公正なコイン

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コイントス

確率論統計学において、各試行における成功の確率が1/2である一連の独立したベルヌーイ試行を、比喩的に公正なコイン(こうせいなコイン、fair coin、フェアコイン)と呼ぶ。確率が1/2ではないものは、偏ったコイン(かたよったコイン、biased coin、バイアスコイン)または不正なコイン(ふせいなコイン、unfair coin、アンフェアコイン)と呼ばれる。理論的研究では、多くの場合、公正なコインとして理想的なコインによるコイントスを仮定する。

数学者ジョン・エドモンド・ケリック英語版は、不正なコインによるコイントスを何度も繰り返す実験を行った。彼は、クラウン銀貨程度の大きさの木製のディスクの片面のみ鉛でコーティングされたコインを使用し、1000回中679回が表になった(木の面を表とする)[1]。この実験では、コインを曲げた人差指の上に乗せて親指で弾き飛ばし、約1フィートの高さを落下する間に空中で回転させ、テーブルの上に平らに広げられた布に着地させた。物理学者エドウィン・トンプソン・ジェーンズ英語版は、投げたコインをバウンドさせずに手でキャッチした場合、コインの物理的バイアスはトスの方法と比較して重要ではなく、十分に練習すれば100%の確率でコインを手の上に着地させることができると主張した[2]。コインが公正であるかどうかを確認する問題は、統計を教える上で確立された教育ツールである。

統計の教育と理論における役割[編集]

コイントスの確率的・統計的特性は、入門書でも専門的な教科書でも例としてよく使用されるが、これはコインが公正または「理想的」なものであるという仮定に基づいている。例えば、ウィリアム・フェラー英語版は、この仮定に基づいて、ランダムウォークの概念を導入し、シーケンス内の同一値の連続の特性を調べることによる、一連の観測内の均一性英語版の検定を開発した[3]。後者はワルド‐ウォルフォビッツ連検定英語版につながる。公正なコインを投げた結果からなる時系列は、ベルヌーイ過程と呼ばれる。

不正なコインにより公正な結果を得る方法[編集]

片側が出やすいように加工したコイン(不正なコイン)を使用した場合でも、ゲームのルールを変えることで、そのコインから公正な結果を得ることができる。ジョン・フォン・ノイマンは次の手順を示した[4]

  1. コインを2回トスする。
  2. 2回の結果が一致する場合は、両方の結果を破棄し、最初からやり直す。
  3. 2回の結果が一致しない場合は、1回目の結果を採用する。

この方法により結果が公正になる理由は、2回の試行において確率の偏りが変わらず、それぞれの試行が独立しているため、表の後に裏が出る確率と、裏の後に表が出る確率が必ず同じになるからである。2回とも表または裏となった事象を除外することにより、同じ確率を持つ残りの2つの結果のみが残る。この手順は、試行の後に後続の試行の確率の偏りが変わらない場合、つまり、展延性のないコインを使用した場合のみ機能する。また、この手順は、適切に2回ずつトスを行った場合にのみ機能する。例えば、2回目のトスの結果を次のトスのペアの1回目として再利用すると、公平性が損なわれる可能性がある。加えて、片方の面の出る確率が極端に低い(ほとんど確実に英語版どちらかの面しか出ない)コインでも、公正な結果は得られない。

この方法は、コイントスの回数を4回に拡張することもできる。つまり、1回目・2回目の結果が一致し、3回目・4回目の結果が一致しなかった場合、1回目のトスの結果を採用する。これは、表表裏裏と裏裏表表の発生する確率が等しいためである。この考え方は2の累乗回に拡張できる。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Kerrich, John Edmund (1946). An experimental introduction to the theory of probability. E. Munksgaard. https://archive.org/details/experimentalintr00kerr 
  2. ^ Jaynes, E.T. (2003). Probability Theory: The Logic of Science. Cambridge, UK: Cambridge University Press. p. 318. ISBN 9780521592710. オリジナルの2002-02-05時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20020205134720/http://bayes.wustl.edu/etj/prob.html 
  3. ^ Feller, W (1968). An Introduction to Probability Theory and Its Applications. Wiley. ISBN 978-0-471-25708-0 
  4. ^ von Neumann, John (1951). “Various techniques used in connection with random digits”. National Bureau of Standards Applied Math Series 12: 36. 

参考文献[編集]