2023年クレムリンドローン攻撃
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2023年クレムリンドローン攻撃 | |
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2022年ロシア西部攻撃と2022年ロシアのウクライナ侵攻中 | |
攻撃を捉えた監視カメラの映像 | |
場所 | ロシア モスクワのクレムリンおよび大統領官邸(元老院宮殿) |
日付 | 2023年5月3日 2時27分と2時43分[1] (UTC+03:00) |
標的 |
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攻撃手段 | ドローン攻撃 |
犯人 | 係争中: |
2023年クレムリンドローン攻撃(2023ねんクレムリンドローンこうげき)[5]は、2023年5月3日未明、ウクライナへの侵攻を行なっているロシア連邦の首都モスクワにあるクレムリンを標的に、ドローン2機により行われたと主張されている攻撃である[6][7]。2機のドローンが攻撃を試みる様子と、ロシアがこれを迎撃した様子を捉えた映像が公開された。クレムリンにはロシア大統領府があるが、攻撃当時、ウラジーミル・プーチン大統領はクレムリンには滞在しておらず、この攻撃による死傷者はいなかった[8][9][10]。
ロシア政府は、ウクライナがこの攻撃を実行したと非難し、この攻撃を「テロ行為」であり「プーチン大統領を狙った暗殺未遂」であると呼んだ[11][12]。ロシア政府は、適切と思われる時期と場所で報復措置を取ることを示唆した[13]。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、訪問中のフィンランドで「我々はプーチンやモスクワを攻撃していない。我々は自分たちの領土内で戦っている。我々は自分たちの村や都市を守っている」と述べた[8]。ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、ウクライナ政府はこの攻撃とされているものとは無関係であり、そのような行動は戦場でウクライナ政府になんの成果ももたらさず、ロシアがより急進的な行動を取るように仕向けるだけだとコメントした。ポドリャクはウクライナ政府が攻撃に関与しているという主張と、クリミアで破壊活動を行うウクライナ軍の工作員であると主張される人々がロシアによって逮捕されたことは、ロシアが近日中にウクライナに対する大規模な「テロ」攻撃を行う準備を行っていること示している可能性があると述べた[14]。
事件
[編集]ロシア大統領府の発表やロイター通信によると、ドローンの飛来時刻は1機目が午前2時27分、2機目は同43分だった[15]。ソーシャルメディアに投稿された未検証の映像には、クレムリンの大統領官邸(元老院宮殿)ドームの頂上にある旗竿の近くで小さな爆発が発生する前に、物体がクレムリンに向かって飛んでいく様子が映されていた。この映像では、身元不明の2人がドームを登っている様子が捉えられていた[16]。別の映像では、元老院宮殿の近くで煙が立ち上る様子が映っていた[8]。
ロシア当局は2機のドローンは電子レーダーによって迎撃されたと主張した[8]。
反応
[編集]ロシア
[編集]5月3日、モスクワ市長のセルゲイ・ソビャーニンはモスクワ上空にドローン飛行禁止空域を設けると発表した[17]。ロシア紙『ベドモスチ』などによると、ドローンの飛行を禁止したロシアの州・地方は5月4日までに40以上に達した[18]。
ロシア連邦議会国家院のヴャチェスラフ・ヴォロージン議長は、この攻撃の疑いをロシアに対する「テロ攻撃」と呼び、キーウを首都とするウクライナ政府をアルカーイダやISILなどのテロ組織と比較して「ナチ・キエフ政権はテロ組織として認定されなければならない」と述べた[19]。ヴォロージンは「キエフのテロ政権を停止し、破壊することのできる兵器」の使用を要求した[20]。
ロシアの国家院議員のミハイル・シェレメトは、ウクライナのゼレンスキー大統領に対する報復攻撃を呼びかけた[19]。
ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの創設・指導者であるエフゲニー・プリゴジンは、核兵器の使用に対して警告し、「我々は子供のドローンに対して核兵器を使用すると脅迫する道化師のように見える」と述べた[21]。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、プーチン大統領の殺害を目的としたクレムリンへのドローン攻撃にはアメリカ合衆国が関与していると主張し、「我々はこのような行動やテロ攻撃に関する決定は、キーウではなく(アメリカ合衆国首都の)ワシントンで行われることをよく知っている」と述べた[2]。ロシア政府のプロパガンディストのウラジーミル・ソロビエフは、この攻撃をアメリカ同時多発テロ事件と比較した[22]。
安全保障会議副議長で前大統領のドミートリー・メドヴェージェフは「今日のテロ攻撃の後、ゼレンスキーと彼の陰謀団を物理的に排除する以外に残された選択肢はない」とした[23]。国家院議員のアンドレイ・グルリョフは「我々はこのテロリスト国家の全ての指導者が物理的な排除の対象となることを公式に宣言する必要がある」と述べた[22] 。
ウクライナ
[編集]ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、ロシア政府がこの攻撃を口実として、今後数日間でウクライナの都市やインフラ施設への更に多くの攻撃を正当化することに懸念を表明した[3]。2023年5月3日、ロシアによるウクライナのヘルソン州に対する攻撃により21人が殺害された[24]。
その他の国
[編集]アメリカ
[編集]アメリカ合衆国国務長官のアントニー・ブリンケンは記者会見で「私はクレムリンから出てくるものは何でも大きな疑いを持って受け止めるだろう」と述べた。アメリカ合衆国の当局者は、モスクワに到達するには長距離を移動しなければならないので、ウクライナに送られたドローンが攻撃に使用された可能性について懐疑的であった[25]。ホワイトハウス報道官のカリーヌ・ジャン=ピエールは「アメリカはウクライナが国境を超えて攻撃することを推奨したり許可したりはしていない」と述べた[3]。
シンクタンクの戦争研究所は、ドローンがモスクワの防空網を突破することは難しく、第二次世界大戦におけるナチス・ドイツに対する戦勝記念日 (5月9日)を前に国民の士気高揚と動員につなげるための「自作自演」である可能性が高いという分析を3日に公表した[26]。
イギリス
[編集]セント・アンドルーズ大学のフィリップス・オブライエン教授(戦略研究)は「プーチンは元老院宮殿の屋根で眠ることはないし、恐らくクレムリンで眠ることもないので、これは確実に彼を暗殺する試みではなかった」と述べた。王立国際問題研究所でロシア・ユーラシアプログラムのディレクターを務めるジェームズ・ニクシーは「最も高い2つの可能性」として、「キーウによる威嚇射撃」または「ウクライナでのより激しい攻撃またはより多くの徴兵を正当化するために計画されたモスクワによる偽旗作戦」を挙げた[3]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “Атака беспилотников на Кремль. Главное [Drone attack on the Kremlin. Main]” (ロシア語). Kommersant. (3 May 2023). オリジナルの3 May 2023時点におけるアーカイブ。
- ^ a b “Kremlin ‘lying’ about U.S. involvement in Moscow drone strikes, officials say”. Politico. (4 May 2023)
- ^ a b c d “Ukraine denies Russian claim Kyiv sent drones to hit Kremlin”. ABC News. (3 May 2023)
- ^ “Ukraine rejects Russia’s claim of Kremlin drone attack”. The Hill. (3 May 2023)
- ^ “クレムリン無人機 ロシア “米指示しウクライナが攻撃”と主張 | NHK”. NHK NEWS WEB. 2023年8月10日閲覧。
- ^ 露 報復へ強硬姿勢:クレムリン攻撃「背後で米関与」『毎日新聞』朝刊2023年5月5日1面(2023年5月8日閲覧)
- ^ 日本放送協会 (2023年5月4日). “クレムリンに無人機攻撃か 被害はなし ロシア大統領府 | NHK”. NHKニュース. 2023年8月10日閲覧。
- ^ a b c d “Kremlin accuses Ukraine of trying to assassinate Putin”. BBC News. (3 May 2023). オリジナルの3 May 2023時点におけるアーカイブ。 3 May 2023閲覧。
- ^ “Russia says Ukraine tried to kill Putin with drone attack on Kremlin”. Reuters. (3 May 2023). オリジナルの3 May 2023時点におけるアーカイブ。 3 May 2023閲覧。
- ^ https://www.facebook.com/mainichishimbun.+“ロシア「ウクライナ軍がクレムリン攻撃」 報復措置取る姿勢も”. 毎日新聞. 2023年8月10日閲覧。
- ^ “ロシア「プーチン大統領の暗殺狙ったテロ」「クレムリンに無人機攻撃」とウクライナ非難”. 読売新聞オンライン (2023年5月3日). 2023年8月10日閲覧。
- ^ https://www.facebook.com/asahicom+(2023年5月3日).+“クレムリンにドローン攻撃 「プーチン氏暗殺狙ったテロ」ロシア主張:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2023年8月10日閲覧。
- ^ “Russia claims Ukraine tried to assassinate Putin in Kremlin drone attack”. NBC News. 3 May 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。3 May 2023閲覧。
- ^ “Ukraine says it has nothing to do with Kremlin drone attack”. Reuters. (3 May 2023). オリジナルの3 May 2023時点におけるアーカイブ。 3 May 2023閲覧。
- ^ 露「大統領府攻撃に報復」キーウへ自爆機多数『読売新聞』朝刊2023年5月5日1面(2023年5月9日閲覧)
- ^ Altman, Howard (2023年5月3日). “Drone Attack On The Kremlin In Moscow” (英語). The Drive. 3 May 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月3日閲覧。
- ^ “Kremlin drone: Zelensky denies Ukraine attacked Putin or Moscow”. BBC. 3 May 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。3 May 2023閲覧。
- ^ ゼレンスキー氏:露侵略 特別法廷を要求/ICC電撃訪問 プーチン氏処罰も/クレムリン攻撃 関与否定」『産経新聞』朝刊2023年5月5日1面(2023年5月9日閲覧)
- ^ a b “Russian lawmakers call for Zelenskyy's residence to be bombed”. Ukrainska Pravda. (3 May 2023)
- ^ “‘Destroy Kyiv’: Russian parliament speaker's call for action over Putin attack”. Hindustan Times. (3 May 2023)
- ^ “Russia Accuses U.S. of Helping Kyiv to Plan Kremlin Attack”. The Wall Street Journal. (4 May 2023)
- ^ a b “Kremlin Cronies Compare Alleged Drone Attack to 9/11”. The Daily Beast. (3 May 2023)
- ^ “Russian hawks demand brutal revenge for Kremlin drone strike ‘terrorist attack’”. The Telegraph. (3 May 2023)
- ^ “Kremlin drone: Zelensky denies Ukraine attacked Putin or Moscow”. BBC News. (3 May 2023). オリジナルの3 May 2023時点におけるアーカイブ。 3 May 2023閲覧。
- ^ “Russia claims Ukraine tried to assassinate Putin in Kremlin drone attack” (英語). NBC News. 3 May 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月3日閲覧。
- ^ 露「無人機攻撃」自作自演可能性 米研究所が指摘『毎日新聞』朝刊2023年5月5日(国際面)2023年5月8日閲覧
関連項目
[編集]- ドローン攻撃
- 2022年ロシア西部攻撃
- ロシア高層アパート連続爆破事件
- 首相官邸無人機落下事件
- 2018年カラカスドローン攻撃 - ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を狙ったと主張された同様のドローン攻撃