能登半島地震 (2024年)
令和6年能登半島地震[1] | |
---|---|
被災した輪島市朝市通り付近で捜索活動を行う自衛隊(2024年1月6日) | |
震源の位置(USGS) | |
震央の位置(気象庁) | |
本震 | |
発生日 | 2024年(令和6年)1月1日 |
発生時刻 | 16時10分9.692秒(JST、USGS[2]) 16時10分22.5秒(同、気象庁[3][注釈 1]) |
持続時間 | 約40秒[5] |
震央 | 日本 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度29.7分 東経137度16.2分 / 北緯37.4950度 東経137.2700度[6][注釈 2](気象庁[注釈 1]) 北緯37度29分17秒 東経137度16分16秒 / 北緯37.488度 東経137.271度[注釈 3] (USGS) |
震源の深さ | 気象庁:16 km[注釈 1] USGS : 10.0 km |
規模 | Mj7.6、Mw7.5[9] (7.43[5])、Mb6.9、Ms207.2[10][注釈 4] |
最大震度 | 震度7:石川県輪島市門前町走出[注釈 5]、羽咋郡志賀町香能(最大計測震度:志賀町香能6.69) |
津波 | 最大観測高[注釈 6](日本国内) 80 cm:石川県金沢、0.8 m:山形県酒田[注釈 7][11] 最大観測高(日本国外) 85 cm: 大韓民国 江原特別自治道東海市墨湖[12] 最大痕跡高 4.7 m:石川県鳳珠郡能登町白丸[11] 最大遡上高 5.8 m:新潟県上越市船見公園[注釈 8][11] |
断層 | F43断層・F42断層(国土交通省による名称) 猿山沖セグメント・珠洲沖セグメントの直下の断層(地震調査委員会) |
地震の種類 | 地殻内地震(逆断層型)[9] |
地すべり | 各地で発生したが具体的な件数は不明[注釈 9] |
前震 | |
回数 | 1回(最大震度1以上[注釈 10]) |
最大前震 | 2024年1月1日 16時06分、Mj5.5、最大震度5強[3] |
余震 | |
回数 | 1698回(最大震度1以上、2024年2月29日16時時点)[13] |
最大余震 | 2024年1月1日 16時18分、Mj6.1、最大震度5強 2024年1月9日 17時59分、Mj6.1、最大震度5弱 |
被害 | |
死傷者数 | 死者 401人(うち災害関連死 174人)、行方不明者 3人、負傷者 1,336人(2024年10月1日14時時点、6月3日の余震による被害を含む)[14] |
被害総額 | 1.1兆円 - 2.5兆円(各地の震度からの推計[15]) |
被害地域 | 中部地方、近畿地方の一部 |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
能登半島地震(のとはんとうじしん)は、2024年(令和6年)1月1日16時10分(JST)に、日本の石川県の能登半島地下16 km[16]、鳳珠郡穴水町の北東42 km[注釈 11][2]の珠洲市内で発生した内陸地殻内地震[18]。地震の規模はМ7.6[19][20][21]で、輪島市と羽咋郡志賀町で最大震度7を観測した[6]。震度7が記録されたのは、2018年の北海道胆振東部地震以来、観測史上7回目となる。気象庁による正式名称は「令和6年能登半島地震[1]」(れいわ6ねんのとはんとうじしん、英: The 2024 Noto Peninsula Earthquake)。
能登半島西方沖から佐渡島西方沖にかけて伸びる活断層を震源とする地震である[9]。能登地方では2018年ごろから地震が断続的に続いており[22]、特に2020年12月ごろから地震回数が約400倍に増加していた[23][24](能登群発地震[注釈 12])。その活動が収束しない中で2024年1月1日16時6分にMj5.5の前震が発生し、最大震度5強が観測された。その4分後の16時10分に本震が発生し[6]、その後も最大震度5弱以上の強い余震が繰り返し発生した[13]。
日本国外を含め日本海沿岸の広範囲で津波が観測されたほか[5]、各地で土砂災害、火災、液状化現象、家屋の倒壊が相次ぎ、交通網も寸断されるなど、奥能登地域を中心に北陸地方の各地で甚大な被害をもたらした。交通網の寸断や被災地の地形により自衛隊による救助活動も難航した[25]。元日に発生した大地震ということもあり、帰省者の増加で人的被害が拡大するなど社会的にも大きな影響があった[26]。
名称
この地震の本震は、気象庁が2018年に定めた陸域で発生した地震の命名の要件[27]のうち「Mj7.0以上(深さ100 km以浅)かつ最大震度5強以上」という要件を満たしていた。また、この要件においては定めた名称が一連の地震活動全体を指すことも定められていた[27]。そのため、気象庁は2024年1月1日18時過ぎから開いた記者会見において、2024年1月1日の最大震度7の地震並びに2020年12月以降の一連の地震活動(能登群発地震)の両者を「令和6年能登半島地震」と命名することを発表した[1][28][29]。この名称の中には石川県が「令和5年奥能登地震」と命名した2023年5月5日の地震も含まれている[30]。地震活動に対して気象庁が命名を行うのは、2018年(平成30年)9月の北海道胆振東部地震以来約5年4か月ぶりで[1]、気象庁が初めて地震活動に対する命名を行った1960年のチリ地震津波以降33回目であった[30]。なお、気象庁ホームページの英語版においてはこの地震の名称を「The 2024 Noto Peninsula Earthquake」と表現している[31]。
被災地の石川県を拠点とする地方紙である『北國新聞』や同新聞の傘下で富山県を拠点とする『富山新聞』などの一部マスメディア、石川県津幡町など被災地の一部の広報紙などにおいては主に見出しにおいて1.1大震災[17][32][33]という呼称を用いている。地震が発生して間もない時期には能登大地震[34]、石川大震災[35]という名称も用いられていた。日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』では主に見出しにおいて能登半島1.1地震という呼称を用いている[36]。その他、本記事の出典でも見受けられるように見出しで単に能登地震と表現される場合もある。
地震のメカニズム
断層運動と震源周辺の活断層
この地震は日本海東縁変動帯の西端で発生しており[37]、発震機構は、北西 - 南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。また発震機構と地震活動の分布及び衛星測位システム (GNSS) 観測の解析から、震源断層は北東 - 南西に延びる150 km程度の、主として南東傾斜の逆断層であると考えられている[9]。防災科学技術研究所の推計では、震源断層の走向が213度・47度、傾斜が41度・50度、すべり角が79度・99度などとなっている[4]。また、気象庁は29か所の観測点のデータから、この地震のセントロイド(断層の全ての動きを1つの空間的・時間的な点に代表させた場合の座標並びに時刻)時刻を16時10分42.3秒、セントロイド位置を北緯37度29.2分 東経137度15.6分 / 北緯37.4867度 東経137.2600度[注釈 3]の深さ15 kmの位置(理論的に計算された波形と実際に観測された波形の一致度を表すバリアンスリダクションが81 %)、地震モーメント (Mo)と6方向のモーメントテンソル解を1020 N・mの単位でMoが2.14、Mrrが1.89、Mttが-0.83、Mffが1.15、Mrtが-0.23、Mrfが-0.6、Mtfが-1.1(断層の押し引きの境界と断層面のずれを表す非ダブルカップル(D.C.)成分比は-0.04)と計算している[38]。地震調査委員会委員長で東京大学名誉教授の平田直は地震翌日の会見で、この断層は既知のものではないと説明していた[39]。この地震以降、新潟県佐渡島の西方から能登半島西方にかけての約150 kmの範囲にわたって、地震活動域が広がっており[9]、余震が断続的に続いている[40]。震源域の東端は富山トラフの西端付近にある。震源域の西端は2007年の能登半島地震の震源域にかかり海士岬付近まで広がっているが、1993年の能登半島沖地震の震源域にはかかっていない[41]。遠田は日本列島の大きさを考慮すれば日本国内で100 km以上の長さの活断層が動く内陸性地震が発生することは稀であると述べている[42]。この地震によって破壊された全ての活断層が破壊されるまでには約40秒の時間がかかっている[43]。P波はヨーロッパ、北アメリカ、オセアニアなど世界各地で観測され、ウクライナのキーウ(キエフ)で338.3 μm、カザフスタンのマカンチで301.2 μm、フィリピンのダバオで202.1 μm、西オーストラリア州ナロジンで197.5 μm、ミッドウェー島で90.2 μm、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ハーバードで20.9 μm、ロシアのビリビノで18.7 μm、グリーンランドのカンゲルルススアークで3.2 μmなどの振幅が計測されている[5]。
宍倉正展らの研究によれば、能登半島には新生代第四紀更新世チバニアン期(中期更新世、約78万年前から約13万年前)以降の海成段丘が発達しており、完新世に形成された3段の低位段丘面も認められていた[44]。これは、数十万年以上前からごく最近まで地盤の隆起が発生していたことを示しており、この隆起は主に地震時の断層運動によって生じたという[45]。本地震では能登半島北部で最大約4 mの隆起が生じており(後述)、鹿磯漁港の北では約3.6 mの隆起により波食棚が干上がった様子が確認された。宍倉らはこれらを4段目の完新世低位段丘面が新たに生じたことを意味していると解釈している[46]。
東京大学地震研究所の石山ら[47]や産総研の宍倉[44]によると、2024年の地震で大きな隆起が観測された地域では、宍倉らの研究で報告された完新世低位段丘面も周囲と比べて標高が高く、本地震による隆起量と低位段丘面の旧汀線高度(波打ち際の高さ)が近似しているという。この事実は、この地域において本地震のようなマグニチュード7級の地震が繰り返し発生しており、それに伴って低位段丘面が形成されていった可能性があることを示していると考えられている。また、宍倉は地震直前の段階で、奥能登地震(2023年5月5日、Mj6.5)と同程度の規模の地震では説明できない隆起が過去に能登半島で発生した痕跡があり、今後奥能登地震より更に大きな地震が発生する可能性があることを論文で述べようとしていた矢先にその可能性が現実となったこと、現に本地震ほどの大地震が発生したために1 m未満の隆起が少しずつ堆積したという仮説を検討する必要がなくなったと述べている[48]。ただし、西村卓也はMj7クラスの地震が起きるとしてもそれはMj7台の前半であると考えており、この地震の本震で発生したMj7.6は「ワーストケースをさらに上回る」ものであったと述べている。一方で、地震が起きない可能性より起きる可能性の方が高いと言える状況ではなかったことから、住宅の耐震化を進めるよう呼びかけることまではできなかったと述懐している[49]。
2007年の能登半島地震以降に行われた沿岸海域調査によって、能登半島の北岸沿岸に沿って南東側隆起の逆断層の海底活断層群が分布していることが知られていた[41]。井上・岡村(2010)では西から東に、門前沖・猿山沖・輪島沖・珠洲沖の4つのセグメントに区分している[50][注釈 13](国交省ほか(2014)のF43に該当[52])。セグメントを用いたこのモデルは日本海の拡大に伴う地殻の変動を考慮して作成されたものである[53]。さらに、2023年の段階で北陸電力はこの4つのセグメント、全長約90 kmの連なりを「能登半島北部沿岸域断層帯」と総称し、これらが連動して起きる地震の発生の可能性について論じていた[51]。本地震は、これらの断層による活動である可能性が指摘されている[54]。2024年3月11日の地震調査委員会による報告では、この地震は猿山沖セグメントと珠洲沖セグメントのさらに下に重なっている活断層によって発生したと結論付けられた[55]。両セグメントの中間に位置する輪島沖セグメントに関しては、付近の水深が浅く船舶を用いた調査が困難であるため地震との関係については不明である[56]。一方、「○○セグメント」のように細かく活断層を分割していたことで地震のリスクを過小評価していたという指摘もある[57]。また、珠洲沖セグメントの北東延長上には北西傾斜の逆断層が分布しており、余震もこの断層に沿っても分布しているが、本地震とこの断層との対応関係は不明[54][58]。なお、宍倉と岡村はこれらの活断層について、反射断面の分析から垂直変位の速度が1000年あたり1 m以上のA級の活断層である可能性が高いと指摘している[53]。
これらの他に、能登半島地震の震源となった断層から約20 km離れた志賀町の富来川沿いでは3 km以上にわたり断層が地表に現れたものと考えられる地盤のずれや盛り上がりが発見されており、富来川南岸断層が能登半島地震の影響で一緒に動いたいわゆる「お付き合い断層」であることを示唆している。しかし、このような「お付き合い断層」と震源断層との距離は熊本地震の場合せいぜい数 kmに過ぎず、20 km前後も離れていた事例はこの地震以外に確認されていない[59]。この断層の変形量は上下に50 cm前後で、その他に地殻変動に伴う南北方向の圧縮に伴い10 cmから数十 cmの左横ずれが発生しており、この結果は地殻変動の観測結果とも矛盾していない[60]。
震源域での地震予測
本地震以前に提示されていた断層モデル資料としては、日本海における大規模地震に関する調査検討会(2014)のF43[注釈 14][52]、日本海地震・津波プロジェクト(2015)のNT4[注釈 15][61]、石川県(2023)の津波浸水想定区域図における能登半島北方沖[62]などが存在していた。一方で、石川県(2023)の想定地震断層には含まれておらず[63]、地震調査委員会も一連の群発地震活動の評価にて能登半島北岸の活断層の存在を記述していた[64]。一方、この地震や2007年の新潟県中越沖地震を引き起こしたような沿岸の活断層については、陸上や沖合の活断層のように地形を手掛かりにしたり地面を掘削したりして調べることや、海溝型地震を引き起こす海底地形のように海底で超音波を発して調査することが難しかった。海底でもようやく地形を手掛かりにして調査を行うための技術が出てきたが[57]、長期評価は2017年に始まったばかりであった。九州地方の五島列島沖合から中国地方の北方の沖合に関してはこの地震が発生する前の2022年3月25日に長期評価の結果が公表されていた[65]。その後、この地震の震源域を含む近畿地方北方と北陸地方の沖合の活断層に関して長期評価が進められていたが、地震が発生した際には確率評価・地域評価はいずれも評価中であり、評価結果の公表は本地震の発生には間に合わなかった。そのため、地震調査研究推進本部は方針を転換し、確率評価・地域評価が評価中でも地震の可能性がある活断層が存在することが判明した段階で評価の完了を待たずに活断層に関係する情報を迅速に公表することとした[66]。今回の地震が発生したような日本海の東岸沿いではユーラシアプレートと北アメリカプレート[注釈 16]が隣り合っていることから、そこで起きる地震は長期評価において海溝型地震として取り扱われていたが、この地域には無数の断層がひしめき合っており、海溝はないことから、遠田はこのような取り扱いは現実の地形に見合っていないと指摘している[68]。また、F43断層の情報に関しては津波の予想にしか使われておらず、陸域での揺れの予想には使われていなかったことを遠田は指摘している[69]。
また、2012年に経済産業省資源エネルギー庁の原子力安全・保安院(現在の環境省原子力規制委員会)で行われた地震・津波に関する意見聴取会では、能登半島北部の4本の活断層が連動した場合、最大でMj8.1(Mw7.66))の巨大地震が発生する可能性があるという北陸電力の予測が示されていたが、地震調査研究推進本部による長期評価が終了していないことを理由に石川県の地域防災計画では1997年度に発表されていた「Mj7.0、死者7人、建物全壊120棟」などと、実際のこの地震の規模や実際に本地震で発生した被害と比べるとかなり過少な想定を維持していた[70]。2013年から2014年にかけても、政府の有識者検討会でF43を震源とするMj7.6の地震の発生が想定されており、これは実際に2024年1月1日に発生した本震の規模と同じであった[71]。しかし、当時石川県知事であった谷本正憲は熊本地震前の熊本県、北海道胆振東部地震前の道央地域などと同様、全国地震動予測地図[72]で能登半島を含む県内の大部分に関して30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率が0.1 %から3 %の範囲内であるとされていたことを根拠に「石川県は地震が少ない地域である」などとアピールして企業の誘致を行っており[73][注釈 17]、事前の対策を求める議論には発展していなかった[75]。2022年に馳浩が石川県知事に就任してから地域防災計画の改定が進み、新しい計画が2025年度以降に公表される予定であったが、その前にこの地震が発生することとなった[70]。富山県も企業立地ガイドのホームページで「台風・地震や津波などが非常に少なくリスク分散に最適です」などと紹介し、全国地震動予測地図で30年以内に(富山市で)震度6弱以上の揺れが起きる確率が5.2 %と太平洋沿岸より低いことを富山県の魅力として広報していた[76]。地震調査研究推進本部の平田直も海域活断層の評価が遅くなったことに関して後悔の念を示している他[71]、東京女子大学名誉教授の広瀬弘忠も自治体が国に依存せず自力で災害に対応できる能力を養うべきであったと表明した[70]。2007年の能登半島地震では住宅の倒壊による死者は出なかったが、石川県の災害危機管理アドバイザーを務めている神戸大学名誉教授の室崎益輝はこのことも予想の見直しを妨げたと指摘している[77]。また、東京新聞は、地震が発生する確率で色分けされた地震調査研究推進本部の全国地震動予測地図によって南海トラフ巨大地震や南関東直下地震(首都直下地震)ばかりが注目され、それ以外の地域では地震が起きないと誤解されていたことがこの地震に対する油断に繋がった可能性を指摘している[78]。地震学者でさえ、能登半島北部の活断層の存在を知らない者も少なくなかった[68]。
2月29日に行われた地震予知連絡会の第242回会合では、当初の計画である「火山と地震」から変更してこの地震について話し合われ[79]、この地震に関する研究結果などが報告されると共に、この地震を教訓に群発地震の際には規模の大きな地震が起きる危険性について具体的に周知すべきであるという意見が出された[80]。その一方で、例えば「F43断層が動いて大地震が発生する可能性がある」のように、具体的な断層の名前まで伝えて地震への警戒を呼び掛けるかどうかに関しては今後検討すべき課題であるとされた。2024年11月に行われる予定の地震予知連絡会の第245回会合では「阪神・淡路大震災から30年、能登半島地震から1年 ― 内陸地震予測の進展と課題 ―」と題して、再びこの地震に対しての検討が行われることが決まっている[53]。
流体の活動
今回の地震の原因に関して、地下にある流体も指摘されている。この流体に関して詳細は不明であり地下で直接気体や液体が観測されたわけではないが、能登半島近辺には火山が存在しないことと地殻変動の観測などからマグマではなく水であると指摘されている[81]。水は火山が存在しない場所でも急に上昇する可能性がある[82]。能登半島の地下300 km程度の深さに沈み込んでいる太平洋プレートを形成する鉱物には水分が多く含まれている。この鉱物は地下の高温・高圧により脱水反応を起こし、水を含まない鉱物と水とに分解される[83]。このようにして生成された大量の水が2020年11月以降、太平洋プレート内から徐々に染み出して次第に上昇し、29,000,000 m3(東京ドーム23個分)の水が地下16 km程度にまで到達した。このような現象が起こった原因としては、東北地方太平洋沖地震後に東西のプレートが押し合う力が弱くなったためであると考えられている[82]。この水は岩石の融点を下げてマグマの形成を助けるほどの量ではなかったものの[83]、能登半島周辺の活断層に流れ込んで断層を圧迫することで群発地震を引き起こし、さらに元々歪みが溜まっていた断層にまで水が達したことで今回のMj7.6の地震が発生したと推測されている[82]。つまり、能登半島の地下に特有の[83]水の層が断層を動かしやすくする潤滑油のような役割を担っているという意味である[82]。ただ、それまでの群発地震で水による歪みは解消されており、今回発生したのは水が少ない地域であったという異論もある。今回の地震後に流体がどうなったのか、活断層の歪みがどうなったのか等に関してはまだ不明な点が多い[84][85]。なお、同一の地盤内で小さな地震と大きな地震の起きる比率は決まっているため、群発地震により小規模の地震が非常に多くなったことは大地震が発生する確率も非常に高くなったことを意味していると遠田は述べている[86]。
また、このような仕組みにより、群発地震では地盤の隆起が発生するタイミングと地震が発生するタイミングが異なっており、地震の震源は時間が進むに連れて浅くなったことも明らかになっている[87]。しかし、流体により発生した歪みに相当する力のモーメント(トルク)は1.10×1018 N・m[注釈 18]と本震によって解消した歪みの200分の1でしかないことから、流体の作用だけによって今回の地震が発生したとは考えにくい[89]。
他の地震・火山への影響
この地震は規模が大きかったため、1月11日に行われた南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会の会合ではこの地震が南海トラフ沿いでの微小な地震や地殻変動に与えた影響が分析されたが、その結果、この地震により南海トラフ巨大地震の発生に結び付くような変化は確認できなかったとの判断が行われた[90]。京都大学防災研究所の西村卓也は、阪神大震災以降、2000年の鳥取県西部地震・16年の熊本地震など内陸性の大地震が相次いでいる西日本は南海トラフ巨大地震の約50年前から始まる地震の活動期に入っていると指摘した上で、能登半島地震自体は震源が南海トラフから非常に遠い上、フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込んでいるのが南から北の方向であることを考慮してもこの活動期と直接の関連はないとの見方を示した[91]。一方、この地震の津波の特徴であった、第1波がすぐに到達して長時間続き、最大波は遅れるといった点は南海トラフで発生する巨大地震とも共通していた[92]。なお、今回の地震による作業の遅れと、本地震から得た教訓を生かすことにより、2024年春に予定されていた南海トラフ巨大地震の防災計画見直しは延期されることが決定した[93]。
この地震の発生した1月1日から1月4日前後と、1月8日から1月11日にかけて、立山連峰・弥陀ヶ原火山の地獄谷南側で火山性地震が一時的に増加したが、弥陀ヶ原の想定火口域では地震活動や火山活動は活発になっておらず、その後は地獄谷南側の火山性地震も落ち着いている[94]。このような地震活動の増加に関しては、富山地方気象台では能登半島地震の影響かは断定できないと判断されている[95]。
過去の地震との比較
アメリカ地質調査所(USGS)によれば、この地震の震源の半径250 km以内では1900年以降本震の直前までにM6以上の地震が30回発生しており、そのうち3回は能登半島とその近辺で発生している(1993年の能登半島沖地震、2007年の能登半島地震、2023年の奥能登地震)。しかし、そもそも地震の多い日本にあって、震源周辺での地震発生回数は太平洋側と比べると少なかった[2]。
石川県能登地方を震源とする地震としては、このMj7.6という地震の規模は記録が残っている1885年(明治18年)以降では最大であり[注釈 19][17][97]、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災を引き起こした地震)や2016年の熊本地震本震のMj7.3と比較しても約2.8倍の規模に相当した一方で、海溝型地震であり日本における観測史上最大規模の地震であった東北地方太平洋沖地震のMw9.0と比較すると約128分の1の規模に過ぎなかった[98][99]。活断層による地震としてはMj7.6は日本国内では過去100年間で最大規模であり[100]、内陸部を震源とする地震としては関東大震災を引き起こした1923年9月1日の関東地震以来の規模であった[101]。また、西南日本に限れば1946年12月21日の昭和南海地震以来の規模であり、西南日本の地殻内で発生した地震としては1891年10月28日の濃尾地震[注釈 20]以来の規模であった[21]。日本国内で震度を観測したすべての地震活動と比較しても、深発地震[注釈 21]を除いて、あるいは本州付近に被害をもたらした地震としては、2011年にMw9.0(Mj8.4)を記録した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災を引き起こした地震)とそれに伴う余震[注釈 22]以来の規模となった[96][107]。能登半島での群発地震における一連の地震活動の中で最大であった2023年5月の奥能登地震のMj6.5と比較すると規模は40倍から50倍にもなった[107]。2020年以降2023年末までに起きた群発地震のエネルギーを全て合計した数値と比較しても、この地震によるエネルギーは約35倍、2007年の能登半島地震と比較すると約11倍になる[108]。
一方で、地震計による観測が始まる以前に発生した歴史地震、更には文献の残っていない時代に発生した先史地震を含め、2024年の地震の震源周辺の能登半島北部でこの地震と同じ程度の規模の地震がどの程度の頻度で発生してきたのかについては定かではない。能登半島においてこの地震より前にMj7以上の規模であった可能性のある大地震が発生したのは1729年の能登・佐渡地震(享保能登地震、Mj6.6 - 7.0)が最後であった[109]。能登・佐渡地震においても2024年の地震と同じ断層が動いたと考えられているが、この断層が動くのは1000年に一度ほどの頻度と考えられてきたことから、300年も経たずに再び大地震が起きたのは不可解という意見もあった[110]。他方で2024年の地震は能登・佐渡地震と比べても8倍から32倍の規模であり、震源断層の長さは7倍、重蔵神社などの例からも分かるように被害も佐渡島を除いてはるかに大きかった[109]。震源周辺の海成段丘による研究から、縄文海進がピークを迎えた紀元前4000年ごろ、ないしは能登半島近辺での海面上昇がピークを迎えた紀元前1500年ごろからこの地震の直前までの間に3回の大地震が発生していることが分かっており、頻度としては起点として前者を採用するなら2000年に一度程度、後者を採用するなら1000年に一度程度となっている。ただ、海面変動の影響を考慮する必要があるもののこれらの大地震による隆起の規模は2024年の地震によるものより小さいことから、宍倉はこの地震は能登半島で発生しうる地震としては最大級の地震であると話している[111]。石川県と富山県における津波堆積物のボーリング調査からは、紀元前500年ごろに今回とほぼ同じ地域で大津波が押し寄せた痕跡が見つかっており、今回と同じ震源域での大地震が発生した可能性がある他、これより規模は小さく別の地域で発生した地震の可能性が残るものの珠洲市では西暦紀元前後から300年ごろと9世紀から10世紀の合計で3回、富山湾沿岸では紀元前5900年から前5800年ごろと紀元前2700年から紀元前2500年ごろ、それに13世紀の合計で4回の津波堆積物が確認されている。堆積物自体は2015年に発見されていたが、この地震が発生するまではどのような地震による津波堆積物なのかは不明であった[112]。宍倉と岡村は隆起の痕跡を元に、複数のセグメントが連動することで発生するMj7を超える地震と単一のセグメントによって発生するMj7に満たない地震との両方がこの地域では発生しており、前者は1 m以上の隆起を引き起こしているのに対し、後者は隆起を引き起こしたとしても1 m未満であると指摘している[53]。
観測された揺れ
各地の震度
石川県能登地方で最大震度7が観測されたほか、本州・四国のほぼ全域と九州・北海道の一部など、北海道釧路市黒金町(震度1)から鹿児島県鹿児島市桜島赤水新島(震度2)まで、長崎県と沖縄県を除く45都道府県で震度1以上の揺れが観測された[6]。全国にある4375か所[113]の震度観測点のうち、震度1以上を観測した観測点は約65 %の2829地点[注釈 23]にのぼり、2013年以降では最多となった[116]。
石川県輪島市・羽咋郡志賀町で震度7、七尾市・珠洲市・鳳珠郡(穴水町・能登町)で震度6強、鹿島郡中能登町(以上いずれも石川県)と新潟県長岡市で震度6弱をそれぞれ観測した[6]。日本国内で公式に震度7を観測した地震は2018年(平成30年)の北海道胆振東部地震以来で、累計で7回目であった[117][118]。石川県では初めて震度7を観測した[119][17]。同一の地震で複数の観測地点において震度7を観測したのは2016年4月16日の熊本地震本震以来2回目である[120]。震源より西側にある志賀町で震度7を観測した理由として、断層の滑りが震源域の西部で大きかったことが考えられている[121]。輪島市鳳至町や珠洲市三崎町では、50秒間にわたって震度5強以上に相当する揺れが続いた[5]。また富山県では震度観測が計測震度に移行し、震度5と6がそれぞれ弱と強に2分割された1996年以降初めて最大震度5強を観測した。これは2007年の能登半島地震で観測した震度5弱を上回っており、同県内で観測された震度としては1996年以降最大である[122]。震源から300 km程度離れた[96]東京都特別区部でも最大で震度3を観測した[6]。
また、愛知県名古屋市・大阪府大阪市で震度4、宮城県仙台市・岡山県岡山市で震度3、青森県青森市・広島県広島市・香川県高松市で震度2、北海道札幌市・熊本県熊本市で震度1[注釈 24]など、日本全国の主要な都市で震度1以上の揺れを観測した[6]。USGSによれば、韓国[注釈 25]慶尚南道昌原市鎮海区と中華民国(台湾)新北市中和区で改正メルカリ震度階II(気象庁震度階級で震度1程度)、韓国の慶尚北道慶州市・京畿道の烏山市・始興市と中国の河南省平頂山市でメルカリ震度階I(無感)の揺れを記録している[124]。
地震発生直後には震度に関する情報が入電していない観測地点が複数あり、気象庁は当初、観測された最大の震度を輪島市で6強、能登町で6弱であったと発表していた。その後、輪島市門前町走出で震度7(計測震度6.5、推計震度分布では震度6強と推定されていた)、能登町の松波で震度6強(計測震度6.2、推計震度分布でも震度6強と推定されていた)、同町の柳田で震度6弱(計測震度5.8、推計震度分布でも震度6弱と推定されていた)をそれぞれ観測していたことが、同月25日までに判明した[115]。これら3か所の震度計はいずれも石川県が管理していたものであった。慶應義塾大学SFC研究所上席所員の纐纈一起は輪島市での震度7が地震直後に判明しなかったことは失態であり、気象庁の管理する震度計のように非常用電源を設置するなどの対策が必要であると指摘している[59]。一方、気象庁長官の森は記者会見でこの一件を受けた対策に関する記者からの質問に対し、阪神・淡路大震災を契機に当時(平成の大合併前)の各市区町村に震度計が設置されており、2024年現在では1つの市区町村に震度計が複数設置されている場合が多いことから、震度が全く分からなくなるような市区町村が出てくることは考えにくいという見解を明らかにしている[125]。
防災科学技術研究所が1月27日に公表した面的推計震度の正式版によると、気象庁の公式な記録として震度7を観測した輪島市・志賀町のほか、七尾市、珠洲市、能登町、穴水町において、震度7相当の揺れが発生したと推定される地域がある。また、中能登町にも震度6強相当の揺れが発生したと推定される地域がある他、羽咋市、小松市、能美市、富山県氷見市、高岡市、富山市、射水市、上市町、舟橋村、新潟県上越市、妙高市、新潟市西区、佐渡市にも震度6弱相当の揺れが発生したと推定される地域がある[126]。気象庁が発表した推計震度分布でも、志賀町・輪島市の他に七尾市能登島の一部地域に震度7と推定される地域があり[注釈 26]、羽咋市・宝達志水町・氷見市・上越市に震度6弱と推定される地域がある[127][出典無効]。
揺れと被害の関係
画像外部リンク | |
---|---|
地図外部リンク | |
Peak Acceleration Contour Map - 防災科学技術研究所による全国の最大加速度(震度0の地域を含む)を示した地図 |
強震観測網 (K-NET)の観測結果によれば、本地震で最大の地表加速度を観測したのは志賀町のK-NET富来観測点で、最大で2,828 Galの地表加速度を計測した[9]。気象庁によれば、同地点は2825.8ガルの地表加速度と計算されている[128]。その他にも能登半島北部の多くの観測点で最大加速度は1 G、最大速度は1 m/sを超え、2007年の能登半島地震や2023年の奥能登地震の際よりも大きかった[129]。
この地震で気象庁から震度7を観測したと発表された志賀町香能(K-NET富来、計測震度6.69)並びに輪島市門前町走出(輪島市役所門前総合支所、計測震度6.5)の他に、気象庁の地震情報で発表される地点ではないが、K-NET穴水(計測震度6.58)の観測点は震度7相当の激しい揺れを計測した。しかし、K-NET穴水周辺は木造建造物の全壊率が22.8%と被害が著しかったのに対し、K-NET富来周辺は0%(暫定)と被害が少なかった[注釈 27][131]。志賀町赤崎地区は被害の少なさから「奇跡の町」とも称された[132]。
京都大学防災研究所の研究グループは、このような差が生じたのはK-NET穴水では建造物への影響が大きい周期1 - 2秒の弾性加速度応答スペクトルが大きかったのに対し、K-NET富来では周期0.5秒以下の極短周期の弾性加速度応答スペクトルが卓越し加速度が大きかったものの、周期1-2秒の弾性加速度応答スペクトルが小さかったためであると非公式ではあるものの公表している[133]。このような周期が1秒から2秒の地震動は「キラーパルス」とも呼ばれ、木造住宅への被害が出やすいことが知られている[134]。一方、K-NET富来で観測されたような極短周期の地震動では墓石や灯篭が倒壊しやすいことが知られており、実際にK-NET富来の周辺では多くの墓石や灯篭に被害が確認された[135]。ギリシャ・クレタ工科大学のエヴァンゲリア・ガリーニはこのような非常に短い周期の地震動は通常M5.5以下の規模の地震で発生するものであり、M7.6の地震で発生したことには前例がほとんどなく、非常に驚くべきことであると指摘している[136]。なお、K-NET穴水は2007年能登半島地震の時[137]、やはり周期1-2秒の弾性加速度応答スペクトルが大きく、周辺の家屋の全壊率19%と大きな被害となっている。その後建て替えられたり、その時倒れずに残った家屋など、建物群としてはより耐震性が高くなっている状況下での今回の被害という点を考慮する必要があり、今回の状況は同様に周期1-2秒の弾性加速度応答スペクトルが大きかった1995年兵庫県南部地震時のJR山陽本線(JR神戸線)鷹取駅(兵庫県神戸市須磨区)周辺や、2016年熊本地震時の熊本県益城町並みの甚大な被害となったとしている[138]。
震度6強と発表された輪島市鳳至町(旧輪島測候所である金沢地方気象台輪島特別地域気象観測所に併設)、および輪島市河井町(K-NET輪島)の周辺も木造建物全壊率が30%前後と、震度7の志賀町香能よりもはるかに甚大な被害とされている[131]。これもK-NET輪島の周期1-2秒の弾性加速度応答スペクトルがK-NET富来(志賀町香能)より大きいからとしている[133][138]。遠田は、志賀町で震動の周期が短くなった理由として、輪島市や珠洲市より地盤が固かったことを挙げている[139]。株式会社Be-doが実施した常時微動(地震がない場合でも常に発生しているわずかな地面の震動)の調査結果によれば、地震による地盤の揺れやすさを示す表層地盤増幅率は内灘町西荒屋での2.29、輪島市門前町道下での1.24、志賀町富来での1.69などに対し、志賀町赤崎では富来の6割に満たない0.98と非常に低く、防災科学技術研究所の地震ハザードステーションによる5段階評価では最も揺れにくいことを示すランクAであり、このような違いから被害状況に相違が生まれたと推定されている。地震の卓越周期も赤崎では0.294秒となり以上の4地点で最も短かった。地盤が固いほど速く伝わるS波を利用した研究では、S波の速さが300 m/sに達する深度は西荒屋での65 m以上、富来では約22.5 m、道下では14 mであったのに対し赤崎ではわずか2.5 mであり、他の3地点で確認できた逆転層(深くなるほどS波の伝わる速さが遅くなる層)も確認できなかった[132]。一方、輪島市中心部で同じ方法で調査を行った結果では、被害が大きかった河井町で表層地盤増幅率が2.68と地震ハザードステーションによる評価で最も揺れやすいことを示すランクEであった他、地震の卓越周期は0.84秒と長く、S波の速さが100 m/sに達する深度が10 m前後、300 m/sに達する深度が50 mと非常に深かかったことから、地盤が軟弱であり揺れやすいだけでなく液状化も起こりやすい場所であったと推論された。なお、河井町での測定結果を建築基準法に当てはめた場合、最も軟弱な地盤として位置づけられている第三種地盤、すなわち壁の厚さを通常の1.5倍(第三紀層などの堅牢な地盤の地域と比べると2倍)にして建設しなければならない地域の地盤に相当する。擁壁の倒壊などが発生した山間部の輪島市堀町においても表層地盤増幅率が1.56、卓越周期が0.53秒、S波の速さが300 m/sに達する深度が25 mと山間部としては軟弱な地盤であった。これらの地域では地震ハザードステーションのハザードマップに掲載されていた表層地盤増幅率と比べると実測値が1.5倍以上大きくなっていたことから、実測によって地盤の固さを調べることは不可欠であると判断された[140]。
また、この地震の揺れに関してガリーニは、珠洲市内の震央に極めて近い地域ではまず初めに0.35 Gから0.45 G程度の加速度は比較的弱いもののごく近くから伝わってくる揺れが到来し、その約10秒後に震央の5 kmから50 km程度南西にある最も断層が強く破壊された地域からの加速度が0.76 Gから0.86 Gの激しい揺れが伝わり、さらに最初の揺れから約35秒後に震央から北東に約50 km離れた最も深い断層からのそれほど激しくはない揺れと震央から南西に約70 km離れた非常に浅い断層からの揺れが伝わったことで60秒以上の非常に長い時間にわたり揺れが続いた、というようにして3つの揺れに分けることができるものの、震央から南西に30 kmから35 km離れた輪島市中心部になるとこの3つの揺れは見かけ上ではほとんど区別できなくなり、揺れの大半は震央の南西から来た成分になったと指摘している[136]。
震度 | 観測点名 | 計測震度 | 地動最大加速度 PGA(cm/s2) | 地動最大速度 PGV(cm/s) | 木造建物全壊率 (%) | 2007年全壊率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
7 | 志賀町香能 (K-NET富来) | 6.69 | 2725.0 2825.8‡ | 83.7 | (0) 参考* | - |
輪島市門前町走出 (輪島市役所門前総合支所) | 6.5 | 786.7‡ | (28.6) 暫定 | 19.3 | ||
K-NET穴水 | 6.58 | 1220.7 | 151.4 | 22.8 | 19.2 | |
6強 | 輪島市鳳至町 (輪島特別地域気象観測所) | 6.2 | 795.9‡ | 29.1 | 5.1 | |
輪島市河井町 (K-NET輪島) | 6.22 | 1627.6 1628.1‡ | 88.7 | 31.5 | 3.0 | |
珠洲市正院町 (K-NET正院) | 6.29 | 847.1 916.7‡ | 132.2 | (45.7)** 暫定 | ||
珠洲市大谷町 (K-NET大谷) | 6.26 | 1468.5 1466.5‡ | 103.1 | (46.4) 暫定 | ||
珠洲市三崎町(気象庁) | 6.1 | 1193.9‡ | ||||
能登町松波 (能登町内浦総合支所) | 6.2 | 732.8‡ | ||||
KiK-net内浦 | 6.31 | 788.3 | 115.2 | |||
KiK-net珠洲 | 6.25 | 766.1 | 117.0 | |||
穴水町大町 (K-NET大町) | 6.33 | 992.0 1001.1‡ | 106.4 | 1.4 | ||
七尾市垣吉町 (田鶴浜地区コミュニティセンター) | 6.1 | 732.0‡ | ||||
七尾市能登島向田町 (能登島地区コミュニティセンター) | 6.2 | 643.4‡ | ||||
* 周辺の家屋数が4軒と少ないため参考値[注釈 27]。 ** 2023年5月の奥能登地震で8.1%が全壊しており、この時の被害家屋は、全壊率を算出する際の分母・分子から除外。 ‡ 気象庁による最大加速度(3成分合成)[20] |
長周期地震動
長周期地震動について、最大の階級4を石川県能登(七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、能登町)で観測した。階級4を観測するのは、2013年の観測情報提供開始以来、2022年3月の福島県沖地震に続いて6回目[141]。また、階級1以上の長周期地震動は青森県から徳島県・島根県までの広い範囲で観測されている[142]。東京都と兵庫県など10の県では、緊急地震速報で予想された長周期地震動階級より実際に観測された長周期地震動階級の方が大きかった[143]。
階級 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
4 | 石川県 | 七尾市本府中町、輪島市鳳至町、珠洲市三崎町、志賀町富来領家町、能登町宇出津 |
3 | 新潟県 | 上越市大手町、小千谷市城内、南魚沼市六日町、新潟空港、新潟市中央区美咲町 、新潟市秋葉区程島、新潟市西蒲区役所 |
富山県 | 魚津市釈迦堂、朝日町道下、高岡市伏木、小矢部市泉町 | |
石川県 | 羽咋市柳田町、金沢市西念、津幡町加賀爪 | |
長野県 | 諏訪市湖岸通り | |
2 | 秋田県 | 能代市緑町 |
山形県 | 酒田市亀ケ崎、遊佐町遊佐・小原田、河北町吉田、米沢市駅前 | |
茨城県 | 坂東市岩井、筑西市舟生 | |
埼玉県 | 熊谷市桜町、久喜市下早見、さいたま市浦和区高砂 | |
千葉県 | 多古町多古、一宮町一宮、千葉市中央区中央港、千葉市美浜区ひび野、成田国際空港、柏市旭町、浦安市日の出 | |
東京都 | 千代田区大手町、港区海岸、新宿区西新宿、墨田区横川、江東区青海、東京国際空港(羽田空港)、杉並区阿佐谷、江戸川区中央 | |
神奈川県 | 横浜市鶴見区大黒ふ頭、川崎市中原区小杉陣屋町 | |
新潟県 | 上越市中ノ俣、長岡市幸町、出雲崎町米田、五泉市村松乙、胎内市新和町、佐渡市相川金山・相川三町目 | |
富山県 | 富山市石坂・八尾町福島、立山町吉峰、南砺市天池 | |
石川県 | 輪島市舳倉島、小松市小馬出町、加賀市直下町 | |
福井県 | 福井市豊島 | |
長野県 | 長野市箱清水、軽井沢町追分、安曇野市穂高支所 | |
愛知県 | 名古屋市千種区日和町、愛西市稲葉町 | |
三重県 | 四日市市日永、鈴鹿市西条 | |
大阪府 | 関西国際空港 | |
兵庫県 | 西宮市宮前町 | |
和歌山県 | 紀の川市粉河 |
緊急地震速報
この地震においては16時10分10.0秒[注釈 28]の地震波の検知から6.0秒後の第1報で石川県能登地方で震度5弱から5強程度の揺れを観測すると予測され、緊急地震速報(警報)が発表された。検知から33.1秒後の第20報[注釈 29]と57.1秒後の第30報[注釈 29]においても警報が発表され、第30報においては警報の発表範囲は石川県、富山県、新潟県、長野県、福井県、岐阜県、福島県、群馬県、埼玉県、栃木県、茨城県、山形県、千葉県、兵庫県、滋賀県、愛知県、三重県、宮城県、奈良県の19県、最終第46報(検知248.5秒後)での予報の発表範囲はこれに東京都、京都府、大阪府、香川県、鳥取県、神奈川県、山梨県、秋田県、島根県、青森県、和歌山県、徳島県、高知県を加えた合計32都府県に拡大した[146]。震源から半径20 kmから30 km程度の範囲では緊急地震速報の発表が主要動の到達に間に合わなかったが、それでも揺れ始めて間もない段階で速報が届いているため揺れに対する心構えとしてはある程度役に立ったことが期待できると京都大学防災研究所の山田真澄は述べている[147]。なお、この地震の緊急地震速報の猶予時間は本震に先立つ16時10分9.5秒に発生した地震を起点として計算されている[146]。
一連の地震
2024年1月1日16時6分の最初の地震、それに続く最大震度7を観測した同日16時10分の地震直後、有感(震度1以上)を観測する余震が数分おきに頻発し、最大震度5弱以上の地震も度々観測された[40]。
本節では以下の条件の少なくとも一つを満たす地震について記述する。
- 最大震度が5弱以上であること。
- 最大長周期地震動階級が2以上であること。
- 気象庁マグニチュード(Mj)が6.0以上であること。
- 大津波警報・津波警報・津波注意報・津波予報(若干の海面変動)が発表されていること。
- 消防庁より本震とは独立に地震の被害に関する情報が発表されていること。
- その他特記すべき事項があること。
一覧表
以下は主な地震の一覧表である。発生日時のリンクから詳しい情報を閲覧することができる。
発生日時 | 震央 | 震源の深さ | 地震の規模 | 最大震度 |
---|---|---|---|---|
2024年1月 1日16時06分 | 石川県能登地方 | 12 km | M5.5 | 震度5強 |
2024年1月 | 1日16時10分石川県能登地方 | 16 km | M7.6 | 震度7 |
2024年1月 1日16時12分 | 能登半島沖 | 9 km | M5.7 | 震度6弱 |
2024年1月 1日16時18分 | 石川県能登地方 | 11 km | M6.1 | 震度5強 |
2024年1月 1日16時56分 | 石川県能登地方 | 14 km | M5.8 | 震度5強 |
2024年1月 1日17時22分 | 石川県能登地方 | 12 km | M4.9 | 震度5弱 |
2024年1月 1日18時03分 | 能登半島沖 | 14 km | M5.5 | 震度5弱 |
2024年1月 1日18時08分 | 能登半島沖 | 14 km | M5.8 | 震度5強 |
2024年1月 1日18時39分 | 能登半島沖 | 6 km | M4.8 | 震度5弱 |
2024年1月 1日20時35分 | 石川県能登地方 | 2 km | M4.5 | 震度5弱 |
2024年1月 2日10時17分 | 石川県能登地方 | 10 km | M5.6 | 震度5弱 |
2024年1月 2日17時13分 | 能登半島沖 | 6 km | M4.6 | 震度5強 |
2024年1月 3日 2時21分 | 石川県能登地方 | 12 km | M4.9 | 震度5強 |
2024年1月 3日10時54分 | 石川県能登地方 | 13 km | M5.6 | 震度5強 |
2024年1月 6日 5時26分 | 石川県能登地方 | 12 km | M5.4 | 震度5強 |
2024年1月 6日23時20分 | 能登半島沖 | 5 km | M4.3 | 震度6弱 |
2024年1月 9日17時59分 | 佐渡付近 | 27 km | M6.1 | 震度5弱 |
2024年1月16日18時42分 | 石川県能登地方 | 3 km | M4.8 | 震度5弱 |
2024年6月 3日 6時31分 | 石川県能登地方 | 14 km | M6.0 | 震度5強 |
前震
2023年奥能登地震以降の地震活動
能登半島での群発地震における地震の発生回数は2023年5月5日の奥能登地震以降急激に増加したが、その後減少を続け7月までには奥能登地震発生前の水準に戻った[148]。9月28日以降能登半島付近で最大震度3以上の地震は起きておらず[149]、気象庁が発表していた最大震度別地震回数表も10月16日10時限りで更新が中断されていた[150]。しかし、12月に入っても地震活動そのものは継続していたため、引き続き地震による強い揺れに警戒が必要とされていた[151]。12月には珠洲市付近で8回の有感地震が発生しており、12月29日0時13分に発生した最大震度1、Mj2.6の地震が年内、かつ1月1日16時6分の地震より前で最後の有感地震となった[152]。一方で、地震前には震源域付近でスロースリップも発生していた[153]。
統計数理研究所の尾形良彦と熊澤貴雄は、2023年の奥能登地震以降に発生した地震についてデトレンド時間分布を取ると、震源域が徐々に拡散しているほか、本震の直前にはそれまでの地震発生回数の傾向から予測されるよりも地震活動が静穏化していたと指摘している。また、このような活動には非定常のETASモデルがよく適合しており、流体の貫入の状況が変化したことが示唆される[53]。
本震当日の微小地震
東京工業大学教授の中島淳一は、本震の2時間ほど前から、それまでほとんど発生していなかった地震の回数が急激に増加していることを指摘している[121]。気象庁の震源リストによれば、地震の当日、震央地名が「石川県能登地方」または「能登半島沖」のいずれかである地震が初めて起きたのは14時17分に能登地方で発生した地震(Mj1.6)で、それ以降16時6分の地震の前までに14時46分に能登半島沖で発生した地震(Mj1.9)を始め、10回の地震が能登地方または能登半島沖で発生した[3]。
1月1日16時6分の地震
1月1日16時6分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 16時6分6.1秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度30.6分 東経137度14.7分 / 北緯37.5100度 東経137.2450度[注釈 30] |
震源の深さ | 12 km |
規模 | Mj5.5 |
最大震度 | 震度5強:珠洲市正院町、珠洲市大谷町 |
津波 | なし |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
2024年1月1日16時6分6.1秒に発生した本地震は、気象庁の震度データベース検索によれば本震の当日、本震の発生前に石川県能登地方または能登半島沖で観測された最大震度1以上の前震としては唯一のものである。この地震の段階で16時8分に発表された地震情報には「津波の心配はありません」と表記されており、津波情報は発表されていなかった[154]。また、この地震では最大震度5強を観測しているにも関わらず、本来は最大震度5弱以上を観測した場合に発表される[155]推計震度分布は発表されていない[156]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 珠洲市正院町・大谷町 |
4 | 石川県 | 輪島市鳳至町、珠洲市三崎町、能登町宇出津・松波 |
この地震に伴い、気象庁は地震検知から6.0秒後の16時6分14.1秒に緊急地震速報(警報)を発表した[158]。また、輪島市鳳至町と珠洲市三崎町で長周期地震動階級1を観測している[159]。また、石川県と消防庁は前震の段階ですでに災害対策本部を設置していた他、16時8分には石川県に適切な対応と被害の報告を要請していた[14]。
本震直前の地震
前に掲げた地震の他に、2024年1月1日16時10分からの1分間に2回の地震が発生しているが、発生時刻や震央が本震と近いため本震との震度の分離は不可能である[5]。これらの他に16時8分には16時6分の地震が発生した場所からやや西に外れた場所でMj4.6の地震が発生した。このように、1月1日15時以降本震までに複数の地震に及び通常では1回の地震の中でしか見られないような地震活動の活発化が見られていることから、この現象はいわばスロー映像で見た地震の経過のようなものであると指摘されている。これら当日の群発地震によって断層が不安定となり、本震を引き起こした可能性も高い[160]。なお、16時8分の地震では石川県能登で震度3が予報されたため[161]地震波検知から2.3秒後の16時8分33.3秒に緊急地震速報(予報)が発表されている[162]。
発生時刻 | 震央地名(震央座標) | 震源の深さ | 地震の規模 | 震度 |
---|---|---|---|---|
16時 | 8分25.6秒石川県能登地方(北緯37度29.7分 東経137度13.1分 / 北緯37.4950度 東経137.2183度[注釈 31]) | 11 km | M4.6 | 震度1以上を観測せず |
16時10分 | 8.3秒能登半島沖(北緯37度31.0分 東経137度14.4分 / 北緯37.5167度 東経137.2400度[注釈 30]) | 10 km | M不明 | 本震の震度と分離不可能 |
16時10分 | 9.5秒石川県能登地方(北緯37度30.4分 東経137度13.8分 / 北緯37.5067度 東経137.2300度[注釈 32]) | 10 km | M5.9 | 本震の震度と分離不可能 |
以上に掲げたのは気象庁による解析情報であるが、これとは別に京都大学防災研究所准教授の浅野公之らの研究グループが実施した解析によると、まず16時10分9秒に石川県珠洲市付近から輪島市付近にかけて南西方向に延びる断層が動いてM7.3の地震が発生し、これによって能登半島の沿岸部での隆起が発生した可能性がある。この地震による揺れが収まらない中、13秒後に今度は珠洲市付近から日本海に向けて北東に延びる断層が動いて再びM7.3の地震が発生し、これにより津波が発生した可能性がある。この説が正しければ、能登半島地震は東北地方太平洋沖地震などと同様に連動型地震であることになり、2つの地震を合わせてM7.6の規模となったことになる[163][164]。なお、USGS[2]のほかヨーロッパ地中海地震学センター (EMSC)[165]やドイツ地球科学研究センター[166]などの日本国外の機関では16時10分9秒台から10秒台をMw7.5の地震が発生した時刻であると発表している。
余震
1月1日16時12分の地震
1月1日16時12分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 16時12分16.6秒 |
震央 | 能登半島沖(志賀町近く[167]) |
座標 | 北緯37度9.3分 東経136度39.5分 / 北緯37.1550度 東経136.6583度 |
震源の深さ | 9 km |
規模 | Mj5.7 |
最大震度 | 震度6弱:志賀町香能 |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震は速報段階では本震と同一の揺れとして取り扱われていたが、その後に地震の波形などを分析した結果16時10分の本震とは別にこの地震が本震の震源から西に約70 km離れた沖合で発生していたことが判明し、2月8日の記者会見で発表された。本震の震度7を発表していたことから防災対応に問題はなかったと判断された[168]。揺れ自体は本震から連続している[5]。このような経緯から、地震発生直後に作成される推計震度分布はこの地震に対しては作成されていない[156]。緊急地震速報に関しても本震(とその直前の2つの地震)に伴い発表されたものと区別されていない[146]。なお、気象庁の震度データベース検索によれば震度6弱は本震の余震で観測した震度としては1月6日23時20分の地震と並んで最大である。また、この地震に関しては震度データベースに震度3の観測地点までしか掲載されておらず、震度2と震度1の観測地点が掲載されていない。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
6弱 | 石川県 | 志賀町香能 |
5強 | 石川県 | 志賀町末吉千古 |
5弱 | 石川県 | 七尾市垣吉町、珠洲市三崎町・大谷町、中能登町末坂・能登部下 |
4 | 石川県 | 七尾市本府中町・袖ヶ江町・能登島向田町、輪島市鳳至町・門前町走出、珠洲市正院町、羽咋市柳田町、志賀町富来領家町、穴水町大町、宝達志水町子浦・今浜、かほく市浜北・宇野気 |
富山県 | 富山市新桜町 |
1月1日16時18分の地震
1月1日16時18分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 16時18分42.6秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度11.9分 東経136度49.1分 / 北緯37.1983度 東経136.8183度[注釈 33] |
震源の深さ | 11 km |
規模 | Mj6.1 |
最大震度 | 震度5強:穴水町大町 |
津波 | 本震による津波と区別されず |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震のMj6.1という規模は気象庁の震度データベース検索によれば1月9日17時59分の地震と並び余震としては最大のものであった[注釈 34]。津波に関しては(本震に伴う)「津波警報等(大津波警報・津波警報あるいは津波注意報)を発表中」と表示され、本地震に対する固有の情報は発表されなかった[172]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 穴水町大町 |
5弱 | 石川県 | 七尾市能登島向田町、輪島市鳳至町・河井町、志賀町富来領家町・香能、中能登町末坂 |
4 | 石川県 | 七尾市本府中町・袖ヶ江町・垣吉町、羽咋市柳田町、志賀町末吉千古、中能登町能登部下、能登町宇出津、加賀市大聖寺南町 |
富山県 | 富山市新桜町・婦中町笹倉、舟橋村仏生寺、立山町吉峰、氷見市加納、射水市久々湊・本町・橋下条・二口 |
階級 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
2 | 石川県 | 七尾市本府中町、輪島市鳳至町 |
新潟県 | 新潟空港 |
この地震に伴い、地震検知から6.7秒後の16時18分51.8秒に緊急地震速報(警報)が発表された[175]。
1月1日16時56分の地震
1月1日16時56分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 16時56分48.7秒 |
震央 | 能登半島沖 |
座標 | 北緯37度15.7分 東経136度51.4分 / 北緯37.2617度 東経136.8567度[注釈 35] |
震源の深さ | 14 km |
規模 | Mj5.8 |
最大震度 | 震度5強:輪島市門前町走出、穴水町大町 |
津波 | 本震による津波と区別されず |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
津波に関しては(本震に伴う)「津波警報等(大津波警報・津波警報あるいは津波注意報)を発表中」と表示され、本地震に対する固有の情報は発表されなかった[176]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 輪島市門前町走出、穴水町大町 |
5弱 | 石川県 | 七尾市能登島向田町、志賀町富来領家町・香能、中能登町能登部下 |
4 | 石川県 | 七尾市本府中町・袖ヶ江町・垣吉町、輪島市鳳至町・河井町、羽咋市柳田町、志賀町末吉千古、宝達志水町子浦、中能登町末坂、能登町宇出津、かほく市浜北・宇野気 |
富山県 | 氷見市加納 |
階級 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
2 | 石川県 | 輪島市鳳至町、志賀町富来領家町 |
この地震に伴い、地震検知から6.8秒後の16時56分59.0秒に緊急地震速報(警報)が発表された[179]。
1月1日17時22分の地震
1月1日17時22分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 17時22分11.4秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度27.9分 東経137度12.3分 / 北緯37.4650度 東経137.2050度[注釈 36] |
震源の深さ | 12 km |
規模 | Mj4.9 |
最大震度 | 震度5弱:珠洲市正院町 |
津波 | 本震による津波と区別されず |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
津波に関しては(本震に伴う)「津波警報等(大津波警報・津波警報あるいは津波注意報)を発表中」と表示され、本地震に対する固有の情報は発表されなかった[180]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5弱 | 石川県 | 珠洲市正院町 |
4 | 石川県 | 珠洲市三崎町・大谷町 |
この地震に伴い、地震検知から15.1秒後の17時22分29.2秒に緊急地震速報(警報)が発表された[182]。
1月1日18時3分の地震
1月1日18時3分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 18時03分50.1秒 |
震央 | 能登半島沖 |
座標 | 北緯37度35.5分 東経137度24.4分 / 北緯37.5917度 東経137.4067度 |
震源の深さ | 14 km |
規模 | Mj5.5 |
最大震度 | 震度5弱:珠洲市正院町 |
津波 | 本震による津波と区別されず |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
津波に関しては(本震に伴う)「津波警報等(大津波警報・津波警報あるいは津波注意報)を発表中」と表示され、本地震に対する固有の情報は発表されなかった[183]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5弱 | 石川県 | 珠洲市正院町 |
4 | 石川県 | 輪島市鳳至町・河井町、珠洲市三崎町・大谷町、志賀町富来領家町 |
1月1日18時8分の地震
1月1日18時8分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 18時08分18.4秒 |
震央 | 能登半島沖 |
座標 | 北緯37度34.7分 東経137度22.9分 / 北緯37.5783度 東経137.3817度 |
震源の深さ | 14 km |
規模 | Mj5.8 |
最大震度 | 震度5強:珠洲市三崎町 |
津波 | 本震による津波と区別されず |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
津波に関しては(本震に伴う)「津波警報等(大津波警報・津波警報あるいは津波注意報)を発表中」と表示され、本地震に対する固有の情報は発表されなかった[185]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 珠洲市三崎町 |
5弱 | 石川県 | 珠洲市正院町・大谷町 |
4 | 石川県 | 七尾市本府中町、輪島市鳳至町・河井町・門前町走出、穴水町大町、能登町宇出津・柳田・松波 |
新潟県 | 上越市木田・頸城区百間町 | |
富山県 | 富山市新桜町・舟橋村仏生寺・高岡市広小路・射水市二口 |
階級 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
2 | 石川県 | 輪島市鳳至町 |
この地震に伴い、地震検知から6.6秒後の18時08分27.9秒に緊急地震速報(警報)が発表された[188]。
1月1日18時39分の地震
1月1日18時39分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 18時39分59.7秒 |
震央 | 能登半島沖 |
座標 | 北緯37度6.4分 東経136度38.8分 / 北緯37.1067度 東経136.6467度 |
震源の深さ | 6 km |
規模 | Mj4.8 |
最大震度 | 震度5弱:志賀町香能 |
津波 | 本震による津波と区別されず |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
速報では地震発生時刻は「18時40分ごろ」と発表された。津波に関しては(本震に伴う)「津波警報等(大津波警報・津波警報あるいは津波注意報)を発表中」と表示され、本地震に対する固有の情報は発表されなかった[189]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5弱 | 石川県 | 志賀町香能 |
4 | 石川県 | 志賀町富来領家町 |
この地震に伴い、地震検知から6.4秒後の18時40分08.4秒に緊急地震速報(警報)が発表された[191]。
1月1日20時35分の地震
1月1日20時35分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月1日 |
発生時刻 | 20時35分40.8秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度9.2分 東経136度45.4分 / 北緯37.1533度 東経136.7567度[注釈 37] |
震源の深さ | 2 km |
規模 | Mj4.5 |
最大震度 | 震度5弱:志賀町富来領家町 |
津波 | 本震による津波と区別されず |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震が起きる直前の20時35分32.1秒にも石川県能登地方の北緯37度9.3分 東経136度44.6分 / 北緯37.1550度 東経136.7433度(震源の深さ4 km)でM4.1の地震が発生しているが、両者の震度の分離は不可能である。津波に関しては(本震に伴う)「津波警報等(大津波警報・津波警報あるいは津波注意報)を発表中」と表示され、本地震に対する固有の情報は発表されなかった[192]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5弱 | 石川県 | 志賀町富来領家町 |
1月2日10時17分の地震
1月2日10時17分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月2日 |
発生時刻 | 10時17分32.6秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度13.3分 東経136度43.3分 / 北緯37.2217度 東経136.7217度[注釈 38] |
震源の深さ | 10 km |
規模 | Mj5.6 |
最大震度 | 震度5弱:輪島市門前町走出、穴水町大町 |
津波 | なし |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震自体による津波の心配はないと発表されたが、本震による海面変動への注意喚起が付された[194]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5弱 | 石川県 | 輪島市門前町走出、穴水町大町 |
4 | 石川県 | 七尾市本府中町・袖ヶ江町・能登島向田町、輪島市鳳至町・河井町、志賀町富来領家町・香能・末吉千古、中能登町末坂・能登部下、能登町宇出津 |
階級 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
2 | 石川県 | 輪島市鳳至町 |
この地震に伴い、地震検知から6.4秒後の10時17分45.3秒に緊急地震速報(警報)が発表された[197]。
1月2日17時13分の地震
1月2日17時13分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月2日 |
発生時刻 | 17時13分40.8秒 |
震央 | 能登半島沖 |
座標 | 北緯37度8.3分 東経136度38.0分 / 北緯37.1383度 東経136.6333度 |
震源の深さ | 6 km |
規模 | Mj4.6 |
最大震度 | 震度5強:志賀町香能 |
津波 | なし |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震自体による津波の心配はないと発表されたが、本震による海面変動への注意喚起が付された[194]。この地震の後に気象庁は報道発表を行い、危険な場所に近づかないこと、最大震度7程度の地震に注意することを呼びかけた[198]。また、志賀原発に対しこの地震による新たな被害はなかった[199]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 志賀町香能 |
4 | 石川県 | 志賀町富来領家町 |
1月3日2時21分の地震
1月3日2時21分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月3日 |
発生時刻 | 2時21分48.0秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度28.9分 東経137度18.2分 / 北緯37.4817度 東経137.3033度[注釈 39] |
震源の深さ | 12 km |
規模 | Mj4.9 |
最大震度 | 震度5強:珠洲市正院町 |
津波 | なし |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震自体による津波の心配はないと発表されたが、本震による海面変動への注意喚起が付された[201]。珠洲市役所で強い揺れが感じられ被害状況を確認した他、珠洲警察署では横揺れが数秒間続いた[202]。この地震の後に気象庁は報道発表を行い、危険な場所に近づかないこと、最大震度7程度の地震に注意することを呼びかけた[203]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 珠洲市正院町 |
5弱 | 石川県 | 珠洲市三崎町 |
4 | 石川県 | 珠洲市大谷町 |
この地震に伴い、地震検知から9.9秒後の2時22分01.6秒に緊急地震速報(警報)が発表された[205]。また、輪島市鳳至町で長周期地震動階級1を観測した[206]。
1月3日10時54分の地震
1月3日10時54分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月3日 |
発生時刻 | 10時54分35.0秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度22.4分 東経136度52.3分 / 北緯37.3733度 東経136.8717度[注釈 40] |
震源の深さ | 13 km |
規模 | Mj5.6 |
最大震度 | 震度5強:輪島市鳳至町・河井町 |
津波 | なし |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震自体による津波の心配はないと発表され、この地震では本震による海面変動への注意喚起も付されなかった[207]。この地震により、輪島市役所では10秒間ほど突き上げるような揺れが感じられ、市役所の職員も驚いた様子であった。また、北陸新幹線がこの地震に伴う停電により上田駅と糸魚川駅の間で一時運転を見合わせた[208]。この地震の後に気象庁は報道発表を行い、危険な場所に近づかないこと、最大震度7程度の地震に注意することを呼びかけた[209]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 輪島市鳳至町・河井町 |
5弱 | 石川県 | 輪島市門前町走出 |
4 | 石川県 | 穴水町大町・中能登町末坂・能登町宇出津 |
階級 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
3 | 石川県 | 輪島市鳳至町 |
この地震に伴い、地震検知から8.5秒後の10時54分46.8秒に緊急地震速報(警報)が発表された[211]。
1月6日5時26分の地震
1月6日5時26分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月6日 |
発生時刻 | 5時26分51.6秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度13.0分 東経136度49.9分 / 北緯37.2167度 東経136.8317度[注釈 41] |
震源の深さ | 12 km |
規模 | Mj5.4 |
最大震度 | 震度5強:穴水町大町 |
津波 | なし |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震自体による津波の心配はないと発表された[212]。この地震により穴水町では強い横揺れが5秒以上、七尾市では強い横揺れが20秒程度、富山県氷見市では横揺れが10秒から15秒ほど感じられたが、棚から物が落ちることはなく、いずれも被害の報告はなかった。新幹線・高速道路も平常通りの状態であった[213]。この地震の後に気象庁は報道発表を行い、可能な限り危険な場所に立ち入らないこと、最大震度7程度の地震に注意することを呼びかけた[214]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 穴水町大町 |
5弱 | 石川県 | 七尾市能登島向田町 |
4 | 石川県 | 七尾市本府中町・袖ヶ江町・垣吉町、輪島市鳳至町・河井町・門前町走出、志賀町富来領家町・香能・末吉千古、中能登町末坂・能登部下 |
この地震に伴い、地震検知から5.8秒後の05時27分01.3秒に緊急地震速報(警報)が発表された[216]。また、この地震に伴い、七尾市本府中町と輪島市鳳至町で長周期地震動階級1を観測した[217]。
1月6日23時20分の地震
1月6日23時20分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月6日 |
発生時刻 | 23時20分23.0秒 |
震央 | 能登半島沖 |
座標 | 北緯37度10.3分 東経136度38.7分 / 北緯37.1717度 東経136.6450度 |
震源の深さ | 5 km |
規模 | Mj4.3 |
最大震度 | 震度6弱:志賀町香能 |
津波 | なし |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震自体による津波の心配はないと発表された[218]。この地震では、震度6弱を観測した観測地点(志賀町香能)以外の観測地点では震度3以下の揺れしか観測されず、周辺の震度と大きな差が見られたことから7日に気象庁が当該地震計に傾きやひび割れがないか否かを点検したが、地震計や周辺地盤に異常は見つからなかった[219]。志賀町役場の警備員は大きな揺れを感じなかったとし、警察や消防にも被害の情報は入っていなかった。計測震度は5.6であり、最大加速度は1492 Galと兵庫県南部地震の891 Galを大きく超えていた他、波形も異常なものではなかったが、通常見られるような差とは言えなかった。揺れが継続した時間が5秒ほどと短かったことから強い揺れとしては感じられず、地震計に近かった1地点だけで震度6弱を観測した可能性があると気象庁は述べている。緊急地震速報(警報)に関しても震度5弱以上の揺れがどの地域でも予想されなかった[注釈 42]ことから発表されなかった[221]。志賀原発については1月7日0時38分に原子力規制委員会より異常は確認できなかったと発表された[222]。この地震の後に気象庁は報道発表を行い、可能な限り危険な場所に立ち入らないこと、最大震度7程度の地震に注意することを呼びかけた[223]。なお、気象庁の震度データベース検索によれば震度6弱は本震の余震で観測した震度としては1月1日16時12分の地震と並んで最大である。また、同検索によると1919年以降に震度6弱(1995年までは震度6)以上を観測した全ての地震でマグニチュードが5.0以下であったのはこの地震が唯一であり(2番目は2019年の熊本地震などのMj5.1)、震度5強以上を観測した全ての地震でもマグニチュードが最も小さかった。京都大学防災研究所によれば、震度6弱を観測したK-NET富来と気象庁の観測所(富来領家町)の間で震動の方向はほとんど変わらなかったが、震動の加速度の大きさや速さはK-NET富来のほうが10倍ほど大きかった。地震による断層の破壊が丁度K-NET富来の方向に向かって伝わり、さらに地震計に入った揺れの周期が0.2秒ほどと、丁度K-NET富来が揺れやすい周期に相当したために、震度6弱を観測した可能性があると考えられている[224]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
6弱 | 石川県 | 志賀町香能 |
1月9日17時59分の地震
1月9日17時59分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月9日 |
発生時刻 | 17時59分11.4秒 |
震央 | 佐渡付近 |
座標 | 北緯37度54.6分 東経137度45.8分 / 北緯37.9100度 東経137.7633度 |
震源の深さ | 27 km |
規模 | Mj6.1 |
最大震度 | 震度5弱:新潟県長岡市中之島 |
津波 | 新潟県上中下越・新潟県佐渡・石川県能登に津波予報(若干の海面変動)を発表。 |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震のMj6.1という規模は気象庁の震度データベース検索によれば1月1日16時18分の地震と並び余震としては最大のものであった。また、大阪管区気象台はこの地震に伴い18時5分、新潟県上中下越・新潟県佐渡・石川県能登に「津波予報(若干の海面変動)」を発表した[226]。しかし、日本の沿岸で津波は観測されなかった[227]。この地震に伴い、消防庁は災害対策室を設置したが、1月16日17時に廃止した。この地震による新たな被害は報告されていない[228]。また、長岡市と佐渡市は災害警戒本部を17時59分に設置したが、被害の報告はなかった[229]。18時1分には首相官邸に情報連絡室が設置されている。新潟市内では横揺れが30秒ほど、珠洲市では横揺れが15秒ほど続き、停電が発生したため上越新幹線が浦佐駅と新潟駅の間で運転を見合わせた。高速道路や志賀原発に異常はなかった[230]。18時24分、原子力規制委員会は柏崎刈羽原発にも異常は確認されなかったと発表した[231]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5弱 | 新潟県 | 長岡市中之島 |
4 | 新潟県 | 上越市木田・安塚区安塚・大潟区土底浜、長岡市寺泊敦ケ曽根、三条市新堀、柏崎市高柳町岡野町、 見附市昭和町、魚沼市須原、阿賀町鹿瀬中学校、新潟市中央区美咲町、新潟市秋葉区程島・新津東町、新潟市南区白根、新潟市西区寺尾東、新潟市西蒲区役所、佐渡市相川三町目・岩谷口・松ヶ崎・千種・河原田本町・畑野・真野新町・赤泊・両津支所・新穂瓜生屋・小木町 |
石川県 | 七尾市能登島向田町、輪島市舳倉島・鳳至町・門前町走出、珠洲市正院町、中能登町末坂、能登町宇出津・松波* |
この地震に伴い、地震検知から11.2秒後の17時59分31.1秒に緊急地震速報(警報)が発表された[233]。また、この地震に伴い、新潟市西蒲区役所と輪島市鳳至町で長周期地震動階級1を観測した[234]。
1月16日18時42分の地震
1月16日18時42分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年1月16日 |
発生時刻 | 18時42分15.8秒 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度11.1分 東経136度45.1分 / 北緯37.1850度 東経136.7517度[注釈 43] |
震源の深さ | 3 km |
規模 | Mj4.8 |
最大震度 | 震度5弱:志賀町富来領家町 |
津波 | なし |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
この地震自体による津波の心配はないと発表された[235]。この地震に伴う新たな被害は確認されなかった。志賀原発でも新たな異常は確認されなかったと当初は報道されており[236]、原子力規制委員会からもそのように発表されていた[237]。しかし、この地震に伴う安全確認のため2号機で高圧炉心スプレイ系非常用ディーゼル発電機の試運転を実施したところ、自動的に停止する事態が発生していたことが後に明らかになった[238]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5弱 | 石川県 | 志賀町富来領家町 |
4 | 石川県 | 輪島市門前町走出・志賀町香能 |
この地震に伴い、地震検知から9.3秒後の18時42分25.9秒に緊急地震速報(警報)が発表された[240]。また、この地震に伴い、志賀町富来領家町で長周期地震動階級1を観測した[241]。
6月3日6時31分の地震
6月3日6時31分の地震 | |
---|---|
発生日 | 2024年6月3日 |
発生時刻 | 6時31分 |
震央 | 石川県能登地方 |
座標 | 北緯37度28.0分 東経137度18.1分 / 北緯37.4667度 東経137.3017度 |
震源の深さ | 14 km |
規模 | Mj6.0 |
最大震度 | 震度5強:輪島市、珠洲市 |
津波 | あり(珠洲市で若干の潮位変化) |
出典:特に注記がない場合は気象庁ホームページの震度データベース検索及び[242]による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
気象庁は同日6時38分、石川県能登に津波予報(若干の海面変動)を発表した[243]。珠洲市内の沿岸では若干の潮位変化が観測されたが、津波による被害はなかった[244]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5強 | 石川県 | 輪島市鳳至町、珠洲市三崎町・正院町・大谷町 |
5弱 | 石川県 | 能登町宇出津・松波 |
4 | 新潟県 | 上越市中ノ俣・大手町・木田・柿崎区柿崎・大潟区土底浜・頸城区百間町・吉川区原之町・三和区井ノ口・板倉区針、長岡市小国町法坂・中之島、柏崎市西山町池浦、十日町市松代、刈羽村割町新田 |
石川県 | 七尾市本府中町・垣吉町・能登島向田町、輪島市河井町・門前町走出、穴水町大町、能登町柳田 |
この地震に伴い、地震検知から4.8秒後の6時31分47.0秒に緊急地震速報(警報)が発表された[246]。また、石川県能登で長周期地震動階級2を、新潟県上越・中越、長野県中部で階級1を観測した[247]。
地震発生回数
全体の地震発生回数
1月2日10時までにMj3.5以上の地震(1月1日16時10分以降の地震、本震を含む)の回数は219回に達した。この回数は1993年2月7日の能登半島沖地震、1995年1月17日の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災を引き起こした地震)、2007年3月25日の能登半島地震、2008年6月14日の岩手・宮城内陸地震、2004年10月23日の新潟県中越地震、2016年4月14日以降の熊本地震、1983年5月26日の日本海中部地震など過去の主要な地震を上回り、1993年7月12日の北海道南西沖地震に匹敵する多さであった[9]。地震発生から3日目までは大陸プレート内で発生した地震としては観測史上最もMj3.5以上の余震の回数が多かった[248]。このように非常に多くの余震が発生している理由としては、本震の規模が大きかったことに加え、震源の断層が長かったこと、能登半島周辺の大小の断層が密集している複雑な構造も挙げられている[249][69]。また、それまでの能登半島での群発地震とは異なり、本震の規模が他の地震と比べて明確に大きい「本震・余震型」[注釈 44]という、他の地域での地震と同様の傾向が見られる[107]。その一方で、特に震源域の西部では余震の回数の減少の仕方が地震学の大森公式から予測されるより速く、その原因としてこの地域に破壊されずに持ちこたえている活断層が存在する可能性が指摘されている[251]。尾形と熊澤は、本震直後には非常に多くの地震が発生したために地震カタログで検出しきれていない地震があると想定し、検出率をモデルによって推定することで余震の変動を調査した。その結果、本震の直後には震源域の南西部で北東部より数倍多い数密度で地震が発生していたこと、地震からしばらく経過すると震源域の両端部で引き続き地震活動が活発であった一方、震源域の中央部での地震の数密度は低下していると指摘している。また、本震の余震活動では本震の前の活動とは異なり定常ETASモデルによる計算結果が実際の地震活動とよく適合している[53]。防災科学技術研究所の推定では、本震から15時間以内に発生した余震によって輻射されたエネルギーは本震によって輻射されたエネルギーの3.4 %に達したと発表されている[252]。
その一方で、佐渡島の西方の沖合にまだ破壊されていない活断層が2本残っており、これらが連動して地震が発生するとM7級の規模となり、新潟県沿岸に3 m前後の津波が押し寄せる可能性があること、日本海中部地震や北海道南西沖地震、1964年6月16日の新潟地震のように日本海側で発生した大地震では本震から1か月前後経ってから大きな余震が発生している事例が多いことから、余震への注意を続ける必要があるとされた[251]。また、金沢市の森本・富樫断層帯、かほく市から七尾市にかけての邑知潟断層帯など周辺の活断層でも地震が起きやすくなっているという指摘もある[249][253]。遠田は本震以降、金沢市を含め本震の震源から半径100 km以内で地震活動が活発になっており、最大震度7を観測する地震が発生する可能性もあると指摘している[254]。このような地域では静的クーロン応力が0.1 bar以上強くなっているが、富山湾内では静的クーロン応力が弱くなっている領域も確認でき、活発な地震活動とは矛盾する結果となった。ただし、能登半島の南東側にある活断層は浅い部分だけの構造であるためにMj7クラスの地震を起こす可能性は低いと考えられた[53]。しかし、金沢大学の平松良浩は今回の地震前に2020年以降の群発地震やそれによって続いていた地殻変動が収束しつつあったことを根拠に、1月1日の地震は最後の足掻きとして起きた地震であり、今後は能登半島での群発地震の活動は終息に向かう可能性が高いと述べている[153]。
1月末までに震度1以上を観測する地震は1558回発生した。本震が発生した1月1日から震度4以上の揺れを観測する地震が1月7日まで7日連続で、震度3以上の揺れを観測する地震が1月14日まで14日連続で、震度2以上の揺れを観測する地震が1月27日まで27日連続で観測された。2月23日は本震の発生以降で初めて、震度1以上の余震が一度も発生しない日となった。2月に震度1以上を観測した地震の回数は144回[13]、同月に発生した最大の地震の規模はMj5.2[255]に留まった。なお、2024年1月には緊急地震速報(警報)が発表された地震が20回発生しているが、その震源は全て「石川県能登地方」「能登半島沖」「佐渡付近」のいずれかであった[256]。また、2024年1月には緊急地震速報(予報)の発表された地震が本地震関係以外を含めて376回発生しており、2023年12月の62回から大きく増加している[257]。2024年最初の1週間の間、日本国内の能登半島周辺以外の地域の地震活動は低調であり、全世界でも日本時間の1月1日0時から7日10時までに能登半島近辺以外でM6.0以上の地震は発生しなかったことから、この時期は世界的にも能登半島の地震活動が最も活発であったと言える[258]。
本震発生後3週間(1月1日から1月21日まで)の日別・最大震度別の最大震度1以上の地震発生回数は以下の通りであった。
発生日 | 最大震度別回数 | 計 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5弱 | 5強 | 6弱 | 6強 | 7 | ||
2024年1月1日 | 131 | 134 | 66 | 19 | 4 | 4 | 1 | 0 | 1 | 360 |
2024年1月2日 | 266 | 98 | 37 | 8 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 411 |
2024年1月3日 | 116 | 39 | 16 | 4 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 177 |
2024年1月4日 | 60 | 17 | 5 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 85 |
2024年1月5日 | 57 | 19 | 9 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 86 |
2024年1月6日 | 37 | 13 | 3 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 56 |
2024年1月7日 | 19 | 11 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 36 |
2024年1月8日 | 19 | 11 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 31 |
2024年1月9日 | 25 | 4 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 32 |
2024年1月10日 | 30 | 3 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 35 |
2024年1月11日 | 13 | 5 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 20 |
2024年1月12日 | 21 | 2 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 26 |
2024年1月13日 | 14 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 18 |
2024年1月14日 | 15 | 4 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 20 |
2024年1月15日 | 5 | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 12 |
2024年1月16日 | 13 | 5 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 21 |
2024年1月17日 | 9 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 11 |
2024年1月18日 | 9 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 11 |
2024年1月19日 | 12 | 3 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 19 |
2024年1月20日 | 8 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 9 |
2024年1月21日 | 5 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 |
計 | 884 | 383 | 153 | 44 | 7 | 8 | 2 | 0 | 1 | 1482 |
また、最大震度1未満の地震を含め気象庁の震源リスト[3]に掲載されている全ての地震の規模・震央地名別の発生回数は以下の通りであった。これらの地震の回数は、地震前と比べると能登半島とその西方沖で約100倍、富山湾で数十倍、金沢市や富山市で約10倍、佐渡島で数倍と震源からやや離れた地域でも地震活動が活発になっている[259]。
|
|
各県での地震発生回数
気象庁ではこの他に、石川県能登地方・石川県加賀地方・新潟県・富山県・福井県の各県・地域で震度1以上を観測した回数についてもホームページで公表を行っている[260]。その理由について気象庁長官の森隆志は北陸地方全域で大地震が発生し続けているという誤解を払拭し、風評被害を削減するためであると2月21日の記者会見で語っている[261]。
2024年1月に石川県内で震度1以上を観測した1547回の地震のうち、1月16日に加賀地方で発生した1回を除く1546回はこの地震の震源域内で発生した[262]。同じ月に各県で震度1以上を観測した地震としては、富山県で182回中180回[263]、新潟県で143回中136回[264]、岐阜県では88回中82回[265]、長野県では53回中47回[266]、滋賀県では17回中16回[267]、静岡県では10回中9回[268]、京都府では10回中8回[269]、兵庫県では9回全て[270]、山形県では12回全て[271]、愛知県では9回全て[272]、鳥取県では6回全て[273]がこの地震の震源域で発生した他、島根県[274]、山口県[275]、佐賀県[276]などではこの地震の本震が1月中に県内で震度1以上を観測した唯一の地震であるなど、広域に影響が及んでいる。
翌2月も、石川県内で震度1以上を観測した146回の地震のうち144回[277]、福井県内で震度1以上を観測した7回の地震のうち5回[278]、新潟県内で震度1以上を観測した9回の地震のうち7回[279]がこの地震の震源域内で発生しているなど、影響が続いている。
地震発生確率
気象庁は本震後に地震の発生確率を公表しており、1月8日0時の段階では地震発生当初と比べると3日以内に最大震度5強程度の地震が発生する確率は2分の1程度に減少した一方で、平常時と比べると100倍を超えている状況であった[280]。1月15日0時の段階ではこの確率は地震発生当初と比べると5分の1程度に減少したが、平常時と比較すると依然として100倍を超えており[281]、1月22日0時の時点ではそれぞれ8分の1程度、100倍程度であった[282]。1月29日0時の時点ではそれぞれ10分の1程度、60倍程度で、3日以内に最大震度5弱程度の地震が発生する確率は地震発生当初と比べると6分の1程度、平常時と比べると50倍程度であった[283]。2月5日0時の時点では3日以内に最大震度5弱程度の地震が発生する確率が地震発生当初と比べると7分の1程度、平常時と比べると40倍程度とされた[284]。2月9日0時・2月16日0時の時点ではいずれも、それぞれ8分の1程度、40倍程度で[285][286]、2月22日0時の時点ではそれぞれ10分の1程度、30倍程度とされた[287][注釈 45]。2月29日0時の時点では2月22日時点と3日以内に最大震度5弱程度以上の地震が発生する確率は同様だったが、気象庁が地震発生確率の発表を終了する目安と判断している[288]1か月に一度程度の発生頻度に相当する確率を下回ったと発表された。また、それまで記載されていた「地震の発生する可能性は依然として高い状態」「今後1週間程度、最大震度5弱程度以上の地震に注意」という表現も記載されなくなった。ただし、地震活動自体は本震前より活発な状態が続いていると表現している[290]。
翌週以降は気象庁から地震の発生確率に関する情報は発表されていないが、3月11日の地震調査委員会の発表では同日0時から3日以内に最大震度5弱以上を観測する地震が発生する確率は地震発生当時と比較すると15分の1程度、平常時と比較すると20倍程度と算出されており、引き続き1か月に一度程度の発生頻度に相当する確率を下回っていると判断されている[291]。
地殻変動
国土地理院による調査
衛星測位システム (GNSS)を用いた観測によると、この地震に伴い輪島観測点で西南西方向に1.2 mの変動、上下方向では1.1 mの隆起(いずれも暫定値、基準点は島根県浜田市三隅)が確認されるなど、大きな地殻変動が観測された。水平方向の地殻変動に関してはおおむね西成分が強かったが、珠洲市北部では北成分が強かった。また、「だいち2号」[注釈 46]による観測データの解析によると、輪島市西部で最大約4 mの隆起および約2 mの西方向への変動、珠洲市北部で最大約2 mの隆起および約3 mの西向きの変動(いずれも暫定値)が観測された[293]。約4 mの隆起は、関東地震(1923年、関東大震災を引き起こした地震)や熊本地震(2016年)で発生した約2 mの上下動と比べても大きなものであった。近代的な地震観測を開始した以降に地震により発生した垂直変位でこれより大きなものとしては、1891年10月28日の濃尾地震で断層のずれにより観測された最大で6 m前後の垂直変位が挙げられるのみであり[294]、各地に地震計が設置され地震学の観測情報を収集しやすくなった20世紀以降では最大の垂直変位であった[295]。遠田は日本列島でこのような隆起が発生するのは数百年に一度の頻度であり、前回にこの地震で発生したのと同等以上の隆起が日本国内で発生したのは断層のずれそのものに伴う垂直変位を除けば1703年の元禄関東地震において房総半島で発生した約6 mの隆起であったと述べている[296]。このような大規模な変動が発生したのは、すべり分布モデルの分析から、震央の北東側で最大10 m前後にも及ぶすべり量が発生したことが原因であると考えられている[53]。
国土地理院は1月5日から、大きな地殻変動に伴い地理座標や標高が大きく変化した群馬県・新潟県・富山県・石川県・長野県の電子基準点60か所、三角点4,349か所、水準点157か所の測量成果の公表を停止した。その後、2月に入って徐々に地震後の新たな測量結果が公表されるようになり、2月29日時点では石川県内の舳倉島、富来、能登島など11か所を除く全ての基準点で新たな測量結果が公表されている[297]。舳倉島でも南東に0.3 m程度の変動が起きた他、関東地方や中部地方の広範囲で北から北西向きの変動が観測されている[298]。その後の余効変動としては、1月2日の測定結果と2月22日から24日の測定結果を比較して水平方向では西から北西の方向に能都で2.6 cm、珠洲と入善で2.1 cm、穴水で2.0 cm、糸魚川で1.9 cm、輪島で1.8 cmの変動が、鉛直方向では輪島で4.0 cm、珠洲狼煙で3.7 cm、穴水で2.1 cmなどの地盤沈下と入善で1.6 cm、糸魚川で1.4 cm、富来で0.1 cmなどの隆起が観測されている[299]。このパターンは、能登半島北部の沈降と震源域南西部の一部における南東向きの水平変位を除いては本震によって発生したものとよく似ている。このような余効変動が起きたことについては、余効すべり分布モデルと粘性漢和モデルのどちらで計算しても実際に起きた現象をほぼ説明できるとの結果が得られている[53]。国土地理院地理地殻活動総括研究官の矢来博司は、3月8日の記者会見で沈降が起きた場所でもその大きさは地震による隆起と比べてはるかに小さい上今後沈降は収束していくと予測されるため、沈降が港湾などの復旧作業に影響を及ぼすことは考えられないとの認識を示している[300]。
能登半島西海岸で大きな隆起が発生した原因として、宍倉は地震による横ずれ運動に伴い断層が屈曲した部分に強い力が働いたことを指摘しており、海成段丘に記録されている過去の隆起も今回の地震と似たものであったことから、同一の活断層が何度も動いている可能性があると述べている[111]。この地殻変動自体は3000年分から4000年分の隆起に相当する大きさであった[301]。なお、このような地形の上下変動が地震に伴う海面変動に伴い生じている可能性については、本震翌日までに潮位が天文学的に計算された潮位から上下10 cm以内の水準に戻っていることにより排除される[302]。
東京大学地震研究所による調査
1月2日に東京大学地震研究所が行った現地調査でも輪島市西部沿岸で顕著な隆起が実測された。五十洲漁港で約4.1 m、鹿磯漁港では約3.9 mの隆起が推定されるなど、鹿磯漁港の南北約4 kmの範囲で3 m以上の隆起が確認されたほか、鹿磯漁港東の砂浜海岸では海岸線が海側に約250 m移動した。また、同調査では志賀町赤崎漁港で約0.25 mの隆起が推定された(速報値)[47]。地震の発生時に釣りを行っていた現地住民の証言によれば、この隆起は地震と同時に発生しており、隆起が著しかった港湾には津波は遡上しなかった[47]。輪島市の竜ヶ崎周辺にある塩水プールもすべて陸地となった[47]。
1月27日に東大地震研が行った調査では、珠洲市若山町の若山川流域において東西2 km、高さ2 mに及ぶ崖が確認されており、地震を引き起こした断層が地表に出現したものであると考えられている[47]。ただし遠田は、地上に出現した断層とされる断崖は表層地盤が地表を押し上げて隆起したものであり実際には断層ではないと主張している[102]。
日本地理学会による調査
日本地理学会が国土地理院およびアクセルスペースの航空写真・人工衛星写真をもとに、能登半島の沿岸全体の総延長約300 kmの海岸線に対して行った調査で、1月8日時点で石川県志賀町から珠洲市に至る能登半島北部の海岸線の合わせて90 kmの区間において