クーフィー体

ウィキペディアから無料の百科事典

ミナレットに見られるバンナーイ。クーフィー体によるタイルパターンで構成されている。
9世紀にクーフィー体で書かれたバスマラの字。原典はカイロのイスラム美術館に収蔵されている(Inventar-Nr. 7853)。

クーフィー体(クーフィーたい、: خط كوفي‎、: Kufic)は、アラビア文字書体で、ナバテア文字より発展したアラビア文字の最古の書法である。その名称はイラクの都市クーファにちなみ、アッバース朝が当時クーファを首都としていたことからその名がついた。イスラム教が生まれた時点ですでにアラビア半島全域において用いられ、クルアーンの最初の写本はクーフィー体により記された。英語の「Kufic」の音からクフィック体と呼ばれることもある。

文字体系[編集]

クーフィー体は曲線的な筆致ではなく、角張った直線形の字体である点が特徴としてあげられる。また、クーフィー体ではبتثのように後世で用いられる子音字の点を使用していなかった。この点は後に改良され、年月を経て幾つかの変更を加えながら現在もイスラム諸国で使用されており、地域ごとに微妙な違いがある。また、北アフリカ地域ではクーフィー体を改良し丸みを帯びたマグリブ書体英語版が発展した[1]ため、アラビア半島で使用されているクーフィー体とは大きな違いがある。

使用例[編集]

クーフィー体は8世紀から10世紀にかけ、クルアーンの写本における一般的な書法として定着した。

クーフィー体はセルジューク朝や初期のオスマン帝国貨幣や建造物で使用されていた。また、トルコにおいてはトルコ共和国成立以前に建築された国内の公共建築物にはクーフィー体による装飾体が使用されている。

現在のイラクの国旗の中央の文字はクーフィー体を用いてアッラーフ・アクバルألله أكبر)と記されている。

幾何学文様のクーフィー体[編集]

直線形や幾何学文様で構成されるクーフィー体は長方形の素材と相性がよく、タイルなどに広く用いられた。イランでは、ムハンマドやアリのようなイスラームにおいて聖なる名前とされる名前で埋め尽くしたタイルによって建築物全体を構成する手法があり、この手法はバンナーイ英語版として知られている[2]

西洋への影響[編集]

擬クーフィー様式(クーフェスク、: Kufesque)は中世ルネサンス期にクーフィー体を取り入れつつ、アラビア文字を使用しない様式としてヨーロッパで見られた様式である。ヨーロッパ建築においてアラビア文化を取り入れたものはしばしば擬クーフィー様式として言及される。クーフィー体に見られる直線形や角を強調した書法を取り入れており、この様式はイスラーム建築の装飾において一般的である[3]

ギャラリー[編集]

参考文献[編集]

  • Mack, Rosamond E. Bazaar to Piazza: Islamic Trade and Italian Art, 1300–1600, University of California Press, 2001 ISBN 0-520-22131-1

脚注[編集]

  1. ^ アラビア書道の歴史 日本アラビア書道協会公式サイト、2012年11月12日閲覧。
  2. ^ Jonathan M. Bloom; Sheila Blair (2009). The Grove encyclopedia of Islamic art and architecture. Oxford University Press. pp. 101, 131, 246. ISBN 978-0-19-530991-1. https://books.google.co.jp/books?id=un4WcfEASZwC&pg=PA212&redir_esc=y&hl=ja 2012年1月4日閲覧。 
  3. ^ Mack, p.51

関連項目[編集]

外部リンク[編集]