イヌエンジュ

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イヌエンジュ
イヌエンジュ
イヌエンジュ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : バラ亜綱 Rosidae
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
: イヌエンジュ属 Maackia
: イヌエンジュ M. amurensis
学名
Maackia amurensis Rupr. et Maxim.[1]
シノニム
和名
イヌエンジュ(犬槐)

イヌエンジュ犬槐、学名:Maackia amurensis)はマメ科落葉高木。シノニムはM. buergeriM. floribunda

名称[編集]

和名は中国で珍重されていたエンジュに似ているが、格下だと表すイヌをつけたもの。中国植物名は「朝鮮槐」で[1]、やはりエンジュに似た別物と認識されていた。ただし「エンジュ」の語源・古称とされるエニスは在来種であるイヌエンジュを指していたと考えられる。

学名の amurensis は本種が見出され場所であるアムール川流域にちなむ。

別名では、カライヌエンジュ[1]、トウイヌエンジュ[1]、ハネミノイヌエンジュ[1]、ハネミイヌエンジュ[1]、ケハネミイヌエンジュ[1]などがある。

特徴[編集]

分布はアムール川流域、ロシアから中国北東部、朝鮮半島。日本では北海道、本州、四国、九州の山地や川原などに自生する[9]

落葉広葉樹。樹形はまっすぐ垂直には伸びず、幹全体がゆらりと曲がったような形になる[10]

葉は長さ20 - 30センチメートルの奇数羽状複葉で、左右対称につく小葉は3 - 6対ある[9]。小葉は長さ4 - 7センチメートルの卵形で全縁[9]。裏面は褐色の軟毛が密に生えている[9]

花期は7〜8月頃で黄白色で総状花序の花を咲かせる。公園などに植栽されることも多い。伐った生木には独特の臭気がある。

エンジュとの大きな違いは成木の樹皮で、エンジュは縦に細かく裂けるが、イヌエンジュは菱形やそれがいくつか連なった波型に粗く裂開する。

利用[編集]

植栽樹として庭木などに用いられる。日当たりを好む性質から、南から西向きの庭に適している[10]。植栽適期は、12 - 3月中旬とされる[9]

アイヌはこの木を「チクペニ」と呼び、墓標に用いた。「エンジュ」の名で流通している材木は実際にはイヌエンジュである。赤みの濃い芯材と淡色の縁材の取り合わせが特徴で、美観、強度、耐久性があるが流通量が限られ、床柱など装飾材に珍重される他、フローリング、家具、その他工芸品や細工物などに用いられる。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Maackia amurensis Rupr. et Maxim.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年6月20日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Maackia floribunda (Miq.) Takeda f. pubescens (Koidz.) Kitam.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年6月20日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Maackia floribunda (Miq.) Takeda”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年6月20日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Maackia buergeri (Maxim.) Tatew.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年6月20日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Maackia floribunda (Miq.) Takeda var. chinensis (Takeda) Hatus.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年6月20日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Maackia amurensis Rupr. et Maxim. var. buergeri (Maxim.) C.K.Schneid.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年6月20日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Maackia amurensis Rupr. et Maxim. subsp. buergeri (Maxim.) Kitam.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年6月20日閲覧。
  8. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Maackia amurensis Rupr. et Maxim. var. pubescens (Koidz.) Ohwi”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年6月20日閲覧。
  9. ^ a b c d e 山﨑誠子 2019, p. 110.
  10. ^ a b 山﨑誠子 2019, p. 111.

参考文献[編集]

  • 山﨑誠子『植栽大図鑑[改訂版]』エクスナレッジ、2019年6月7日、110 - 111頁。ISBN 978-4-7678-2625-7 

関連項目[編集]