混浴温泉世界
混浴温泉世界(こんよくおんせんせかい)は、大分県別府市で3年に1回トリエンナーレ形式で開催されている国際芸術祭。国籍も多様なアーティストが別府温泉に滞在し構想した新作を発表する。2015年の3回目に終了する。
概要
[編集]別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」は、大分県別府市で3年に1回開催されている市民主導型の芸術祭。2009年に始まり2012年に第2回展が開催された[1]。 湯けむりや、町の猥雑さ、移民文化などの独自の文化や景観から、別府を「いたるところに不思議が顔をのぞかせる魔術的な港町」(公式HP/概要より抜粋)と捉え、別府の持つさまざまな個性とアーティストの出会いから、サイトスペシフィックなアートプロジェクトを誕生させる。
名称について
[編集]「混浴温泉世界」の名称は、性別や国籍、年齢などを超え、時間や場を共有してほしいという願いと、「混浴温泉」の持つ寛容性や多様性から名付けられた。
- コンセプト文
大地から湯が湧きだし、窪みに溜まる。それは誰のものでもない。人はそれを慈しみ、自発的に守り維持する。 そして、ここに住む人も旅する人も、男も女も、服を脱ぎ、湯につかり、 国籍も宗教も関係なく、武器も持たずに丸裸で、それぞれの人生のあるときを共有する。 しかし、つかりつづければ頭がのぼせ、誰もそのままではいられない。 入れ替わり湯から上がり、三々五々、ここを去っていく。
人は必ずここを立ち去り、再び訪れる。ゆるやかな循環。—別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」総合ディレクター芹沢高志、「混浴温泉世界 場所とアートの魔術性」(ISBN 978-4-309-90864-9 河出書房新社 2010年)
2009年
[編集]「パスポート」とよばれる鑑賞チケットと地図を片手に温泉、港、商店街、神社などに点在するアート作品を巡る、旅をテーマにした芸術祭。 8組の国際的なアーティストが参加した展覧会「アートゲート・クルーズ」、ダンスプログラム「ベップダンス」、音楽ライブ「ベップオンガク」、若手アーティストによる展覧会「わくわく混浴アパートメント」が展開された。
- 期間:2009年4月11日(土)〜6月14日(日) 65日間
- 開催場所:別府市内各所(中心市街地、鉄輪地区、別府国際観光港 ほか)
- 主催:別府市、別府現代芸術フェスティバル2009実行委員会[2]
関連
[編集]- 文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門)受賞
- この事業を含む、これまでの文化事業の成果が認められ、別府市は文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門)を受賞した[3]。
- マイケル・リンの壁画作品
- 「アートゲート・クルーズ」招聘アーティストのマイケル・リンが制作した壁画作品は、平成24年度版 中学校美術科教科書(日本文教出版株式会社)に掲載された[4]。
2012年
[編集]別府八湯になぞらえ、美術、ダンスからなる8つのアートプロジェクトを展開。それぞれのアートプロジェクトが、かけがえのない体験と鮮烈な記憶を残すものとなるよう、「8つの想像力の源泉」をテーマに設計された。 2010年から開始された市民文化祭「ベップ・アート・マンス」も同時開催され、ダンス公演やライブイベント展覧会など、多彩なイベントが展開された。
- 期間:2012年10月6日(土)〜12月2日(日) 58日間
- 開催場所:別府市内各所(浜脇地区、中心市街地、鉄輪地区、別府国際観光港エリア)
- 主催:別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会
関連
[編集]- 旅手帖 beppu
- 公式ガイドブックとして「旅手帖 beppu 混浴温泉世界特集号」を全国で無料配布した[5]。
- 国東半島アートプロジェクト
- 「混浴温泉世界」チケット購入者は、会期中に大分県国東半島で開催された「国東半島アートプロジェクト2012」のツアーバスに無料で乗車できた[6]。
- 廣瀬智央「浜脇の長屋」
- 混浴温泉世界2012で制作された、別府市浜脇エリアの古い長屋を作品化した「天空の庭」と「カボスの家」は、会期終了後に作品空間に宿泊できる施設「浜脇の長屋」としてリニューアルした[7]。
2015年
[編集]最後に開催された。まちの記憶とアーティストの対話が生み出す未知の世界を体験する少人数のアートツアー「アートゲートクルーズ」を実施。2009年まで現役のストリップ劇場だった「永久別府劇場」を会場に、現代美術家や照明デザイナー、パフォーマーが繰り広げるお化け屋敷を制作した。
- 期間:2015年7月18日(土)〜9月27日(日)
- 開催場所:大分県別府市内各所(中心市街地、鉄輪地区)
- 主催:別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会
関連
[編集]おおいたトイレンナーレ2015
大分市で開催される“トイレ”を舞台としたアートイベント[8]。
脚注
[編集]- ^ 佐藤章史. “現代芸術、まちの魅力に 別府温泉、市民が仕掛け”. 47NEWS. 2013年6月26日閲覧。
- ^ 2010年、別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会に改名
- ^ “別府市が文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門)受賞!”. おおいた暮らし. 2013年6月26日閲覧。
- ^ “現代芸術の巨大壁画 中学の美術教科書に”. 大分合同新聞社. 2011年5月17日閲覧。
- ^ “「混浴温泉世界」ガイドブック無料配布”. 大分合同新聞 (2012年8月18日). 2013年6月26日閲覧。
- ^ “国東半島アートプロジェクト:半島舞台にツアー開幕 /大分”. 毎日新聞社. 2013年6月26日閲覧。
- ^ “アート作品に泊まる「浜脇の長屋」”. マガジンハウス コロカル. 2013年7月31日閲覧。
- ^ “ストリップ劇場がお化け屋敷に?不思議のまち・別府市で「混浴温泉世界」開催”. まぐまぐニュース! (2015年6月13日). 2024年1月21日閲覧。
参考文献
[編集]- artscapeアートプロジェクト探訪【別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」の必然を呼び寄せるものとはー会期前に見る街の事情】 久木元 拓(首都大学東京システムデザイン学部准教授)
- 【文化芸術創造クラスターの形成に向けて〜美術館からひろがる創造都市】 株式会社日本政策銀行 大分事務所
- ニッセイ基礎研究所「研究員の目」【別府から国東へ〜「混浴温泉世界」から始まるアートの旅と夢】 吉本光宏
- artscape学芸員レポート【別府現代芸術フェスティバル2012「混浴温泉世界」、生きる場所ーボーダーレスの空へ、祝CAMK10周年!九州アート全員集合展】 坂本顕子(熊本市現代美術館)