信念の階層
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ゲーム理論において信念の階層(しんねんのかいそう)とは,信念についての信念,「信念についての信念」についての信念,のように,いくらでも高階の信念が考えられること.ここで信念というのは,一般に情報が不完備な状況において相手プレーヤーに関してわかっていないことについて,確率的に形成された予想のことである.
概要
[編集]実行可能な戦略集合,利得関数,および他のプレーヤーのタイプに関する確率分布を記述した,私的情報であるタイプによって各プレーヤーが特徴づけられるとして,不完備情報ゲームをモデル化しようというジョン・ハーサニの提案を実現するために,ジャン=フランソワ・メルタンとシミュエル・ザミールによって考えられた概念[1].
そのような 1 階の確率分布は,プレーヤーの低いレベルの信念と解釈することができる.他のプレーヤーの信念に関する確率分布は,信念の上の信念と解釈できる.こうして,プレーヤーたちがさまざまなレベルで信念の上の信念を形成しているような,共通した体系を再帰的に構築することができる.こうした構成物を信念の階層という.
この結果は,タイプの普遍空間 (universal space) というものになり,その要素は,特定の整合性条件のもとで,他の信念に関する確率的信念の無限の階層に一致する.また彼らは,この任意の部分空間が,有限部分空間によっていくらでも近く近似できることを示した.
この階層概念を用いているべつの有名な例として,囚人と帽子のパズルがある.また,ロバート・オーマンによる共有知識の構成もそうである[2].ただし,これらはいずれも本稿でいう (確率的) 信念というより,知識の階層と呼ぶべきものである.
参考文献
[編集]- ^ Jean-François Mertens and Shmuel Zamir (1985-03-01). “Formulation of Bayesian analysis for games with incomplete information”. INTERNATIONAL JOURNAL OF GAME THEORY 14 (1): 1-29. doi:10.1007/BF01770224.
- ^ Herbert Gintis (16 March 2009). The bounds of reason: game theory and the unification of the behavioral sciences. Princeton University Press. p. 158. ISBN 978-0-691-14052-0 3 March 2012閲覧。