計算言語学

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計算言語学(けいさんげんごがく、: computational linguistics)または計算論的言語学とは、形式性を重視する言語学の一分野である[1]自然言語処理と共に「理科系言語学」と称される[2]

類似名称の言語学分野に計量言語学があるが、計量言語学は統計的な手法により自然言語を研究する分野であり計算言語学の関連分野ないし下位分野である。

概要[編集]

計算言語学の定義[編集]

本稿冒頭で述べたように計算言語学は形式性を重視する言語学の一分野であるが、計算言語学と隣接分野、特に自然言語処理、の境界線は曖昧である。計算言語学と自然言語処理の差異については、専門家から次のような指摘がなされている。

言語に関する情報科学的な研究の目的は,人間の言語処理過程の科学的な究明や,ワープロや機械翻訳などの工学的な応用を含み,きわめて多岐にわたる。 …中略…「自然言語処理」はどちらかというと工学的な応用を指向した言い方であり,「計算言語学」にはもう少し基礎的・理論的なニュアンスがある — 松本ほか[2000:p.80]

計算言語学は他に自然言語処理理論言語学数理論理学からなる数理言語学の一分野とされる[3]場合もあるが、ここでも理学系の「計算言語学」、工学系の「自然言語処理」と位置付けられている。

一方で、計算言語学と自然言語処理が同義で用いられることもしばしばある。実際、この分野で最も権威ある国際会議計算言語学会英語: Association for Computational Linguistics)は計算言語学(computational linguistics)の国際会議を自称するものの、現在では自然言語処理を指向した研究が多くを占めている[1]

計算言語学の主な領域[編集]

畠山雄二 et al. (2013)によれば、計算言語学は次の領域からなる。上述のように境界の連続性から「計算言語学で扱われそうな項目が自然言語処理で扱われていたりする」[4]ため、適宜同書を参照されたい。

学会[編集]

日本[編集]

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  1. ^ a b 戸次大介 (2010, まえがき)
  2. ^ 戸次大介 (2010:1–2)
  3. ^ 畠山雄二 et al. (2013:ⅳ)
  4. ^ 畠山雄二 et al. (2013:172)
  5. ^ 同学会は英称を設立時より The Mathematical Linguistic Society of Japan (日本数理言語学会)としており、分野として計量言語学と計算言語学との近さと、同学会の方向性が示されている。

参考文献[編集]

  • 戸次大介『日本語文法の形式理論』くろしお出版、2010年。ISBN 9784874244685 
  • 畠山雄二、本田謙介、今仁生美、松崎拓也、宮尾祐介、但馬康宏、田中江扶『数理言語学事典』産業図書、2013年7月。ISBN 978-4-7828-0176-5OCLC 857931876 
  • 松本 裕治、今井 邦彦、田窪 行則『言語の科学入門』岩波書店〈言語の科学 1〉、2004年4月。ISBN 978-4-00-006901-4 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]