イラク航空
| ||||
設立 | 1945年 | |||
---|---|---|---|---|
ハブ空港 | バグダード国際空港 | |||
親会社 | イラク政府 | |||
保有機材数 | 28機(30機発注中) | |||
就航地 | 21都市 | |||
本拠地 | イラク、バグダード | |||
外部リンク | http://www.ia.com.iq |
イラク航空(イラクこうくう、阿: الخطوط الجوية العراقية、英: Iraqi airways)は、イラクの航空会社で、中近東で最も古い歴史をもつ航空会社の一つである。また、アラブ航空会社機構 (Arab Air Carriers Organization) の一員である。
概要
[編集]運航開始
[編集]イラク航空は第二次世界大戦終結後の1946年に運航を開始し、その後ビッカース バイカウントなどの新型機材を導入し、徐々に路線網を拡大して行った。冷戦下において政権が変わった度に西側と東側の両方の航空機を購入したため、1960年代にはイギリスのホーカー・シドレー トライデントとソビエト連邦のツポレフTu-124を同時に運航していたこともあった。
拡大
[編集]1970年代に入り、石油価格の高騰を受けた好況の影響を受けて、ボーイング707やボーイング747などの大型機を相次いで導入し、ロンドン、東京、バンコク、ニューヨーク、モスクワやリオデジャネイロなどの世界の主要都市にその路線を拡大した他、近距離国際線や国内線用にボーイング727などの当時の最新鋭機を導入するなど、機材の更新を推し進めた。また1980年代頭にはバグダード国際空港のターミナルが新装し、中東におけるハブ空港の地位を目指した。
なお、日本へは極東路線として、1978年4月22日から成田国際空港(当時は新東京国際空港)が開港する同年5月19日まで暫定的に羽田空港に就航して、その後は1990年8月1日までの間、バグダード-バンコク(ドンムアン国際空港)-東京(成田)間をボーイング747コンビを用いて週1便で就航していた。就航後数年間はバンコクだけではなくて、ドバイやムンバイも経由していたことがある。バグダード-日本間のフライトではファーストクラスとエコノミークラスの2クラス制を採用しており、成田発とバンコク発のフライトにおいては、日本人向けの機内サービスの一環として機内食にもりそばなどの和食メニューを用意していた。日本乗り入れを中止した後も同空港の発着権を返上していなかったことから、あくまで「一時休止」扱いとなっていた。
イラン・イラク戦争と湾岸戦争
[編集]しかし、1979年にサッダーム・フセイン政権下になった後の1980年に起きたイラン・イラク戦争によりいくつかの国際線が運航休止になってしまい、またイラン・イラク戦争終結後の1988年には休止していた国際線の運航を本格的に再開したものの、そのわずか2年後の1990年にイラクが隣国のクウェートに侵攻し、国際社会の猛反発を受けたことで殆どの国際線の運航が休止となってしまった。なおこの際にクウェート航空が運航していたボーイング767やクウェート国際空港に駐機していた外国機を接収し、自社のフリートに組み込んだ。
ところが1991年に発生した湾岸戦争でアメリカを主力とする多国籍軍の攻撃を受けたため、多くの所有機材を隣国のイランやヨルダンに避難させることになった上、クウェート侵攻の際に組み込んだ機体をはじめ、国内に残した機材の多くが破壊されてしまった。
さらに戦後、国連による制裁によって国際線の運航がメッカ巡礼のための「ハッジフライト」に限られただけでなく、国内に飛行禁止区域が設けられたことから、殆どの機材がバグダード国際空港をはじめとする国内の空港で地上保存状態にせざるを得なくなってしまった。
その上に、地上保存されていたボーイング747-SPやボーイング737-200などの所有機材の多くは、就航できない上に予算が枯渇したためには殆ど整備が行われなかっただけでなく、多くの部品が盗難にあってしまったために、大規模な修繕を行わない限り二度と飛行できない状態になってしまった。また、湾岸戦争以前の1980年代後半にエアバスA310を5機発注していたが、クウェート侵攻で宙に浮いてしまい、建造されないまま2007年にA310自体が製造中止となった。
イラク戦争
[編集]追い討ちをかけるように、2003年3月にアメリカやイギリスを始めとする多国籍軍がイラクを攻撃し、イラク戦争が開戦したことで、バグダードなどのイラク各地に地上保存されていたボーイング727‐200やイリューシンIl-76などの多くの機材が、多国籍軍の攻撃を受けて完全に破壊されてしまった。
復興
[編集]しかし、アメリカなどの多国籍軍によりサッダーム・フセインが追放(その後処刑)され、新政権が樹立された後に、イラク航空は政府の国営からエア・イラク社に経営が移管され、2004年10月には新体制下における第1便として、需要の高いバグダード-アンマン線の運航を開始した。
その後アメリカ政府などから資金援助を受けて2004年にボーイング767-200型機などの中古機材の提供を受けた他、これまでバグダード国際空港内に放置されていたボーイング737-200型機やイリューシンIL-76などいくつかの残存機が再び使用できるように整備を受けた。2005年6月には、イラク戦争後初の国内線である、バグダード-バスラ線の運航を再開しほか、バグダード-テヘラン線やバグダード-イスタンブール線などの国際線を開設した。
新生イラク航空
[編集]2010年5月、イラク航空の解散が決まり清算に入った。 背景にクウェートが湾岸戦争での損害賠償をイギリスの裁判所で求め、イラク航空の資産凍結の判決がある。 イラク政府は新たに設立する民間の航空会社に航空事業をさせる見込みであった[1]が、2012年10月にイラク政府がクウェート政府に5億ドルを支払う代わりにクウェート側が英国にある法律顧問事務所に対して(英裁判所に対する)イラク航空に対する全ての申し立てを取り下げることで合意した。 またこの件についてはクウェートのサバーハ首長も首長令を発して金銭的解決に同意し、2013年1月に国民議会も本合意を承認した。 イラク政府はこれを受けて、イラク航空の解散はせずに会社を存続させることを正式に決定した。
湾岸危機以来大型機の運用を見合わせてきたが、2010年以降、ボーイング767-300ERを中古機で導入し、 ボーイング747-400も元日本航空のJA8912とマレーシア航空の2機導入し、将来北米路線の再開に向けてイラク初の-400としても注目を集めた。 続けて、更に2012年にはエアバスA330-200とボーイング777-200LRを1機ずつ導入した。 また、2013年9月には中国の北京・上海・広州に就航予定であることを正式に発表し、マレーシアのクアラルンプールへの運航を開始した。 2014年8月、イラク航空は航空券の電子予約サービス開始を発表し、ボーイング777-200LRで中国の広州への運航を開始した。 2015年3月からはイギリスのマンチェスター、アルメニアのエレバンへの運航を開始し、同年6月8日からは北京への運航も開始した。
ロゴマーク
[編集]イラクの国旗にも使用されている汎アラブ色の中の緑を基調としており、ツバメを意味するアラビア語: سنونو(日本語読み:「スヌーヌ」)をモチーフにしたロゴマークは、尾翼マークとして長年用いられて、同社のシンボルとしても知られている。
各種規定
[編集]イラク航空はリコンファームの制度が残っている数少ない航空会社である。全路線とも出発の5日前又は120時間前までのリコンファーム(予約の再確認)が必要。 また2014年9月現在、マイレージプログラム等はないので注意。
保有機材
[編集]運航機材
[編集]欧州線は主にボーイング737-800、長距離路線は主にエアバス330-200、ボーイング777-200LRが使用されているがともに1機しか保有していないため、時々ボーイング767-300ERも使用されることもある。
イラク航空が発注したボーイング製航空機の顧客番号(カスタマーコード)は70で、型式名は737-870、747-470Cなどとなる。しかし、リース機のみで運用されているため使用されていない。前述のようにリース機が多いため、同じ機種やシリーズでも搭載エンジンが異なっている場合が多い。そのため運用や整備の効率が悪い状況となっている。
機種 | 所有数 | 発注数 | 乗客定員 | エンジン | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
C | Y | 合計 | |||||
エアバスA220‐300 | ー | 5 | 12 | 140 | 152 | ボンバルディアCS300として発注された | |
エアバスA320-200 | 3 | — | ー | 180 | 180 | CFM | |
エアバスA330-200 | 1 | — | 24 | 264 | 288 | GE | |
ボーイング737-800 | 14 | 15 | 12 | 150 | 162 | CFM | 全機WL装着機 うち1機はイラク政府のVIP機(ファーストクラス75席のみ) |
ボーイング747-400 | 2 | — | 74 | 338 | 412 | GE | CF6エンジンを搭載する元日本航空と PW4000エンジンを搭載する元マレーシア航空で エンジンメーカーが異なる中古機体のため整備効率が良くない |
PW | |||||||
ボーイング777-200LR | 1 | — | 14 | 350 | 364 | GE | |
ボーイング787‐8 | ー | 10 | |||||
ボンバルディア CRJ-900 | 2 | — | ー | 90 | 90 | GE | |
合計 | 23 | 30 |
- エアバスA330-200
- ボーイング737-800
- ボーイング747-400
退役機材
[編集]現在バグダード国際空港に、湾岸戦争以前に運航していたボーイング747SPやイリューシンIl-76、アントノフAn-24が放置されたままになっているが、長年飛行していなかっただけでなく整備を受けていない他、各種部品が盗難に遭っているなど状態が悪いために、修理はされずそのまま廃棄処分になると思われる。
- エアバスA300B4(クウェート航空からの略奪機)
- エアバスA321-200
- アントノフAn-24
- ボーイング707-320B
- ボーイング737-200
- ボーイング737‐700
- ボーイング747-200C
- ボーイング747-SP
- ボーイング767-200,300ER
- イリューシンIL-76
- パイパーPA-34
- ツポレフTu-124
- ボーイング737-200
- ボーイング747-SP
- 放置されたボーイング747‐SP
就航都市
[編集]湾岸戦争以前はブラジル(リオネジャネイロ)や日本(成田)への運航もあった。
イラク国内
アフリカ
中東
- バーレーン:マナーマ
- イラン:エスファハーン、マシュハド、テヘラン
- ヨルダン:アンマン
- クウェート:クウェートシティ
- レバノン:ベイルート
- シリア:ダマスカス
- トルコ:アダナ、アンタルヤ、イスタンブール(アタテュルク)
- アラブ首長国連邦:ドバイ
アジア
- インド:デリー、ムンバイ
- マレーシア:クアラルンプール(2013年8月16日より正式運航開始・ボーイング777-200LRによる週1便での運航)
- パキスタン:カラチ(季節運航)
- 中国:北京(2015年6月8日より正式運航開始・バスラ経由・ボーイング777-200LRによる週1便での運航)
- 中国:広州(2014年8月23日より正式運航開始・ボーイング777-200LRによる週1便での運航)
ヨーロッパ
- ジョージア:クタイシ
- イギリス:ロンドン(ガトウィック)(2013年3月5日より正式運航開始・A320で週1便運航)
北米
- 【再就航検討】
なお,EU域内乗り入れ禁止航空会社であるため,EU域内には就航していない。
脚注
[編集]関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- イラク航空公式サイト
- Iraqi Airways (@iraqi_airways_official) - Instagram