ハーチェク

ˇ
ハーチェク
ダイアクリティカルマーク
アキュート
´
ダブルアキュート
˝
グレイヴ
`
ダブルグレイヴ
 ̏
ブレーヴェ
˘
倒置ブレーヴェ
 ̑
ハーチェク
ˇ
セディーユ
¸
サーカムフレックス
ˆ
トレマ / ウムラウト
¨
チルダ
˜
ドット符号
˙
フック
 ̡
フック符号
 ̉
ホーン符号
 ̛
マクロン
¯
オゴネク
˛
リング符号
˚
ストローク符号
̸
コンマアバブ
ʻ
コンマビロー
,
無気記号
᾿
非ラテン文字
シャクル  
シャッダ
 ّ
ハムザ
ء
キリル文字  
ティトロ
 ҃
ヘブライ文字  
ニクダー
 ִ
ブラーフミー系文字  
アヌスヴァーラ
 ं
ヴィラーマ
 ्
日本語  
濁点
半濁点
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ハーチェクチェコ語: háček)は、ダイアクリティカルマーク(発音区別符号)のひとつである。主にチェコ語スロバキア語などで用いられる記号である。

チェコ語では「ハーチェク」(háček)、スロバキア語では「メクチェニ」(mäkčeň)または「ハーチク」(háčik)、英語では「キャロン」(caron)と呼ばれる。

概要

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「ハーチェク」という名称は、チェコ語で「かぎ(鈎)」を意味する hák指小辞がついた háček 「小さなかぎ」に由来する。英語では「キャロン」(caron)と言うが語源は明らかでない[1]

ヤン・フスがチェコ語に使い始めたが、とくに č, š, ž の3つはスラブ諸語を中心として多くの言語の正書法で採用されている。

記号は小さなv字であるが、チェコ語スロバキア語で使われる ď, ť では小文字が、スロバキア語でのみ使われる Ľ では大文字も小文字もアポストロフィーのような形になる。これらの字も最初はハーチェクの形をしていた。

ブレーヴェ˘)は、とがっておらず丸くなっており、別の記号である。

各言語における用法

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エストニア語フィンランド語
š, ž を使用するが、借用語のみに現れる。
スコルト・サーミ語
ǩ, ǧ, č, ǯ, š, ž を使用する。ǩ, ǧ は口蓋化した /c͡ç/, /ɟ͡ʝ/ を表す。č, ǯ, š, ž はそれぞれ /tʃ/, /dʒ/, /ʃ/, /ʒ/ を表す。
スロバキア語
č, ď, dž, ľ, ň, š, ť, ž を使用する。チェコ語にない ľ は、口蓋化した /ʎ/ を表す。なお はアルファベットの10番目に位置する独立した文字として扱われ、/dʒ/ を表す。
スロベニア語
č, š, ž を使用する。
セルビア・クロアチア語
č, dž, š, ž を使用する。
チェコ語
č, ď, ě, ň, ř, š, ť, ž を使用する。č, š, ž はそれぞれ /tʃ/, /ʃ/, /ʒ/ を表す。ť, ď, ň は口蓋化した /c/, /ɟ/, /ɲ/ を表す。ř はチェコ語に特徴的な「歯茎ふるえ摩擦音」/r̝/ を表す。ě は歴史的に口蓋化した母音であったが、現在のチェコ語では前後の環境によって異なる音を表す。
中国語
倒折音符Dǎozhéyīnfú)といい、注音拼音で、第三声(上声)を表す声調記号である。拼音には ǎ, ě, ê̌, ǐ, ň, ǒ, ǔ, ǚ が存在する。
トルクメン語
ž/ʒ/ を表す(トルコ語では j)。
ラトガリア語ラトビア語リトアニア語
č, š, ž を使用する。
リヴォニア語
š, ž を使用する。

音声記号

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国際音声記号では、補助記号として使われる。

  • 文字の上に付され、上昇調を表す声調記号として使われる。
  • 文字の下に付され、有声を表す。

アメリカの言語学者が使う記号では、č, ǰ, š, ž によってそれぞれ /tʃ/, /dʒ/, /ʃ/, /ʒ/ を表す[2]č, ǰ英語ではひとつの音素であるので、1文字で書けるのは都合がよい。

符号位置

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記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
ˇ U+02C7 1-10-17 ˇ
ˇ
キャロン
CARON
̌ U+030C 1-11-62 ̌
̌
キャロン(合成可能), 声調上昇調
COMBINING CARON
̬ U+032C 1-11-72 ̬
̬
下キャロン(合成可能), 有声
COMBINING CARON BELOW
大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考
Ǎ U+01CD 1-8-79 Ǎ
Ǎ
ǎ U+01CE 1-8-80 ǎ
ǎ
中国語(拼音)
Č U+010C 1-10-29 Č
Č
č U+010D 1-10-44 č
č
チェコ語スロヴァキア語スロベニア語クロアチア語リトアニア語
Ď U+010E 1-10-32 Ď
Ď
ď U+010F 1-10-47 ď
ď
チェコ語、スロヴァキア語
DŽ U+01C4 - DŽ
DŽ
dž U+01C6 - dž
dž
スロヴァキア語、クロアチア語
Ě U+011A 1-10-31 Ě
Ě
ě U+011B 1-10-46 ě
ě
チェコ語、中国語(拼音)
Ǧ U+01E6 - Ǧ
Ǧ
ǧ U+01E7 - ǧ
ǧ
スコルト・サーミ語
Ȟ U+021E - Ȟ
Ȟ
ȟ U+021F - ȟ
ȟ
Ǩ U+01E8 - Ǩ
Ǩ
ǩ U+01E9 - ǩ
ǩ
スコルト・サーミ語
Ǐ U+01CF - Ǐ
Ǐ
ǐ U+01D0 1-8-81 ǐ
ǐ
中国語(拼音)
Ľ U+013D 1-10-4 Ľ
Ľ
ľ U+013E 1-10-15 ľ
ľ
スロヴァキア語
Ň U+0147 1-10-34 Ň
Ň
ň U+0148 1-10-50 ň
ň
チェコ語、スロヴァキア語、中国語(拼音)
Ǒ U+01D1 1-8-86 Ǒ
Ǒ
ǒ U+01D2 1-8-87 ǒ
ǒ
中国語(拼音)
Ř U+0158 1-10-46 Ř
Ř
ř U+0159 1-10-52 ř
ř
チェコ語
Š U+0160 1-10-6 &Scaron:
Š
Š
š U+0161 1-10-18 š
š
š
チェコ語、スロヴァキア語、スロベニア語、クロアチア語、リトアニア語、フィンランド語エストニア語
U+1E66 - Ṧ
Ṧ
U+1E67 - ṧ
ṧ
Ť U+0164 1-10-8 Ť
Ť
ť U+0165 1-10-20 ť
ť
チェコ語、スロヴァキア語
Ǔ U+01D3 - Ǔ
Ǔ
ǔ U+01D4 1-8-88 ǔ
ǔ
中国語(拼音)
Ǚ U+01D9 - Ǚ
Ǚ
ǚ U+01DA 1-8-91 ǚ
ǚ
中国語(拼音)
Ž U+017D 1-10-10 Ž
Ž
ž U+017E 1-10-23 ž
ž
チェコ語、スロヴァキア語、スロベニア語、クロアチア語、リトアニア語、フィンランド語、エストニア語
Ǯ U+01EE - Ǯ
Ǯ
ǯ U+01EF - ǯ
ǯ
スコルト・サーミ語
記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考
Dž U+01C5 - Dž
Dž
参照:
ǰ U+01F0 - ǰ
ǰ
アメリカの音声学者が使う記号、/dʒ/

脚注

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  1. ^ 1967年合衆国政府印刷局による the United States Government Printing Office Style Manual が初出。そのキャレットに似た形と、マクロンもしくは指小辞 -et に対する指大辞 -on からの再分析から来ている可能性が考えられる。アンドリュー・ウェスト英語: Andrew West (linguist). “Antedating the Caron”. BabelStone Blog. 6 September 2020閲覧。
  2. ^ Pullum, Geoffrey K.、Ladusaw, William A.『世界音声記号辞典』土田滋・福井玲・中川裕訳、三省堂、2003年(原著1996年)、171頁。ISBN 4-385-10756-4