コワモンゴキブリ

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コワモンゴキブリ
コワモンゴキブリ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ゴキブリ目 Blattaria
: ゴキブリ科 Blattellidae
: ゴキブリ属 Periplaneta
: コワモンゴキブリ
P. australasiae
学名
Periplaneta australasiae
Fabricius1775[1]
シノニム

Blatta aurantiaca Stoll1813[2]
Blatta australasiae Fabricius1775[3]
Blatta domingensis Palisot de Beauvois1818[4]
Periplaneta emittens Walker1871[5]
Periplaneta inclusa Walker1868[6]
Periplaneta repanda Walker1868[7]
Periplaneta subcincta Walker1868[8]
Polyzostesteria subornata Walker1871[9]
Periplaneta zonata Haan, 1842[10]

和名
コワモンゴキブリ[11][注釈 1]
英名
Australian cockroach

コワモンゴキブリ(小輪紋蜚蠊、学名:Periplaneta australasiae)とは、ゴキブリ目ゴキブリ科に属する昆虫の一種である。和名の通りワモンゴキブリに似ているが、やや小型である[13]

形態[編集]

卵鞘は黒褐色で、長さ10ミリメートル[13]。 幼虫の体色は茶褐色で、体節の各側面に黄色斑斑が見られるのが特徴[14]

成虫の体色は赤褐色で前胸背板にハッキリとした暗黄色環状紋が見え、翅の縁には黄色筋紋がある[14]。体長は雄が25 - 30ミリメートル、雌が25 - 27ミリメートル[14]。翅は濃茶褐色で、ワモンゴキブリより黒っぽく見える[13]。雄は尾部に2対の突起物があり、1対しかない雌とはこれで区別できる[15]

生態[編集]

植物温室など、ワモンゴキブリよりも高温多湿な場所を好み、植物への嗜好性が高いと考えられている[16]

特に5月から10月に発生する[13]。卵期間は40日、幼虫期間は5 - 12か月、成虫の寿命は4 - 6か月とされ[13]、雌は羽化後24日ほどして初めて産卵し[15]、10日間隔で20 - 30回にわたり平均24個の卵を含む卵鞘を湿った物陰に産む[13]。幼虫は1齢幼虫から5齢幼虫を経て成虫に育ち、また単独よりも集団の方がより早く生育する[15]

分布[編集]

アフリカ原産で[1]熱帯亜熱帯性の種類ながら、温室に生息分布することが報告されている[17]アジアアフリカヨーロッパ北アメリカ南アメリカオセアニアで生息が確認されている[18]

日本では小笠原諸島伊豆諸島トカラ列島奄美諸島与論島沖縄諸島八重山諸島に分布するほか、北海道東京都で採集例があるが[19][20]九州以北では局所的なものに留まる[16]。貨物の運搬に紛れて侵入することがある[16]

害虫としての本種[編集]

欧米では重要害虫種として知られる[21]。沖縄県では屋内害虫とされ、市街地よりも農村地域の木造住宅で多く発生している[21]。具体的には文化財を食害するほか、糞による汚染害が知られる[22]

前述の通り熱帯原産であり、耐寒性は低い。その為、主に南西諸島や小笠原諸島で多く生息するが、北海道から九州にかけての地域でも、厨房内等での発生が知られる。

人間との関わり[編集]

害虫である為、駆除されることが多い。駆除の研究の為に研究室飼育されることもある。少数ではあるが、ゴキブリ愛好家の中には趣味で本種を飼育する者も存在する。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 矢野宗幹が1906年に発表した「ゴキブリ類に就きて(上・下)」ではゴキブリ類の和名整理の中でヒメワモンゴキブリと記載している[12]

出典[編集]

  1. ^ a b species Periplaneta australasiae (Fabricius, 1775)Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  2. ^ synonym Blatta aurantiaca (Stoll, 1813)Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  3. ^ Australian CockroachEncyclopedia of Life. 2023年3月9日閲覧。
  4. ^ synonym Blatta aurantiaca (Palisot de Beauvois, 1818)Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  5. ^ synonym Periplaneta emittens Walker, 1871Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  6. ^ synonym Periplaneta inclusa Walker, 1868Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  7. ^ synonym Periplaneta repanda Walker, 1868Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  8. ^ synonym Periplaneta subcincta Walker, 1868Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  9. ^ synonym Polyzostesteria subornata Walker, 1871Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  10. ^ synonym Periplaneta zonata Haan, 1842Beccaloni, G. W., Cockroach Species File Online(Version 5.0/5.0). 2023年3月6日閲覧。
  11. ^ 緒方一喜「日本産衛生害虫の学名・普通名表」『衛生動物』第13巻第2号、日本衛生動物学会、1962年、134-152頁、doi:10.7601/mez.13.134 
  12. ^ 朝比奈正二郎「日本におけるゴキブリ類の研究の記録補遺」『衛生動物』第15巻第3号、日本衛生動物学会、1964年、205-207頁、doi:10.7601/mez.15.205 
  13. ^ a b c d e f コワモンゴキブリ株式会社環境コントロールセンター、2023年3月7日閲覧。
  14. ^ a b c 小林益子『ゴキブリにおける線虫感染に関する研究』 麻布大学〈博士(学術) 甲第77号〉、2021年、14頁。NDLJP:11711185http://id.nii.ac.jp/1112/00005390/ 
  15. ^ a b c Australian cockroach - Periplaneta australasiaeInstitute of Food and Agricultural Sciences, University of Florida. 2023年3月8日閲覧。
  16. ^ a b c 小松謙之、須田章浩「湧水槽内で発生したコワモンゴキブリの防除と国内事例」『ペストロジー』第36巻第2号、日本ペストロジー学会、2021年、67-69頁、doi:10.24486/pestology.36.2_67 
  17. ^ 中野敬一「1.都市屋外におけるキョウトゴキブリとコワモンゴキブリの捕獲事例(一般講演,日本家屋害虫学会第33回年次大会講演要旨)」『都市有害生物管理』第2巻第1号、日本家屋害虫学会、2012年、55-56頁。 NDLJP:10508204
  18. ^ Periplaneta australasiaeCABI Digital Library、2019年11月20日。2023年3月8日閲覧。
  19. ^ 青山修三、青山達哉、間瀬信継、佐々木均「札幌市におけるヤマトゴキブリの初記録」『衛生動物』第64巻第4号、日本衛生動物学会、2013年、219-222頁、doi:10.7601/mez.64.219 
  20. ^ 緒方一喜、田中生男 author3=小川智儀「ゴキブリのすみつき要因に関する研究 第1報 家住性ゴキブリのすみわけ実態調査成績」『衛生動物』第26巻第4号、日本衛生動物学会、1975年、241-245頁、doi:10.7601/mez.26.241 
  21. ^ a b 冨岡康浩、柴山淳、谷川力「千葉県におけるコワモンゴキブリの発生記録」『家屋害虫』第31巻第1号、日本家屋害虫学会、2009年、53-55頁。 NDLJP:10508009
  22. ^ 山野勝次「昆虫学講座 第5回 ゴキブリ目」 (PDF) 『文化財の虫菌害』62号、2011年12月、p.35