木村龜二

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木村 龜二木村 亀二、きむら かめじ、1897年11月5日 - 1972年3月15日)は、日本法哲学者刑法学者東北大学名誉教授従三位勲二等旭日重光章法学博士兵庫県出身。

人物[編集]

牧野英一と並ぶ主観主義刑法学の大家。教科書(『刑法総論』)は、逝去後も、阿部純二教授によって1978年(昭和53年)に増補されている。

略歴[編集]

1921年に東京帝国大学法学部卒業後、穂積重遠の推挙で同法学部助手となり、法理学の研究に従事し、1926年に九州帝国大学教授となるが、1927年、九州帝国大学法文学部内訌事件で大学を追われる。その後、当時東京帝国大学教授であった牧野英一に誘われ、牧野の研究室で主として新派刑法学、刑事政策の研究に従事するようになる。 1931年、法政大学教授、1936年東北帝国大学教授。戦後は、とくに犯罪論の研究に力を入れる。1967年、日本学士院会員。1972年、心不全により死去、74歳。

学説[編集]

戦前、木村は主観主義刑法学の立場に立ち、不能犯論では、「行為者が行為の時すなわち事前に認識した事情を基礎」とする主観的危険説を唱える。共犯独立性説の立場から、教唆未遂を罰するとの見解をとっていた。

戦後木村は微妙によって立つ理論を修正し、客観主義との理論的統合を企図して行為論においてドイツの刑法学者ラインハルト・マウラッハドイツ語版[1][2]流の目的的行為論を採用した。未遂論では、「行為者の全体的危図を基礎として当該構成要件の保護客体に対して直接危殆化に至るところの行為の中に犯罪的意思が明確に表現せられた時に実行の着手がある」として、主観的客観説と称する。

学歴[編集]

職歴[編集]

著書[編集]

  • 『刑事政策の諸問題』(有斐閣、1933年)
  • 『ルッソー・民約論』(岩波書店、1935年)
  • 『刑法解釈の諸問題』(有斐閣、1939年)
  • 『刑事政策の基礎理論』(岩波書店、1942年)
  • 『刑法の基本概念』(有斐閣、1948年)
  • 『刑法各論(復刊)』(法文社、 1957年)
  • 『全訂新刑法読本』(法文社、1959年)
  • 『刑法改正と世界思潮-改正刑法準備草案の検討-』(日本評論社、1965年)
  • 『犯罪論の新構造(上・下)』(有斐閣 1966年、1968年)
  • 『刑法総論〔増補版〕』(有斐閣、1978年)

論文[編集]

門下生[編集]

脚注[編集]

  1. ^ ラインハルト・マウラッハ 著、刑法読書会 阪村幸男 訳『新刑法典各則の体系』法務大臣官房司法法制調査部調査統計課〈ドイツ刑法改正資料 第1巻 下(法務資料 ; 第370,373号)〉、1964年、93-120頁https://dl.ndl.go.jp/pid/3447954/1/51 
  2. ^ ラインハルト・マウラッハ 著、刑法読書会 中山研一 訳『加重減軽類型と独立犯罪の立法上の取扱』法務大臣官房司法法制調査部調査統計課〈ドイツ刑法改正資料 第1巻 下(法務資料 ; 第370,373号)〉、1964年、121-136頁https://dl.ndl.go.jp/pid/3447954/1/51 
  3. ^ 国立国会図書館. “博士論文『刑法ニ於ケル法益ノ概念』”. 2023年4月7日閲覧。