タマリンド

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タマリンド
タマリンド
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : デタリウム亜科 Detarioideae
: タマリンド属 Tamarindus
: タマリンド T. indica
学名
Tamarindus indica L
和名
タマリンド、チョウセンモダマ
英名
Tamarind

タマリンド(答満林度[1][2]、羅望子[2]: tamarind学名: Tamarindus indica)は、マメ科[注 1]タマリンド属の常緑高木。タマリンド属で唯一の種である。果実が食用になる。別名チョウセンモダマ(朝鮮藻玉)。

リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物種の一つである[3]

形態、分布[編集]

タマリンドの木

アフリカ熱帯が原産で、インド東南アジアアメリカ州などの亜熱帯および熱帯各地で栽培される。

樹高は20m以上になる常緑高木で、は長さ15-20cmの羽状複葉小葉は10-20片で長楕円形。は総状花序をなし、5弁で径3cm。黄色に橙色または赤色のすじが入る。

果実は長さ7-15cm、幅2cmほどのやや湾曲した肉厚な円筒形のさやで、黄褐色の最外皮は薄くもろい。1個ないし10個の黒褐色で扁平な卵円形の種子との間隙はペースト状の黒褐色の果肉で満たされる。この果肉は柔らかく酸味があり、食用とされる。

半乾燥地に適応しているが、雨の多いところでも生育する。

品種[編集]

酸味が弱く甘味が強い生食に適した品種もある。

食用[編集]

タマリンドの果実
タマリンド、生
100 gあたりの栄養価
エネルギー 1,000 kJ (240 kcal)
62.5 g
糖類 57.4 g
食物繊維 5.1 g
0.6 g
飽和脂肪酸 0.272 g
一価不飽和 0.181 g
多価不飽和 0.059 g
2.8 g
トリプトファン 0.018 g
リシン 0.139 g
メチオニン 0.014 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
2 µg
(0%)
18 µg
0 µg
チアミン (B1)
(37%)
0.428 mg
リボフラビン (B2)
(13%)
0.152 mg
ナイアシン (B3)
(13%)
1.938 mg
パントテン酸 (B5)
(3%)
0.143 mg
ビタミンB6
(5%)
0.066 mg
葉酸 (B9)
(4%)
14 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(2%)
8.6 mg
ビタミンC
(4%)
3.5 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(1%)
0.1 mg
ビタミンK
(3%)
2.8 µg
ミネラル
ナトリウム
(2%)
28 mg
カリウム
(13%)
628 mg
カルシウム
(7%)
74 mg
マグネシウム
(26%)
92 mg
リン
(16%)
113 mg
鉄分
(22%)
2.8 mg
亜鉛
(1%)
0.1 mg
セレン
(2%)
1.3 µg
他の成分
水分 31.4 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

料理の酸味料や食品添加物増粘安定剤として用いられる他、ピクルス、シロップ、清涼飲料水に加工されるなど、利用範囲の非常に広い果実である。その他に甘みと酸味を楽しむために生食、ドライフルーツ、砂糖漬け、塩漬けなどに加工される。香りの主成分はフルフラール2-アセチルフランなど。

種子の胚乳部分から抽出して得られたものから、食品添加物としての多糖類を主成分とする増粘安定剤タマリンドガム(タマリンドシードガム)を製造する。

調味料として[編集]

酒石酸クエン酸による強い酸味をもつ黒褐色の果肉が使われる。果肉だけを集めて固めた数百gのブロックか、浸出したエキスの形で売られるのが一般的である。ブロックのものは水に浸して、ペーストのようになったものを調理に用いる。

インド料理では果肉を熱湯に溶かしてチャツネを作る他、サーンバールラッサムの酸味づけに用いる。インドのマクドナルドでは、マクイムリー(McImli:「イムリー」(इमली)とはヒンディー語でタマリンドの意)というタマリンドソースをつけてもらうことができる。

タイ料理トムソムパッタイフィリピン料理シニガンの酸味づけにもタマリンドが欠かせない。イラク中部と南部ではドルマの酸味づけにタマリンドを用いることがある。

ベトナム料理の甘酸っぱいスープであるカインチュアの酸味づけにもタマリンドを用いる。

デザートとして[編集]

ラテンアメリカ東南アジアでは、タマリンドの果肉から清涼飲料水を作る。タマリンドの缶ジュースも市販されている。

東南アジアではジャムやソフトキャンディーに加工したり、砂糖漬け、塩漬けのおやつとしても売られる。ベトナムではクラッシュアイスと煎りピーナツを加えたダー・メ(Đá me:「氷タマリンド」の意)や、さらに練乳を加えたスア・ダー・メ(Sữa đá me:「ミルク氷タマリンド」の意)として飲む。

生食にはスイートタマリンドと呼ばれる種類の果実を樹上で成熟させ水分が20%以下にしたものを収穫して用いる。

その他[編集]

フィリピンでは、マラリアに効能があるとして葉をタマリンド茶として用いる。

その他[編集]

  • 果実はサルの好物で、マダガスカルキツネザルの主要な食物の1つである。
  • 材木は家具や道具の材料に用いられる。パルプを金属磨きとして用いる地域がある。
  • 属名はアラビア語で「インドのナツメヤシ(デーツ)」を意味する「タマル・ヒンディー」(تمر هندي)に由来する。アラビア語圏でタマリンドが知られるようになったのが、原産地のアフリカから直接持ち込まれたのではなく、果実がナツメヤシ類似の交易品としてインドからもたらされたためと推定される。アラビア語から中世ラテン語tamarindusを経由して、英語になったのは16世紀初頭[4]
  • トマス・エリオット英語版(Thomas Elyot)は著書『The Castel of Helth』(1533年)の中で、タマリンドを「胆汁を浄化するもの」として勧めている[4]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 新村出 編「タマリンド」『広辞苑』(第6)岩波書店、2008年。 
  2. ^ a b 三省堂百科辞書編輯部編 「タマリンド」『新修百科辞典』 三省堂、1934年、1350頁。
  3. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 34. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358055 
  4. ^ a b エイトウ 2021, p. 265.

参考文献[編集]

  • 『東南アジア市場図鑑』 植物篇、弘文堂、2001年。 
  • ジョン・エイトウ『食のことば由来事典 食材・料理・飲み物』石川久美子、おおつかのりこ、児玉敦子、中村久里子 訳、柊風舎、2021年10月29日。ISBN 978-4-86498-085-2OCLC 1305143262 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]