HR 6819

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HR 6819[1]
HR 6819[2]
仮符号・別名 HD 167128[2],
QV Telescopii[3]
星座 ぼうえんきょう座
見かけの等級 (mv) 5.36[2]
5.310 - 5.380(変光)[3]
変光星型 BE[3]
分類 Be星[2]
位置
元期:J2000.0[2]
赤経 (RA, α)  18h 17m 07.5317926356s[2]
赤緯 (Dec, δ) −56° 01′ 24.087624857″[2]
赤方偏移 0.000050[2]
視線速度 (Rv) 15.00 km/s[2]
固有運動 (μ) 赤経: -3.667 ミリ秒/年[2]
赤緯: -11.120 ミリ秒/年[2]
年周視差 (π) 2.9148 ± 0.1828ミリ秒[2]
(誤差6.3%)
距離 1120 ± 70 光年[注 1]
(340 ± 20 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -2.3[注 2]
HR 6819の位置
物理的性質
質量 主星 6.3 ± 0.7 M[4]
ブラックホール 5.0 ± 0.4 M[4]
スペクトル分類 B3II/III[2]
色指数 (B-V) -0.05[1]
色指数 (U-B) -0.69[1]
色指数 (R-I) -0.03[1]
他のカタログでの名称
ぼうえんきょう座QV星[2]
CD -56 7256[2], Gaia DR2 6649357561810851328[2], HIP 89605[2], SAO 245369[2]
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HR 6819は、太陽系から見てぼうえんきょう座の方向約1,120光年の位置にある恒星系5等星。2020年5月、「HR 6819星系にブラックホールが存在する」とする研究結果が発表され、太陽系に最も近いブラックホールの発見として話題となった。しかし、提唱者を含む研究チームから2022年3月にブラックホールの存在を否定する研究結果が発表されたことにより、2022年3月現在この星系にはブラックホールは存在していないものと考えられている。

特徴

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B型のスペクトルを持つ巨星による連星系で、ガイア計画で観測された年周視差によると地球から約1,120光年の位置にある[注 1]。この連星系は従来さそり-ケンタウルスOBアソシエーション (Sco-Cen, Sco OB2) のメンバーと考えられていたが、2010年代の研究では、現在たまたま近くに位置するだけで、Sco OB2の星々よりも古い星系であるとされている[4]

ブラックホールの存在の可能性

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2020年5月、この連星系にブラックホールが存在するというヨーロッパ南天天文台 (ESO) の研究結果が発表された[4][5]。このブラックホールが実在すれば、既知のブラックホールで最も太陽系に近いとされていたいっかくじゅう座X-1(約3,500光年)よりもさらに太陽系に近く[4][5]、また肉眼で観ることができる、すなわち視等級が6等より明るい恒星系で発見された初めてのブラックホールとなる[4]ため、話題となった。

この連星系は、B型巨星とブラックホールの連星の周囲を、古典的Be星が一定でない周期で公転するという、階層的な三重連星を成していると考えられた[4]。中心の連星系は40日の周期で互いの共通重心を周っており、主星の質量は太陽の6.3倍、ブラックホールの質量は5.0倍と推定された[4]。この連星系からは強いX線が観測されていないため、ブラックホールと主星との相互作用はほとんどなく、既知のブラックホールのような降着円盤が存在しないと考えられた[4]

しかしこの説に対しては、Be星と白色矮星の連星系[6]、またはB型巨星とBe星の連星系[7]など、ブラックホールの存在を仮定しなくても説明できるとする反論も出された。

名称

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HR 6819 は、輝星星表での名称で、ヘンリー・ドレイパー・カタログではHD 167128、変光星としてはぼうえんきょう座QV星と命名されている。

脚注

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注釈

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  1. ^ a b c パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

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  1. ^ a b c d Hoffleit, D.; Warren, W. H., Jr. (1995-11). Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed.”. VizieR On-line Data Catalog: V/50. Bibcode1995yCat.5050....0H. https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ5a76628e9487&-out.add=.&-source=V/50/catalog&recno=6819. 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r HD 167128”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2020年5月6日閲覧。
  3. ^ a b c Samus’, N. N.; Kazarovets, E. V.; Durlevich, O. V.; Kireeva, N. N.; Pastukhova, E. N. (2017). “General catalogue of variable stars: Version GCVS 5.1”. Astronomy Reports 61 (1): 80–88. Bibcode2017ARep...61...80S. doi:10.1134/S1063772917010085. ISSN 1063-7729. https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ600b557ab5e6&-out.add=.&-source=B/gcvs/gcvs_cat&recno=53982. 
  4. ^ a b c d e f g h i Rivinius, Th. et al. (2020). “A naked-eye triple system with a nonaccreting black hole in the inner binary”. Astronomy & Astrophysics 637: L3. arXiv:2005.02541. Bibcode2020A&A...637L...3R. doi:10.1051/0004-6361/202038020. ISSN 0004-6361. 
  5. ^ a b "ESO Instrument Finds Closest Black Hole to Earth" (Press release). ESO. 6 May 2020. 2020年5月6日閲覧
  6. ^ Gies, Douglas R.; Wang, Luqian (2020). “The Hα Emission Line Variations of HR 6819”. The Astrophysical Journal 898 (2): L44. arXiv:2007.05797. Bibcode2020ApJ...898L..44G. doi:10.3847/2041-8213/aba51c. ISSN 2041-8213. 
  7. ^ Bodensteiner, J.; Shenar, T.; Mahy, L. et al. (2020). “Is HR 6819 a triple system containing a black hole?”. Astronomy & Astrophysics 641: A43. arXiv:2006.10770. Bibcode2020A&A...641A..43B. doi:10.1051/0004-6361/202038682. ISSN 0004-6361. 

関連項目

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