ソロアイドル

ウィキペディアから無料の百科事典

ソロアイドル
基本情報
職種アイドル
職域芸能人

ソロアイドルとはアイドルの形態の一種。日本において複数人のメンバーから構成されるアイドルグループに対して、一人で活動するアイドルのことを指す。1980年代に全盛期を迎え、その後徐々に衰退した[1]。2022年現在では、一部の地下アイドル等を除くと、メジャーシーンにおいては女性ソロアイドルはほぼ存在していない。

用例[編集]

「ソロアイドル」という言葉は遅くとも2012年には使用されている[2][3]

2010年代のグループアイドル全盛期におけるソロ活動をするアイドルを指すのみならず、ピンクレディーキャンディーズといったグループに対して1980年代の「アイドル」を指しても用いられる[4][5]

アイドルグループの定着による「アイドル」に対するレトロニムでもある。

なお、グラビアアイドル和製英語であり、女性モデルの一種である。バラエティーアイドル(バラドル)はバラエティタレントのことであるから、タレントの一種である。よって本項におけるアイドル、ソロアイドルには原則として含まれない。

特徴[編集]

プロモーション上、様々な女性を広く浅くそろえるグループアイドルに対してソロアイドルは歌って踊るのみでなくそのアイドル独特の特徴を持つ必要があるとされる[2]。ファンの好みが多様化する中で、グループアイドルに対抗して一人の個性で多数のファンを獲得することは難しいとされる[6]

歴史[編集]

1970年代後半のグループアイドルの時代と変わって、1980年代初頭はソロアイドル台頭の時代であった[7]。1980年から1990年代に入りアイドルの「アーティスト化」が進むまでの約10年間はソロアイドル戦国時代とも称される[8]。1980年にソロアイドルデビュー第一波、1982年に第二波があり[8]、第二波でデビューした中森明菜堀ちえみ早見優らは特に「花の82年組」と呼ばれる[4]。1980年代後半に入ると秋元康プロデュースのおニャン子クラブのヒットを契機として状況は一変する。おニャン子クラブの流行によりソロアイドルは淘汰され、ソロアイドルの大きな世代交代が発生した[8]。また、おニャン子クラブの解散後は「アイドル冬の時代」と呼ばれ、ソロアイドルにも不遇の時代が続いた[7]

1990年代前半以降には安室奈美恵などの小室哲哉プロデュースのアーティスト系アイドルが興隆した。これはアイドル的ルックスを持ちつつ「歌手」として実力を持つ者であった[9]。それまでアイドルの魅力とされた「未熟さ」は「幼稚さ」ととられるようになり、自ら作詞作曲・歌唱を行ってこそまっとうなアーティストであると位置付けられ、高度な歌唱・ダンス能力を持ったアイドルが出現した[7]

一方、1998年にデビューしたモーニング娘。が台頭する。2000年代に入るとハロー!プロジェクトの人気が拡大し、他のアイドルは「00年代冬の時代」を経験することとなる[8][7]。モーニング娘。がメンバーチェンジによってユニット名とタレントを分離可能とし、異例の長寿を獲得するのに対し、ソロアイドルはタレント個人のアイドルとしての寿命以外を持ちえなかった[10]松浦亜弥藤本美貴以降はソロアイドル人気は下火となる[6]

特に2000年代には、浜崎あゆみ宇多田ヒカル椎名林檎倉木麻衣中島美嘉BoA愛内里菜大塚愛YUI倖田來未木村カエラ伊藤由奈等といった、多数のソロ女性歌手による「歌姫」ブームが巻き起こったが、このようなアーティスト路線のソロ歌手の人気と入れ替わる形で、従来型の女性ソロアイドルは、メジャーシーンでは完全に衰退することとなった。

2000年代後半よりAKB48と派生グループが興隆したが、その一方で遅くとも2012年にはグループアイドルの飽和状態が指摘され、ソロアイドル回帰の動きがみられるようになる[2]。2012年より講談社が開催しているアイドルコンテストである「ミスiD」は従前のアイドルとは一線を画す人間の内面にスポットがあてられたもので、ここでは小林司らによってソロアイドルの質的転換が図られている[11]

しかし、2010年代にメジャーシーンで活躍した女性ソロアイドルは秋元系グループからソロデビューした極一部のメンバーくらいであり、2020年代の現在でも相変わらず坂道グループSTARDUST PLANET等のグループアイドルが全盛を極めているため、地下アイドルや歌手活動を行っている一部の女性声優等を除くと、メジャーシーンにおいては女性ソロアイドルはほぼ存在していない。

代表的な女性ソロアイドル[編集]

代表的な男性ソロアイドル[編集]

ローカルで活動する主な女性ソロアイドル[編集]

吉川友夏目亜季小池美由寺嶋由芙絵恋ちゃん柊木りおKOTOみきちゅ平野友里空野青空リナチックステイト上月せれな葉月福永幸海綾瀬理恵百花繚乱いずこねこ里咲りさひぜんりさまかべまおキセキレイ虹の架け橋 (アイドルグループ)てのひらえるディアブルボアNina Pelea武藤彩未みきちゅいずこねこ姫乃たま小桃音まい(元ソロアイドル)、空野青空(元ソロアイドル)、 るなっち☆ほし(元ソロアイドル)、2&都築かなまりえ(42)仲村コニー柳瀬蓉HiKARu星乃ちろる池本真緒神崎豊柚希未結

コンテスト[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 読売新聞2014年9月24日大阪夕刊8面
  2. ^ a b c (勝俣 & 有馬 2012)
  3. ^ FRIDAY2012年5月12日号 2016年8月23日大宅壮一文庫雑誌記事索引で確認
  4. ^ a b 朝日新聞2013年9月14日朝刊
  5. ^ 読売新聞2015年3月11日東京夕刊8面
  6. ^ a b c d (週刊東洋経済編集部 2013)
  7. ^ a b c d e (上原 2013)
  8. ^ a b c d e f g h i j k (つのはず & 木村 2012)
  9. ^ 読売新聞2014年12月19日東京朝刊23面
  10. ^ (箕輪 2013)
  11. ^ (高倉 & 上原 2014)

参考文献[編集]

  • 勝俣哲生、有馬ゆえ「次に来る!サブカル関連ヒット予想」『日経エンタテインメント!』2012年11月、日経BP社、2012年11月、150-153頁。 
  • 上原太郎「女性アイドル史 盛りと冬を繰り返し会える時代に」『日経エンタテインメント!』2013年11月、日経BP社、2013年11月、34-35頁。 
  • 「アイドルブームは継続でAKB任期は盤石」『週刊東洋経済』2014年1月、東洋経済新報社、2013年12月、171頁。 
  • 高倉文紀、上原太郎「グラビア美少女の新潮流」『日経エンタテインメント!』2014年9月、日経BP社、2014年9月、44-49頁。 
  • つのはず誠、木村尚恵「女性アイドルを作ったトップクリエイター80人」『日経エンタテインメント!』2012年3月、日経BP社、2012年3月、78-83頁。 
  • 箕輪雅美「モーニング娘。とAKB48のビジネスシステム : その生成プロセスと新奇性・競争優位性」『京都マネジメント・レビュー』第22巻、京都産業大学、44-63頁。