ナンバー・ナイン・ビジュアル・テクノロジー

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ナンバー・ナイン・ビジュアル・テクノロジー
Number Nine Visual Technology
略称 NumberNine、#9
本社所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
02421-3141
18 Hartwell Avenue Lexington, MA
設立 1982年
業種 ハードウェア
事業内容 グラフィックチップ・カードの設計・製造・販売
外部リンク www.nine.com (ウェイバックマシン)
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ナンバー・ナイン・ビジュアル・テクノロジー英語: Number Nine Visual Technology)はかつて存在したグラフィックチップおよびビデオカードの開発・製造メーカー。1982年に設立、1999年に営業活動を停止。同社は最初の128ビットグラフィックプロセッサ(Imagine 128)、また最初の256色および1680万色のビデオカードを開発した[1]

社名と同じく、同社の多くの製品名がロックバンド「ビートルズ」の楽曲に由来したものになっている(RevolutionImaginePepperTicket to Rideなど)。システムブート時に、ナンバーナイン社製カードのビデオBIOSはカードのモデル名に関連したビートルズの楽曲の歌詞の一部を画面に表示する。カードの型名は通常「#9」が先頭に付されていた。

日本ではダイヤセミコンシステムズ(現・アヴネット)が同社の日本総代理店として製品のローカライズや販売活動を行った[2]

歴史[編集]

ナンバーナインは1982年にAndrew NajdaとStan BialekによってNumber Nine Computer Corporationとして設立された。企業名は1990年代初めにNumber Nine Visual Technology Corporationに変更された。ナンバーナインはほとんどの間、レキシントン (マサチューセッツ州)に拠点を置いた。同社はまずApple IIアクセラレータボードを開発し、1983年にハイエンドPCグラフィックカードの設計・製造を手がけるようになった。同社は1990年代前期にかけて高級・ハイエンドグラフィックカードメーカーの一つであった。1990年代中期から後期にかけて、競合企業と価格や性能の両方の競争にさらされて市場シェアを失い始め、3Dグラフィックブームや高品質化の流れに後れを取るようになった。1999年12月20日、ナンバーナインはS3(現・S3 Graphics)に対して同社の全ての資産および知的財産権を買収するよう意思を表明。2000年中頃までに、S3はナンバーナインの資産の取得を完了し、ナンバーナインは廃業した。2002年に2人のナンバーナイン出身の技術者、James MacleodとFrancis Brunoはシリコン・スペクトラム英語版を設立し、FPGAデバイスに実装するためにS3からナンバーナインのグラフィック技術のライセンスを取得した。[3][4][5][6]

製品[編集]

ナンバーナインの最初のグラフィックカードはグラフィックアクセラレータチップを持たず、VGAが一般化する前のISAバスであった。1980年代後期から1990年代前期に、テキサス・インスツルメンツTIGA英語版コプロセッサをベースにISAおよびMCAバスのグラフィックカードを製作した。

1990年に入ると、独自開発のグラフィックアクセラレータを搭載したAGPおよびPCIグラフィックカード(Imagine系GPU)を製作した。同時に、S3 Graphics製アクセラレータチップを使ってAGP、PCI、VLBusおよびISAグラフィックカードを製作した。それらの最後のAGPカードはNVIDIA GPUを使用していた。

VGAより前の初期のビデオカード[編集]

#9 Model 画面解像度 カラーパレット[7] PCバス 備考
Number Nine Graphics System CGA CGA ISA
Revolution 512x8 512×480 1670万色パレットから256色を選択 ISA NEC μPD7220を使用
Revolution 512x32 512×480 1670万色パレットから245,760色を選択 ISA NEC µPD7220を使用
Revolution 1024x8 1024×1024から1024×768 1670万色パレットから256色を選択 ISA
Revolution 2048x4[8] 2048×1024から1280×960 4096色パレットから16色を選択 ISA 日立 HD63484

Revolutionシリーズは大きなフルサイズのカードで、発表時点の価格は1995ドルから2995ドルであった。

TIGAカード[編集]

ナンバーナインのグラフィックカードは1986年から1992年頃までテキサス・インスツルメンツのTIGA英語版コプロセッサを搭載して製造されていた。テキサス・インスツルメンツTMS340x0コプロセッサとナンバーナイン設計のカスタムチップの組み合わせは、クリッピングといった原始的なグラフィック機能しか扱うことができなかった。しかしながら、これは当時としては大きな成果であった。GXi Liteを例外として、全てのTIGAグラフィックカードは大きく、フルサイズのカードであった。

#9 モデル TIGAコプロセッサ メモリ PCバスアーキテクチャ
Pepper TMS34010英語版 ?? ISA
Pepper SGT TMS34010 + Intel 82786 1M, 4M? ISA
Pepper Pro 1024[9] TMS34010 1.5M, 2M MCA, ISA
Pepper Pro 1280 TMS34010 ?? MCA?, ISA
Pepper Pro 1600 TMS34010 ?? MCA?, ISA
GX TMS34010? ?? 1M DRAM? + 2M VRAM? MCA?, ISA
GXi Lite TMS34020 1M DRAM + 1M VRAM MCA?, ISA
GXi TMS34020 1M DRAM + 2M VRAM MCA?, ISA
GXiTC TMS34020 1M? DRAM + 4M VRAM MCA?, ISA

この頃、TIGAを使用したカードは非常に高価で、発表時の価格は995ドルから2495ドルであった。

ナンバーナイン自社製GPU搭載ビデオカード[編集]

Imagine 128 (初期のオリジナル版、旧社名)
Imagine 128 Series II
Revolution 3D (Ticket to Ride)
Revolution IV (Ticket to Ride 4)

ImagineシリーズGPUはナンバーナイン独自の設計であった。Imagineシリーズは4つの世代からなった。

  1. Imagine 128 (Imagine)
  2. Imagine 128-II (Imagine2)
  3. T2R ("Ticket to Ride"、しばしば"Imagine-3"と刻印された)
  4. T2R4("Ticket to Ride IV"と刻印された)

Imagine 128 GPUは完全な128ビットグラフィックプロセッサで、内部プロセッサバスおよびメモリバスは全て128ビットであった。しかしながら、3Dグラフィック処理をサポートするハードウェアが皆無あるいはごく少数しかなかった。[10]

Imagine 128-IIはグーローシェーディング、32ビットZバッファ、二重ディスプレイバッファおよび256ビットビデオレンダリングエンジンを追加した。[11]

Ticket to Ride(Imagine-3)はWRAMおよびAGPとPCIバスの両方をサポートし、3D浮動小数点セットアップエンジン、バイリニアフィルタおよびパースペクティブコレクト、グーローシェーディング、アルファブレンド、距離フォグ補完、鏡面ハイライト、二重・三重ディスプレイバッファ、16/24/32ビットZバッファ、MPEG-1/MPEG-2およびハードウェアミップマップを備えた。[12]

Ticket to Ride IVは250MHz RAMDACを統合し、最大32MBのSDRAM、全シーンアンチエイリアシング、パーピクセルフォグ、鏡面反射、アルファエフェクト、10階層ディティールパーピクセルミップマップ、バイリニア・トリリニアフィルタリング、8ビットパーテクセル、8KBオンチップテクスチャキャッシュ、ハードウェアMPEG-1/MPEG-2、完全なIEEE 754浮動小数点パイプライン3Dレンダリングセットアップエンジンをサポートした。[13][14]

#9 モデル #9 GPU メモリ PCバスアーキテクチャ
Imagine 128 Imagine 128 4M, 8M VRAM PCI
Imagine 128 Series 2 Imagine 128-II 4M, 8M H-VRAM PCI
Imagine 128 Series 2e Imagine 128-II 4M EDO DRAM PCI
Revolution 3D T2R 4M or 8M (base), 12M, 16M WRAM PCI, AGP
Revolution IV T2R4 16M, 32M SDRAM PCI, AGP
Revolution IV-FP T2R4 32M SDRAM PCI, AGP

これら1990年代のビデオカードはナンバーナインのフラグシップカードであった。(Imagine 128および128 Series 2は非常に高価。)GPU上にはヒートシンクは不要。オリジナルのImagine 128は1994年に発表された。Revoliution IVは1998年に発表された。

標準のアナログVGA端子に加えて、Revolution IV-FP(Revolution IV-1600SWとも呼ばれる)はシリコングラフィックス製1600SWデジタルフラットパネルモニター用のOpenLDIデジタルインターフェースコネクターを備えていた。Revolution IV-FPはシリコングラフィックス製1600SWデジタルフラットパネルモニター用のOpenLDIデジタルインターフェースコネクターを備えた数少ないビデオアダプターの一つであった。(その他に3Dlabs Oxygen VX1-1600SW、I-O DATA GA-NF30/PCI、シーメンス Nixdorf S26361-D964カードやいくつかのシーメンス製Nixdorfコンピューターなど)SGIの1600SWビデオアダプターは同社のO2、320、540グラフィックワークステーションの専用品であった。FormacはApple Mac用にOpenLDI付きのPCIカードを少数製造した。

OpenLDIインターフェースは現在のDVI-Dインターフェースと物理的にも電気的にも互換性がない。これは初期のデジタルビデオコネクターであり、いくつかの競合、標準規格との非互換性が存在した。スタンドアロンのOpenLDIディスプレイは消滅したが、いくつかの後発メーカーがOpenLDIをDVI-Dに変換するアダプターを製作したため、より新しいビデオカードでも1600SWモニターに対応できるようになった。

S3 Graphicsプロセッサ搭載ビデオカード[編集]

GXE64Pro (S3 Vision964) PCI
Motion771 (S3 Vision968) PCI

ナンバーナインは1990年代にかけてS3 Graphicsと親密な事業関係にあった。ImagineシリーズGPUとカードはナンバーナインのフラグシップ製品に位置づけると同時に、同社はS3のGPUを使ってリーズナブルなビデオグラフィックカードを開発した。S3ベースのカードは通常3つの価格帯で製品が発表された。それらは同じモデル名を持っていたが、モデル番号とGPUが異なっていた。GXE などには、Windows ディスプレイ・コントロール・ユーティリティプログラムである #9 HawkEye が同梱され、2,048x1,920までの仮想デスクトップ領域から、画面解像度 1,280x1,024 まで設定可能となっている[15]

#9 モデル S3 GPU メモリ PCバスアーキテクチャ
GXE 928 1M, 2M, 4M VRAM ISA, VLB, PCI
GXE 64 864 (Vision864) 1M, 2M DRAM ISA?, VLB, PCI
GXE 64 Pro 964 (Vision964) 2M, 4M VRAM ISA?, VLB, PCI
GXE 64 Trio 764 (Trio64) 1M, 2M DRAM ISA?, VLB, PCI
Vision 330 764 (Trio64) 1M, 2M DRAM VLB, PCI
Motion 331 765 (Trio64V+) 1M, 2M DRAM VLB, PCI
Motion 531 868 (Vision868) 1M, 2M DRAM VLB, PCI
Motion 771 968 (Vision968) 2M, 4M VRAM VLB, PCI
Reality 332 325 (ViRGE) 2M EDO DRAM PCI
Reality 772 988 (ViRGE VX) 2M, 4M VRAM PCI
Reality 334 357 (ViRGE GX2) 4M SGRAM PCI, AGP
SR9 (SDRAM) 394 (Savage4 LT、GPU上に小型のヒートシンク) 8M SDRAM AGP
SR9 (SDRAM) 397 (Savage4 Pro、GPU上に小型のヒートシンク) 16M, 32M SDRAM AGP
SR9 (SGRAM) 398 (Savage4 Xtreme、GPU上に小型のヒートシンク) 8M?, 16M SGRAM AGP

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Number Nine Visual Technology and S3 Inc. -- Business to Continue as Usual”. PR Newswire (1999年6月23日). 2011年1月8日閲覧。
  2. ^ Number Nine Visual Technology(ウェイバックマシン)
  3. ^ Number Nine Visual Technology Company History”. Number Nine Visual Technology (1999年). 1999年1月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月15日閲覧。
  4. ^ Number Nine - Computer Dictionary Definition”. 2011年1月8日閲覧。
  5. ^ Number Nine Visual Technology, Inc. Announces Merger Agreement”. Reuters (1999年12月20日). 2011年1月8日閲覧。
  6. ^ Silicon Spectrum, Inc. - Overview”. 2011年1月8日閲覧。
  7. ^ Manufacturers of Higher Resolution Graphics Boards. InfoWorld - Google Books. (20 Oct 1986). https://books.google.no/books?id=mzwEAAAAMBAJ&pg=PA41&lpg=PA41&dq=Revolution+512x32&source=bl&ots=rHeJzunB9k&sig=Noj3R8o0RwmERV6XfSsYVvIiXJM&hl=en&ei=noB-TdGIGYvwsgb0gf32Bg&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=4&ved=0CCcQ6AEwAw#v=onepage&q=Revolution%20512x32&f=false 2011年3月14日閲覧。 
  8. ^ Machover, Carl; Dill, John (1985). “PC color graphics board runs noninterlaced at 1280 X 1024 resolution”. ComputerGraphics (IEEE) 5 (10): 71. doi:10.1109/MCG.1985.276240. http://www.computer.org/portal/web/csdl/doi/10.1109/MCG.1985.276240. 
  9. ^ Number Nine Announces Series of Graphics Cards. InfoWorld - Google Books. (20 Nov 1989). https://books.google.co.jp/books?id=qDAEAAAAMBAJ&pg=PT25&lpg=PT25&dq=number+nine+computer+corporation+pepper&source=bl&ots=D7S0Ie2mG6&sig=AL_dgYhJCV_Ri04wqLVsT-gbr24&hl=en&ei=kgAvTeqxG4G-sQPz9tHxCA&sa=X&oi=book_result&ct=result&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false 2011年1月13日閲覧。 
  10. ^ Notes on Imagine 128 retail box.
  11. ^ Notes on Imagine 128 Series 2 retail box.
  12. ^ Notes on Revolution 3D retail box
  13. ^ Notes on Revolution IV retail box.
  14. ^ Number Nine Launches 'Ticket To Ride(TM) IV,' Its Fourth and Most Powerful 128-bit 3D/2D/Video Graphics Chip”. PR Newswire (1998年5月26日). 2011年1月13日閲覧。
  15. ^ #9 GXE User Guide. pp. 4-4. LTSGXEXX01 

外部リンク[編集]