複素共役

複素数 z の複素共役 z を取る操作は、複素数平面では実軸対称変換に当たる。

数学において、複素共役複素共軛、ふくそきょうやく、: complex conjugate)とは、複素数の虚部を反数にした複素数をとる操作(写像)のことである。複素数 z共役複素数を記号で z で表す[注釈 1]

複素数 z = a + bia, b実数i虚数単位)の共役複素数 z

である。極形式表示した複素数 z = r(cos θ + i sin θ)r ≥ 0, θ は実数)の共役複素数 z は、偏角を反数にした複素数である:

複素数の共役をとる複素関数  : CC ; zz環同型である。すなわち次が成り立つ。

  • z + w = z + w
  • zw = z w

複素共役は実数を変えない:

  • z が実数 ⇔ z = z

逆に、C 上の環準同型写像で、実数を変えないものは、恒等写像か複素共役変換に限られる[1][2]

複素共役変換は、C の全ての点で複素微分不可能である。

複素共役変換を R 上の線型変換と見ると、その表現行列

代数方程式について、

「実係数多項式 P(x) が虚数 α をもつならば、α の共役複素数 αP(x) の虚数根である」

すなわち

実係数多項式 P(x) について、P(α) = 0 ⇔ P(α) = 0

が成り立つ(1746年ダランベール)。このことは、複素共役変換は環準同型であることから容易に示せる。

定義と特徴づけ

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複素数 z = a + bia, b実数i虚数単位)の複素共役とは、

を取る操作のことである。この写像複素共役変換という。

複素共役変換は環同型写像である。すなわち、複素共役変換  : CC ; zz に対して、次が成り立つ。

さらに、複素共役は実数を保つ:

  • z が実数 z = z

逆に、C 上の環準同型写像で、実数を変えないものは、恒等写像か複素共役変換に限られる[1][2]

(証明)

σ : CC は環準同型写像で、
実数 r に対して σ(r) = r
を満たすとする。
(σ(i))2 = σ(i2) = σ(−1) = −1
(σ(i) + i)(σ(i) − i) = 0
∴  σ(i) = ±i
ゆえに、複素数 z = x + yix, y は実数)に対して、
σ(z) = σ(x + yi) = σ(x) + σ(y)σ(i) = x + y σ(i) = x ± yi
σ(x + yi) = x + yi のとき、σ は恒等写像。
σ(x + yi) = xyi のとき、σ は複素共役変換である。(証明終)

性質

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計算法則

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z, w を複素数とする。以下の性質が成り立つ。

  • が実数 ⇔
    • が純虚数 ⇔
    • n は整数)

上記の3つの性質は、複素共役を特徴付けるため、重要である。

  • 対合
    • 逆数は、絶対値と共役で表せる。

複素数の種々の値

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複素共役を用いると、複素数の実部・虚部、絶対値・偏角を表すことができる。

代数方程式

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実係数多項式 f(x) が虚数 α をもつならば、α の共役複素数 αf(x) の根である。すなわち、実数係数多項式 f(x) について

が成り立つ(1746年ダランベール)。このことは複素共役が環準同型であることから分かる。

複素解析

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複素共役変換  : CC ; zz は、C の全ての点で複素微分不可能である。

実軸の開集合上で実数値をとる実解析的関数について、その解析接続は、共役複素数に対して共役複素数を与える。たとえば複素解析において

(ただし実軸のある領域上で実数値をとる分枝の、複素共役について対称的な領域への拡張について)

が成り立つ。

複素数空間

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複素線形空間 Cn の標準内積 <・|・> : Cn × CnR≥0 は次の式で定義される:

に対して、

脚注

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注釈

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  1. ^ 複素共役を表すのには上線がよく使われる。上付きのアスタリスク (z*) なども使われるが、行列の随伴行列などとの混乱を避けるためにあまり使われない[要出典]

出典

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  1. ^ a b 高橋礼司「第1章「複素数」」『複素解析』東京大学出版会、1990年1月1日、5頁。ISBN 978-4130621069 読書メモ
  2. ^ a b 羽鳥理「Ring homomorphisms on commutative Banach algebras(1)〔和文〕」『数理解析研究所講究録』第1137巻、京都大学数理解析研究所、2000年4月、1-8頁、CRID 1050282677151329152hdl:2433/63807ISSN 1880-2818 

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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