手足浴

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手足浴(てあしよく)は、だけを浴槽につけ入浴する方法。入浴法の一つ。

従来、医療施設や家庭で行われていたものだが、専用の入浴装置が販売されるようになり、リラクゼーション施設、エステティックサロン針灸・マッサージ院などでも用いられるようになった。業務用として行われているものは、浴剤に特長を持たせているものが多く、各種入浴剤漢方薬アロマオイル炭酸泉などを用いている。ゲルマニウム温浴でも手足を浸す。

健康人15名での実験では、手浴では、心拍数と交感神経機能の指標が増加、足浴では、心拍数の減少と副交感神経機能の指標の増加、手足浴ではこうした増減が不明確になり、淡水では交感神経、炭酸泉では副交感神経の指標の増加が見られた[1]。同一研究者による似たような研究がある[2]

入浴による温熱療法としての効果は、全身浴と比較して身体に掛かる負荷が比較的少ないとされる。医療施設では、ベッドに寝た人では手足浴(寝たまま)となるが、座ることが可能となれば介助つきの入浴もできる目安となる[3]。酸素消費量が重要となる重症の患者では、時間をあけて部分的に実施することで、ケアの影響を最小限にできる[4]。介助のための手足浴に洗浄剤を使用すると、手足がカサカサしていたため、保湿効果のあるセラミドの入った入浴剤を使い水分量・油分量を改善した例がある[5]。手術後の睡眠状態を改善する目的で、30名で手術後から1週間、手足浴とマッサージで合計5-10分を実施、あるいは何もしないグループと比較して、これまでの日常の睡眠に近づいたとする研究がある[6]

出典[編集]

  1. ^ 許鳳浩、上馬場和夫、王紅兵、鏡森定信「手足浴による淡水浴と炭酸泉浴の生理的変化の差」『日本温泉気候物理医学会雑誌』第70巻第1号、2006年、52-53頁。 
  2. ^ 許鳳浩、小川弘子、王紅兵、上馬塲和夫「健常男性への炭酸温水手浴と足浴による生理的変化の差」『日本温泉気候物理医学会雑誌』第72巻第2号、2009年2月1日、148-166頁、doi:10.11390/onki.72.148 
  3. ^ 原田高志『看護師1年目から身につけたい一生を支える大切なスキル』秀和システム、2019年、138頁。ISBN 978-4-7980-5993-8 
  4. ^ 和田直子「心不全急性増悪期にある患者の看護」『ナース専科』第38巻第4号、2018年、21-26頁。 
  5. ^ 今倉(遠藤)みゆき、巽香菜美、好永尚史、渡部真由美、川染知代「入浴が困難である患者に対する皮膚乾燥への効果 セラミド含有の入浴剤を用いた清拭・足浴」(PDF)『筋ジストロフィー医療研究』第5巻、2018年10月26日、131頁。 
  6. ^ 野村有香、中谷富美子「就寝前の手足浴・マッサージが術後の睡眠状況に与える効果 術後不穏の減少にむけて」『日本看護学会論文集 1 成人看護』第31巻、2000年、138-140頁。 

関連項目[編集]