ヤマトカナエグモ

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ヤマトカナエグモ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモ綱 Arachnida
: クモ目 Araneae
亜目 : クモ亜目 Opistothelae
下目 : クモ下目 Araneomorpha
階級なし : 完性域類 Entelegynae
上科 : コガネグモ上科 Araneioidea
: コガネグモ科 Araneidae
: カナエグモ属 Chorizopes
: ヤマトカナエグモ C. nipponicus
学名
Chorizopes nipponicus Yaginuma, 1963
和名
ヤマトカナエグモ(大和鼎蜘蛛)

ヤマトカナエグモ Chorizopes nipponicus Yaginuma, 1963 は、コガネグモ科クモ。網を張らず、他のクモを襲って食べる。外見はヨツデゴミグモによく似ている。

特徴[編集]

体長は雌で3.5-4.5mm、雄では2.5-3mm。頭胸部は暗褐色で、頭部が胸部より幅広く、丸く大きく膨らんで盛り上がる。側眼はその両端にある為、中眼とは大きく離れてつく[1]。腹部は円筒形で暗褐色、背面の中央にはより暗色の幅広い縦帯があり、その中に数対の白い小さな斑紋が並んでいる。歩脚は黄色く、要所要所に褐色の輪紋がある。腹部下面は黄色で、両縁と正中線が黒い。腹部後端は丸く終わるが、背面中央と左右に先端が丸い突起が出る[2]

和名は大和鼎蜘蛛で、腹部後端の形をに見立てたもので、日本産の種であることによる[3]

分布と生息環境[編集]

日本では本州、四国、九州に、国外では韓国と中国から知られる[1]。里山から山地にまで見られる[4]

生態[編集]

円網を張るのが普通のコガネグモ科のクモでは珍しく、網を張らない。浅間他(2001)では、コガネグモ科の他種を攻撃対象とし、その網に侵入し、網の主が接近したところで攻撃をかける、とある。他方、新海(2006)はクモ食いであり、攻撃対象がゴミグモ類ウズグモ類ヒメグモ類サラグモ類としている。また網主の獲物を奪う場合もあるという。

成体は6-9月に見られる。卵嚢は独特で、褐色でほぼ球形、上端は急に細まって10cmもある細長い柄に続く。往々にスギの枝先から吊り下がっているのが見られる[4]

分類および類似種[編集]

カナエグモ属には世界に約20種が知られるが、日本では本種のみが知られている。

ところが、このクモは何故かゴミグモ属ヨツデゴミグモ Cyclosa sedeculata に非常によく似ている。大きさではこの種の方がわずかに大きいし、形態的には本種の巨大な頭部は非常に独特で、腹部の斑紋も異なっているので、注意すれば区別はたやすい。にもかかわらず、この2種は非常によく似て見える。この点については小野編著(2009)もそれぞれの種の項で区別に言及しているし、八木沼の初期の図鑑(八木沼(1960))ではこの2種のみを比較した図版をあえて用意している。この2種は属も異なり、系統的にも近くはないとされる。似ている理由や意味などはどこにも触れられていない。

出典[編集]

  1. ^ a b 小野編著(2009),p.422
  2. ^ 八木沼(1986),p.122
  3. ^ 浅間他(2001),p.86
  4. ^ a b 新海(2006)p.216

参考文献[編集]

  • 小野展嗣編著、『日本産クモ類』、(2009)、東海大学出版会
  • 八木沼健夫,『原色日本クモ類図鑑』、(1986),保育社
  • 八木沼健夫、『原色日本蜘蛛類大図鑑』、(1960)、保育社
  • 新海栄一、『日本のクモ』,(2006),文一総合出版
  • 浅間茂他、『野外観察ハンドブック 改訂校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』、(2001)、全国農村教育協会