空中空母

アクロン号の設計概念図

空中空母(くうちゅうくうぼ Airborne aircraft carrier)とは、航空機を空中で運用する母艦。21世紀初頭の現時点では小説等の作品に登場する架空の兵器である。

概要

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航続距離の短い固定翼機を運用する目的で各国で開発が進められた歴史があり、アメリカ合衆国では1930年代に母艦としてアクロン号メイコン号のような飛行船が母機として使用され、実際に運用された経緯がある。同じく1930年代のソビエト連邦ではズヴェノー・プロジェクトと呼ばれる親子飛行機計画があり、ツポレフ TB-1ツポレフ TB-3爆撃機を母機として1機から5機の小型機を搭載する実験が行われ、一部は実戦投入された[1][2][3][4][5]

第二次世界大戦後半には日本においては桜花、ドイツにおいてはミステルが運用された。ミステル計画では主に小型機が母機となり、大型機が発射されるという構成であった。またドイツにおいては"ダイムラー・ベンツ プロジェクト"と呼ばれる、超大型機に数機の小型機を搭載する計画もあった[6]

1950年代にはB-36を使用するFICON計画やロッキードCL-1201のような原子力飛行機パラサイトファイターを運用する計画もあったが、中止された。いずれも空中給油の普及や大陸間弾道ミサイルの実用化などにより構想自体が陳腐化した。

2016年以降、アメリカの研究機関DARPAでは、爆撃機や輸送機などから小型無人機"Gremlins"を発進・収容する研究が行われている[7][8][9][10][11]

実例

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フィクション作品において

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ファンタジー作品やサイエンス・フィクション作品など、多くの作品に登場する。空母が飛行する必要性や、飛行に利用する技術などの設定は作品によって様々である。そのため外観も実在の空母そのものの姿をしたもの、巨大な飛行機状の艦体の背面に飛行甲板を配したもの、飛行船の内部または外部に飛行甲板を配したものなど多岐にわたる。

艦載機の運用に関しても、発着艦ともに現実の空母と同様のもの、着艦は現実の空母と同様に行うが発艦は十分な高度から魚雷発射管のように投下するもの、発艦は現実の空母と同様で着艦に特殊な拘束装置を用いるものなど、作品により多彩な設定が見られる。

空中空母が登場する作品の例

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ほか多数

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ ソ連のパラサイトプレーン
  2. ^ Vakhmistrov's Zveno
  3. ^ Shavrov V.B. (1985) (Russian). Mashinostroenie. ISBN 5-217-03112-3 
  4. ^ Stefanovskiy, P.M. (1968) (Russian). Voyenizdat 
  5. ^ Zveno 'Aviamatka' By Ken Duffey
  6. ^ luft46.com Daimler Benz Project
  7. ^ “SFの世界が現実に、米が「空中空母」開発…無人機の発射・回収、空中給油で「戦闘の形」が変わる”. 産経WEST. (2014年11月25日). オリジナルの2014年11月25日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/MrDNk 
  8. ^ “輸送機からドローンを放ち収容もする「空中空母」構想をアメリカ軍が2019年にも試験する見込み”. Gigazine. (2018年1月4日). https://gigazine.net/news/20180104-darpa-reusable-drone/ 
  9. ^ Gremlins(DARPA)
  10. ^ 平成29年度版防衛白書 第I部.わが国を取り巻く安全保障環境 第3章.国際社会の課題 第6節.軍事科学技術と防衛生産・技術基盤をめぐる動向 1.軍事科学技術の動向(防衛省)
  11. ^ “DARPA、空中の母機から発射・撤収可能なドローン編隊を計画”. Wired. (2016年4月15日). https://wired.jp/2016/04/15/tiny-drones-swarm-motherships/ 

関連項目

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