谷川浜

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谷川浜(やがわはま[1][2][3]座標)は、静岡県賀茂郡南伊豆町妻良にある海岸[4][5]伊豆半島の南西部に位置し、妻良湾の外海(駿河湾)に面した海岸で、全長は約300 mである[4]。夏になると妻良港[注 1]座標)から谷川浜まで渡船が運航され[注 2]海水浴シュノーケリング客が渡船を利用して訪れる[7]。所要時間は妻良港から渡船で約5分[5]、もしくは約8分である[7]

伊豆を代表する海水浴場として知られる弓ヶ浜や「ヒリゾ浜」とともに、南伊豆町を代表する観光地の1つとされている[8]。『静岡新聞』は2017年(平成29年)時点で、ヒリゾ浜と谷川浜を南伊豆の「2大秘境」として報じている[8]

地理[編集]

谷川浜周辺の空中写真。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。2013年9月18日撮影の3枚を合成作成。

海岸はゴロタ石砂浜でできている[5]。伊豆西南海岸特有の石ころが多い浜であるが、2009年(平成21年)8月に伊豆半島を襲った台風で海底が洗われたことにより、砂浜が出現した[4]。その後、2012年(平成24年)6月の台風の影響で浜の大半が砂浜になった[9]。谷川浜を含む妻良から南西方向の海岸線は高さ100 mを超える岩壁が続き、海岸に降りる道もない[1]。谷川浜も山に囲まれているため、渡船でしか立ち入ることができない[7]。渡船が発着する桟橋付近は角張った水冷破砕溶岩[注 3]が目立つ[1]。谷川浜の南方には二十六夜山(標高310.4 m、座標[10][注 4]という山があり、この山も谷川浜と同じく、水冷破砕溶岩と貫入岩体でできた山であると考えられている[1]。また妻良港から谷川浜へ渡船で向かう途中には「鯛ヶ岬」と呼ばれる岬(座標[11])があり、貫入岩体の柱状節理が見える[1]。谷川浜の周辺は柱状節理の海岸になっており、磯釣りのポイントにもなっている[9]。対岸にはジオサイトに指定されている子浦日和山や、波勝崎の海岸景観が見渡せる[9]

海水の透明度が高く、夏には最大で水深10 mまで覗き込むことができ[5]、シュノーケリングで色とりどりの魚たちが海中を泳ぐ姿を観察できる[7]。ほとんど手つかずの自然が残っており、その光景はプライベートビーチのようであると評されている[7]。南伊豆町の西南海岸沿い(妻良から中木まで)には、約12 kmにわたる遊歩道「南伊豆歩道」が整備されているが、妻良の起点付近からは波勝崎や宇留井島とともに、谷川浜の海を眼下に見下ろすことができる[12]

歴史[編集]

谷川浜はかつて妻良湾に入ってくる魚を一網打尽するため、見張り台と漁網を載せる船を待機させていた場所だったが、2010年(平成22年)まで数十年間手つかずになっていたという[13]

2010年時点ではシュノーケリングの穴場として報じられていた[4]。2015年(平成27年)以降、南伊豆町観光協会は谷川浜と同じく町内にあり、渡船でしか渡れない「秘境」として有名な「ヒリゾ浜」(同町中木)に次ぐ観光地として、谷川浜のPRを行っている[5]。2012年時点では、谷川浜はヒリゾ浜と並ぶ「南伊豆の海の穴場」と言われていたが、ヒリゾ浜に観光客が集中する傾向にあり、谷川浜の渡船業者は1軒のみだった[9]。2014年(平成26年)夏までは谷川浜を訪れる観光客は例年約2,000人程度で、2013年(平成25年)時点で30,000人以上が訪れていたヒリゾ浜とは大きな差があったが、町観光協会はヒリゾ浜の混雑を受けて「広く南伊豆の浜をPRしていきたい」との理由から[5]、谷川浜を「第二のヒリゾ」と位置づけてPRを行うようになった[5][14]。ヒリゾ浜は景観維持の観点からトイレを設置しなかったり、バーベキューを禁止したりといった制限を設けている一方、谷川浜の渡船業者はヒリゾ浜との差別化で集客を図るため、簡易トイレの設置、バーベキューの解禁、土日に船からサザエを海に撒くなどの試みを行っている[5]。また2016年(平成28年)以降は遊泳客の危険回避や密漁防止のため、浜から約100 m沖にブイを設置したり、監視船を配置したりしている[7]

2015年夏は2013年に比べ、谷川浜を訪れる観光客が約8割増加したという[7]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「妻良漁港」とも呼ばれる[4]
  2. ^ 2018年(平成30年)の海開き期間は7月1日(日曜日)から9月9日(日曜日)[6]
  3. ^ 海中に噴出した溶岩が冷たい海水で急激に冷やされ、熱歪でバラバラに砕けてできた岩[1]
  4. ^ 二十六夜山は、妻良と「伊豆一の秘境」と言われる南伊豆町吉田の間に位置する山[1]。本来の名前は「間々山」(ままやま)であるが、陰暦正月7月26日の夜明けごろ、暦の月に阿弥陀三尊の像が見える信仰があったことから「二十六夜山」と呼ばれるようになったという[1]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 『伊豆新聞』2018年3月1日伊東版6頁「伊豆の低山を歩く ジオてくの楽しみ38=二十六夜山(南伊豆町)」(伊豆新聞本社 伊豆半島ジオパーク推進協議会専任研究員・鈴木雄介)
  2. ^ 「Special1 透明×コバルトブルーの秘境ビーチへ」『伊豆 熱海 2版』昭文社〈COLOR+PLUS〉、2023年2月20日、19頁。ISBN 978-4398136381NCID BD00749969国立国会図書館書誌ID:032635421全国書誌番号:23806169 
  3. ^ 山之内伸仁(南伊豆町地域おこし協力隊)(著)、山之内伸仁(編)「南伊豆ビーチガイド」(PDF)『ミナミイズム』第1号、南伊豆町地域おこし協力隊、2013年6月1日、4-5頁、2023年12月30日閲覧  - 2013年初夏号。
  4. ^ a b c d e 伊豆新聞』2011年1月1日伊東版1頁「伊豆の魅力・再発見=海に、山に、水辺の秘境 身近な自然に接点」(伊豆新聞本社)
  5. ^ a b c d e f g h 『伊豆新聞』2015年7月5日下田版1頁「“第二のヒリゾ”PR 誘客へ今夏、観光協本腰―南伊豆・谷川浜 自然、渡し船…同じ「秘境」」(伊豆新聞本社)
  6. ^ 南伊豆の夏を満喫しよう 南伊豆の夏を満喫しよう! ~町内夏季イベント情報 ~町内夏季イベント情報~」(PDF)『広報みなみいず』第577号、南伊豆町、2018年7月1日、11頁、2023年12月30日閲覧  - 2018年7月号。
  7. ^ a b c d e f g 『伊豆新聞』2016年7月22日下田版1頁「“第2のヒリゾ”谷川浜 高い透明度地元がアピール―南伊豆妻良」(伊豆新聞本社)
  8. ^ a b 静岡新聞』2017年4月22日朝刊19頁「魅力あるまちへ 南伊豆町町長選(下)=基幹産業の観光振興―新たな資源 回遊性期待」(静岡新聞社 下田支局・杉山諭)
  9. ^ a b c d 『伊豆新聞』2012年7月19日下田版2頁「谷川浜、船渡し始まる ヒリゾに並ぶ南伊豆の穴場」(伊豆新聞本社)
  10. ^ 地理院地図 / GSI Maps”. 国土地理院. 2023年12月30日閲覧。
  11. ^ 地理院地図 / GSI Maps”. 国土地理院. 2023年12月30日閲覧。
  12. ^ 隊員 田中「みなみいず探索記 地域おこし協力隊 南伊豆歩道をあるく(1)行く手を阻むものは?!」(PDF)『広報みなみいず』第530号、南伊豆町、2014年8月1日、11頁、2023年12月30日閲覧  - 2014年8月号。
  13. ^ 妻良谷川浜渡し[賀茂郡南伊豆町]”. アットエス. 静岡新聞社. 2023年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月30日閲覧。
  14. ^ 平成27年6月定例会 南伊豆町議会会議録 平成27年6月10日開会 平成27年6月11日閉会”. 南伊豆町. p. 47 (2015年6月10日). 2023年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月30日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯34度39分16秒 東経138度46分28秒 / 北緯34.65438081686127度 東経138.7745642337601度 / 34.65438081686127; 138.7745642337601