ISO 80000-4

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ISO 80000-4:2006は、力学に関するとその単位について定めた国際規格である。

国際標準化機構(ISO)によって2006年に発行された。規格の名称は「量及び単位―第4部:力学」(Quantities and units -- Part 4: Mechanics)である。

この規格は、それまでのISO 31-3を置き換えたもので、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が共同で発行しているISO/IEC 80000の一部である[1]日本工業規格(JIS)ではJIS Z 8000-4:2014が相当する。

内容[編集]

ISO 80000-4は以下の章からなる。

  • 序文 (Foreword)
  • 0 (導入) (Introduction)
  • 1 適用範囲 (Scope)
  • 2 引用規格 (Normative references)
  • 3 名称、記号及び定義 (Names, symbols and definitions)
  • 附属書 A(参考)特別な名称をもつCGS系の単位 (Units in the CGS system with special names)
  • 附属書 B(参考)フート、ポンド及び秒を基本とする単位並びにその他の関連単位 (Units based on the foot, pound, second, and some other related units)
  • 附属書 C(参考)その他の非SI単位及びその換算率 (Other non-SI units given for information, especially regarding the conversion factors)

名称・記号・定義[編集]

ISO 80000-4では、力学に関する以下の量とその単位が定義されている。量の番号と記号の番号の"."より左側が対応している。 なお、ISO 80000-4には量の定義も記されているが、ここではそれは記載しない。個別の項目を参照のこと。

単位 備考
番号 名称 記号 番号 名称 記号 定義
4-1 質量 m 4-1.a キログラム kg 国際キログラム原器の質量 10の整数乗倍の単位はグラム接頭語を付ける。
1 g = 0.001 kg
4-1.b トン t 1 t = 1 000 kg
4-2 密度 ρ 4-2.a キログラム毎立方メートル kg/m3
4-2.b トン毎立方メートル t/m33 1 t/m3 = 1 000 kg/m3 = 1 g/cm3
4-2.c キログラム毎リットル kg/l, kg/L 1kg/l = 1 000 kg/m3
4-3 相対密度 d 4-3.a (数の)1 d = ρ/ρ0ρ0は液体の水の密度(1 000kg/m3))
4-4 比体積 v 4-4.a 立方メートル毎キログラム m3/kg v = 1/ρ
4-5 面密度 ρA 4-5.a キログラム毎平方メートル kg/m2 ρA = dm/dAmは質量、Aは面積)
4-6 線密度 ρl 4-6.a キログラム毎メートル kg/m ρl = dm/dlmは質量、lは長さ)
4-7 慣性モーメント IJ 4-7.a キログラムメートル2乗 kg・m2 断面二次モーメント(4-20)と混同の虞がある場合は、慣性モーメントに記号Jを、断面二次モーメントに記号Iを使用する。
4-8 運動量 p 4-8.a キログラムメートル毎秒 kg・m/s
4-9.1 F 4-9.a ニュートン N 1 N = 1 kg・m/s2
4-9.2 重量 Fg , Q Fg = m gmは質量、gは自由落下の局所加速度)
4-10 重力定数, 万有引力定数 G 4-10.a ニュートンメートル2乗毎キログラム2乗 N・m2/kg2 F = Gm1m2/r2Fは2粒子間の重力、m1, m2は2粒子の質量、rは2粒子間の距離)
G = 6.674 2(10)×10−11 N・m2/kg2(2002 CODATA推奨値)
4-11 力積 I 4-11.a ニュートン秒 N・s
4-12 角運動量運動量モーメント L 4-12.a キログラムメートル2乗毎秒 kg・m2/s
4-13.1 力のモーメント M 4-13.a ニュートンメートル N・m ミリニュートン(mN)と混同しないように記載すること
4-13.2 トルク T
4-13.3 偶力のモーメント Mb
4-14 角力積 H 4-14.a ニュートンメートル秒 N・m・s
4-15.1 圧力 p 4-15.a パスカル Pa 1 Pa = 1 N/m2 ゲージ圧 pe = ppamb(pambは周囲の圧力)
バール(bar): 1 bar = 105 Pa = 100 kPa
4-15.2 垂直応力, 法線応力 σ
4-15.3 せん断応力 τ
4-16.1 線ひずみ伸び率 ε,(e) 4-16.a (数の)1
4-16.2 せん断ひずみ γ
4-16.3 体積ひずみ ϑ
4-17 ポアソン数ポアソン比 μ,(v 4-17.a (数の)1
4-18.1 縦弾性係数 E 4-18.a パスカル Pa ヤング率ヤング係数とも言う
4-18.2 横弾性係数, 剛性率 G クーロンの係数とも言う
4-18.3 体積弾性率, 体積弾性係数 K
4-19 圧縮率 κ 4-19.a 毎パスカル Pa−1
4-20.1 断面二次モーメント Ia 4-20.a メートル4乗 m4 慣性モーメント(4-7)と区別すること。混同の虞がない場合は添字を省略できる。
4-20.2 断面二次極モーメント Ip
4-21 断面係数 Z,(W 4-21.a メートル3乗 m3
4-22.1 動摩擦係数 μ,(f 4-22.a (数の)1 動摩擦係数と静摩擦係数を区別する必要がない場合は、「摩擦係数」と呼んでも良い。
4-22.2 静摩擦係数 μs , (fs
4-23 粘度 η 4-23.a パスカル秒, ニュートン秒毎平方メートル Pa・s
4-24 動粘度 v 4-24.a 平方メートル毎秒 m2/s
4-25 表面張力 γ, σ 4-25.a ニュートン毎メートル N/m
4-26 工率仕事率動力 P 4-26.a ワット W 1 W = 1 N・m/s
4-27.1 仕事 AW 4-27.a ジュール J 1 J = 1 W・s
4-27.2 位置エネルギー V, Ep, (Φ
4-27.3 運動エネルギー T, Ek
4-27.4 力学的エネルギー E, W 記号E, Wは他の種類のエネルギーにも使用する
4-28 効率 η 4-28.a (数の)1 η = Pout /PinPoutは出力工率、Pinは入力工率)
パーセント単位(記号 %)で表されることがある
4-29 質量流量 qm 4-29.a キログラム毎秒 kg/s
4-30 流量 qv 4-30.a 立方メートル毎秒 m3/s
4-31 一般化座標 qi 4-31.a 量の次元に依存 qi(i = 1,2, ... , N)
4-32 一般化速度 4-32.a 量の次元に依存
4-33 一般化力 Qi 4-33.a 量の次元に依存
4-34 ラグランジュ関数ラグランジアン L 4-34.a ジュール J
4-35 一般化運動量 pi 4-35.a 量の次元に依存
4-36 ハミルトン関数ハミルトニアン H 4-36.a ジュール J
4-37 作用 S 4-37.a ジュール秒 J・s

附属書 A 特別な名称をもつCGS系の単位[編集]

特別な名称を持つCGS系の単位として、以下のものが挙げられている。なお、この附属書は参考として記載されたもので、規定の一部ではなく、ここに挙げた単位は使用するべきではないとしている。

単位 備考
番号 名称 番号 名称 記号 定義
4-9 4-9.A.a ダイン dyn 1 dyn = 1g・cm/s2 = 10−5 N 質量が 1 g の物体に作用して 1 cm/s2の加速度を生じさせる力
4-23 粘度 4-23.A.a ポアズ P 1 P = 1 dyn・s/cm2 = 0.1 Pa・s 1 dyn/cm2のせん断応力の下の速度が、せん断面に対して垂直な 1 (cm/s)/cm の勾配を持つ流体の粘度
4-24 動粘度 4-24.A.a ストークス St 1 St = 1 cm2/s = 10−4 m2/s 粘度が 1 P で,質量密度が 1 g/cm3 の流体の動粘度
4-27 仕事エネルギー 4-27.A.a エルグ erg 1 erg = 1 dyn・cm = 10 − 7 J 1 dyn の力が物体に作用してその方向に 1 cm の距離だけ動かす間にその力がなす仕事

附属書 B フート、ポンド及び秒を基本とする単位並びにその他の関連単位[編集]

ヤード・ポンド法の単位として、以下のものが挙げられている。なお、この附属書は参考として記載されたもので、規定の一部ではなく、ここに挙げた単位は使用するべきではないとしている。

単位 備考
番号 名称 番号 名称 記号 定義
4-1 質量 4-1.B.a ポンド lb 1 lb = 0.453 592 37 kg
4-1.B.b グレーン gr 1 gr = 00071 lb = 64.798 91 mg
4-1.B.c オンス oz 1 oz = 161 lb = 437.5 gr ≈ 28.349 52 g
4-1.B.d ハンドレッドウエイト cwt (UK) 1 cwt (UK) = 112 lb = 1 long cwt (US) ≈ 50.802 35 kg
4-1.B.e ハンドレッドウエイト cwt (US) 1 cwt (US) = 100 lb ≈ 45.359 237 kg
4-1.B.f 英トン ton (UK) 1 ton (UK) = 2 240 lb = 1 long ton (US) = 1 016.047 kg
4-1.B.g 米トン ton (US) 1 ton (US) = 2 000 lb = 907.184 7 kg
4-1.B.h トロイオンス, (薬用オンス) 1 トロイオンス = 480 gr = 31.103 476 8 g
4-2 密度 4-2.B.a ポンド毎立方フート[2] lb/ft3 1 lb/ft3 ≈ 16.018 46 kg/m3
4-9 重量 4-9.B.a 重量ポンド lbf 1 lbf ≈ 4.448 222 N この換算値は、SI単位で定義された自由落下の標準加速度 gn = 9.806 65 m/s2 に基づいている。
4-13 力のモーメントトルク 4-13.B.a フート重量ポンド ft・lbf 1 ft・lbf ≈ 1.355 818 N・m
4-15 圧力 4-15.B.a 重量ポンド毎平方インチ psi,lbf/in2 1 lbf/in2 ≈ 6 894.757 Pa
4-20 断面二次モーメント断面二次極モーメント 4-20.B.a インチ4乗 in4 1 in4 ≈ 41.623 143×10−8 m4
4-21 断面係数 4-21.B.a インチ3乗 in3 1 in3 = 16.387 064×10−6 m3
4-24 動粘度 4-24.B.a 平方フート毎秒 ft2/s 1 ft2/s = 0.092 903 04 m2/s
4-26 工率 4-26.B.a フート重量ポンド毎秒 ft・lbf/s 1 ft・lbf/s ≈ 1.355 818 W
4-26.B.b 馬力 hp 1 hp = 550 ft・lbf/s ≈ 745.699 9 W
4-27 仕事エネルギー 4-27.B.a フート重量ポンド ft・lbf 1 ft・lbf = 1.355 818 J

附属書 C その他の非SI単位及びその換算率[編集]

その他の非SI単位として、以下のものが挙げられている。なお、この附属書は参考として記載されたもので、規定の一部ではなく、ここに挙げた単位は使用するべきではないとしている。

単位 備考
番号 名称 番号 名称 記号 定義
4-1 質量 4-1.C.a カラット 1カラット = 200 mg 宝石の質量のみに使用。
貴金属の純度の単位の「カラット」とは別の単位。
4-6 線密度 4-6.C.a テクス tex 1 tex = 10−6 kg/m
4-9 4-9.C.a 重量キログラム kgf 1 kgf = 9.806 65 N キロポンド(kp)とも。
9.806 65 m/s2は自由落下の標準加速度である。
4-13 力のモーメント 4-13.C.a 重量キログラムメートル kgf・m 1 kgf・m = 9.806 65 N・m
4-15 圧力 4-15.C.a 標準大気圧 atm 1 atm = 101 325 Pa
4-15.C.b 重量キログラム毎平方メートル kgf/m2 1 kgf/m2 = 9.806 65 Pa
4-15.C.c 工学気圧 at 1 at = 1 kgf/cm2 = 98 066.5 Pa ≈ 0.967 841 atm
4-15.C.d 水柱ミリメートル mmH2O 1 mmH2O = 10−4 at = 9.806 65 Pa
4-15.C.e 水銀柱ミリメートル mmHg 1 mmHg ≈ 13.595 1 mmH2O ≈ 133.322 4 Pa
4-15.C.f トル Torr 1 Torr = 1760 atm ≈ 1 mmHg ≈ 133.322 4 Pa
4-26 工率 4-26.C.a 重量キログラムメートル毎秒 kgf・m/s 1 kgf・m/s = 9.806 65 W
4-26.C.b 仏馬力 PS 1 PS = 75 kgf・m/s = 735.498 75 W
4-27 仕事エネルギー 4-27.C.a 重量キログラムメートル kgf・m 1 kgf・m = 9.806 65 J

関連項目[編集]

出典・脚注[編集]

  1. ^ ISO 80000-4:2006”. International Organization for Standardization. 2013年7月20日閲覧。
  2. ^ 日本の計量法やJISでは「フート」「フット」(foot)の語を使用しているが、一般には「フィート」(feet)と呼ばれる。

外部リンク[編集]