ブダイ科

ブダイ科
ブダイ科の1種 Scaridae sp.
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ベラ亜目 Labroidei
: ブダイ科 Scaridae
英名
Parrotfishes

ブダイ科学名Scaridae)は、スズキ目ベラ亜目に所属する魚類の分類群の一つ。ブダイアオブダイなど10属99種が属する[1]

分布・生態

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すべて海水魚で、大西洋インド洋太平洋など世界の熱帯亜熱帯域に広く分布する[1]。同じベラ亜目に属するベラ科などと並び、サンゴ礁魚類の代表的なグループの一つである。

近縁のベラ類が肉食性であるのに対し、本科魚類は一般に草食性で、死んだサンゴに付着した藻類を削り取るように摂食する[1][2]。ブダイ類はをもたず、齧りとったサンゴを発達した咽頭歯で細かくすりつぶすことで、藻類のみを効率よく摂取している[3][4]。一部の種類は海草を主食としているほか、カンムリブダイのように生きたサンゴを食べる種類も知られている[1][4]

ブダイ科魚類が摂食する死サンゴは1個体あたり年間1トン以上に及び、サンゴ礁の死滅と再生のサイクルに深く関与すると考えられている[5]。ブダイ類は死んだサンゴの群落を速やかに除去し、新たなサンゴの生育場所を提供することで、サンゴ礁の生態系維持に貢献しているとみられる[5]。咽頭歯ですりつぶされたサンゴは細かい砂となって環境中に戻されるため、本科魚類はサンゴ礁における砂の供給源としても重要な役割を果たしている[6]

すべて昼行性で、夜間はサンゴや岩陰に身を潜め休息する[4]。一部の種類は体表から粘液を分泌し、寝袋のように体を包むことが知られている[1]。ベラ科魚類と同様に、本科の仲間もほとんどが性転換をする[1]。多くは成長につれて雌から雄に変化する雌性先熟であるが、雌を経ずに直接雄として成熟する、いわゆる「一次雄」をもつ場合もある[7]

一般に鮮やかな斑紋と色彩をもつ。生時の体色は重要な分類形質であるが、死後は速やかに褪色するうえ、性別や成長時点による差異も大きい[1]観賞魚としての価値は高いが、歯板が成長し続けるために、水槽内での維持は難しい[6]。食用魚として漁獲対象となる種類も多く、日本の沖縄では貝塚から本科魚類の咽頭骨が出土するなど、古代から利用されていたとみられる[4]

形態

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やや左右に平たく側扁した、いわゆる鯛型の体型をもつ。一般にベラ類よりも大型で、最大で1mを超える種類もいる[3]。顎の歯は癒合して一枚の歯板となり、オウム状となっていることが本科魚類の最大の特徴である[1]。ベラ類とは異なり、口を突出させることはできない[1]は大きく円鱗で、側線鱗は22-24枚[1]

背鰭は9本の棘条と10本の軟条で構成される[4]。腹鰭と臀鰭はそれぞれ1棘5軟条および3棘9軟条で、尾鰭の分枝鰭条は11本[1]椎骨は24-26個[1]

分類

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Nelson(2016)の体系において10属99種が認められている[1]。かつては2亜科(Scarinae および Sparisomatinae)に細分されたが、分岐学的な解析によりその妥当性は否定されている[1]。本稿では、FishBaseに記載される100種についてリストする[6]。一部の研究者はブダイ科を認めず、ベラ科ブダイ亜科とすることもある。

アオブダイ属の1種(Scarus coelestinus)。オウムのような嘴状の歯が本科魚類の特徴である
アミメブダイ(雄型) Scarus frenatus (アオブダイ属)。青緑色の尾柄部が特徴の種類。通常は藻類を食べるが、生きたサンゴを摂食する姿も観察されている[4]
ヒブダイ(雌型) Scarus ghobban (アオブダイ属)。非常に美味で、高級魚として扱われる[4]
ナガブダイ(雌型) Scarus rubroviolaceus (アオブダイ属)。体の前後で二分された体色をもつ。本種は一次雄をもたず、雄の個体数は少ない[4]
イロブダイ(雄型) Cetoscarus bicolor (イロブダイ属)。成長に伴う体色の変化と、雌雄差がともに著しい種類[4]
キツネブダイ Hipposcarus longiceps (キツネブダイ属)。食用魚としての需要が大きい
ハゲブダイ(雄型) Chlorurus sordidus (ハゲブダイ属)。琉球諸島では最もありふれたブダイ類で、夜間は粘液に身を包んで眠る[4]
ブダイ属の1種(Calotomus viridescens)。本属の仲間は海草類を主食とする[5]
Sparisoma cretense 地中海など東部大西洋に分布する種類。水深20-50mにかけてのやや深みで生活する[6]

出典・脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『Fishes of the World Fifth Edition』 pp.429-430
  2. ^ 『日本の海水魚』 pp.464-519
  3. ^ a b 『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.312
  4. ^ a b c d e f g h i j 『日本の海水魚』 pp.520-535
  5. ^ a b c 『The Diversity of Fishes Second Edition』 pp.382-383
  6. ^ a b c d Scaridae”. FishBase. 2010年12月26日閲覧。
  7. ^ 『Fishes of the World Fourth Edition』 p.389
  8. ^ Scarus atropectoralisシノニム(FishBase)。
  9. ^ a b 日本産魚類の追加種リスト”. 日本魚類学会. 2010年12月26日閲覧。
  10. ^ Scarus javanicus はシノニム(FishBase)。
  11. ^ Bolbometopon bicolor はシノニム(FishBase)。
  12. ^ Scarus longiceps はシノニム(FishBase)。
  13. ^ Scarus bowersi はシノニム(FishBase)。
  14. ^ Scarus frontalis はシノニム(FishBase)。
  15. ^ Scarus gibbus はシノニム(FishBase)。
  16. ^ Scarus sordidus はシノニム(FishBase)。

参考文献

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