地域医療連携推進法人

ウィキペディアから無料の百科事典

地域医療連携推進法人(ちいきいりょうれんけいすいしんほうじん)とは、医療機関の機能の分担及び業務の連携を推進するための方針を定めて、その方針に沿って、参加する法人の医療機関の機能の分担及び業務の連携を推進することを目的とする一般社団法人であって都道府県知事から認定を受けたもののことである[1][2]。認定を受けた一般社団法人は、その名称中に地域医療連携推進法人という文字を用いなければならない[3]

概説[編集]

医療法
第70条 次に掲げる法人(営利を目的とする法人を除く。以下この章において「参加法人」という。)及び地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するために必要な者として厚生労働省令で定める者を社員とし、かつ、病院、診療所又は介護老人保健施設(以下この章において「病院等」という。)に係る業務の連携を推進するための方針(以下この章において「医療連携推進方針」という。)を定め、医療連携推進業務を行うことを目的とする一般社団法人は、定款において定める当該連携を推進する区域(以下「医療連携推進区域」という。)の属する都道府県(当該医療連携推進区域が二以上の都道府県にわたる場合にあつては、これらの都道府県のいずれか一の都道府県)の知事の認定を受けることができる。
一 医療連携推進区域において、病院等を開設する法人
二 医療連携推進区域において、介護事業(身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者に対し、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練、看護及び療養上の管理その他のその者の能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするための福祉サービス又は保健医療サービスを提供する事業をいう。)その他の地域包括ケアシステム(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律第2条第1項に規定する地域包括ケアシステムをいう。第70条の7において同じ。)の構築に資する事業(以下この章において「介護事業等」という。)に係る施設又は事業所を開設し、又は管理する法人
第70条の7 地域医療連携推進法人は、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その医療連携推進区域において病院等を開設し、又は介護事業等に係る施設若しくは事業所を開設し、若しくは管理する参加法人の業務の連携の推進及びその運営の透明性の確保を図り、地域医療構想の達成及び地域包括ケアシステムの構築に資する役割を積極的に果たすよう努めなければならない。

医療法人は、株式会社の持株会社のような形で法人をグループ化する手段がなく、競合による機能重複・過剰投資・規模のメリットが働かないなどの種々の弊害が指摘されていた。

そのような中、平成25年8月6日の社会保障制度改革国民会議報告書において、「例えばホールディングカンパニーの枠組みのような法人間の合併や権利の移転等を速やかに行うことができる道を開くための制度改正を検討する必要がある。」[4]とされ、また、平成26年1月22日のダボス会議安倍首相が冒頭演説で「日本にも、Mayo Clinicのような、ホールディング・カンパニー型の大規模医療法人ができてしかるべきだから、制度を改めるようにと、追加の指示をしました。」[5]との発言があり医療法人などに関するホールディング・カンパニー型法人制度創設の機運が高まった。

平成25年11月6日から10回にわたり行われた厚生労働省の「医療法人の事業展開等に関する検討会」[6]において、具体的な制度設計に関する議論がなされ、その後平成27年の医療法改正により制度が創設され、平成29年4月2日から施行された。

業務[編集]

地域医療連携推進法人は、医療連携推進方針に沿った連携の推進を図ることを目的として行う業務、すなわち「医療連携推進業務」などを行うが、「医療連携推進業務」としては以下のような業務が想定されている。[7][8]

  • 医師等の共同研修を始めとする医療従事者の資質の向上を図るための研修 [9]
  • 医薬品等の共同購入 [9]
  • 参加法人への資金の貸付け、債務の保証及び基金の引受け [9]
  • 医療機関の開設
  • 診療科(病床)再編(病床特例の適用)
  • 地域医療連携推進法人が議決権の全てを保有する関連事業者への出資等

メリット[編集]

  • 地域医療連携推進法人内で診療科の再編や資金の融通を行い、医療の効率化や経営の安定化を図る事が出来る。
  • 企業規模が大きくなると、経営効率が高まる「規模の経済」により、薬剤や医療材料の共同購入、医師、看護師、事務職の共同採用が可能となる。[10]

デメリット[編集]

  • 医療機関の集約化を地域内に限定している点があるため、集約化に限度があり、地域によっては「規模の経済」を働かせることができない。[11]
  • 大学病院をホールディングカンパニーの頂点にした場合、地域医療連携推進法人に属さなければ医師の派遣などの恩恵を受けられない場合がある。

一覧[編集]

令和4年4月1日現在、全国で以下の31法人が地域医療連携推進法人として認定されている。[12]

地域医療連携推進法人認定数(令和4年4月1日現在)[12]
2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 合計
年度別認定数 4 3 9 31
【北海道】
【青森県】
【山形県】
【福島県】
【茨城県】
  • 桃の花メディカルネットワーク(認定年月日:令和元年11月29日)
【栃木県】
  • 日光ヘルスケアネット(認定年月日:平成31年4月1日)
【千葉県】
  • 房総メディカルアライアンス(認定年月日:平成30年12月1日)
【神奈川県】
  • さがみメディカルパートナーズ(認定年月日:平成31年4月1日)
  • 横浜医療連携ネットワーク(認定年月日:令和3年12月22日)
【岐阜県】
  • 県北西部地域医療ネット(認定年月日:令和2年4月1日)
【静岡県】
  • ふじのくに社会健康医療連合(認定年月日:令和3年4月7日)
  • 静岡県東部メディカルネットワーク(認定年月日:令和3年9月9日)
【愛知県】
【滋賀県】
  • 滋賀高島(認定年月日:平成31年4月1日)
  • 湖南メディカル・コンソーシアム(認定年月日:令和2年4月1日)
  • 東近江メディカルケアネットワーク(認定年月日:令和4年4月1日)
【大阪府】
  • 北河内メディカルネットワーク(認定年月日:令和元年6月12日)
  • 弘道会ヘルスネットワーク(認定年月日:令和元年6月12日)
  • 泉州北部メディカルネットワーク(認定年月日:令和3年6月11日)
【兵庫県】
  • はりま姫路総合医療センター整備推進機構(認定年月日:平成29年4月3日) 法人番号9140005023404
  • 川西・猪名川地域ヘルスケアネットワーク(認定年月日:令和3年4月1日)
【岡山県】
  • 岡山救急メディカルネットワーク(認定年月日:令和3年3月30日)
【島根県】
  • 江津メディカルネットワーク(認定年月日:令和元年6月1日)
  • 雲南市・奥出雲町地域医療ネットワーク(認定年月日:令和3年6月16日)
【広島県】
  • 備北メディカルネットワーク(認定年月日:平成29年4月2日)
【高知県】
  • 清水令和会(認定年月日:令和2年3月31日)
  • 高知メディカルアライアンス(認定年月日:令和2年12月28日)
【佐賀県】
  • 佐賀東部メディカルアライアンス(認定年月日:令和3年1月29日)
【鹿児島県】
  • アンマ(認定年月日:平成29年4月2日)

脚注[編集]

  1. ^ https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045c/chiiki-renkei-suishin-houjin.html
  2. ^ 厚生労働省ホームページ 地域医療連携推進法人制度について(平成29年1月2日閲覧)
  3. ^ 医療法 第70条の5
  4. ^ 社会保障制度改革国民会議 社会保障制度改革国民会議 報告書 ~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~ (平成25年8月6日 )
  5. ^ 首相官邸 平成26年1月22日世界経済フォーラム年次会議冒頭演説~新しい日本から、新しいビジョン~(平成29年8月18日閲覧)
  6. ^ 厚生労働省 医療法人の事業展開等に関する検討会(平成29年8月18日閲覧)
  7. ^ 厚生労働省ホームページ 地域医療連携推進法人制度について(医政発0217第16号平成29年2月17日)(平成30年1月2日閲覧)
  8. ^ 厚生労働省ホームページ 地域医療連携推進法人制度について(概要)(平成30年1月2日閲覧)
  9. ^ a b c 医療法 第70条の2
  10. ^ 地域医療連携推進法人の問題点”. 公益社団法人日本経済研究センター. 2022年8月8日閲覧。
  11. ^ 地域医療連携推進法人の問題点”. 日本経済研究センター. 2022年8月8日閲覧。
  12. ^ a b 地域医療連携推進法人制度について”. 厚生労働省. 2019年7月20日閲覧。

関連項目[編集]