ル・マン式スタート

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ル・マン式スタート(1965年

ル・マン式スタート(ル・マンしきスタート)とは、自動車オートバイ等のレースでスタートする際に、ピットもしくはホームストレート前にグランドスタンドを向くように一列に並べられた出走車両に向かって[1][2]、スタートの合図でグランドスタンド側からコースを横切って[3]乗り込みスタートする方式[1]のことである。

自動車レースでの退潮[編集]

ル・マン24時間レースで長年伝統的に使われて来たことが名前の元になっているが、初回1923年のル・マン24時間レースでは通常のグリッド式スタンディングスタートであった[3]

その後自動車の始動性、乗り込みやすさなどを評価する観点から採用されたが、シートベルトを装着しないでスタートするドライバーがいたり[3]、後方の車両が早く出て混乱する[3]など危険が多いことが知られていた。

1969年のル・マン24時間レースにおいてジャッキー・イクスがスタートの危険を避けるためにゆっくり歩いて乗り、シートポジションを確認し、シートベルトを装着し、精神的に落ち着き、他の44台が走り去った後に出発した[1][注釈 1]。この時も最初の周回中にジョン・ウルフ(John Woolfe)が乗るポルシェ・917の10号車がメゾン・ブランシュを曲がりきれずに土手に突っ込みジョン・ウルフが死亡する事故となっている[1]

このことからル・マン24時間レースでも1971年のル・マン24時間レースから通常のローリングスタート[1][2]となり、その後はバイクレースでのみ使われるようになっている。

ただしその後も、「スタート前のセレモニー時に、グランドスタンドを向くようにマシンを一列に並べる」スタイルはル・マン24時間レースで引き続き採用されており、FIA 世界耐久選手権でも、2015年よりシリーズ全戦で同スタイルによるスタート前セレモニーを行う[2]

注釈[編集]

  1. ^ 当時は「大芝居」と言われたが、本人にそのような意図はなかったという。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 『俺だけの運転テクニック』pp34-63「チャンピオンテクニックをキミに直伝する」
  2. ^ a b c WEC、全戦で“ル・マン式”スタート進行を採用 - オートスポーツ・2015年4月8日
  3. ^ a b c d 『ルマン 伝統と日本チームの戦い』pp.27-154「ルマン24時間レースの歴史」

参考文献[編集]