沼須ねぎ

沼須ねぎ(ぬますねぎ)は、ネギの一種。利根郡沼須村(現・沼田市沼須町)および周辺地域で栽培される伝統野菜である。

沿革

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沼須村は沼田台地を背にした南向きの地[1]で、片品川流域の肥沃な土壌[2]にも恵まれたことから古くより野菜の生産などが行われてきた。沼須村は江戸と利根郡沼田町(現・沼田市)を結ぶ経路上に位置し、沼田町の台所を支える兵站の様な立ち位置を占めてきた[2]

明治期には沼田町下之町(現・沼田市下之町)に、村として組織的に契約して野菜の売り場を確保していた。明治10年10月17日、沼田町における野菜の販売がこれまで通り継続を認められた、と古記録にある。当時の農家にとって貴重な現金収入であった[1]

昭和初期には麦の間作で産地が形成されるに至る[3]。昭和3年の統計で沼田町のネギの生産量は1,500貫(5,625㎏)である[4]

昭和40年代の沼須地区について、ある郷土史家は「日々に栄え行く沼田市の台所を賄う蔬菜の給源地」というコメントを残した[5]

しかし、病害に弱く栽培に手間がかかるため生産量は減少した。2020年現在、「沼須ねぎ生産者組合」に所属する7 -8軒の農家が家庭菜園向けのネギ苗の生産・販売を行っているに過ぎない。絶滅の危機に直面している[6]

保存と継承

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2020年、群馬県立利根実業高等学校は、利根沼田農業協同組合や沼田市と協力の上、沼須ねぎの保護・保全に取り組むことになった。7月22日、校内の農業用ハウスで採種作業が行われた。乾燥して保管していたネギぼうず約300㎏から、10アールの苗床に播種可能な種が取れた[6]。9月16日、播種講習会を開催し生産者指導のもと、同校近くの畑に沼須ねぎの種まきをし、翌年9月29日にも校内の畑に種まきが行われた。

特徴

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他のねぎに比べ、葉が長くとがっており、白い部分が長い。柔らかで食味が良いため、加熱する調理に適する[7]

農薬の使用は極力抑え、有機肥料を使った栽培を行っている[7]。より良い品種を残すため、採種用のねぎは交配される心配がない環境へ植え直し、採種をしている[3]

脚註

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  1. ^ a b 金子蘆城『<読む年表>利根沼田の歴史』上毛新聞社事業局出版部、2016年11月25日、315-316頁。ISBN 978-4-86352-168-1 
  2. ^ a b 桑原健次郎(編著)『写真集 明治大正昭和沼田』国書刊行会〈ふるさとの想い出72〉、1979年10月20日、134頁。doi:10.11501/9641776 
  3. ^ a b 沼須ねぎ”. 沼田市ずかん. 沼田市農産物ブランド化及び6次産業化推進協議会. 2020年9月17日閲覧。
  4. ^ 『群馬県精髄利根郡誌』千秋社、1996年7月15日、21頁。ISBN 4-88477-204-0 
  5. ^ 小林美鳥「戊辰役当時の沼須村」『沼田城』第21号、利根沼田郷土史研究会、沼田市商和通り、1968年9月10日、40頁。 
  6. ^ a b 渡辺隆治. “絶滅危機の伝統野菜・沼須ねぎ 復活へ、利根実高生「種まき」”. 東京新聞TOKYO Web. 株式会社中日新聞社. 2020年9月17日閲覧。
  7. ^ a b 沼須ねぎ”. ぬまたブランド. 沼田市農産物ブランド化及び6次産業化推進協議会. 2020年9月17日閲覧。