蠕動

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模式化した消化管の蠕動

蠕動(ぜんどう、英語: peristalsis)は、筋肉が伝播性の収縮波を生み出す運動である。

蠕虫などの体壁筋や、動物体内の消化管などの中空器官で行われる。前者では動物体の移動のため、後者では内容物の移送のために行われる。

縦走筋 (longitudinal muscle) と環状筋 (circular muscle) が拮抗する平滑筋系によって行われる。両者を相互的に支配する縦走性神経系による、独立・自立的な活動である。

体壁筋[編集]

ミミズなどの蠕虫で典型的に見られる。

ヒルなどの尺取虫運動や、腹足類足波も、蠕動と同じ機構である。

消化管[編集]

消化管の蠕動は、食物をある一定方向に動かすために行われる。

蠕動は自律神経に支配されている。神経堤に由来する迷走神経の節後神経である腸管神経叢(アウエルバッハ神経叢マイスナー神経叢)が腸管の環状筋および縦走筋を支配している。このため、意識的に蠕動運動を活発にさせることはできない。また腸管神経叢が先天的に欠損すると、その部分の蠕動が行われないために食物塊が貯留し、巨大結腸症を呈する(ヒルシュスプルング病)。

環状筋[編集]

消化管にある環状筋(輪状筋)が食物塊の存在で伸展すると、それが刺激となって収縮運動を行う。環状筋は食べ物を後戻りさせない機能がある。周期的に環状の収縮を次々と下部に伝え、食物塊を肛門側へ移動させる。

縦走筋[編集]

縦走筋は消化管を縮める機能がある。縦走筋は、環状筋と良く連携した縮小運動を行い、消化管内で混沌となった食べ物の塊を前進させる役割を持つ。

その他の器官[編集]

消化管以外に、胆管尿管卵管、その他の分泌管などで見られる。

下等動物や、高等動物でもでは、心臓拍動も蠕動によってなされる。

参考文献[編集]

  • Guyton Arthur C.,Hall John E. Textbook of medical physiology, 9th ed, Philadelphia: W.B.Saunders Company, 1996, pp798–799.

関連事項[編集]