聴牌

聴牌テンパイ)は、麻雀において、和了(アガリ)に必要なが残り1枚となった状態のこと。また、この状態になることをテンパる、あるいは張るという。転じて興奮する、浮き足立つ、パニックを起こすといった意味に使われることもある。

概要

[編集]

麻雀では原則として14枚の牌を用いて和了形を完成させ、かつ任意の役を成立させることで和了となる。

和了形とは、特定の原則3枚の牌の組み合わせ(面子)を4組と、同一牌2枚の組合わせ(雀頭)をそろえた形である(七対子国士無双は例外)。

プレイヤーの手牌は通常13枚であり、自摸をすると一時的に14枚となり、直後に1枚捨てて再び13枚に戻ることを繰り返す。手牌が13枚であり、有効な牌を1枚加えて和了形となる状態を聴牌という。逆にいえば、聴牌とは、和了形の14枚から任意の1枚を除いた13枚を持っている状態といえる。

聴牌時において和了するために必要な牌(最後に必要となるあと1枚の牌)を和了牌、もしくは待ち牌といい、牌Aが待ち牌である状態を「A待ち」という。なお、和了牌が1種類であるとは限らない。後述するように、10種類以上の牌によって和了することが可能なケースもある。

聴牌したとき門前なら、すなわちチーもポンも明カンもしていない状態ならば、立直をかけることができる。聴牌していることを宣言してしまうかわりに、点数を上積みできる可能性がある。もちろん、門前で聴牌しても立直をかける義務はない。

通常、聴牌といえば上に定義したとおり、13枚の状態をさす。しかし広義には、それに余剰牌1枚を加えた14枚を持っている状態、つまり打牌する直前の状態も「聴牌」に含まれる。

なお、槓子が含まれる場合、手牌の総数は15枚以上となるが、槓子は4枚を1つの面子として扱う特殊な形であり、「4面子1雀頭」と言う形式は変わらないため、便宜上、本項では原則として槓子を含まない和了形を前提にする。同じ面子でも、槓子は純手牌ではなく、既に晒している牌であるため、待ちの形として順子や刻子を待つことや、自分の槓子によって本来の待ち牌の一部が潰れるあるいは空聴になることはあっても、待ちの形として槓子を待つことはありえない。

聴牌と関連する用語とルール

[編集]

○面待ち・○面張

[編集]

複数の和了牌が○種類ほど存在する聴牌に対して、「○面待ち」もしくは「○面張」と表現する。

中国語においては「○張」と表現され、日本国内の麻雀の書籍などでも古い言い方を採用している場合は「○門待ち」もしくは「○門張」と表現される場合がある。しかし日本語においては事実上「○待ち」もしくは「○張」という表現が普及している。

特に順子(シュンツ)の端が足りない2連続の中張牌で構成された搭子の場合は両端の数牌が和了牌に該当し、「両面 / 両門(リャンメン)」待ちと表現される。

一向聴

[編集]

聴牌するまでに有効な牌があと何枚必要かを向聴(シャンテン)という単位で数える。あと1枚で聴牌になるなら一向聴(イーシャンテン)、あと2枚なら二向聴(リャンシャンテン)といった具合である。聴牌までの早さという観点から手の良し悪しを測るための簡便な単位である。

テンパイの形に多くのパターンがあるように、一向聴の形にも数種類のパターンがある。その分類や具体的な牌姿例などは、一向聴のページを参照。

ノーテン罰符

[編集]

局の最後まで誰もアガらずに終わった場合、聴牌していたかどうかによって点数のやりとりが行われる。これをノーテン罰符という。漢字で不聴罰符と書き、「ノーテンばっぷ」と読ませる表記になっていることもある。聴牌していた人数とノーテンだった人数によって受け渡しされる点数は変動するが、総額で3000点やりとりされる。

  • 1人がテンパイ、3人がノーテンの場合:各ノーテン者が1000点をテンパイ者に支払う
  • 2人がテンパイ、2人がノーテンの場合:各ノーテン者が1500点をテンパイ者に支払う
  • 3人がテンパイ、1人がノーテンの場合:ノーテン者が1000点ずつ各テンパイ者に支払う
  • 全員がテンパイ、または全員がノーテンの場合:点棒の受け渡しは発生しない

聴牌の種類

[編集]

聴牌にはアガリに結びつく状態としての聴牌と、前述の#ノーテン罰符の判定における聴牌扱いとの2種類がある。

アガリに結びつく聴牌

[編集]

闇聴 (黙聴)

[編集]

門前で聴牌し、立直をかけないことを闇聴 (ヤミテン) もしくは黙聴 (ダマテン) という。

(例) リーチをかける必要がないケース/東1局の東家

四萬五萬五萬六萬七萬赤五筒六筒七筒赤五索六索七索八索八索   ドラ表示牌 七索
タンピン三色ドラドラ赤赤で計8飜、親の倍満24000点が確定しており、他家に警戒されるリスクを冒してまでリーチを掛ける必要がない。したがってダマテンを選択している。場は東1局で、24000点を出あがりすれば相手はいきなり残り1000点になる。開局早々のチャンス手を確実にモノにしたければ、和了率が低下するリーチは控えてダマテンに構え、手堅く和了を狙うほうが戦略として優れている。

(例) 点棒状況を理由とするダマテン/南4局10巡目の西家

(南4局) 東家
31000点
南家
13500点
北家
27500点
西家(自分)
28000点
二萬二萬三萬四萬五萬五筒六筒七筒三索四索五索六索七索   ドラ表示牌 六筒
タンピンドラ1の三面張で、普通の状況ではリーチをかけて満貫にする牌姿である。しかし局はオーラスでトップとの差は3000点、この状況では満貫や跳満は必要なく、ダマテンの3900点で逆転できる。したがって必要のないリーチは控えて和了率の高いダマテンを選択している。また、3着とは500点差であり、この状況でリーチ棒を出すと一時的にではあるが3着に落ちてしまい、そのまま流局して北家がテンパイしていた場合に3着で終わってしまうリスクが生じる。

片和了

[編集]

片和了 (かたあがり) とは、待ち牌が2種類またはそれ以上あるが、そのうちの一部(1種類もしくはそれ以上)の牌について、偶発役でもつかない限りは縛り役の条件を満たせないため和了ることのできないようなテンパイのことである。

(例) 役牌の片和了

二萬二萬六索七索八索二筒三筒四筒發發   五萬五萬五萬
發ならば和了できるが、二萬では役がないため和了できない。

(例) タンヤオの片和了

二萬二萬六索七索八索二筒三筒四筒七筒八筒   五萬五萬五萬
六筒ならば和了れるが、九筒では和了れない。

(例) 多面張の片和了(三色同順)

五萬六萬七萬八萬九萬九萬九萬五索六索七索   五筒六筒七筒
単純な片和了のほか、このような多面張の片和了もある。この場合、待ちは四萬五萬七萬八萬の4種(本来は五面張となる形だが、八萬九萬が辺張なので四面張)。このうち七萬八萬では五萬六萬七萬の順子が成立し、三色同順で和了れるが、四萬五萬では五萬六萬七萬の順子が成立しなくなってしまい役が付かない。

このほか片和了がありうる役としては、チャンタ純チャン一気通貫三色同刻が該当する。

また片和了に似た事例としては、門前役の平和一盃口や、門前役でなくても上に述べたような役を門前で聴牌している場合で、その役になる待ちとならない待ちがあり、その役にならない待ちの方ではツモだと門前清自摸和で和了れるが、ロンでは立直をかけているか偶発役でしか和了れないという例がある。

なお、役が付かない待ち牌の見逃しでも、和了り牌の見逃しとして同巡内フリテンのルールが適用される。

ツモ専

[編集]

ツモ専とは、ツモアガリであれば役があるが、ロンアガリでは役のない門前清自摸和三暗刻のみの聴牌のことである。まれに振聴の時の事を指す場合もある。

(例) 副露したツモ専

一萬一萬一萬五萬五萬五萬三筒三筒七筒七筒   七索八索九索
ツモれば三暗刻。しかしそれ以外の役が無いため、当たり牌が切られても出あがりはできない。

振聴

[編集]

振聴 (振り聴、フリテン) とは自分の和了牌を自分で河に捨てている (振っている) 状態のこと。次の3つのうち1つでも該当すればフリテンになる。通常のルールでは、フリテンになった場合、ツモ和了はできるが、ロン和了はできなくなる

  1. 自分の和了牌を自分で切ってしまっている場合。
  2. ダマテン状態で他家の捨牌をロンせず見逃し、自分のツモ番がまだ来ていない状態。これを同巡内フリテンと言う。
  3. リーチ後、他家の捨てた和了牌をロンせずに見逃した場合。見逃した後はフリテンとして扱われる。これをリーチ後のフリテンと言う。

現在広く遊ばれているアリアリ麻雀では、前述の通り「フリテン状態のロン和了は不可、ただしツモ和了は可」という制約が一般的である。ただし、時代や地域によってフリテンの制約には定義揺れがあり、初手合わせの相手と卓を囲む場合などは、他の細目なども含め事前に確認しておくのが望ましい。

詳細は「振聴および振聴#フリテンの定義揺れ」を参照

ノーテン罰符に関係する聴牌

[編集]

形式聴牌

[編集]

形式聴牌(けいしきてんぱい)とは、役のない聴牌のこと。しばしば形聴(けいテン)と略される。一般的なルールでは、門前清自摸和嶺上開花搶槓海底などの偶然役[注釈 1]では和了れる。

(例)門前でないため立直もできない

三萬四萬五萬五萬六萬七萬四索五索西西   一筒一筒一筒

現在一般的なルールでは、流局時の形式聴牌を認めることが多い。そのため、不聴罰符の支払い回避、または親の連荘を狙って、流局間際に形式聴牌にする戦術がとられる。形式聴牌を認めないルールで流局の場合は、形式聴牌者は不聴罰符を支払い、親が形式聴牌であれば親流れとなる。

空聴

[編集]

空聴カラテン)とは、形としては聴牌しているものの、捨牌や副露、ドラ表示牌などで和了牌が全て見えており、和了の望みがない状態のことである。純カラ聴牌、純カラ (じゅんカラ) とも呼ばれる (純カラは「純粋に空っぽ」の略) 。以下に挙げるように複数の場合が考えられる。ノーテン罰符のやり取りにおいて聴牌と扱われるか否かは取り決めによる。

(例) アガリ牌をすべて自分で使ってしまっている場合

九萬九萬一筒一筒一筒四筒六筒發發發   牌背五筒五筒牌背
自分のカンによってあがり牌が消滅している。
二萬二萬二萬二萬三萬四萬五萬五萬五萬五萬中中中
形としてはノベタンの二萬五萬待ちだが、アガリ牌を自分の手牌ですべて使い切っている。リーチをしていなければ二萬五萬のどちらかを暗槓し嶺上牌の単騎待ちとしてあがることは一応可能(あがり役は中が確定、中を鳴いていなければ三暗刻、待ち牌が萬子か字牌なら混一色が複合)だが、気づかずにこの形でリーチをしてしまえばあがれなくなる。


(例) アガリ牌が場に4枚出切っている場合

他家の副露:牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背   三萬三萬三萬
ドラ表示牌:三萬
自分の手牌:二萬四萬六萬七萬八萬四筒五筒六筒五索五索五索七索七索
アガリ牌である三萬が場に出切っており1枚もない。

待ちの形式

[編集]

待ちは、待っている牌が面子のどの部分に当たるかによって分類される。得点計算の際の符にも関わってくる。

四面子一雀頭

[編集]

面子一雀頭形では、待ちは必ず以下の両面、嵌張、辺張、シャンポン、単騎のいずれかになる。

このうち両面、嵌張、辺張の3つは順子を待つ形であり、対々和形式をとる役ではこれらの待ちをとることはできない。逆にシャンポンは刻子を待つ形であり、二盃口のように4順子1雀頭と見なす必要のある役はシャンポン待ちで成立させることはできない。これらに対し、単騎は雀頭を待つ形となる。なお原理上、シャンポンと単騎(国士無双を除く)は搶槓で和了することができない。

両面待ち

[編集]

両面待ち(リャンメンまち)、または両面張(リャンメンチャン)とは、聴牌時において3つの面子と雀頭が完成しており、最後に両面搭子が残された状態をいう。

(例)牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 三索四索 牌背牌背 待ち牌は二索五索

待ち牌の枚数は最大2種類8枚。順子を待つ形であるため、両面待ちがありうる待ち牌は数牌となるが、一般に両面待ちの待ち牌となる2種類の数牌はその数の差が3となる。2種類の数牌の数の組み合わせとしては1-4・2-5・3-6・4-7・5-8・6-9の6種類がありうる。

簡単に作ることのできる複数待ちで、最大8枚の牌を待てることから、待ち牌の数の面では5種の中で最も良い待ち方である。両面待ちを和了しても符点はつかない。平和については両門待ちで和了することが役の成立要件の一つである。

嵌張待ち

[編集]

嵌張待ち(カンチャンまち)とは、聴牌時において3つの面子と雀頭が完成しており、最後に嵌搭子が残された状態をいう。嵌張待ちで和了すると符点2点が付く。

(例)牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 四索六索 牌背牌背 待ち牌は五索

待ち牌の枚数は最大で1種類4枚。嵌張待ちとしてありうる待ち牌は中張牌となる。両面待ちに比べると不利な形であるが、この例の場合なら三索もしくは七索を引くことで両面待ちに変化する。

また、嵌張待ちは戦略的に引っかけ立直を狙いやすい。たとえば 一筒三筒五筒から五筒を切ってリーチした場合、両面待ちを想定した相手は二筒を安全牌だと思い込む場合がある。立直を受けた相手の心理としてはより安全な牌を選ぶ傾向が強く、筋は安全という心理を逆に衝いた戦略である。引っかけリーチについては立直のページも参照のこと。

辺張待ち

[編集]

辺張待ち(ペンチャンまち)とは、聴牌時において3つの面子と雀頭が完成しており、最後に辺搭子が残された状態をいう。辺張待ちで和了すると符点2点が付く。

(例)牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 八萬九萬 牌背牌背 待ち牌は七萬

待ち牌の枚数は最大で1種類4枚。辺張待ちとしてありうる待ち牌は3と7の数牌である。嵌張と異なり一手で両面への変化ができないため、嵌張よりさらに不利な形である。12の辺搭子なら4、89の辺搭子なら6を自摸すれば嵌張に変化させることが出来るが、そこから両面に変化させるにはもう一手必要である。なお順子形になる場合でも断么九や緑一色のように一九牌を持たない役では辺張待ちが存在しない。

三色同順一気通貫などの役に絡む順子を待つ場合、両面待ちではこれらの役が確定しないのに対し、純粋な嵌張待ちや辺張待ちの場合は待ち牌が1種類しかないのでこれらの役が確定することになる。その場合は振聴や安目上がりの心配がないことと、両面待ちと違い相手が待ち牌を読みにくいため立直を掛けやすい。

双碰待ち

[編集]

双碰待ち(シャンポンまち)とは、聴牌時において3つの面子が完成しており、その他に対子が2つある状態を指す。シャボあるいはバッタと呼ばれることもある。

(例)牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 發發 五萬五萬 待ち牌は發五萬

待ち牌の枚数は最大で2種類4枚。両面と同じく2種待ちだが、枚数は嵌張・辺張と同じであるため、両面ほど有利な形ではない。ただし、同じ4枚待ちの嵌張・辺張が1種待ちであるのに対し、シャンポンは2種待ちであるため、その分嵌張・辺張よりは有利である。また、関連性のない2種類を待ち牌にできるという、他のどの待ち方にもない独自のメリットもある。刻子を待つ形であるため、シャンポン待ちでは字牌も含めて全ての種類の牌が待ち牌となりうる。 なお、シャンポンには待ちによる符がつかないが、和了すれば必ず刻子が完成するため、その分の符点は入る。

シャンポン待ちを和了すると、2つの対子のうち一方は雀頭、もう一方は刻子となる。刻子はツモ和了の場合には暗刻子となり、ロン和了の場合には明刻子になる。三暗刻および四暗刻はツモかロンかで成否が変わることがあるので注意が必要である。具体的には、シャンポン待ちの四暗刻聴牌はツモのみ四暗刻が成立する(ロンでは三暗刻対々和)のでツモり四暗刻といい、暗刻でない面子を1つ含むシャンポン待ちの三暗刻聴牌も同様である。

単騎待ち

[編集]

単騎待ち(タンキまち)とは、聴牌時に4面子が完成しており、雀頭のうち1枚を欠いている状態である。単騎待ちで和了ると2符がつく。

(例)牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 三索 牌背牌背牌背 待ち牌は三索

待ち牌の枚数は最大で1種類3枚で、5種の中では最も少ない。ただし、待ち牌を切り替えやすいうえ、その際にフリテンとなるリスクも少ない。また、ツモ牌によっては、既成の面子との組み合わせによって二面待ちないし多面張にもなる。シャンポン待ちと同じく、待ち牌の牌種を問わない。

単騎待ちに関連する役としては、四暗刻単騎と四槓子がある。前者は、ツモ・ロン問わず四暗刻が成立し、ルールによってはダブル役満となる。後者の聴牌は4面子を全て晒すため、必ず単騎待ち(裸単騎)となる。

裸単騎
[編集]

4副露して手牌が1枚の状態を裸単騎と呼ぶ。裸単騎の状態では安全牌を最大で1枚しか確保できないため、オリるのが困難である。

(例)七萬   六索六索六索   二筒二筒二筒   五筒五筒五筒   九萬九萬九萬

この状態で四萬七萬待ちの聴牌を被せられた時、運良く七萬を引けば良いが、四萬を掴んだ場合は放銃が確定する。
雀荘などでは、メンバーの裸単騎を禁ずる場合もある(みっともないからという理由)。
地獄単騎
[編集]

単騎待ちにて、待ち牌が捨牌や他家の副露ドラ表示牌などで2枚見えていて、有効な和了牌が1枚しか残っていない状態を、俗に地獄単騎という。地獄単騎は主に字牌で行われる。これは字牌が順子を構成せず、また2枚が捨てられているために、使用するのが難しい状態であることを利用している。

四面子一雀頭に当てはまらない特殊形

[編集]

例外的なあがり方である七対子および国士無双の場合、七対子の方は必ず単騎待ちになるが、国士無双は上記のいずれにも当てはまらない特殊形になる。

七対子の単騎待ち

[編集]

七対子を聴牌した場合は、必然的に単騎待ちとなる。ただし七対子は符が固定(25符、ローカルルールでは50符)のため、単騎待ちの2符はカウントされない。

(例)白 牌背牌背 牌背牌背 牌背牌背 牌背牌背 牌背牌背 牌背牌背 待ち牌は白

国士無双一面待ち

[編集]

国士無双一面待ちとは、国士無双の聴牌形において、雀頭は確定済みで、么九牌の1枚が欠けている状態を指す。単騎待ちは1種3枚待ちなのに対して、国士無双一面待ちは1種4枚待ちとなる。この待ち方を国士単騎と呼ぶ事もあるが、本来の単騎待ちは単独牌を対子にする形なのに対し、国士単騎は手牌に含まれていない牌で和了する形なので、同じ「単騎」と呼ばれる待ちでも本来の単騎待ちとは性質の異なるものである。本来の単騎待ちは七対子を含めて原理上搶槓は不可能なのに対し、「国士単騎」は搶槓が可能という珍しい(唯一の)単騎待ちである。国士無双・○○待ち(○○には「發」・「一索」など、足りない1牌の名前が入る)とも呼ぶ。

(例)一萬九萬一索九索一筒九筒東南西北白發發 待ち牌は中

国士無双十三面待ち

[編集]

国士無双十三面待ちとは、国士無双の聴牌形において、手牌に13種13枚の么九牌が1枚ずつ揃っており、雀頭が確定していない状態を指す。雀頭を待つので形式的に単騎待ちと見て十三面単騎と呼ばれることもある。この場合、最大で13種類39枚もの牌を待てる、最高の待ちの形である。ただし、ここに至るまでに1枚でも么九牌を捨てているとフリテンとなってしまうため、完成すればあがり易いものの、完成させるまでが非常に困難である。そのため、フリテンでない純粋な十三面待ちの国士無双は、ルールによってはダブル役満とされることもある。

(例)一萬九萬一筒九筒一索九索東南西北白發中 待ちはすべての么九牌

待ちの種類

[編集]

聴牌時において待ち牌がm種類存在することを「m面待ち」あるいは「m面張(メンチャン)」と言う。四面子一雀頭、すなわち4つの完成面子と1つの対子によって成立する役を聴牌している場合には、聴牌時において手牌に含まれる未完成面子の形によって待ち牌が何種類あるか決定される。

待ち牌が3種類以上ある場合を多面待ち、または多面張(タメンチャン)という。多面待ちの中には、一見しただけでは待ちの判別が難しいものが多数ある。そのようなものについては、ある程度の訓練が必要である。また、四面張以上の複雑な形の場合は、パターンを丸暗記してしまったほうが早いこともある。頻出する多面張形はそれほど多くはない。

以下、待ち牌の種類の数について詳述する。なお、牌背牌背牌背は完成面子、牌背牌背は雀頭を意味する。いずれも待ち牌には影響しない牌によって構成されている(または完成面子の場合は副露面子・暗槓のように公開されて完全に独立している)ものとする。

一面待ち

[編集]

基本的な形式は上記の嵌張待ち辺張待ち単騎待ち、及び国士無双の一面待ちであるが、この他にも四枚使いによって本来の待ちが潰れて一面だけの待ちになることもある。

シャンポンの一面待ち

シャンポン待ちは二面張とは限らない。以下のように一方の待ち牌を既に自分で4枚使用している場合はシャンポンの一面待ちとなる。この場合もシャンポン待ちに変わりはないので、待ちによる符は得られない。この場合、待ち牌の枚数は最大で1種類2枚。

(例)一筒一筒二筒二筒三筒三筒三筒三筒 北北 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は北のみ。三筒は既に4枚使われ待ちになっていない。
両面の一面待ち

両面待ちにも一面待ちとなるケースがある。やはり形式は両面なので待ちによる符は得られない。この場合、待ち牌の枚数は最大で1種類4枚。

(例)一索二索二索三索三索三索三索四索四索五索 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は六索のみ。三索は既に4枚使われ待ちになっていない。
ノベタンの変則形

後述するノベタンの端にある数牌のうちいずれがさらに刻子を形成している場合、その数牌を4枚使用しているため、結局ただの単騎待ちと同じ一面待ちになる。この場合、待ち牌の枚数は最大で1種類3枚(すでに自分で1枚使用しているため)。

(例)五筒五筒五筒五筒六筒七筒八筒 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は八筒

二面待ち

[編集]

基本的な形式は上記の両面待ち双碰待ちがあるが、基本的な待ちの形式の派生形として次のようなものがある。

ノベタン

[編集]

単騎待ちの変則形で、連続する数牌が1枚ずつ4枚並んだ形。端にある2種類の数牌が待ち牌となる。待ち牌の枚数は最大で2種類6枚(端の数牌を自ら1枚ずつ使用しているため)。両面待ちと同じように、筋を待つが同時に単騎待ちなので、「両面単騎」とも言われることがある。

(例)四筒五筒六筒七筒 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は四筒七筒

亜両面

[編集]

両面待ちの片方が雀頭にも取れるような形。待ち牌の枚数は最大で2種類6枚。

(例)三筒四筒五筒五筒 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は二筒五筒。両面待ちの一種だが、このような形を特に亜両面(ありゃんめん)と言う。

変則二面待ち

[編集]
数牌nの暗刻子と、数牌n±2との複合

嵌張待ちとも単騎待ちともとれるため、待ち牌は2種類になる。待ち牌の枚数は最大で2種類7枚(数牌n±2を自ら1枚使用しているため)。

(例1)六筒六筒六筒八筒 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は七筒八筒
(例2)四筒六筒六筒六筒 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は四筒五筒
数牌nの暗刻子、n±1,n±2,n±3の順子とn±5の複合

嵌張待ちとも単騎待ちともとれるため、待ち牌は2種類になる。待ち牌の枚数は最大で2種類7枚(数牌n±5を自ら1枚使用しているため)。

(例1)二索二索二索三索四索五索七索 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は六索七索
(例2)二索四索五索六索七索七索七索 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は二索三索

三面待ち

[編集]

三面待ちには、1-4-7、2-5-8、3-6-9など単一の筋を待つ三面張(狭義の三面待ち)と、1-4-3、2-5-4など複数の筋を待つ変則三面張の2種類がある。狭義の三面張以外の三面張を変則三面張とするもので、頻出する変則三面張には特に名称がつけられている場合もある。

狭義の三面待ち

[編集]

両面搭子と順子とがm,m+1,m+2,m+3,m+4という形で複合する場合である。これを三面待ちと呼び、他の変則三面待ちと区別する場合もある(狭義の三面待ち)。ピアノ待ちと呼ばれることもある。わずか5枚の牌によって最大で3種類11枚もの待ち牌を持つことが可能であり、良い待ちのひとつとされる。

(例)二萬三萬四萬五萬六萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背
この場合、待ち牌は一萬四萬七萬

4枚の牌によって成立する三面待ち

[編集]

数牌nの暗刻子に、数牌n±1が1枚くっついている形である。最も少ない枚数の牌によって構成される三面待ちでもある。nを刻子とみることも雀頭とみることもできるため、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は最大で3種類11枚。異なる筋の牌が待ち牌に含まれるため、狭義の三面待ちよりも良い待ちであるとされる場合もある。

(例)二萬三萬三萬三萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は一萬四萬 二萬

7枚の牌によって成立する三面待ち

[編集]
ノベタンと順子の複合
[編集]

順子にノベタンが複合している三面待ちには以下の2種類がある。

(例)一萬二萬三萬四萬五萬六萬七萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
待ち牌は一萬四萬七萬
ノベタンと順子との複合により、数牌がm,m+1,m+2,m+3,m+4,m+5,m+6という配列をなす場合である。2つの順子の取り出し方によって、3つの単騎待ちが成立する。待ち牌の枚数は最大で3種類9枚。三面ノベタンとも呼ばれる。
(例)二萬三萬四萬四萬五萬六萬七萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
待ち牌は一萬四萬七萬
この場合は、ノベタンと順子に重なりがある。ノベタンとみることも両面待ちとみることもでき、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は上のもう1つのパターンと同じく最大で3種類9枚である。上の例では、一萬は両面待ち、四萬は両面および単騎待ち、七萬は単騎待ちとなる。
ノベタンと暗刻の複合
[編集]

ノベタンと暗刻で間が1つ開いている形。

(例)二萬二萬二萬四萬五萬六萬七萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
待ちは 四萬七萬 三萬の三面張。間の開いていない連続な形の場合は五面張になる。
エントツ形
[編集]

順子の端の牌が計3枚あり、うち2枚がシャンポンの一方を構成する場合である。シャンポン待ちとみることも、両面待ちとみることもできる。待ち牌の枚数は最大で3種類7枚。この形は頻繁に見られるため、他の変則三面張と区別して煙突待ちあるいはエントツ形と名前が付いている。

(例)二萬三萬四萬四萬四萬西西 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は一萬四萬 西
暗刻の複合によって単騎待ちも成立する両面待ち
[編集]

7枚の数牌がn,n,n,n±1,n±2,n±2,n±3によって構成される場合、3枚ある数牌nを雀頭とみる場合の両面待ちと刻子とみる場合の単騎待ち(もしくはカンチャン待ち)との複合により、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は最大で3種類9枚。

(例1)二萬二萬二萬三萬四萬四萬五萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は三萬六萬 四萬
(例2)二萬三萬三萬四萬五萬五萬五萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は一萬四萬 三萬

単騎待ちと嵌張待ちが成立する三面待ち
[編集]
(例)二萬二萬二萬四萬六萬六萬六萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は三萬四萬五萬。待ち牌の枚数は最大で3種類11枚。
一盃口形の三面待ち
[編集]

数牌nの刻子がn-1の対子と、n+1の対子にはさまれる形である。nを刻子とみる場合のシャンポン待ちと、雀頭とみる場合の単騎待ち(あるいはカンチャン待ち)との複合により、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は最大で3種類5枚。

(例)一萬一萬二萬二萬二萬三萬三萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は一萬二萬三萬
4枚使いが含まれる三面待ち
[編集]
(例1)六萬六萬七萬八萬八萬八萬八萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は六萬九萬 七萬
(例2)一萬一萬二萬二萬二萬二萬三萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は一萬四萬 三萬
(例2)は本来は後述の四面待ちとなる形だが、両面となるべき待ちの1つが辺張になっているため三面待ちになっている。

10枚の牌によって成立する三面待ち

[編集]
完成面子1つのほかに対子が5つあり、うち4つが連続する数牌によるものである場合

連続する数牌対子の両端のいずれを雀頭とみるかによって、2通りのシャンポン待ちが成立することから三面待ちとなる。数牌の対子が3つしか連続していない場合は単なるシャンポン待ちに過ぎないことに注意する必要がある。待ち牌の枚数は最大で3種類6枚。

(例)二萬二萬三萬三萬四萬四萬五萬五萬西西 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は二萬五萬 西
シャンポンの他にリャンメンにも取れる一盃口含みの形

連続する暗刻2つに対子が1個くっついている形の場合、もう1つの対子とシャンポン待ちを形成するだけでなく、両面待ちも成立する。

(例)二萬二萬三萬三萬三萬四萬四萬四萬六索六索 牌背牌背牌背
二萬六索のシャンポン待ちになっているのは分かりやすいが、このような形の場合は五萬でもあがることができる。萬子部分から223344を抜き取れば、34の両面が残るので5萬も待ちになっていることが分かる。パターンとして覚えておくべき形。
10枚の数牌がm,m,m±1,m±2,m±2,m±3,m±4,m±5,m±5,m±5という構成である場合

m±5を刻子とみることも雀頭とみることもできるため、三面待ち(両面待ちとカンチャン待ちの複合)となる。待ち牌の枚数は最大で3種類9枚。

(例1)一萬一萬二萬三萬三萬四萬五萬六萬六萬六萬 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は一萬四萬 二萬。六萬を刻子とするなら一萬が雀頭になり1-4萬の両面待ちに、六萬を雀頭とするなら嵌2萬待ちになる。
(例2)三萬三萬三萬四萬五萬六萬六萬七萬八萬八萬 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は五萬八萬 七萬。上の例と同じく、三萬を暗刻と取るなら5-8萬の両面待ち、雀頭と取るなら嵌7萬待ちになる。
1から9までの数牌10枚によって構成される三面待ち

ノベタンによる二面待ちとみることもカンチャン待ちとみることもできるため、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は最大で3種類10枚。この形が成立するパターンは2通りしかない。

(例1)一萬一萬一萬二萬三萬四萬六萬七萬八萬九萬 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は六萬九萬 五萬
(例2)一萬二萬三萬四萬六萬七萬八萬九萬九萬九萬 牌背牌背牌背
この場合、待ち牌は一萬四萬 五萬

13枚の牌によって成立する三面待ち

[編集]

13枚の数牌がm,m,m,m±1,m±1,m±1,m±1,m±2,m±2,m±2,m±2,m±3,m±3という構成である場合、三面待ちとなる。m,m±1,m±2の順子が3つあると考えた場合の両面待ちと、m,m±1を刻子、m±2を雀頭とみた場合の一面待ち(本来両面待ちであるが一方を4枚使用しているため)との複合である。待ち牌の枚数は最大で3種類7枚。

(例1)二萬二萬二萬三萬三萬三萬三萬四萬四萬四萬四萬五萬五萬
この場合、待ち牌は二萬五萬 六萬
(例2)五萬五萬六萬六萬六萬六萬七萬七萬七萬七萬八萬八萬八萬
この場合、待ち牌は五萬八萬 四萬

四面待ち

[編集]

7枚の牌によって成立する四面待ち

[編集]
三面張と単騎待ちの複合
[編集]
(例)二萬三萬三萬三萬四萬五萬六萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
待ちは 一萬四萬七萬 二萬の四面張。パターンとして覚えておくべき形。
2筋の両面待ち
[編集]
(例)二萬三萬四萬四萬五萬五萬五萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
待ちは 三萬六萬 一萬四萬。パターンとして覚えておくべき形。
一盃口形の四面待ち
[編集]
(例)二萬二萬二萬三萬三萬四萬四萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
待ちは 二萬三萬四萬五萬。パターンとして覚えておくべき形。
4枚使いが含まれる四面待ち
[編集]
(例1)四萬四萬五萬五萬五萬五萬六萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
待ちは 四萬七萬 三萬六萬。四萬を雀頭とするなら五萬が暗刻となり、4-7萬の両面待ちになる。五萬を雀頭とするなら高目一盃口の形の3-6萬待ちになる。すなわち、4枚使いの牌のまたぎが両方とも待ちになっている。「またぎ筋全部」のパターンとして覚えておくべき形。
(例2)三萬四萬五萬五萬五萬五萬六萬 牌背牌背牌背 牌背牌背牌背
待ちは 四萬七萬 三萬六萬で同じ。こちらは4枚の牌によって成立する三面待ちにおける単騎部分がノベタンとなり、暗刻部分と重なったものに相当する。暗刻と重ならない方向にノベタンとなった場合は五面待ちとなる。