持続可能な開発目標
持続可能な開発目標 (SDGs) | |
---|---|
綱領 | "A shared blueprint for peace and prosperity for people and the planet, now and into the future" |
所在地 | 全世界 |
創設者 | 国際連合 |
創設 | 2015年 |
ウェブサイト | sdgs |
持続可能な開発目標(じぞくかのうなかいはつもくひょう、英語: Sustainable Development Goals、略称: SDGs〈エスディージーズ〉)は、2015年9月25日に国連総会で採択された、持続可能な開発のための17の国際目標である[1]。その下に、169の達成基準と232の指標が決められている[2][3]。
概要
[編集]2000年9月、アメリカ・ニューヨークでの『国連ミレニアム・サミット』にて採択された国連ミレニアム宣言を基に、「ミレニアム開発目標」(MDGs)が成立した[4]。だがMDGsは2015年までの期限付きであり、2011年、南米コロンビアのフアン・マヌエル・サントス政権にて、期限が近づいても未達成の目標があったことや、それと同時に持続可能な開発をどう進めるかについての議論が提案された。発案はコロンビア外務省経済・社会・環境の女性局長であるパウラ・カバジェーロによるものである。女性外務大臣のマリーア・アンジェラ・オルギンへの稟議を通じて採択された。
案はグアテマラ等、中南米のいくつかの開発途上国の支援を得たのち、2012年6月にブラジル・リオデジャネイロにて開催された国際サミット『国連持続可能な開発会議』(リオ+20)にて、「2015年以降の次世代MDGsの目標と、持続可能な開発の議論を統一」させることをコロンビア・グアテマラ両国が推奨した[注釈 1]。サミットでいかに成果を生み出すかに迷走していたブラジルは、両国の案に乗り、開催されたリオ+20では、その制定への決議を主要な成果として終了した[5][6]。
2015年9月25日、国連総会にて、持続可能な開発のために必要不可欠な向こう15年間の新たな行動計画『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development、または単に「2030 Agenda」とも)[7]が採択され、2030年までに達成するべき持続可能な開発目標(SDGs)として、17の世界的目標と169の達成基準が示された[1][8]。
17の目標
[編集]SDGsは、以下の17の目標から構成されている[9][10][11][12]。その他、169項目など全文はウィキソースの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を参照。
貧困をなくそう | あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる | |
飢餓をゼロに | 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する | |
すべての人に健康と福祉を | あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する | |
質の高い教育をみんなに | すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し生涯学習の機会を促進する | |
ジェンダー平等を実現しよう | ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う | |
安全な水とトイレを世界中に | すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する | |
エネルギーをみんなにそしてクリーンに | すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する | |
働きがいも経済成長も | 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する | |
産業と技術革新の基盤を作ろう | 強靭なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る | |
人や国の不平等をなくそう | 各国内及び各国間の不平等を是正する | |
住み続けられるまちづくりを | 包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市及び人間居住を実現する | |
つくる責任つかう責任 | 持続可能な生産消費形態を確保する | |
気候変動に具体的な対策を | 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる | |
海の豊かさを守ろう | 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する | |
陸の豊かさも守ろう | 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する | |
平和と公正をすべての人に | 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する | |
パートナーシップで目標を達成しよう | 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する |
進捗状況
[編集]- 2017年7月 - 国際連合の事務総長であるアントニオ・グテーレスは、SDGsに掲げられている多くの分野の前進が2030年までに達成できるペースをはるかに下回っているとし、前進を加速すべく取り組みを強化する必要があるとする国連報告書を発表した[13]。
- 2019年5月 - 国際連合事務総長のアントニオ・グテーレスは、経済社会理事会ECOSOCに提出する「国連持続可能な開発目標SDGs進捗報告書」を公表する。首脳レベルのSDGs進捗状況は4年に1度の発表であるため、2015年に採択されてから初の報告として注目を集める。目標1から17まで各々の課題が発表されたが、全体的に目標達成に至らず、掲げる目標の達成までに課題が山積みしている[14]。
- 2020年9月 - 国際連合副事務総長のアミナ・モハメドは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が原因で、貧困撲滅を目指す目標1の取り組みが大幅に減退している、と危機感を表明した[15]。国際連合開発計画(UNDP)は、SDGsの根幹をなす目標1の達成はますます困難になったと認識を示している[16]。
日本の状況
[編集]日本では主要マスコミが国際連合広報センターによる「世界中の報道機関とエンターテインメント企業に対し、その資源と創造的才能をSDGs達成のために活用するよう促す」ことを目的とした「SDGメディア・コンパクト」に参加している[17]。SDGsを理由に推進されているモノとして、太陽光発電、昆虫食などがある[18] [17]。マスコミでSDGsが大きく取り上げられているが、視聴率は芳しくない[19]。SDGs関連の中でも「食糧問題の解決に期待されている」との理由でコオロギ食を高校の給食メニューの1品として提供する[注釈 2][20][21]といった昆虫食の推進には一部にて大きな反発と批判が起きている[20]。2021年にはには紙ストロー、袋有料化、サステナブル・マウンティング[注釈 3]などへの反発が見受けられた[22][23]。
中小企業
[編集]この節には大規模言語モデル(生成AI)による文章が転載されている可能性があります。 (2024年4月) |
中小企業基盤整備機構の調査によると、企業の約99.7%を占める中小企業の内3割がSDGsへ取り組んでいる、取り組む予定があると回答している[17]。
一方で、帝国データバンクの調査によると、中小企業の半数が資金不足や人材不足の壁に直面し、SDGsに十分に取り組めていないのが現状である。しかし、同時にSDGsに取り組んでいる企業の約7割が企業イメージの向上や従業員のモチベーション向上、売上増加など何らかの効果を実感しているという[24]。また、中小企業がSDGsに参画することは、社会課題の解決に貢献するだけでなく企業価値の向上やビジネスチャンスの獲得につながる可能性があるとしている[25]。
日本政府
[編集]2015年のSDGs採択以降、日本は企業が積極的に経営に導入するなど[26]、多様な主体で取り組んでいる。政府も実施に向けて国内の基盤整備を推進してきた。
日本政府は、SDGsに係る施策の実施について、全国務大臣を構成員とする「持続可能な開発目標 (SDGs) 推進本部」を設置した。本部は2016年12月22日に「持続可能な開発目標 (SDGs) 実施指針」を決定し、優先課題として、2030アジェンダが掲げる5つのPである、People(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ)に対応した8項目が示している。2019年12月の第8回推進本部会合で、2020年のSDGs推進のための具体的対策法を取りまとめた「SDGsアクションプラン2020」を決定した。
- People(人間)
- 1. あらゆる人々の活躍の推進
- 関連する目標:1(貧困)、4(教育) 、5(ジェンダー)、8(経済成長と雇用)、10(格差) 、12(持続可能な生産と消費)
- 2. 健康・長寿の達成
- 関連する目標:3(保健)等
- Prosperity(繁栄)
- 3. 成長市場の創出、地域活性化、科学技術革新
- 4. 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
- 関連する目標:2(食料)、6(水と衛生)、9(インフラ、産業化、技術革新)、11(持続可能な都市、人間居住)
- Planet(地球)
- 5. 省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
- 関連する目標:7(エネルギー)、12(持続可能な生産と消費)、13(気候変動)
- 6. 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
- 関連する目標:2(食料)、3(保健)、14(海洋)、15(生物多様性)
- Peace(平和)
- 7. 平和と安全・安心社会の実現
- 関連する目標:16(平和)
- Partnership(パートナーシップ)
- 8. SDGs実施推進の体制と手段
- 関連する目標:17(実施手段)
2020年7月9日、SDGsのより一層の認知拡大・行動の促進を行うため、ジャパンSDGsアクション推進協議会[27]が発足し、外務省、環境省、経産省、神奈川県など官公庁のほか経団連、慶應義塾大学SFC研究所 X.SDG Lab.など官民一体の15団体が参加した。SDGsアクションに取り組む人を「SDGs People」とし、女優で創作アーティストののんが第一号となった。今後、他のメンバーとともに、SNSなどを通じてSDGs活動の発信に取り組んでいく。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授の蟹江憲史が会長を務める。
SDGs未来都市
[編集]SDGs未来都市とは、自治体がSDGsの達成に向けた取り組み・提案を行い、国に選定されたものである。SDGs未来都市の取り組みについて、国の支援を得ながらモデルとして普及展開を図り、「持続可能なまちづくり」の実現を図っていくことを目的とする。
内閣府は地方創生に取り組んでおり、SDGsの理念が「政策の全体最適化、地域課題解決の加速化という相乗効果が期待できる」とし、「地方創生SDGs」を推進している[28]。SDGs未来都市はその取り組みの一つである。
SDGs未来都市はSDGsに積極的に取り組んでいる都市・地域の中で、特に経済・社会・環境・脱炭素化に関する取組(2021年追加)の四つの側面の「統合的取組による相乗効果、新しい価値の創出を通して、持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域」が選定されている[29]。2022年現在、154都市(155自治体)が選出されている[30]。また、環境モデル都市、環境未来都市事業との関連性が強く、2018年に選出された 29都市のうち 10都市が環境モデル都市、環境未来都市事業のいずれかにも選出されている[31]。
SDGs先進都市
[編集]SDGs先進都市とは、SDGsにある17の目標すべてに関わる市民活動が活発であることを指している。代表例として、ドイツのフライブルク市がある[32]。
2018年6月15日に、当時の内閣総理大臣の安倍晋三のSDGs推進本部会合における指示を踏まえ公募した結果地方創世分野における日本の「SDGsモデル」を構築していくため、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取り組みを提案する29都市を「SDGs未来都市」として選定した[33]。
自治体SDGsモデル事業選定
[編集]SDGs未来都市のうち、先導的な取組を自治体SDGsモデル事業として選定している。自治体SDGsモデル事業は、以下の3点を満たすものである[33]。
- 経済・社会・環境の三側面の統合的取組による相乗効果の創出
- 自律的好循環の構築
- 多様なステークホルダーとの連携
日本政府のSDGsアワード
[編集]日本政府は、SDGs達成に向けた優れた取り組みを行っている企業・団体等を表彰するため、以下のSDGsアワードを実施している[34]。
|
---|
各組織・企業によるSDGsの取組
[編集]この節の出典は、Wikipedia:信頼できる情報源に合致していないおそれがあります。特に独立した第三者情報源の不足との指摘を受けています。 |
省庁 | 取り組み |
---|---|
経済産業省 |
|
外務省など |
|
消費者庁 |
→詳細は「エシカル」を参照 |
農林水産省 |
|
地方自治体 | 取り組み |
神奈川県 |
|
埼玉県 |
|
富山市 |
|
団体 | 取り組み |
運輸デジタルビジネス協議会 |
|
岡山大学 |
|
関西SDGsプラットフォーム | |
千葉大学、京葉銀行 |
|
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会 |
|
日本科学未来館 |
|
日本経団連 |
|
日本ユネスコ協会連盟 |
|
NHK |
|
企業 | 取り組み |
アルビス[53] |
|
共同ピーアール総合研究所 | |
スターバックスコーヒー |
|
電通 |
|
中部電力ミライズ |
|
東京書籍、積水化学、日経BP |
|
東急電鉄 | |
阪急阪神HD | |
静鉄グループ |
|
三菱UFJ銀行 |
|
ユーグレナ | |
ユニクロ |
|
吉本興業 |
|
批判
[編集]競合する多すぎる達成基準
[編集]2015年のエコノミストによる解説では、SDGsの169の達成基準は多すぎると主張し、ミレニアム開発目標(MDGs)と比較して、「無秩序で、誤った考え」で「乱雑」だと述べている[62]。 そしてこうした達成基準は地域の文脈を無視しているとした。他の16の目標はすべてSDG1「貧困を終わらせる」の達成を条件としている可能性があり、これは非常に短い目標リストのトップにあるべきものであったという。
17のSDGsの間のトレードオフは、持続可能性のための難しい障壁であり、その実現を妨げる可能性がある[63]:66 。例えば、次に示すものはトレードオフを考える上で難しいものである。「飢餓の撲滅は、環境の持続可能性とどのように調和させることができるのか? (SDGsターゲット2.3、15.2) 経済成長はどのように環境の持続可能性と両立させることができるのか? (SDGsターゲット9.2、9.4) 所得の不平等と経済成長はどのように折り合いをつけることができるのか?(SDGsターゲット10.1、8.1)」[64]。
環境の持続可能性に弱い
[編集]学者たちは、持続可能な開発目標について、惑星、人々、繁栄の問題はすべて一つの地球システムの一部であり、プラネタリー・バウンダリーを保護することは手段であってはならず、それ自体が目的であるべきだと認識されていないと批判している[66]:147。SDGsの主要な懸念は、経済成長が持続可能な開発のすべての柱を達成するための基盤であるという考えに固執したままであることである[66]:147。こうしたSDGsの環境保護への舵取りに対する疑念は、その舵取り能力からだけでなく、そもそも環境保護を優先していないように見えることから生じている[66]:144。
包括的な環境目標や「惑星的」目標は存在せず、その代わりに環境保護は、目標13、14、15にある環境に焦点を当てたSDGs群に委ねられている。これらの明確な環境目標を含めることで環境保護が進むかもしれないが、目標13、14、15は環境問題(気候、土地、海洋)を区分けする可能性があるという意見もある。これらの目標は、プラネタリー・バウンダリーを追求するものではないが、気候、陸地、海洋などの環境面を保護することについて、その重要性は認識されている[66]:144。
SDGsは、単に現状を維持するだけで、野心的な開発アジェンダを実現するには至らない可能性がある。現在の現状は、「人間の福利と環境の持続可能性を切り離し、ガバナンスを変え、トレードオフ、貧困と環境悪化の根本原因、社会正義の問題に注意を払うことに失敗している」と言われている[67]。
3%の世界経済成長の継続(目標8)は、生態系の持続可能性の目標とは両立しない可能性がある。なぜなら、世界の生態系経済の絶対的なデカップリングの必要率は、過去にどの国も達成したことがないほど高いからである[68]。人類学者は、GDPの総成長を目標とする代わりに、目標は一人当たりの資源使用量を目標とし、「高所得国での大幅な削減」を提案した[68]。
SDGsの中では、環境制約や惑星の境界線が十分に表現されていない。例えば、現在のSDGsの構成は、環境の持続可能性とSDGsの間に負の相関関係をもたらしている[69]。つまり、SDGsの環境持続可能性の側面が過小評価されているため、すべての人、特に低所得者層の資源確保が危険にさらされている。これは、SDGsそのものを批判しているのではなく、その環境条件がまだ弱いという認識に基づいた批判である[68]。
SDGsは、生物多様性を保護することができないという批判がある。持続可能な開発の名の下に、意図せずして環境破壊を促進しかねない可能性がある[70][71]。
科学者たちは、SDGsにおける環境の持続可能性に関する弱点に対処する方法をいくつか提案している。
- 持続可能な開発を支える環境と社会の結合システムの本質をよりよく捉え、調整とシステム変換の指針とするために、必要不可欠な変数のモニタリングをする[72]。
- 様々な場所(例:沿岸の河川デルタ、山岳地帯)における生物物理システムの背景にもっと注意を払う[73][74]。
- 最終的にSDGsの成否を左右しうる、空間(例:グローバル化を通じて)と時間(例:将来の世代に影響を与える)のスケールを超えたフィードバックのより良い理解をする[75]。
倫理的な方向性
[編集]SDGsの倫理的方向性には懸念がある。SDGsの焦点は依然として「資源の成長と利用......そして(それは)集団的視点ではなく個人的視点から出発する」ようであり、「開発に関する(西洋)近代に見られた強い概念、つまり、環境に対する人間の主権(人間中心主義)、個人主義、競争、自由(義務ではなく権利)、自己利益、集団的福祉につながる市場への信頼、(法制度によって保護される)私有所有権、能力に基づく報酬、物質主義、価値の数量化、労働の道具化といった概念に支えられている」ものであると言える[66]:146。
質的な指標の追跡の難しさ
[編集]SDGsの目標に関して、一般的に「実施手段」と成果を結びつける根拠が弱い[76]。 「実施手段」に関する目標(例えば、ターゲット6.aのように文字で示されるもの)は、概念化が不完全で、策定が一貫しておらず、その大部分が定性的な指標の追跡は困難であると考えられている[76]。
インパクトの達成の難しさ
[編集]これまでのSDGsのインパクト、特に惑星の完全性を守るというアレーに欠けているところがある[66]:161 。目標の数,目標の枠組みの構造(例えば非階層的構造)、目標間の一貫性、目標の具体性あるいは測定可能性、本文で使用されている言語、そして、その中核的な方向性として新自由主義経済開発指向の持続可能な開発への依存など、いくつかの設計要素は当初から欠陥があったかもしれない[66]:161。
SDGsが持続可能な経済発展を重視していることは、経済成長の限界と貧富の差の「発展的」な除去の両方を必要とする、惑星の完全性と正義にとって必然的に有害であると主張する者もいる[66]:145。
SDGsによるイメージウォッシング
[編集]実態がないのにSDGsに熱心であることを発信している、実態以上にSDGsに熱心であることを発信している、取り組み自体は本当だが不都合な事実を伝えず良い情報のみを伝達している、といった企業に、「SDGsウォッシング(SDGsウォッシュ)」だという批判が起きることがある。SDGsウォッシングが懸念されている例には以下のものがある。
- メガバンクの三菱UFJ・三井住友フィナンシャルグループ・みずほ銀行は2019年、脱炭素社会に向けて気候変動問題に取り組む意思を明確にした。しかし進行中の石炭火力発電事業への融資は継続していた。これについて、「パリ協定の目標達成に必要とされる急速な段階的停止を行う兆候は全く見られない」と国際環境NGO5団体から批判された[77]。
- ユニクロを運営するファーストリテイリングは、「環境に負荷をかけない服づくり」を発信してきた[78]。しかし2021年、中国・新疆ウイグル自治区で生産された綿を服の生産過程で使用してきたことで、サプライチェーンを通じてウイグル人強制労働への関与をなくすための調査が不十分である、と国際人権NGOヒューマン・ライツ・ナウおよび日本ウイグル協会から指摘された[79]。この指摘について、柳井正会長は決算記者会見で「政治問題なのでノーコメント」と述べた[80]。フランス検察は同仏法人を「人道に対する罪の隠匿」で捜査した[81]。
- 日本のマスメディアによる推進活動への批判がある。意識高い系#SDGsを参照。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ MDGsは貧国救済を対象としており、コロンビアとグアテマラもその恩恵を受けていた。やがて貧国が発展し、方針がバラバラであることよりも持続可能な開発という統一目標を持つことのほうがよいのではないかという結論から発案された。また、中南米では当時ベネズエラのチャベス政権を筆頭に脱・アメリカ支配の機運があった。左派ゲリラFARCやアメリカ支配の麻薬戦争により、その路線の脱却が困難であったコロンビアは、世界の環境・開発目標のイニシアティブを掌握し、中南米の次世代を創造することを目指した。
- ^ 当該校では2022年11月にはコオロギパウダーを用いたコロッケ、2023年2月には食用コオロギエキスを用いた給食を提供していた。コオロギには甲殻類のアレルギー保有者に反応しやすいアレルゲンを有するため、事前説明があり、生徒の摂食は個人の選択に委ねられていた。
- ^ 虚栄心などからサスティナブルな製品を使用していることをアピールし、ペットボトルなどの環境負荷の高い製品を使用する者へ非難や軽蔑の念を向けること。
出典
[編集]- ^ a b United Nations Development Programme (2015年9月24日). “World leaders adopt Sustainable Development Goals” (English). 2019年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年5月28日閲覧。
- ^ 大山泉『知っていますか? SDGs ユニセフとめざす 2030年のゴール 』さ・え・ら書房、2019年
- ^ “広がる「思いやりの心」 身近なSDGsに挑戦を より良い未来をつくるアクション”. 産経ニュース (2021年11月30日). 2021年11月30日閲覧。
- ^ “ミレニアム開発目標(MDGs)”. 日本ユニセフ協会. 2024年3月18日閲覧。
- ^ “改めておさらい、SDGsってなに? キホンからビジネスへのインパクトまで”. 朝日新聞社 (2020年11月5日). 2024年3月18日閲覧。
- ^ “ノーベル平和賞受賞のコロンビア・サントス政権は 「持続可能な開発目標」(SDGs)の生みの親だった”. SDGs市民社会ネットワーク・BuzzFeed Japan株式会社 (2016年10月13日). 2024年3月18日閲覧。
- ^ 及川 2021, p. 8.
- ^ “SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform”. 外務省. 2021年11月24日閲覧。
- ^ 国際連合広報センター. “2030アジェンダ”. 2017年5月28日閲覧。
- ^ United Nations. “Sustainable Development Goals” (English). 2017年5月28日閲覧。
- ^ 外務省. “SDGsとは?”. 2019年10月17日閲覧。
- ^ 外務省. “我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(仮訳)”. 2019年10月17日閲覧。
- ^ 国際連合広報センター (2017年7月20日). “国連報告書、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組みの加速を要請”. 2020年7月16日閲覧。
- ^ SDGs media (2020年3月18日). “2019年SDGsの進捗状況、最新報告で分かった世界のSDGs達成度合いについて”. 2020年7月16日閲覧。
- ^ “国連 SDGs コロナで後退「数百万人が貧困に逆戻り」危機感示す”. NHKニュース. 日本放送協会 (2020年9月18日). 2020年12月15日閲覧。
- ^ “新型コロナウイルスとSDGs”. UNDP. 2020年12月15日閲覧。
- ^ a b c “SDGsを発明した人は本当に頭がいい、皮肉な理由”. ITmedia ビジネスオンライン (2022年5月31日). 2023年3月3日閲覧。
- ^ “第2節 SDGsの各ゴールの関係と世界の現状”. 環境省. 2024年3月12日閲覧。
- ^ “SDGsに忙殺されるテレビ局スタッフ「どこが持続可能なのか」とぼやく”. NEWSポストセブン. 2022年8月24日閲覧。
- ^ a b “「コオロギ食」なぜ炎上 “給食提供”は早すぎた? 専門家「被害者はいないのに…」”. 株式会社AbemaTV (2023年4月8日). 2024年3月12日閲覧。
- ^ “「コオロギ給食」への批判が珍しく納得できる理由 昆虫だけでなく多岐にわたる“苦情の成分"”. 木村隆史、東洋経済新報社 (2023年3月3日). 2024年3月15日閲覧。
- ^ 編集部, ABEMA TIMES. “若者の“サステナブル疲れ”に若新雄純氏「人間の尽きない欲望の持続可能性を考えるべき」 | 国内”. ABEMA TIMES. 2023年3月3日閲覧。
- ^ 夢加, 牧島 (2021年8月5日). “Z世代に広がる「サステナブル疲れ」……就活にもSDGs講座、友人同士でマウンティング”. BUSINESS INSIDER JAPAN. 2023年3月3日閲覧。
- ^ “SDGsに関する企業の意識調査(2023年)| 株式会社 帝国データバンク[TDB]”. www.tdb.co.jp. 2024年4月17日閲覧。
- ^ “SDGs に関する企業の意識調査(2023 年)”. 帝国データバンク. 2024年4月17日閲覧。
- ^ 企業も経営に導入 国連「持続可能な開発目標」日本経済新聞HP 2016/12/8付
- ^ “ジャパンSDGsアクション発足、のんが「SDGs People」第1号に”. Adver Times. (2020年7月29日)
- ^ “地方創生SDGs”. 内閣府. 2022年11月28日閲覧。
- ^ “冊子「地方創生に向けたSDGsの推進について」”. 内閣府地方創生推進室. p. 20 (2022年6月). 2022年11月28日閲覧。
- ^ “冊子「地方創生に向けたSDGsの推進について」”. 内閣府地方創生推進室. p. 25 (2022年6月). 2022年11月28日閲覧。
- ^ “地域における SDGs 達成に向けた取組みと課題”. 環境情報科 学論文集 ceis33 (0). p. 44 (2019年11月25日). 2022年11月28日閲覧。
- ^ 中口毅博・熊崎実佳『SDGs先進都市フライブルク』学芸出版社、2019年
- ^ a b “「SDGs未来都市」等の選定について”. 首相官邸 (2018年6月15日). 2020年12月15日閲覧。
- ^ “地方創生SDGs・地方創生SDGs官民連携プラットフォーム・「環境未来都市」構想(内閣府)”. 地方創生SDGs・地方創生SDGs官民連携プラットフォーム・「環境未来都市」構想(内閣府). 2024年4月17日閲覧。
- ^ “フィジカルインターネット・ロードマップを取りまとめました! 経済通産省”. 2023年4月7日閲覧。
- ^ 国際連合広報センター (2017年7月20日). “日本のユーチューブスター、ピコ太郎さんが国連デビュー! SDGs(エス・ディー・ジーズ)をPR”. 2017年7月29日閲覧。
- ^ 朝日新聞 (2017年7月18日). “ピコ太郎さん、国連本部でPPAP「ウケてよかった」”. 2017年7月29日閲覧。
- ^ 時事通信 (2017年7月18日). “開発目標、ピコ太郎さんがPR=国連で替え歌披露”. 2017年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月29日閲覧。
- ^ エシカル消費とは 消費者庁
- ^ “みどりの食料システム戦略”. 農林水産省. 2022年1月26日閲覧。
- ^ 神奈川県. “かながわSDGsパートナーについて”. 神奈川県. 2020年3月26日閲覧。
- ^ 埼玉県ホームページ2021/4/29閲覧
- ^ “富山市 富山型コンパクトなまちづくりプロジェクト”. www.city.toyama.toyama.jp. 2020年9月21日閲覧。
- ^ “富山市SDGs推進コミュニケーター養成講座(参加者募集)|お知らせ|SDGs未来都市 とやま”. SDGs未来都市 とやま. 2020年9月21日閲覧。
- ^ “ウーバー日本初導入のフジタクシーがTDBCフォーラムで苦労話を激白!? 【政経電論】”. 政経電論 (2019年5月7日). 2020年12月15日閲覧。
- ^ “国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の大学等向けガイド「大学でSDGsに取り組む」日本語翻訳版を公開”. 岡山大学 (2017年11月21日). 2020年12月15日閲覧。
- ^ “岡山大学とベネッセがSDGsを軸に3ヵ年の共同研究を開始”. 時事ドットコム. 2020年12月15日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 関西SDGsプラットフォーム、関西SDGsプラットフォーム概要 最終閲覧日2020年10月23日
- ^ “「千葉大学×京葉銀行ecoプロジェクト」3カ年(2017〜2019年度)実施報告会を行いました〜SDGsの10個の目標に貢献〜”. 京葉銀行 (2020年3月19日). 2020年12月15日閲覧。
- ^ “持続可能性|東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会”. 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会. 2019年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月8日閲覧。
- ^ 芸術文化に満ちあふれた未来をつくるためには 日本科学未来館(2020年7月28日)
- ^ “日本ユネスコ協会連盟 × 三菱UFJ銀行 ユネスコスクールSDGsアシストプロジェクト”. 日本ユネスコ協会連盟 × 三菱UFJ銀行 ユネスコスクールSDGsアシストプロジェクト. 2020年3月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月26日閲覧。
- ^ “アルビス株式会社|CSR情報|サステナビリティ”. www.albis.co.jp. 2020年9月21日閲覧。
- ^ “みんなで考えるSDGsの日”. 一般社団法人 日本記念日協会. 2021年3月30日閲覧。
- ^ “「みんなで考えるSDGsの日(3月17日)」を記念日制定 | SDGsナビ”. sdgs-navi.com (2020年3月17日). 2021年3月30日閲覧。
- ^ “Glocally Responsible サステナビリティ|スターバックス コーヒー ジャパン”. www.starbucks.co.jp. 2020年9月21日閲覧。
- ^ サステナビリティ・コミュニケーションガイド 電通、2021年12月
- ^ a b “SDGsトレインについて”. 阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト. 阪急阪神ホールディングス. 2022年8月7日閲覧。
- ^ “東と西で、未来に向かって走る「SDGsトレイン」”. 東急. 2022年8月27日閲覧。
- ^ “ユーグレナ、定款上の事業目的にSDGsの17目標を反映 創業社長が見すえる2025年の社会とビジネス”. SDGs ACTION!. 朝日新聞デジタル (2021年11月12日). 2022年8月27日閲覧。
- ^ “届けよう、服のチカラプロジェクト”. ユニクロ. 2020年3月26日閲覧。
- ^ “The 169 commandments”. The Economist. オリジナルの18 October 2017時点におけるアーカイブ。 2016年2月19日閲覧。
- ^ Berg, Christian (2020). Sustainable action : overcoming the barriers. Abingdon, Oxon. ISBN 978-0-429-57873-1. OCLC 1124780147
- ^ Machingura, Fortunate (2017年2月27日). “The Sustainable Development Goals and their trade-offs” (英語). ODI: Think change. 2022年4月25日閲覧。
- ^ “The SDGs wedding cake” (英語). www.stockholmresilience.org. 2022年7月12日閲覧。
- ^ a b c d e f g h Kotzé, Louis J.; Kim, Rakhyun E.; Burdon, Peter; du Toit, Louise; Glass, Lisa-Maria; Kashwan, Prakash; Liverman, Diana; Montesano, Francesco S. et al. (2022), Sénit, Carole-Anne; Biermann, Frank; Hickmann, Thomas, eds., “Planetary Integrity”, The Political Impact of the Sustainable Development Goals: Transforming Governance Through Global Goals? (Cambridge: Cambridge University Press): pp. 140–171, doi:10.1017/9781009082945.007, ISBN 978-1-316-51429-0 2022年9月27日閲覧。 Text was copied from this source, which is available under a Creative Commons Attribution 4.0 International License
- ^ Schleicher, Judith; Schaafsma, Marije; Vira, Bhaskar (2018). “Will the Sustainable Development Goals address the links between poverty and the natural environment?” (英語). Current Opinion in Environmental Sustainability 34: 43–47. doi:10.1016/j.cosust.2018.09.004.
- ^ a b c Hickel, Jason (September 2019). “The contradiction of the sustainable development goals: Growth versus ecology on a finite planet”. Sustainable Development 27 (5): 873–884. doi:10.1002/sd.1947.
- ^ Wackernagel, Mathis; Hanscom, Laurel; Lin, David (11 July 2017). “Making the Sustainable Development Goals Consistent with Sustainability”. Frontiers in Energy Research 5: 18. doi:10.3389/fenrg.2017.00018.
- ^ The University of Queensland (6 July 2020). “Latest U.N. sustainability goals pose more harm than good for environment, scientists warn”. phys.org. 6 July 2020時点のオリジナルよりアーカイブ。27 August 2020閲覧。
- ^ Zeng, Yiwen; Maxwell, Sean; Runting, Rebecca K.; Venter, Oscar; Watson, James E. M.; Carrasco, L. Roman (October 2020). “Environmental destruction not avoided with the Sustainable Development Goals”. Nature Sustainability 3 (10): 795–798. doi:10.1038/s41893-020-0555-0.
- ^ Reyers, Belinda; Stafford-Smith, Mark; Erb, Karl-Heinz; Scholes, Robert J; Selomane, Odirilwe (June 2017). “Essential Variables help to focus Sustainable Development Goals monitoring”. Current Opinion in Environmental Sustainability 26-27: 97–105. doi:10.1016/j.cosust.2017.05.003. hdl:11858/00-001M-0000-002E-1851-0.
- ^ Scown, Murray W. (November 2020). “The Sustainable Development Goals need geoscience”. Nature Geoscience 13 (11): 714–715. Bibcode: 2020NatGe..13..714S. doi:10.1038/s41561-020-00652-6.
- ^ Kulonen, Aino; Adler, Carolina; Bracher, Christoph; Dach, Susanne Wymann von (2019). “Spatial context matters in monitoring and reporting on Sustainable Development Goals : Reflections based on research in mountain regions”. GAIA - Ecological Perspectives for Science and Society 28 (2): 90–94. doi:10.14512/gaia.28.2.5.
- ^ Reyers, Belinda; Selig, Elizabeth R. (August 2020). “Global targets that reveal the social–ecological interdependencies of sustainable development”. Nature Ecology & Evolution 4 (8): 1011–1019. doi:10.1038/s41559-020-1230-6. PMID 32690904.
- ^ a b Bartram, Jamie; Brocklehurst, Clarissa; Bradley, David; Muller, Mike; Evans, Barbara (December 2018). “Policy review of the means of implementation targets and indicators for the sustainable development goal for water and sanitation”. NPJ Clean Water 1 (1): 3. doi:10.1038/s41545-018-0003-0.
- ^ SDGsウォッシュにご用心(2)[金融編] オルタナ2019年7月4日
- ^ ユニクロとSDGs ユニクロ公式サイト
- ^ 報告書『ウイグル自治区における強制労働と日系企業の関係性及びその責任 』 2021年4月8日
- ^ ウイグル問題は政治的であり、ノーコメント=柳井ファーストリテ社長 ロイター通信2021年4月8日
- ^ 仏当局、ユニクロなどを捜査 ウイグル人強制労働問題で AFP通信2021年7月2日
参考文献
[編集]- 及川幸彦(編集)/大牟田市SDGs・ESD推進委員会『理論と実践でわかる! SDGs/ESD―持続可能な社会を目指すユネスコスクールの取組』明治図書出版、2021年4月10日。ISBN 978-4183771179。
関連項目
[編集]- 国際連合(国連)
- 持続可能な開発のための教育(ESD)
- 持続可能な開発のための文化
- エコロジカル・フットプリント
- 循環経済
- プラネタリー・バウンダリー
- きかんしゃトーマス - イギリスの子供向けテレビシリーズ。2018年より国連と共同制作となり、17の目標の内5つの目標をストーリーに取り入れた。
- アジェンダ21
- ミレニアム開発目標(MDGs) - 2015年までの達成を目指していた国連の開発目標で、本開発目標にも継承されている。
- 持続可能性
- サスティナブル (ウィクショナリー)
- 地球を笑顔にするWEEK - TBSホールディングスの放送事業者(TBSテレビ、BS-TBS、TBSラジオ)合同の本開発目標推進キャンペーン。2020年11月より年度2回(春…4月下旬〜5月中旬、秋…10月下旬〜11月下旬の間の各1週間ずつ)実施されている。
外部リンク
[編集]- 持続可能な開発目標 - 国連広報センター
- 日本政府
- 持続可能な開発目標 (SDGs) 推進本部 - 首相官邸政策会議
- JAPAN SDGs Action Platform - 外務省
- 地方創生 SDGs - 内閣府
- 学生向け解説