GLAADメディア賞

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GLAADメディア賞
GLAAD Media Award
en:31st GLAAD Media Awards
受賞対象メディアにおけるLGBTコミュニティへの貢献
アメリカ合衆国
主催中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟 (GLAAD)
初回1990年
公式サイトwww.GLAAD.org

GLAADメディア賞(グラードメディアしょう、英語: GLAAD Media Award)は、アメリカ合衆国メディアモニタリング団体である中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟(GLAAD)により、LGBTコミュニティレズビアンゲイバイセクシャルトランスジェンダー)において著しい功績のあったメディアや人物を讃える賞[1]映画テレビ番組のみならず、演劇音楽などの芸術分野やジャーナリズム広告などのメディアも表彰対象としている[2]

第1回GLAADメディア賞1990年に開催され、7部門34ノミネートの小さな規模であったが[3]2013年3月に開催された第24回では英語カテゴリ25部門とスペイン語カテゴリ8部門に153件がノミネートされている[1][4]

歴史[編集]

第1回GLAADメディア賞1989年の題材を対象に翌1990年に発表が行われ、7分野に34ノミネートの小さな規模であった[3]2009年の第20回授賞式に出席した受賞者のフィル・ドナヒューは第1回を振り返り、「20年前、名誉なことに第1回の受賞者に選ばれましたが、当時は出席者もごく僅かでした。しかし今夜はこれほど多くのカメラマンが会場にいます。この賞の影響力やその成長スピードは考えも及ばないほどのものでした。」と語っている[5][6]

第6回までは授賞式前に受賞者が発表されていたが、1996年の第7回より授賞式にて受賞者発表を行う形式に改められた。2004年の第15回よりスペイン語カテゴリが追加[7]2005年の第16回よりテレビ放送が行われるようになり、Logoチャンネルにて放送された2005年7月の放送はLGBTをテーマとした授賞式として初めての中継番組となった[8]

トロフィー[編集]

オリジナルのトロフィーは全高約6インチで、5インチの直方体のクリスタル・ガラスに新聞記事を背景に5本の同心円がデザインが施され、扇形の台座に受賞年がエッチングされていた[5][9][10]

2009年の第20回より、Society AwardsのDavid Moritzによる新デザインに一新された。新デザインのトロフィーは全高12インチで、ニッケルロジウムのメッキが施された3インチの台座の上に、手作業でサテンの質感に仕上げられた9インチのダイカスト亜鉛彫刻が構成されている[5][11]

ノミネート[編集]

ノミネートは、該当分野に関係の深い人々や専門家からなる90名のノミネート審査員により最大5件が選出される。ノミネート対象がなしとされるカテゴリもある。年末に審査員のノミネート表が集計される[12][13]。審査対象への推薦を募る場合もある。審査への推薦がないものでも、主流メディアのプロジェクトをノミネートとして発表する場合もある[12][13]

推薦された題材は、以下の4要素を基準に審査される[12][13]

  • 「公正であり、正確かつ包括的な表現」 - LGBTコミュニティの多様性を反映しているか。
  • 「大胆さと独創性」 - これまでの常識にとらわれない手法によってLGBT関連事象の新分野を開拓しているか。
  • 「文化的な影響」 - LGBT以外の人々にも影響を与えているか。
  • 「全般的な品質」 - LGBTのイメージや関連事象のイメージ及び事象に対してインパクトや有意義な影響を与えたか。

投票[編集]

各カテゴリ毎に、同賞の投票権利を持つ600名以上の人々によりオンライン投票が行なわれる。投票権利者はGLAADのスタッフや委員会のメンバー、提携メディアのメンバー、ボランティアおよび協力者(過去の受賞者やメディア産業の協力者、ノミネート審査などのボランティア)などで構成されている[12][13]

GLAADの役員やメディア産業の専門家らで構成された調査委員会にて投票結果と「専門家の意見」による審査を経て受賞者が決定される[12][13]

カテゴリ[編集]

第1回時点では、テレビ分野の7部門において受賞者が選定された[7]。以降、映画演劇音楽、印刷媒体、デジタル媒体や広告へと部門が拡がり、スペイン語分野や特別賞なども設けられるようになった[2]。分野や部門の追加だけでなく、初期にあった賞の統合や終了も行われている。一例として、「Outstanding Daytime Drama」(最優秀デイタイム・ドラマ賞)は英語のソープオペラ分野の衰退により2011年に廃止となった。2011年時点では英語分野で26部門、スペイン語分野で12部門が審査対象となっていたが、有意性の認められる審査対象のなかったカテゴリは選考を行わないようになった[2][12]。2011年時点で、下記38カテゴリが存在している。

英語分野[編集]

スペイン語分野[編集]

特別賞[編集]

GLAADメディア賞には、第1回より名誉賞が設けられている。元々は「Special Honoree Award」(特別名誉賞)のみであったが、GLAADメディア賞の規模拡大に伴い、特別賞の種類も拡大した。代表的なものに以下の特別賞がある。

  • Davidson/Valentini Award(デビッドソン/ヴァレンティニ賞)– サンフランシスコGLAADメディア賞にて毎年授与されている賞。GLAADの初代代表であった Craig Davidson とそのパートナーで同会の支援者でもあった Michael Valentini を記念して名付けられた。同賞はLGBTコミュニティの権利向上に著しい貢献のあったオープンリーのLGBT個人に対して授与される。
  • Excellence in Media Award(メディア優秀賞) – ニューヨークGLAADメディア賞にて毎年授与されている賞。メディア業界やエンターテイメント産業における活動を通じてLGBTコミュニティの可視化や受容に貢献した個人に対して授与される。
  • Golden Gate Award(ゴールデンゲート賞)– サンフランシスコGLAADメディア賞にて毎年授与されている賞。メディア業界における活動を通じてLGBTコミュニティの可視化や受容に貢献した個人に対して授与される。
  • Pioneer Award(パイオニア賞)– GLAADメディア賞にて授与されている賞。GLAADメディア賞の設立以前からメディアにおけるLGBTの描写の向上に著しい貢献のあった個人やグループおよびメディア団体のに対してその先進性を讃えるために授与されている。
  • Stephen F. Kolzak Award(ステファン・F・コルザック賞)– GLAADメディア賞にて毎年授与されている賞。人生の終盤をエンターテイメント界のAIDS偏見やホモフォビアの解消に費やしたキャスティングディレクターの Stephen F. Kolzak を記念して名付けられた賞。同賞はエンターテイメント産業やメディア業界での活動を通じてホモフォビア解消に貢献したオープンリーのLGBT個人に対して授与される。
  • Vanguard Award(ヴァンガード賞)– ロサンジェルスのGLAADメディア賞にて毎年授与されている賞。同賞はLGBTコミュニティの権利向上に著しい貢献のあったエンターテイメント界の人物に対して授与される。
  • Visibilidad Award(ヴィジブリダッド賞) –同賞はLGBTコミュニティの権利向上に著しい貢献のあったスペイン語メディア界のオープンリーなLGBTの人物に対して授与される。
  • Vito Russo Award(ヴィト・ルッソ賞)– GLAADメディア賞にて毎年授与されている賞。GLAADの設立メンバーのヴィト・ルッソを記念して名付けられた賞で、LGBTコミュニティの権利向上に著しい貢献のあったオープンリーなメディア界の人物に対して授与される。

授賞式[編集]

2014年4月12日ロサンゼルスで行われた第25回授賞式でのラバーン・コックス

毎年ニューヨークロサンジェルスサンフランシスコにてGLAADメディア賞の記念晩餐会が開かれ、前年の活動に対する功労者が招かれる[12][13]ワシントンD.C.マイアミにて受賞セレモニーが行われた年もある。各年のホストやプレゼンターは以前の受賞者や一般的な著名人、LGBTQ+コミュニティの著名人から選ばれる。

全部門の受賞者の発表がセレモニーの間に行われる。全ての受賞者の発表が3都市で行われるが、全受賞者がステージで直接授与される訳ではなく、各都市毎のバランスを取り表彰部門が選ばれている。ステージでの授与が行われなかった部門の受賞者は、授賞式で配布されるプログラムにて告知される[13]

2005年に開催された第16回授賞式は、Logoチャンネルにて初のテレビ放送が行なわれた[8]。Logoチャンネルでは毎年3都市の受賞者の模様を収録し、1回の放送でその模様をまとめて放送している。2008年の第19回授賞式は、Logoチャンネルに代わって放送権を得たBravoが放送を行なった[14]

GLAADメディア賞授賞式
開催回 会場 都市名 日程
第1回 タイムライフ・ビル ニューヨーク 1990年
1990年4月29日
第2回 不明
Beverly Hilton Hotel
ニューヨーク
ロサンゼルス
1991年
1991年4月21日
第3回 Windows on the World
Beverly Hilton Hotel
ニューヨーク
ロサンゼルス
1992年4月6日
1992年4月11日
第4回 Beverly Hilton Hotel
プラザホテル
ロサンゼルス
ニューヨーク
1993年3月20日
1993年3月28日
第5回 プラザホテル
Century Plaza Hotel
ニューヨーク
ロサンゼルス
1994年3月13日
1994年3月19日
第6回 Century Plaza Hotel
ウォルドルフ=アストリア
National Press Club
ロサンゼルス
ニューヨーク
ワシントンD.C.
1995年3月12日
1995年3月16日
1995年3月19日
第7回 ウォルドルフ=アストリア
Century Plaza Hotel
National Press Club
ニューヨーク
ロサンゼルス
ワシントンD.C.
1996年3月7日
1996年3月10日
1996年3月13日
第8回 Century Plaza Hotel
National Press Club
Sheraton Hotel and Towers
ロサンゼルス
ワシントンD.C.
ニューヨーク
1997年3月16日
1997年3月26日
1997年3月31日
第9回 Hilton Hotel
George Washington Marriot
Century Plaza Hotel
ニューヨーク
ワシントンD.C.
ロサンゼルス
1998年3月30日
1998年4月4日
1998年4月19日
第10回 Hilton Hotel
Century Plaza Hotel
JW Marriott
ニューヨーク
ロサンゼルス
ワシントンD.C.
1999年3月28日
1999年4月17日
1999年5月8日
第11回 Hilton Hotel
Century Plaza Hotel
JW Marriott
Argent Hotel
ニューヨーク
ロサンゼルス
ワシントンD.C.
サンフランシスコ
2000年4月2日
2000年4月15日
2000年5月13日
2000年6月3日
第12回 Hilton Hotel
Century Plaza Hotel
Lisner Auditorium
Westin St. Francis
ニューヨーク
ロサンゼルス
ワシントンD.C.
サンフランシスコ
2001年4月16日
2001年4月28日
2001年5月12日
2001年6月9日
第13回 Marriott Marquis
コダック・シアター
Westin St. Francis
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2002年4月1日
2002年4月13日
2002年6月1日
第14回 Marriott Marquis
コダック・シアター
Westin St. Francis
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2003年4月7日
2003年4月26日
2003年5月31日
第15回 Marriott Marquis
コダック・シアター
Westin St. Francis
ロサンゼルス
ニューヨーク
サンフランシスコ
2004年3月27日
2004年4月12日
2004年6月5日
第16回 Marriott Marquis
コダック・シアター
Westin St. Francis
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2005年3月28日
2005年4月30日
2005年6月11日
第17回 Marriott Marquis
コダック・シアター
Ritz-Carlton Hotel
JW Marriott
ニューヨーク
ロサンゼルス
マイアミ
サンフランシスコ
2006年3月27日
2006年4月8日
2006年5月25日
2006年6月10日
第18回 Marriott Marquis
コダック・シアター
Westin St. Francis
JW Marriott
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
マイアミ
2007年3月26日
2007年4月14日
2007年4月28日
2007年5月10日
第19回 Marriott Marquis
Seminole Hard Rock Hotel
コダック・シアター
JW Marriott
ニューヨーク
マイアミ
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2008年3月17日
2008年4月12日
2008年4月26日
2008年5月10日
第20回 Marriott Marquis
Nokia Theatre
Hilton Towers
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2009年3月28日
2009年4月18日
2009年5月9日
第21回 Marriott Marquis
Century Plaza Hotel
Westin St. Francis
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2010年3月13日
2010年4月18日
2010年6月5日
第22回 Marriott Marquis
Westin Bonaventure Hotel
San Fransisco Marriott Marquis
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2011年3月19日
2011年4月10日
2011年5月14日
第23回 Marriott Marquis
Westin Bonaventure Hotel
San Fransisco Marriott Marquis
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2012年3月12日
2012年4月21日
2012年6月2日
第24回 Marriott Marquis
JW Marriott
Hilton Towers
ニューヨーク
ロサンゼルス
サンフランシスコ
2013年3月16日
2013年4月20日
2013年5月11日
第25回 The Beverly Hilton
Waldorf Astoria New York
ロサンゼルス
ニューヨーク
2014年4月12日
2014年5月3日
第26回 The Beverly Hilton
Waldorf Astoria New York
ロサンゼルス
ニューヨーク
2015年3月21日
2015年5月9日
第27回 The Beverly Hilton
Waldorf Astoria New York
ロサンゼルス
ニューヨーク
2016年4月4日
2016年5月14日
第28回 The Beverly Hilton
New York Hilton Midtown
ロサンゼルス
ニューヨーク
2017年4月1日
2017年5月6日
第29回 The Beverly Hilton
New York Hilton Midtown
ロサンゼルス
ニューヨーク
2018年4月12日
2018年5月5日
第30回 The Beverly Hilton
New York Hilton Midtown
ロサンゼルス
ニューヨーク
2019年3月28日
2019年5月4日
第31回 N/A オンライン 2020年7月30日
第32回 N/A オンライン 2021年4月8日
第33回 The Beverly Hilton
New York Hilton Midtown
ロサンゼルス
ニューヨーク
2022年4月2日予定
2022年5月6日予定

脚注[編集]

  1. ^ a b GLAAD Media Awards – Home”. GLAAD.org. 2009年7月14日閲覧。
  2. ^ a b c GLAAD Media Award – Categories”. GLAAD.org. 2011年7月4日閲覧。
  3. ^ a b GLAAD Media Award – Press”. GLAAD.org. 2011年7月1日閲覧。
  4. ^ 24th Annual GLAAD Media Award Nominees”. GLAAD.org. 2013年2月22日閲覧。
  5. ^ a b c Kissell, Rick (2009年3月29日). “20th Annual GLAAD Media Awards”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1118001828?refcatid=3045 2011年7月4日閲覧。 
  6. ^ 20th Annual GLAAD Media Awards”. GLAADBlog.org. 2011年7月4日閲覧。
  7. ^ a b 15th Annual GLAAD Media Awards”. GLAAD.org. 2011年7月4日閲覧。
  8. ^ a b 16th Annual GLAAD Media Awards”. LogoTV.com. 2011年7月1日閲覧。
  9. ^ Elizabeth Taylor Accepts GLAAD Media Award”. Youtube. 2011年7月4日閲覧。
  10. ^ Kathy Griffin Holds GLAAD Media Award”. Life.com. 2011年7月4日閲覧。
  11. ^ “GLAAD Award Winners Receive New Statuette”. Los Angeles Times. (2009年3月28日). http://goldderby.latimes.com/awards_goldderby/2009/03/glaad-awards-ne.html 2011年7月4日閲覧。 
  12. ^ a b c d e f g GLAAD Media Award – Selections”. GLAAD.org. 2011年7月1日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g GLAAD Media Award – FAQs”. GLAAD.org. 2011年7月1日閲覧。
  14. ^ GLAAD Awards Call Bravo Home”. MiamiHerald.com. 2011年7月5日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]