第3章・軍需と動員>" 
  16. ^ “戦艦大和記念館に展示の砲身に日鋼室蘭の銘板を設置”. 室蘭民報 (室蘭民報社). (2010年4月22日). http://www.muromin.co.jp/murominn-web/back/2010/04/22/20100422m_01.html 2017年3月4日閲覧。 
  17. ^ a b c d 沿革”. 日本製鋼所. 2017年3月3日閲覧。
  18. ^ a b c 御傘山神社(室蘭市)”. 北海道神社庁. 2017年3月5日閲覧。
  19. ^ a b “室蘭生協が4月1日から「コープクレア」に名称を変更”. 室蘭民報 (室蘭民報社). (2000年3月28日). http://www.muromin.co.jp/murominn-web/back/2000/200003/20000328.txt 2017年3月5日閲覧。 
  20. ^ “コープクレアが自己破産を申請、全店舗が営業停止に”. 室蘭民報 (室蘭民報社). (2003年2月6日). http://www.muromin.co.jp/murominn-web/back/2003/200302/20030206.txt 2017年3月5日閲覧。 
  21. ^ 日外アソシエーツ編集部 編『日本災害史事典 1868-2009』日外アソシエーツ、2010年9月27日、93頁。ISBN 9784816922749 
  22. ^ 沿革”. 社会医療法人 母恋. 2017年3月4日閲覧。
  23. ^ 室蘭活性化に期待*日鋼新事務所が竣工”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (2003年1月15日). 2017年3月3日閲覧。
  24. ^ 鈴木孝、久保典男 2015, p. 1.
  25. ^ “日鋼室蘭製作所の創業百周年祝い、記念式典開催”. 室蘭民報 (室蘭民報社). (2007年11月2日). http://www.muromin.co.jp/murominn-web/back/2007/11/02/20071102m_01.html 2017年3月4日閲覧。 
  26. ^ “室蘭の月島機械が操業開始、技術融合し世界に挑戦”. 室蘭民報 (室蘭民報社). (2019年4月10日). http://www.muromin.co.jp/murominn-web/back/2019/04/10/20190410m_01.html 2019年7月15日閲覧。 
  27. ^ 環境・社会報告書2013” (PDF). 日本製鋼所. p. 31 (2013年). 2017年3月5日閲覧。
  28. ^ a b c d e f g h i パンフレット, pp. 6–7.

参考資料

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関連項目

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外部リンク

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