ベニガオザル

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ベニガオザル
ベニガオザル
ベニガオザル Macaca arctoides
保全状況評価[1][2]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 霊長目 Primates
: オナガザル科 Cercopithecidae
: マカク属 Macaca
: ベニガオザル M. arctoides
学名
Macaca arctoides (I. Geoffroy, 1831)[1][3]
和名
ベニガオザル[3][4]
英名
Bear macaque[1][3][4]
Red-faced macaque[3][4]
Stumptail macaque[1][3][4]
Stump-tailed macaque[1][3][4]

ベニガオザル (紅顔猿[5]学名Macaca arctoides) は、哺乳綱霊長目オナガザル科マカク属に分類される霊長類。

分布[編集]

インド北東部、カンボジアタイ王国中部・西部・南部、中華人民共和国南西部、ベトナムマレーシアマレー半島北西部)、ミャンマー北部、ラオス[1]バングラデシュでは絶滅したと考えられている[1]香港に移入[1]

形態[編集]

頭胴長(体長)オス51.7 - 65センチメートル、メス48.5 - 58.5センチメートル[4]。尾長オス0.3 - 1.3センチメートル、メス1.5 - 6.9センチメートル[4]体重オス9.9 - 10.2キログラム、メス7.5 - 9.1キログラム[4]。暗褐色の体毛で被われる[3][4]。顔は赤い皮膚が裸出し、加齢に伴い黒い斑点が増加して顔が黒一色になる個体もいる[3][4]。尻も赤い皮膚が裸出する[3]

幼獣は白い体毛で被われる[3][4]陰茎[3]の深さが長い[4]

分類[編集]

種小名arctoidesはラテン語で「クマのような」の意[3]。かつては種名がMacaca speciosaとされていたが、これは本来ニホンザルを指す学名とされ現在ではいずれの種にも用いられなくなっている[3]

生殖器の形態からマカク属内では本種のみで構成されるarctoides種群として区別されるが、分子系統解析の結果からsinica種群に含めることもある[6]Y染色体ミトコンドリアDNAの解析からsinica種群とfascicularis種群の雑種に由来する系統であることが示唆されており、sinica種群から分岐後にアカゲザルの祖先種からの遺伝子流動が起きたと考えられている[6]

生態[編集]

熱帯域にある常緑樹林や落葉樹林に生息する[1]。20 - 30頭からなる群れを形成して生活する[4]

植物の果実タケノコ昆虫鳥類の卵などを食べる[1][4]

繁殖様式は胎生。幼獣の時から排卵していない個体や、同性間に対しても頻繁に性交渉を行う[4]。群れの競合個体が多い場合、複数オスが連合を形成して協力してメスを占有する行動をとる[6]。オスにとって連合による繁殖は、単独での競争よりも交尾機会が増えることから戦略上有利になると考えられている[6]。1回に1頭の幼獣を産む[4]

天敵としてヒョウウンピョウがいる。

人間との関係[編集]

生息地では食用とされたり、伝統的に薬用になると信じられている事もある[1]

コメやサツマイモ・ジャガイモなどの農作物を食害することもある[1]

木材採取や薪採取のための森林伐採・道路建設やダム建設・農地開発やプランテーションへの転換などによる生息地の破壊および土壌流出、食用や薬用の乱獲やペット用・スポーツハンティングなどにより生息数は減少している[1]。1977年に霊長目単位で、ワシントン条約附属書IIに掲載されている[2]

日本では2021年の時点でマカカ属(マカク属)単位で特定動物に指定され、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止された(2020年6月に施行)[7]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m Chetry D. et al. 2020. Macaca arctoides. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T12548A185202632. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T12548A185202632.en. Downloaded on 21 August 2021.
  2. ^ a b UNEP (2021). Macaca arctoides. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. [Accessed 21/08/2021]
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 岩本光雄「サルの分類名(その1:マカク)」『霊長類研究』第1巻 1号、日本霊長類学会、1987年、45 - 54頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 渡邊邦夫 「ベニガオザル」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、136頁。
  5. ^ 『動植物名よみかた辞典』日外アソシエーツ、2004年。 
  6. ^ a b c d 豊田有「タイ王国に生息する野生ベニガオザルの社会生態学的研究:これまでわかったことと将来への展望」『霊長類研究』第39巻 1号、日本霊長類学会、2023年、35-44頁。
  7. ^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理)環境省・2021年8月21日に利用)

関連項目[編集]