れいめい型巡視船
れいめい型巡視船 | |
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基本情報 | |
船種 | ヘリコプター1機搭載型PLH |
運用者 | 海上保安庁 |
前級 | あきつしま |
要目 | |
総トン数 | 約7,300トン[1] |
全長 | 150.0 m[1] |
最大幅 | 17.0 m[1] |
深さ | 9.0 m[1] |
主機 | SEMT ピルスティク12PC2-6V ディーゼルエンジン×4基[1][2] |
推進器 | 可変ピッチ・プロペラ×2軸[2] |
出力 | 36,000馬力[2] |
兵装 | |
搭載機 | EC.225LPヘリコプター×1機[1] ※最大2機搭載可能 |
れいめい型巡視船(英語: Reimei-class patrol vessel)は、海上保安庁のヘリコプター1機搭載型巡視船の船級。ネームシップの建造費用は262億円[1]。
来歴
[編集]2012年9月の尖閣諸島国有化以降、尖閣諸島周辺海域では中国政府の公船の徘徊や領海侵入等の事案の頻度が増加していた。これに対し海上保安庁ではつがる型(ヘリコプター1機搭載型PLH)2隻、くにがみ型(1,000トン型PL)10隻の計12隻の巡視船によって尖閣領海警備専従体制の構築を図っており、2016年3月には支援施設を含めて構築が完了した[3]。
しかしこの間も、2013年には従来4つが乱立していた中華人民共和国の海上保安機関が中国海警局として整理統合され、更に体制の強化が進められるなど、情勢は急激に変化していた。2016年には、領海に侵入する中国漁船に伴走するかたちで中国公船も領海に侵入する状況も出現し、更に来航する公船も増加していた。専従体制が完成した時点で、1,000トン以上の巡視船の勢力において既に海上保安庁は中国海警局の半分程度となっており、しかも中国海警局は更に増強を進めていた[3]。
この情勢を受けて2016年8月24日に閣議決定された平成28年度第2次補正予算では、海上保安体制の強化のため過去最大となる674億円が盛り込まれた[3]。そしてこのとき、尖閣領海警備体制の強化と大規模事案の同時発生に対応できる体制の整備を目的として計画された巡視船の1隻が「れいめい」であった[4][5][注 1]。
設計
[編集]設計面では、平成22年度計画で建造された「あきつしま」の発展型とされているが、計画年度が6年離れているため、全体に改正が加えられている。例えば後檣は、「あきつしま」では前檣と同じラティス構造だったのに対して、本船ではサーチライトやFCSの台座を兼ねた塔状のマストになった[6]。居住区画は騒音コード(船員に対する防音措置)に配慮して、配置や制振材の活用などにより居住性の向上を図っている[4]。また事案の長期化への対応として、十分な清水・食料などを搭載するスペースが確保されている[7]。
速力25ノット以上を確保するため、主機としてSEMT ピルスティク12PC2-6V[8] ディーゼルエンジン(単機9,000馬力)4基を、IHI原動機(現三井E&S DU)もしくはJFEエンジニアリングでライセンス生産した上で搭載し、合計36,000馬力の出力を確保している[2]。これは経済性・低速連続航行適応能力も向上させるため、低負荷域の燃焼を改善した機種である。推進器については可変ピッチプロペラとされた[4]。
装備
[編集]兵装は70口径40mm単装機関砲と20mm多砲身機関砲を2基ずつ搭載する。この搭載数は「あきつしま」と同じだが、本型では70口径40mm単装機関砲を新型のボフォースMk.4に更新した[6]。また遠隔放水銃および停船命令等表示装置、遠隔監視採証装置も搭載される[4]。
両舷に、それぞれ高速警備救難艇、全天候型救命艇、警備艇を搭載する。この搭載艇の種類・数も「あきつしま」と同様である[6]。
ヘリコプターについては、格納庫には「あきつしま」と同様にスーパーピューマ225(EC225LP)を2機収容でき、ヘリコプター甲板の移送用レールもそれに合わせた配置となっているが、搭載数の定数としては1機とされている[9][1]。
同型船一覧
[編集]計画年度 | 番号 | 船名 | 造船所 | 起工 | 進水 | 就役 | 配属 | 備考 |
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平成28年度 第2次補正[9] | PLH-33[9] | れいめい[9] | 三菱長崎[9] | 2018年 2月16日[9] | 2019年 3月8日[9] | 2020年 2月19日[9] | 鹿児島[9] (第十管区)[注 2] | |
平成29年度[9] | PLH-34[9] | あかつき[9] | 2020年 4月10日[11] | 2021年 2月16日[12] | ||||
平成29年度 補正[9] | PLH-35[9] | あさづき[13] | 三菱下関[9] | 2019年 2月25日[9] | 2020年 12月15日[13] | 2021年 11月12日[14] | 石垣[15][16] (第十一管区) | |
令和3年度補正 | PLH-31[17] | しきしま[18] | 2022年 | 2024年 3月13日[18] | 令和7年度 予定 | 鹿児島[18] (第十管区) | 初代「PLH31しきしま」(R060314解役) 代替(船番船名引継ぎ) |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ なお、同予算では更に1隻のPLHとして「しゅんこう」の建造が盛り込まれたが、こちらは本型と同様にスーパーピューマ2機を搭載できるとはいえ、基本的にはふそう型(初代みずほ型)と同系列の汎用型PLHと位置づけられており、船型は6,000トン型と小さく、建造費用も172億円と廉価になっている[1]。
- ^ これら2隻が連続して鹿児島港への配備となったのは、周辺国の活動が活発化する尖閣諸島周辺海域の警備や、自然災害など大規模な事案が同時発生したときの対応が目的とされている。同海域を所管する第十一管区内では大型巡視船に対応した岸壁余裕が少なく、また、十一管区からの後方基地として位置的に台風避泊として余裕のあった鹿児島港(七ツ島谷山港)に、岸壁や桟橋を整備することになった。[10]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k 海人社 2020b.
- ^ a b c d “政府調達落札データ”. 首相官邸. 2020年6月15日閲覧。
- ^ a b c 秋本 2018.
- ^ a b c d 海上保安庁装備技術部 2018.
- ^ 海人社 2019.
- ^ a b c 海人社 2018.
- ^ 海上保安庁装備技術部船舶課 2020.
- ^ “入札公告 主機関整備部品(12PC2-6V)1式ほか1点買入 仕様書”. 第十一管区海上保安本部. 2024年3月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 海人社 2020.
- ^ “新造巡視船「あかつき」、鹿児島海保に2021年2月就役 6千トン級全国最多の4隻に”. 南日本新聞. (2020年10月30日)
- ^ “「れいめい」型PLH「あかつき」進水!”. 世界の艦船. (2020年4月27日)
- ^ “ヘリ巡「あかつき」竣工”. 世界の艦船. (2021年2月16日)
- ^ a b “ヘリ巡「あさづき」進水!”. 世界の艦船. (2020年12月16日)
- ^ 海上保安庁 [@JCG_koho] (2021年11月12日). "あさづき就役". X(旧Twitter)より2021年11月12日閲覧。
- ^ “尖閣の警備強化へ 石垣に新たな巡視船 海保最大規模、ヘリ搭載型”. 琉球新報. (2021年8月26日)
- ^ “【独自】尖閣諸島警備へ長時間航行が可能な最大級巡視船…11月にも配備”. 読売新聞. (2021年8月19日) 2021年10月16日閲覧。
- ^ “尖閣周辺の警備能力強化へ 下関で最大規模の巡視船進水式”. 日本放送協会. (2024年3月13日) 2024年3月14日閲覧。
- ^ a b c “尖閣諸島周辺の警備能力強化へ 大型巡視船進水式 下関”. 日本放送協会. (2024年3月13日) 2024年3月13日閲覧。
参考文献
[編集]- 秋本茂雄「2008-2018年 進化の10年を振り返る (特集 海上保安庁 : 創設70周年)」『世界の艦船』第881号、海人社、2018年7月、130-135頁、NAID 40021585462。
- 海上保安庁装備技術部「これから登場する新型船 (特集 海上保安庁 : 創設70周年)」『世界の艦船』第881号、海人社、2018年7月、152-155頁、NAID 40021585539。
- 海上保安庁装備技術部船舶課「大いなる進化の時代=船艇と装備 (特集 海上保安庁の近未来を予測する)」『世界の艦船』第933号、海人社、2020年10月、140-145頁、NAID 40022358640。
- 海人社(編)「初公開! 海保新型船の最新オフィシャルCG」『世界の艦船』第881号、海人社、2018年7月、1-5頁、NAID 40021585291。
- 海人社(編)「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向 : 令和元年度を顧みて」『世界の艦船』第927号、海人社、2020年7月、141-147頁、NAID 40022262326。
- 海人社(編)「海上保安庁船艇の全容」『世界の艦船』第933号、海人社、2020年10月、37-101頁、NAID 40022358584。