切紙

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切紙(きりがみ)とは、主に剣術階級 (他は紙切目録免許)の中の一つ[1]。基本的技術を習得した証として師匠が弟子に与える物。名前の通り紙製の伝授書である。

概要[編集]

切紙は、剣術などの武芸に関して、一定以上の技を習得したと認める証として伝授されるものである。その種類は流派によって様々であるが、一般に切紙と言えばその流派の初等技術を習得したと認める伝授状を指すことが多い。切紙が許された後、さらに精進して目録、皆伝印可などの高位の伝授状が授けられる。紙切と書く流派もある。[2][3]

形状は横長の長方形の物が多く、巻物の形を採っている流派もある。一般的な内容としては、伝授される者の姓名、伝授したと認める技の列挙、師匠の姓名、又は花押を基礎とし、技量を認めたに至る評価、その流派の心構えなどが書かれ、流派により内容は千差万別である。巻物の形をとっている場合、内容にはその流派の指導内容など秘伝が書かれているため、切紙を認められていない者や部外者に見せることが禁じられている場合が多い。

北辰一刀流では現在でも目録制度を維持しており、足技素振り、剣術、抜刀術の基礎段階を習得した門下生に剪紙を与えている。段級位制の初段に相当するとされる[4]

埼玉県飯能市にあった比留間道場で、初代道場主の比留間與八郎源利恭が弟子西川清輔に与えた切紙では、「妙剣」「実妙剣」「青眼」「上段」「独妙剣」の5つの剣術を認めている[5]新選組永倉新八は、弘化3年(1846年)、7歳で神道無念流に入門し、15歳で切紙を許されている[6]。また、井上源三郎は弘化4年(1847年)頃、天然理心流に入門し、10年ほどで切紙、目録、中極意目録、免許を与えられている[7][8]坂本龍馬の姉乙女は男勝りで知られ、「男勝りの気性で、剣術は切紙の腕前[9]」の記録がある[10]

古文書としてオークションなどに出回ることもあり、二代目松田源吾義教が文久3年に佐藤求馬に与えた柳剛流剣術の切紙が2020年3月に落札されている[11][12]

段階分け[編集]

切紙又は紙切、目録免許の組み合わせだけでなく、

  1. 切紙→目録免許皆伝
  2. 初伝中伝奥伝
  3. 初目録中目録大目録皆伝
  4. 切紙→目録印可免許皆伝秘伝口伝
  5. 紙切→目録中極意目録免許印可指南免許[13]

など、流派により段階、名称は様々である。

出典[編集]

  1. ^ 藤堂良明, 村田直樹「武道における段級の歴史と意義について」『武道学研究』第37巻第1号、日本武道学会、2004年、1-9頁、doi:10.11214/budo1968.37.1_1ISSN 0287-9700NAID 130004986776 
  2. ^ 第8回 「在村剣術流派の研究」”. 全日本剣道連盟 AJKF. 2023年12月3日閲覧。
  3. ^ 剣術の儀式”. kenkaku.la.coocan.jp. 2023年12月3日閲覧。
  4. ^ 目録制度” (ドイツ語). 北辰一刀流 本部 公式サイト. 2023年12月3日閲覧。
  5. ^ 飯能市史編さんだより”. ghosts.xrea.jp. 2023年12月3日閲覧。
  6. ^ 月形町役場. “剣術師範として赴任した永倉新八”. /月形町. 2023年12月3日閲覧。
  7. ^ 【公式】井上源三郎資料館”. genzaburou.com. 2023年12月3日閲覧。
  8. ^ 【公式】井上源三郎資料館”. genzaburou.com. 2023年12月3日閲覧。
  9. ^ 土居晴夫著『坂本龍馬とその一族』より
  10. ^ 高知市歴史散歩”. www.city.kochi.kochi.jp. 2023年12月3日閲覧。
  11. ^ japanbujutsu. “松田派柳剛流剣術切紙 | 国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association”. 国際水月塾武術協会 International Suigetsujuku Bujutsu Association. 2023年12月3日閲覧。
  12. ^ Aucfree. “柳剛流剣術切紙 巻物 明治40年 肉筆 武術伝書 古武道 居合 岡田惣右衛門 心形刀流 伊庭軍兵衛 古文書の落札情報詳細 - ヤフオク落札価格検索 オークフリー”. aucfree.com. 2023年12月3日閲覧。
  13. ^ 5番目は天然理心流の場合である

関連項目[編集]

外部リンク[編集]