1949年最高裁判所裁判官国民審査

1949年最高裁判所裁判官国民審査(1949ねんさいこうさいばんしょさいばんかんこくみんしんさ)は、1949年昭和24年)1月23日第24回衆議院議員総選挙と共に執行された最高裁判所裁判官国民審査。初めて実施された最高裁裁判官国民審査である。

概要

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14人の最高裁判所裁判官に対して国民審査が行われ、全員罷免しないとされた。投票率は74.04%であった[1]。第1回のため、審査を受けてから10年経過していない者がいないため第24回衆議院議員総選挙の公示日に在任していた14人の裁判官が国民審査の対象となった。14人の裁判官が国民審査の対象となったのは歴代で最も審査対象者が多い国民審査である(なお、定数である15人が国民審査の対象とならなかったのは、第24回衆議院議員総選挙の公示日である1948年12月27日から185日前の同年6月26日に庄野理一が最高裁判所裁判官を依願退官し、後任の裁判官が第24回衆議院議員総選挙の公示日まで任命されず1名欠員状態が続いていたためである[注 1])。

全国選挙管理委員会は都道府県選挙管理委員会に「選挙と審査投票用紙を同時に交付し、投票管理者、投票立会人は有権者が必ず審査投票を行うよう監視する」と通知しており、第24回衆議院議員総選挙と同時に実施された国民審査では国民審査のみを棄権することは認められていなかった(ただし、記載所での投票用紙放置や投票用紙の持ち帰りがあるため、投票者数と投票総数は一致しない)[2]

東京都在住の弁護士が「国民審査について、裁判官の良否を知らぬ国民に投票を強制し、国民の思想、良心の自由を侵害したから違憲無効」とする訴訟を起こしたが、1952年2月20日に最高裁は「国民審査は積極的に裁判官を罷免させるか否かを決める解職の制度であるから、積極的に罷免を可とする者とそうでない者とどちらが多いかをしろうとするものである。罷免する方がいいか悪いかわからない者は結局積極的に罷免を可とする者とはいえないから、その者の白紙投票を罷免を可としない方の数に入れたのは適法で、思想、良心の自由を制限するものではない」として、無効訴訟を棄却する判決が確定した[3]

審査対象者

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裁判官6名、弁護士4名、行政官2名(内務省1・外務省1)、検察官1名、法学者1名。弁護士出身の庄野理一は1948年(昭和23年)6月26日、国民審査を経ずに依願免官[4]

氏名 任命年月日 学歴 出身分野 指名内閣
三淵忠彦1 1947年8月4日 京都帝国大学法科大学 裁判官 片山内閣
塚崎直義 1947年8月4日 京都帝国大学法科大学卒 弁護士 片山内閣
長谷川太一郎 1947年8月4日 明治大学法学部卒 弁護士 片山内閣
澤田竹治郎 1947年8月4日 東京帝国大学法科大学 行政官 片山内閣
霜山精一 1947年8月4日 東京帝国大学法科大学卒 裁判官 片山内閣
井上登 1947年8月4日 東京帝国大学法科大学卒 裁判官 片山内閣
栗山茂 1947年8月4日 東京帝国大学法科大学卒 行政官 片山内閣
真野毅 1947年8月4日 東京帝国大学法科大学卒 弁護士 片山内閣
小谷勝重 1947年8月4日 法政大学専門部卒 弁護士 片山内閣
島保 1947年8月4日 東京帝国大学法科大学卒 裁判官 片山内閣
齋藤悠輔 1947年8月4日 東京帝国大学法学大学卒 検察官 片山内閣
藤田八郎 1947年8月4日 東京帝国大学法科大学卒 裁判官 片山内閣
岩松三郎 1947年8月4日 東京帝国大学法科大学卒 裁判官 片山内閣
河村又介 1947年8月4日 東京帝国大学法学部卒 法学者 片山内閣
1 最高裁判所長官

審査結果

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澤田竹治郎の罷免可率4.00%は歴代最低である。

裁判官 罷免を
可とする票
罷免を
可としない票
罷免を
可とする率
霜山精一 1,450,750 28,776,879 4.80%
小谷勝重 1,378,268 28,849,400 4.56%
齋藤悠輔 1,363,474 28,854,314 4.51%
岩松三郎 1,330,603 28,898,182 4.40%
塚崎直義 1,319,548 28,898,406 4.37%
栗山茂 1,340,594 28,867,298 4.44%
長谷川太一郎 1,331,698 28,886,062 4.41%
井上登 1,296,697 28,921,287 4.29%
三淵忠彦 1,677,616 28,540,426 5.55%
河村又介 1,239,270 28,978,863 4.10%
真野毅 1,244,854 28,972,152 4.12%
島保 1,259,669 28,958,151 4.17%
藤田八郎 1,217,055 29,001,954 4.03%
澤田竹治郎 1,213,100 29,104,942 4.00%
有効票数(有効率) 31,052,735 99.60%
無効票数(無効率) 123,160 0.40%
投票者数(投票率) 31,175,895 74.04%
棄権者数(棄権率) 10,929,405 25.96%
有権者数 42,105,300 100.0%
出典:最高裁裁判官国民審査の実証的研究

脚注

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注釈

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  1. ^ 後任の裁判官は第24回衆議院議員総選挙の投票日から34日後の1949年2月26日に任命された。

出典

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  1. ^ 西川 2012, p. 77.
  2. ^ 西川 2012, pp. 77–78.
  3. ^ “裁判官の国民審査は合憲 最高裁で判決”. 読売新聞. (1952年2月21日) 
  4. ^ 野村 1986, pp. 32.

参考文献

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  • 西川伸一『最高裁裁判官国民審査の実証的研究 「もうひとつの参政権」の復権をめざして』(第1刷)五月書房、2012年1月27日。ISBN 978-4772704960 
  • 野村二郎『最高裁全裁判官 人と判決』三省堂、1986年9月。ISBN 978-4385320403 

関連項目

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外部リンク

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