共役
共軛、共役(きょうやく)は2つのものがセットになって結びついていること、同様の働きをすること。共軛の「軛」(くびき)は、人力車や馬車において2本の梶棒を結びつけて同時に動かすようにするための棒のことである。「軛」が常用漢字表外であったため、音読みの同じ「役」の字で代用され、現在では共役と書かれることが多い。いくつかの分野で用法がある。
数学における「共軛/共役」
[編集]以下は主な例であるが、数学において、この語は様々な文脈で用いられるため、以下では全てを網羅してはいない。
- 複素共役のこと。その数を共役複素数という。
- 群論において、群の内部自己同型で移り合う元あるいは部分集合たちの関係のこと。共役類を参照。
- 代数拡大体の自己同型で移り合う元の関係のこと。特に Q 上自己同型に関するものは代数的数を参照。
- 共役作用素のこと。共役作用素や行列については『相似』を参照。
- 位相共役性のこと。単に位相共役とも呼ぶ。
化学における「共役」
[編集]- 共役酸・共役塩基 - あるブレンステッド酸がプロトンを放出して生じる塩基が共役塩基、あるブレンステッド塩基がプロトンを受け取って生じる酸が共役酸である。酸と塩基 を参照。
- 多重結合の共役系 - 分子の構造において不飽和結合と単結合が交互に連なると、π軌道の相互作用による安定化や電子の非局在化などが起こる。そのような系を共役系と呼ぶ。芳香環は、環状に連続した共役系のうちヒュッケル則を満たすもののこと。不飽和結合の他に、孤立電子対やラジカル、非結合性軌道が参加する共役系もある。σ電子や反結合性軌道が参加する共役は『超共役』と呼ばれる。『共鳴理論』も参照。
- 共役した化学反応 - 生化学において、ある反応が起こると同時に別の反応が起こる系のこと。酸化的リン酸化における電子伝達系とATP産生の共役(coupled)など。
地球科学における「共役」
[編集]- 共役断層 - 同じ応力によって生じた隣接する断層。断層#共役断層と断層帯を参照。
物理学における「共役」
[編集]- 応力・ひずみなど、積がエネルギー(または仕事)の次元になるような物理量は互いに仕事に関して共役と呼ばれる[1]。同様にして、仕事率に関して共役な関係も定義される(原動機のトルク・回転数や流体機械の流量・圧力など)。
- 示量性と示強性も参照。英語版ではConjugate variablesおよびConjugate variables (thermodynamics)を参照。
脚注
[編集]- ^ 京谷孝史 著、非線形CAE協会 編『よくわかる連続体力学ノート』森北出版、2008年、188頁。ISBN 978-4-627-94811-2。